普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

2020年は推し作品の当たり年!~『アニガサキ』と『ウルトラマンZ』~

 読者の皆様、2020年、お疲れ様でした。

 何とは言いませんが世界が大きく変わってしまい、2020年は混乱のさなかにありました。日常生活ももちろんのこと、人と会うこと、旅行、イベント、ありとあらゆるものが気軽にできなくなり、昨年まで旅行やライブを楽しんでいた私には辛い一年でした。もっとも、生活、経済面に何の影響もなかったのは幸運であったと思います。

 ところが、その2020年は『当たり年』でした。

 お前は何を言っているんだと言われそうですが、以前から好きだったコンテンツが大ヒットし、直接は会えなくてもTwitterなどで、たくさんのファンと一緒に盛り上がることができたのです。

 Pixivでクロスオーバーを書くほど好きなもの。一つは『ラブライブ!シリーズ』。そしてもう一つは『ウルトラシリーズ』です。

 ラブライブ!にはまったのは5年前。Aqoursが本格的に活動を始めており、μ'sに終わりが囁かれていた、そんな時期でした。劇中時間で1年というごくわずかの時間に様々なことが起こり、魅力的なキャラクターたちが思い悩み、ぶつかり合いながら成長していく姿に魅了されて早5年が経ちました。シリーズも当時からさらに2作増え、元号も跨ぎ、より大きな作品群へと育っていきました。

 ウルトラマンは”本来の視聴者層”だった子供の頃から好きでした。劇場版ダイナ~コスモスくらいまでがちょうどターゲット世代でした。暫く興味が離れていましたが、4年前にYouTubeでオーブに出会いました。昔のウルトラマンしか知らなかった私には斬新すぎる人物設定、ウルトラマンが暴走するという衝撃的な展開やライバルとの確執劇にまさに"Un coup de foudre"になってしまい、以後オタクとしてウルトラマンやキャラクターたちを推すようになっていました。

 ここでは1年の (主に下半期ですが) 総括として、ヒットを振り返り、「大好きを叫ぶ」場としたいと思います。偶然とはいえ、両者には共通点とも思える点が見受けられます。『ニジガク』や『Z』は登場させる予定がありませんが、クロスオーバー作品を書いているので、将来の創作に向けて「ネタ帳」的な要素も持たせる予定です。

 以下、できるだけ内容には深く触れずに語ろうかと思いますが、両作品のネタバレを含みますので、ネタバレを受けたくない方は作品を完走してからお読みになることをお勧めします。

 

1. 作品紹介

1. 1. 『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

 TVアニメ『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(以下、アニガサキ) は、ラブライブ! シリーズの同名のプロジェクト (以下、ニジガク) の当初予定されていなかったアニメ化であり、シリーズ第3作にあたります。東京・お台場にある巨大私立校、虹ヶ咲学園を舞台に、(現時点では)*1 9人のスクールアイドルがソロアイドルとして活動をする作品です。10月4日に放送が開始され、先日12月26日に全13話が完結しました。

 

1. 2. 『ウルトラマンZ』

 特撮TVドラマ『ウルトラマンZ』は、ウルトラシリーズの最新作であり、TVシリーズ第24作にあたります*2。5年前の『X』以来の主人公が所属する防衛隊が復活し、防衛隊「ストレイジ」の保有する特空機 (巨大ロボット) とゼロの自称弟子・ウルトラマンゼットが活躍します。6月20日に放送が開始され、12月13日に全25話が完結しました。

 

2. 私説・ヒットの理由

2. 1. 基本に忠実~ライブとバトル~

 2作品は片や青少年以上向けのアイドルアニメ、片や子供向けの特撮ドラマと、まったくジャンルは違います*3。それでもその両方に言えるのは、基本に忠実だったということでしょう。ドラマのストーリーも大切ですが、まず何よりも重要なパートはアイドルアニメにおいてはライブ、特撮においては戦闘であることは間違いありません。それには両作品とも惜しみなく技術を投入し、最高のものを見せてくれたと思います。

