出場には、名前が必要です
とうとう、ラブライブ! 開幕です。ラブライブ! といえば、この方。今回はすみれの回なので、前半はすみれと可可のことについて語ります (タイトルもそれに合わせた) が、やはり"レポーター"のことが気になって仕方ありません。
1. さらばグソクムシ
今回がすみれの個人回なのは、正直観るまでわかりませんでした。ラップといえば2話で千砂都がやっていただけに、すみれに全く注目していなかったためです。
前回の可可の台詞に、こんなものがありました。
「嘘をついたのデスカ!? それではこのグソクムシと同じデス!」
これはかのんが適当なことを言って缶詰を脱出したのを詰る言葉でしたが、それではグソクムシことすみれがどんな嘘をついたというのでしょうか。
すみれは幼いころからずっとスターを夢見てきた一方、実際に充てられるのはモブ役、端役、色物などなど、夢見た通りの活躍の場は与えられませんでした。すみれはそのような役割こそ自分に相応しい、とずっと自分に言い聞かせてきたのでしょう。結果、スカウト待ちのような受動的な人間になった、というところは4話の感想週報で触れましたが、スクールアイドルとして努力を重ねるようになっても、自分が主役になることは怖いままになってしまっていたのです。
なぜすみれは不本意な役ばかり押し付けられてきたのかといえば、すみれにそれらをそつなくこなしてしまうだけの才能があったからです。例えばラップをしろと言われたら、即興でラップができてしまいます。理由なく人を惹きつけられるカリスマ性はなくとも、バランスの取れた能力とたゆまぬ努力で期待に応えてしまうのです。Liella! の中でも歌もダンスも、どれも2番目にうまいくらいのポジションでした。
グソクムシの着ぐるみを着せられれば着こなしてしまうすみれは、こうしていつしかグソクムシでいることに甘んじてしまうようになりました。自分こそスターに相応しいと豪語しながら、それを得ようと手を伸ばすことへの恐れが勝ってしまいます。グソクムシでいれば、とりあえずステージには立てるからです。人は自分を評価しないものと決めつけて、自分で自分と向き合うことから逃げ続けて、自分も周りにも「嘘」をつき続けていました。すみれを嘘吐きグソクムシにしたのは、臆病な自尊心と尊大な羞恥心だったのです。後述するようにすみれのことが強烈に「気になって」いた可可には、それがはっきり意識されていたのでしょう。
2. 嫉妬心を乗り越えろ!
ここまでの可可のすみれに対する扱いの酷さを見て、いじめのようだと思った視聴者も多かったようです。しかし、これはいわゆる弱い者いじめというものとは違います。よく考えると、可可がすみれに対して立場が強かったことなど一度もないではありませんか。
むしろ、可可はすみれに嫉妬していたのです。
スクールアイドルをやりに日本にまで来た可可は、運動能力が極めて低く、当初はダンスにも耐えないほどの身体でした。それなのに、留学は結果が出なければ本国に返されるという厳しい条件付きでした。それでも運命的なものを感じる歌声を持つかのんと、めげずにダンスを教えてくれる千砂都と出会い、スクールアイドル活動を始めた矢先に現れたのが、スクールアイドルを小ばかにしたような態度をとるすみれでした。ファーストコンタクトは最悪と言ってもよいでしょう。そのすみれは、あろうことか歌もダンスも可可よりずっとうまかったのです。何をやっても可可よりでき、あまつさえ合宿では料理のできない可可の世話まで焼いてくれました*1。
そんなプライドを傷つけられた可可の心に逃げ道を作ったのが、すみれの人望の低さ*2と、「グソクムシ」でした。可可がどれだけ突っ張っても、すみれはツッコミを入れてくれるのも、居心地が良かったのかもしれません。
しかし、その安寧が破れる時が来ました。ラブライブ! 出場を懸けた課題に、すみれは不可欠の存在となりました。可可にとっては死活問題です。ようやくすみれに向き合う決意ができた可可は、改めてすみれが努力の秀才であることを認めます。可可がすみれと向き合ったのだから、すみれ自身がそこから逃げることは許さない、とばかりに、強気で迫る可可には、予告で可可の台詞で泣かされて以来、否、それ以上の強さを感じました。
3. 何から何まで違う! ~続・『スーパースター!!』のラブライブ!~
今回、本作におけるラブライブ! に関する情報が一度にたくさん明らかになりました。それを見て抱いたのが、「今までとは何もかもが違う」という感想です。かのんがLiella! について言っていたように、「今までがそうだったから、なんとなくそう」ということは通用しないのかもしれません。
参考までに、過去のラブライブ! のルールを振り返ってみましょう。『虹ヶ咲』では大会のことは一切描かれていない*3のでまず除外します。
・『ラブライブ!』
フリーランキング形式の予選→決勝という順番でしたが、第2回大会から参加校が急増したため急遽動画による予備予選が開催されることになりました。
・『ラブライブ! サンシャイン!!』
前作から直接繋がる時間軸です。地域ごとの予備予選が、ステージ形式で開かれるようになりました。さらに、地区予選→決勝と続きます。
・『ラブライブ! スーパースター!!』
前年大会まで予選→決勝でした。それで捌ききれない参加校数となったため、運営から出された課題を突破した者のみが予選に進める、という選考方式となりました。
「今年のラブライブ! の参加校は過去最多」だそうですが、既に『ラブライブ!』より予選回数が少なくなっています。『サンシャイン!!』の時は、大会が過熱しすぎている様子が見て取れましたが、この世界のラブライブ! はこれらの世界より緩やかに進化していっているのかもしれません。
そしてもう一つ気になるのが、「シブヤレポーター」(トップ画像) の存在です。『ラブライブ!』と『サンシャイン!!』に登場する、「アキバレポーター」と姿も声も同一で、平行世界の同一人物と考えられます。ラブライブ! が描かれる作品群を結ぶ、共通の人物です。
とはいえ、所変われば人変わる、と言うことなのでしょうか。今までも「はっちゃけお姉さん」と呼ばれるほどテンションの高かったこの人物ですが、今回はその「はっちゃけ」に拍車がかかっています。ステージ上で冗談を言ったり、急にドスの効いた声になったりという暴れっぷりに驚いてしまいました。アキバレポーターの生みの親である京極監督が、自ら変化球を投げてきたような感じですね。それにしてもこの人物は『サンシャイン』でも東京から地方の小大会まで網羅しすぎだとは思いますが、まさか、『ポケットモンスター』シリーズのジョーイさんやジュンサーさんのように、色々なところに同じ顔と声の人がたくさんいる、ということはないと思いますが……。
最後に参考までに、京極監督のアキバレポーターに関する発言を紹介して終わります。シブヤレポーターは果たしてどのような人なのか。この世界のラブライブ! は、そしてそれに立ち向かうLiella! には、どんな未来が待ち受けているのでしょうか?
ある日のラブライブ打ち合わせ
— 西田亜沙子(新作準備ちゅう!) (@asakonishida) 2014年6月16日
監督「アキバレポーターの彼女は地方から出てきて、本来は本格的なアナウンサーを目指しているのにこんな仕事ばかりで夜になるとこんなはずじゃなかった、、と一人自分の部屋で泣いていてですね」
全員「知らんがな」