普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

現実の恐怖、そして戦う覚悟 ~ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA感想週報⑧『繁殖する侵略』~

 『ティガ』25周年を迎えた9月7日、衝撃的な発表がありました。あのウルトラマンティガ』の期間限定配信の開始です。実は『ティガ』をちゃんと見たことがなかったので、時間を作って最終回までばっちり視聴したいと思います。

 一方『トリガー』は、『ティガ』と同じ星雲賞受賞作品である『Z』より、ウルトラマンゼットの客演回の後半です。

『Z』らしさ全開の前回

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社会の崩壊は現実に起こり得る……?
 (『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』第8話『繁殖する侵略』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=uB_e68s8zfg)

 

1. トリガー世界の技術と社会

 前提として、『トリガー』の世界は現実より凄まじく技術が発達しています。端的に言えば火星に行けるというのがその証拠です。一般市民も、両面に画面の付いたスマホや、スマートグラスを当たり前に持っているようです。

 だからこそ、電子生命体であるパワードダダの被害は甚大です。世界中の金融機関や政府、それにTPUまでもが機能を停止し、普及した自動運転車はめちゃめちゃに動き回り、空中からドローンが落ちてきて大爆発。とはいえこれらは、どれも現実の技術の延長線上にあります。28年前、電光超人グリッドマンでは荒唐無稽だったクラッキングによる社会の破壊が、現実の恐怖として生々しく描かれました。これは下手に強い怪獣よりうんと怖いと思います。

 そして、人間社会最強のセキュリティを持つと思われるTPUが侵入されたということは、各国の軍事施設や原発などもダダの被害に遭っているはずです。そして、ダダはそれらの機能を停止するだけでなく、かなりアグレッシブに暴走させているはずですから、描写されていないだけで最近のウルトラマンでも犠牲者の数はトップクラスなのではないかと思います。客演回でギルバリスやグリーザが現れた『Z』も大概ですが、図らずも、ラスボスのハードルが上がってしまいました。

 

2. 大波乱! ナースデッセイ号

 GUTS-SELECTの居城・ナースデッセイ号も例外でなく、パワードダダに乗っ取られ、都市に向かってナースキャノンを乱射しようとしました。TPUからの旧式の無線を通した許可を受け、GUTS-SELECTメンバーはそれに総力戦で対処します。パイロットのテッシンは操縦桿を操って被害を出さないようにキャノンを逸らし、アキトはダダ駆除プログラムを作成。ヒマリがガッツファルコンの操縦プログラムを使ってそれを動かします。ケンゴとハルキはナースキャノンの物理スイッチを破壊しに行き、マルゥルはそのケーブルを繋ぐべく走ります。神出鬼没のイグニス*1は、マルゥルたちにいたずら*2しながらも協力します。それを坐して動かずに見守るタツミ隊長も印象的です。

 先程も取り上げた『電光超人グリッドマン』でコンピューターワールドへ繋がるパサルートを通って、ヒマリが辿り着いたのは、まさかのレトロゲームの世界。緊迫するナースデッセイ号の機内で、あまりにもシュールな笑いを誘うシーンでした。もしかするとダダは、極めて原始的なプログラムには逆に手出しできないのかもしれませんね。そしてヒマリの超人的なゲームの腕に脱帽しました。もし世界が平和だったら、ゲームがとても強く、例えばジェットコースターが好きな普通の女子だったのかもしれないと、思いを馳せました。

 一方で、望まずして普通の女子ではなかったのがユナです。システムの奪還に成功したアキトを、実体化したダダが襲った時、再びユザレの能力が発現しました。そしてそのことに、ついに自分で気づいてしまったのです。

 

3. ケンゴとアキトと、時々ハルキ

 今回はナースデッセイ号のドタバタがメインとはいえ、ウルトラマンの戦闘もフルスロットルで、ゼット・トリガーともに全タイプの姿を見せていました。実体を持たないパワードダダはウルトラマンにとって厄介な相手で、今回主に戦った相手はダダに操られたキングジョーストレイジカスタムでした。通常のキングジョーより多彩な能力を持つがゆえにこちらも相当の強敵で、ウルトラマン2人をして大苦戦させました。

 強いだけでなく、キングジョーストレイジカスタムはハルキたちストレイジにとって思い入れの強い機体です。それでも今のハルキには、自分たちの愛機と戦う覚悟を持つことができます。戦闘後、破壊した機体を大事そうに拾い集めようとするところも、自分の世界に帰る間際に、手元に集めた機体が重くて「オモイッ」と呟きながらよろめくところも、愛嬌はありますが、キングジョーストレイジカスタムを大事にしているのが伝わります。

 戦闘後、ケンゴたちのもとに駆け付けるアキトは「俺はやるべきことをやっただけだ」と言います。それはハルキが半年間かけて辿り着いた答えでもあり、「人間としてできることに命を懸け、人として光になる」ことを選んだ『ティガ』のメッセージでもあります。思いは、ちゃんと伝わっていたのです。

 ところで、歴代ウルトラ戦士の客演回にその戦士ゆかりでない怪獣が出るのは珍しいですね。被害の甚大さも相まって劇場版の風味があります。『シン・ウルトラマン』の延期に伴って、今年も単独劇場版の公開があまり期待できない中、こういった回を用意してくれることにはありがたく思います。

 

 ユナは自分が普通の人間ではないことについに気づいてしまいました。ユナとシズマ会長に関する真相が、次回いよいよ明らかになるようです。配信された『ティガ』を見ながら、待つことにしましょう。

*1:冒頭でガチャを引いていたがURを出した瞬間にクラッシュした。この世界では『ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ』がまだ稼働しているのかもしれない

*2:VRC界隈で話題のメタルシャワーと言われるアイテム。正式にはヘッドスパワイヤー