 『アニガサキ』はソロアイドルである虹ヶ咲の特長を活かし、13話で計12回 (うち11曲が新曲) のライブパートが放映されました。これは過去シリーズで7~8回であったことを考えると大幅に増えたといえます。ラブライブ! の特徴であるライブ会場以外で突然始まるライブパートもフルに生かされ、個性溢れるメンバーたちが生み出す世界観をステージ*4として表現していたのも素晴らしく、どの子も魅力的に感じました。9話までは毎話、10話以降は全体の流れの中で、ストーリーで描かれたことをライブパートに落とし込むという技術も、唐突さを感じさせないものでありました。

 『Z』では、これまでウルトラシリーズにありそうでなかった防衛隊の巨大ロボットが登場。往年のロボット怪獣を模ったライドメカたちは、「主役の活躍を食わず、噛ませ犬にもならない」という防衛隊の難しいラインを見事にクリアしていたと思います。アクション、カメラアングル、エフェクト、何から何まで毎度毎度息を呑みました。歴史的でなかった回はなかったのではないでしょうか。

 

2. 2. 丁寧なストーリーと描写

  そうはいっても、ストーリーが良くなければ良質な創作物としては認められないもの。両作品は、その点においても抜群に輝いていました。

 従来のラブライブ! のストーリーは、1期でグループの結成が、2期でラブライブ! (大会) への挑戦が描かれるのが基本でした。しかし『アニガサキ』ではグループ活動もラブライブ! への出場も行いません。その代わりに、各メンバーの特色を生かせるステージを模索する筋書きをメインにする個人回を中心に構成されています。1話1話が独立していながらそれはメインの流れに対して枝葉ではなく、メンバーの成長がわかるような繋がり方をしており、同好会全体としてもステップアップしていき、各回の立ち位置は非常に明確です。ばらばらの個性が、ばらばらに動くだけでなく重なり合って成長していく虹ヶ咲のコンセプトを体現した筋書きともいえます。

 『アニガサキ』は心象描写も非常に豊富です。台詞回しは当然として、またメンバー同士の位置関係が表現に使われるのは過去作でもありましたが、光の加減や道路標識などの背景の造形物、花言葉から果てはダイバーシティ東京ユニコーンガンダムに至るまで、およそ画面に映りこんでいるもので無意味なものはないほどでした。つまり、一度見るだけではそのすべてを把握することはできず、何度も見ることで何度でも発見が得られました。また、やはり描写に気づく能力は人によって違うので他人の感想を見ることも楽しさに繋がり、実況が大いに盛り上がったともいえます。

 「スルメ」力では『Z』も負けてはいません。脚本の吹原さんは残念ながら放送開始前に急逝されましたが、田口監督は本作について「最終回から逆算して話を作った」と語っています。つまり、先の回を見てから過去の回を見返すとそれまで気づかなかった伏線に気づく、というわけです。主人公の苦悩、暗躍するキャラクターたちの行動、その週にはわからなかったものでも、意味を持って浮かび上がってきます。それに、もちろん特撮ヒーローですから玩具の販促もしなければならないのですが、あまりに突飛な見た目の喋る魔剣・ベリアロクを魅力的なキャラクターに仕立て、引き立てたのは見事としか言いようがありません。

 2作品とも丁寧に作りこまれた作品で、見る人の目を釘付けにして離さない、そんな力がありました。

 

2. 3. 特色あるキャラクターの存在

 好きな作品にはやはり好きなキャラクターがいるものだと思います。箱推しであってもそれは「全員好き」ということなので変わりありません。基本的には、アイドルアニメならアイドルを、ヒーロードラマならヒーローを応援するものと思いますが、今年の両作品では異色のキャラクターが大活躍しました。

 『アニガサキ』の主人公・高咲侑はアイドルではありません。幼馴染の上原歩夢と一緒にスクールアイドル同好会に入部しますが、スクールアイドルたちをサポートしつつ、一番のファンとして応援するという「視聴者と同じ立場」にあるキャラクターです。キャストの矢野妃菜喜さんの「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」という決め台詞も相まって、共感できた方も多かったのではないでしょうか。侑は「アイドルがいて、ファンがいる」ことが大事だと考えており、実際にアニメのストーリーでも侑を筆頭にしてこれまでの作品であまり描かれてこなかったファンの人生がアイドルによって変わっていく様子が描かれていきます。最後に侑が大きな一歩を踏み出すシーンに涙した方も多かったのではないかと思います。

