普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

学校の創設者・葉月花 ~ラブライブ! スーパースター!! 感想週報臨時増刊号~

 葉月恋の直面する現実が明らかになったラブライブ! スーパースター!! 第7話『決戦! 生徒会長選』。この回の感想は下記の感想週報で書きました。

 

carat8008.hateblo.jp

 

 しかし、まだ語りきれていない疑問があります。

「花と学校、花と理事長、恋と理事長はどういう関係なのか?」

 この記事では、それを私なりに解き明かしていきたいと思います。

 法的な話については、農学部出身である私には全く自信がありません。誤りなどがありましたら、ぜひどしどし指摘していただければ幸いです。

 

1. 花と理事長は友人同士

 葉月家にあった花のアルバムには、結ヶ丘とよく似た学校で、結ヶ丘の普通科とよく似た制服を着て肩を寄せ合う、恋とよく似た生徒と、茶髪で紺の目をした生徒が写っていました。前者は花であることは想像に難くないですが、後者は、外見からして、今の結ヶ丘の理事長 (以下、理事長就任前でも混乱のない限り「理事長」と称する) であると思われます。この学校は、結ヶ丘の前身、神宮音楽学です。

 もうひとつ、花と理事長が友人同士である証拠があります。親記事でも取り上げた、4話で恋に言ったセリフです。

「努力しようとする者からその場を奪おうとするのは良いこととは思えません。そう言うと思いませんか? あなたのお母さんも」

 恋は花の娘で、少なくとも14年ほどは花と一緒に暮らしてきました。その恋よりも、花をよく理解しているかのような口ぶりではありませんか。花の遺志を勝手に解釈して暴走する恋に対して、教育的見地から諫めたという捉え方もできますが、やはり亡き友人が誤解されていることを苦々しく思う気持ちはあったと思います。

 以下では、花と理事長が、μ’sAqours、虹ヶ咲のメンバー同士がそうであるように、互いに最も信頼のおける関係であったことを前提に議論を進めます。

 

2. 学校法人「結ヶ丘女子高等学校」とは?

 結ヶ丘は私立学校です。私立学校は、学校法人という法人が経営しています。

 学校法人は(株式会社などとは異なり、創設者の寄附*1によって成立しています。学校は公共性のある存在であるため、出資者の財産としては考えられないそうです。ですから、たとえ創設者が亡くなったとしても、持ち主不在とはならず、その点で問題はありません。

 ただ、おそらく立ち上げ当時は花も運営に携わり、開校に向けて従事していたのではないかと思います。もし仮に花が初代理事長だったとすると、花の没後、理事長を再び選任し、今の理事長が就任したと考えられます。もちろん理事の投票などの手続きがあったはずですが、花の方針を引き継げる人物として、花をよく知る現理事長が選ばれたのではないかと考えています。

 

3. 学校の創設者とは?

 私立学校の場合は、学校を作るために私財を寄附した人物が学校の創設者といえます。たとえ開校に立ち会えなくても、花はこの観点から紛れもなく結ヶ丘の創設者です。つまり花は廃校になった母校である神宮音楽学校を自ら買い取り、その土地や施設、運営資金を寄附したということです。

 花の理念が何かは明らかになっていませんが、私は「笑顔で溢れていた神宮音楽学校」を再興することだと想像しています。しかし一度廃校になった学校を復活させるというハイリスクな事業は、成功するかもどうかもわかりません。7話冒頭に映る儚げな姿や、「サヤが来た頃は元気だった」という恋の説明からすると、晩年の花は病弱だったと思われます。それでも、夫にも先立たれた花にとって、最後の力を振り絞って取り組んだライフワークだったはずです。まさしく「やるったらやる」という意志をもっていたことでしょう。そしてそれをずっと支えてきたのが、旧友である理事長だったのだと考えています。

 