 『Z』のストレイジ隊長・蛇倉正太の正体は、なんと4年前の『オーブ』で主人公・ガイのライバルだったジャグラスジャグラーでした。ジャグラーといえば、光に選ばれなかった男。それが、ウルトラマンのように周囲に正体を隠しながら、同時に「ウルトラマン」としてウルトラマンにできないことをいくつも成し遂げたのです。ウルトラマンは人類の守護者でありながら人類の文明に干渉することはできません。しかし、ジャグラーウルトラマンではないので、それができます。人類をウルトラマンなしで自営できるように育てながら、同時に痛い目に遭わせて正義への妄信と暴走を戒める、という企みは、今までのシリーズでも彼くらいにしかできなかったでしょう。一方で彼の一番の望みもまた大切な人々を守ることであることも、『オーブ』の時から変わりません。目的のために黒幕の手助けをしたりと、やり方は手荒でありながら、本質が光の側にあるジャグラーの生き様に惚れ直しました。ウルトラマンではないからこそ、自分なりのやり方で人類を守ろうとする、「防衛隊長」という存在の大胆な再解釈ともいえます。

 

2. 4. ファンへのおもてなし

 『アニガサキ』1話開始早々に侑と歩夢の2人が食べていた「レモン塩カスタードコッペパン」。これ、実は……。

  今年のエイプリルフールにかすみが作っていたコッペパンなのです。このコッペパンはTVアニメのパイロット版にあたる『無敵級*ビリーバー』のMVにも登場します。これや、虹ヶ咲が本格的に曲を出す前に展開されていた4コマ漫画*5など、駆け出しからニジガクを応援していた人にとって嬉しいネタが多数挟み込まれていました。ライブパートにはスクスタのカードイラストも多数登場しました。これも頑張って集めたファンにとっては感動的なものだったでしょう。愛は報われなくてもよいですが、報われると最高なのは言うまでもありません

 シリーズも長くなると、かつてその作品を愛していた人が作品を作るようになります。『Z』ではそんな制作陣の愛がこれでもかと詰め込まれました*6。ゼロの弟子で、すなわちレオの弟子の弟子で、エースに名付けられたゼット。怪獣は『Q』や『マン』の登場怪獣が多く、歴史に名を残した怪獣たちが現役で大暴れする姿を毎週のように見られました。そして『オーブ』の登場人物であり、ダイナと関係も深いジャグラーの存在もあってか、それらの作品を想起させる要素が多数ちりばめられていました。登場した怪獣の初登場や、共通点の多い回をYouTubeで再配信する企画も行われていました。直接会いづらい時代だからこそ、制作サイドとファンが作品愛を通して繋がれたような気がしました。

 

 本稿を通じて、何かを論じたかったとか、そのようなことはありません。2020年の得に下半期、「どっちも楽しかったなあ」と、余韻に浸るのにお付き合わせした次第です。

 まだまだ状況が予断を許さないので、年度内のイベント参加はおそらくオンラインで参戦可能なものに限ることになりそうです。直近ではウルトラヒーローズEXPOやAqoursのカウントダウンライブをその方法で視聴するつもりです。未来も明るいとはいえず、自在に動ける範囲も狭くなった今、2021年は「手の届く現在」をもっと大事にしていきたいと思い、2020年の締めくくりとさせていただこうと思います。年明けは本業が忙しくなりそうですが、それが済んだら可能な限り大好きを叫んでいきたいです。

*1:プロジェクト自体には三船栞子が参加して10人になっており、さらなる登場人物の追加も期待 (?) されている

*2:『Q』『ザ☆』を含み、『SEVENX』『QDF』『大怪獣バトル』『列伝』『クロニクル』系を含まない

*3:私のように両方が好きなファンはなぜか多数見かける気がする

*4:別作品の用語で「領域展開」などと呼ばれていた

*5:キャラ崩壊で知られたちょぼらうにょぽみ先生の漫画のネタも登場

*6:もっとも、これはニュージェネ以降のウルトラシリーズに共通して言える