4. 葉月家の遺産

 さて、先述した通り、学校は花の持ち物ではなく、したがって相続の対象とはなりません。一方で、元々資産家だった葉月家には、様々な遺産が遺されました。

 具体的に言うと、下の二つが該当します。

・葉月家の邸宅や調度品などの物品、現金など

・使用人サヤとの雇用契約

 恋は先に父を失い、次いで母を失っています。そして、頼れる親族も、どうやら1人もいないようです。この場合、通常であれば、恋は花の遺産相続を100%受け取れます。ただし、花が遺言書を遺し、学校への追加の寄附などを決めていれば、その限りではありません。

 ところが、恋は15歳*2です。2022年から成人年齢は18歳になりますから、成人するまであと3年はかかります。この場合、一人で財産管理をすることができません。相続を受ける時点で、成年後見というものを置く必要があるのです*3。未成年後見人は本人の監護養育,財産管理,契約等の法律行為を行う、いわば親の代わりです*4。生徒会長選挙の立候補届に印鑑を押すのもこの人の担当です。恋がいくら「もう誰にも頼らない」とばかりに心を閉ざそうと、日本の法律がそれを許さないのです。通常、親が亡くなっていてもその他の成人の親族がこれを務めるのですが、恋には親族が1人も残っていません。こうなると、それ以外の人または法人が未成年後見人をすることになります。現実世界では、児童虐待で親の親権が失われたときなどにこの措置が取られることも多いようです。

 花は、遺言で恋の未成年後見人を任命することができます。一方で、花が遺言を残していなかったとすると、恋本人、あるいは利害関係者の申し立てを受けて、家庭裁判所がこれを選任することになります。管轄は東京家庭裁判所です。しかし、恋自身には選任したいと思う人がいないとすると、利害関係者が申し立てを行うことになります。今のところ思いつくのは、使用人であり自らの雇用関係にも影響の出るサヤでしょうか。そして、弁護士などの専門職が未成年後見人を務めることもあるということです。

 まあ、ここまで考えると、ラブライブ! の本筋にいないプレイヤーをたくさん登場させることになってしまいますから、花が遺言を残した場合に限って考えると、おそらく花は実際の恋の世話をサヤに任せ、財産管理権をもつ後見人には理事長を指名したのではないでしょうか。複数人が後見を行うことはできるので、両方を後見人に指名して役割を分担させることもできます。

 理事長は、事実上恋の新しい母親ということもできるのではないでしょうか。花と理事長の関係からすると恋も娘のような存在でしょうし、恋にとってみれば母の懐かしい思い出を書き換えようとする煙たい存在です。母娘の対立だと思うと少し面白いものです。

 ところで、実際に恋が行い得る法律行為を考えてみましょう。恋はサヤとの雇用契約の継続を終了しようとしています。少なくともこの契約は恋に相続されており、恋は後見人がOKを出せばこの法律行為を行うことができることになっています。ただし、もしサヤが財産管理権を持っていればそれを拒否することができてしまいます*5。また、恋は存続の危うい学校のために自分の持っている財産を全部学校に寄附したのではないか? という親記事の予想についてですが、理事長に財産管理権があれば教育的見地からも、その無謀な契約を無効にすることができます。

 

 花の学校復興が「笑顔で溢れていた学校」を目指しているのならば、その成功条件は、娘の恋がその学校で笑顔になることだと思います。かつて花にとって理事長がそうであったように、かのんたちが恋にとって信頼し合い、支え合う存在になれば、きっと実現できることでしょう。

 

※法律関係について、間違いの指摘はぜひともお寄せいただきたいと思います。また、専門家ならどう判断するかなど、もし教えていただける方がいらっしゃいましたら、ぜひともコメントをお寄せください。

*1:条文にある「寄附行為」という語だが、これには本当の寄附という意味と、訳語によって発生した「書面で定める」というような意味があり、実に紛らわしい。私立学校法第34条

*2:誕生日11月24日。前年のこの日以降に花が死亡したと仮定

*3:民法838条

*4:857条

*5:主従の逆転