普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

【ネタバレ注意】音楽に身体を委ねる旅 ~Liella! First LoveLive! Tour 大阪公演Day1 全曲感想・ライブ編~

 2021年10月30日から始まった『Liella! First LoveLive! Tour ~Starlines~』は、ほぼ毎週末*1に渡り全10都市20公演を駆け抜ける、シリーズ前代未聞の1stライブです。私はこの中で4都市目にあたる大阪公演のDay1*2を引き当て、参加してきました。 今まで現地参加したライブはすべて東京都または埼玉県で開催された公演だったため、私にとっては、初めてのライブ遠征でした。「遠征記編」は別稿に分け、今回は「ライブ編」としてライブの感想をお届けします。

 なお、東京公演以降も同様のセットリストとなることが予想されます。内容を知らずにライブに参戦したい方につきましては、本記事はネタバレとなりますのでご注意ください。

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今回のラブライブ! 会場は、街の中の劇場!?

 

 

1. 着席

 16:30、目安入場時刻に従ってオリックス劇場前の新町北公園内に整列します。長蛇の列かと思いきや、スムーズな規制入場のおかげで列に並んでから10分で着席できました。1時間で2,400名の観客を入れるので、1.5秒で1名入れると考えれば妥当な速さではあります。

 私の席は1階席の後ろから2番目、ステージを向いて右から2番目のブロックの右から2番目でした。今まで1万人以上を収容する会場しか行っていなかったので、最後部でもステージが想像以上に近くて驚きました。左を向けば機材があり、プロジェクターが映像を映し出す光を出していました。

 開演までの間、スクリーンにはLiella! の楽曲CMが流れていました。ご存知の通り、『ラブライブ! スーパースター!!』はNHK Eテレで放送されたため、放送中にCMが流れませんでした。このため、これもあまり見たことのないレアなCMでした。

 

2. 激烈なスタート

 17:30、開演時間になりました。観客たちが立ち上がり、無数のペンライトの光が客席に満ちるのを見て、ライブ現地に戻って来られたことの喜びを噛みしめました。『Guilty Kiss First LoveLive! ~New Romantic Sailors~』以来、1年半ぶりの参戦だったのです。

 ステージにLiella! キャストの5人が並びました。それだけで目が潤みました。私自身もうライブには行かないかもしれないと思っていたことと、キャストの皆さんもいつファンの前に立てるかわからないと思っていた中で既に7公演も開催にこぎつけたこと、その事実は曲が始まる前から感動的でした。席の近さは、キャストの表情がギリギリ見えるくらいでした。

 パフォーマンスはアニメOPの『START!! True dreams』から始まります。立て続けに、B面曲の『だから僕らは鳴らすんだ!』に移行しました。『だから僕らは鳴らすんだ!』はクラップでリズムを刻む曲で、声援を送れない環境下でもキャストと観客が一体となって盛り上げることができる、アップテンポな曲です。会場の熱気に包まれて、私もラブライブレードを持ったままの手で一心不乱にクラップを送りました。あまり勢いよく叩きすぎて、右手の人差し指が突き指のようになってしまい、またブレードに付けていたライブグッズのリボンからかのんの顔が描かれた星のアクセサリーが飛んでしまっていました。そのことに気づいたのは、MCが始まって落ち着いたときでした。

 

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ブレードリボンの装着例 (左) と、破損したリボン (右)

 Liella! は声優としての演技も含め、パフォーマンス全般が新人離れしています。MCも若々しく、初々しくありながら、同時に安定感のある不思議なものです。今回は大阪公演ということもあり、関西出身の岬なこさんは度々関西弁が出るなど、絶好調でした。

 

3. アニメと共に進むセットリスト

 このライブはアニメ後のライブ恒例の「アニメ準拠ライブ」です。つまり、以前私が行った『Aqours 3rd LoveLive! Tour ~Wonderful Stories~』や『Aqours 5th LoveLive! ~Next SPARKLING!!~』、配信で見て感想記事を書いた『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live ~School Idol Festival 夢の始まり~』同様、アニメ本編のストーリーに沿ってパフォーマンスが行われます。

 ただし、Liella! Firstの場合独特なのは、「アニメ挿入歌のB面曲」の存在です。今まで、『ラブライブ!』シリーズのアニメや映画の挿入歌シングルは挿入歌だけで構成されるのが基本で、例外は『SENTIMENTAL StepS』と『Over The Next Rainbow』のみでした。しかし、『スーパースター!!』の挿入歌には必ずバージョン毎に1曲ずつ、アニメの本編を補完するような内容のB面曲が入っています。これらをちりばめ、重層的にアニメの物語が浮かび上がるように構成されたのが、Liella! Firstなのです。

 まずは1話挿入歌の『未来予報ハレルヤ!』ですが、次はそのB面『GOING UP』です。CD版とは違い、かのんのソロで歌いあげられます。もう一度歌うことを決意したかのんの心情を歌ったような歌詞で、ぴったりな演出です。伊達さゆりさんののびのびと自由で、力強く心を揺さぶるような歌声だけを浴びる、なんとも贅沢な時間だと思います。3話盤のB面『1.2.3!』は、曲名の通りかのん・可可・千砂都のトリオ曲になっていました。まだ加入していない千砂都を含めた3人で頑張った日々の歌に聞こえます。

 3話の『Tiny Stars』が終わると、千砂都とすみれのデュオで『バイバイしちゃえば!?』がかかります。性格は正反対ながら2人とも実力があり、しかしスクールアイドルになるには抱えていたものに「バイバイ」する必要がありました。既に次の『常夏☆サンシャイン』の衣装を着て現れた岬さんとペイトン尚未さんの2人は、悩みを振り切るような元気いっぱいのパフォーマンスを見せてくれました。

 『常夏☆サンシャイン』は、期待通りの会場を沸かせる曲となりました。本来なら皆で合いの手を入れたい曲ですが、声が出せなくても会場が一体になってキラキラに輝いていたのは変わりません。

 

4. リエラのうた

 本放送のみ本編後に流れたパートが『リエラのうた』です。こちらは全員曲が2曲、2人ずつでそれぞれ同じ曲を歌うソロ曲が5曲の計7曲ありました。ライブでは、そのうち日程ごとに異なる3曲が選曲されていたようです。今回は、『Anniversary』(可可 ver.)・『Ringing!』(千砂都 ver.)・『Dears』(恋 ver.) でした。

 5人とも歌声がとても綺麗なのが、最も生かされるパートがここだと思います。歌詞もそれぞれのメンバーの文脈を想起させながら、ひとつながりの物語を紡ぐ、「想いを結ぶ」という『スーパースター!!』のテーマを凝縮したものになっています。3曲のうち一番は決められないのですが、青山なぎささんの歌声には優しく包み込まれるようでした。恋の身の上を思えば、たくさんの愛をもらって、優しさを知ったという歌詞に涙が溢れてしまいました。母はいなくなっても、その遺した愛は永遠に消えないのです。

 次の曲の準備のために、スクリーンの後ろのホリゾントが変わり、星空が映し出されました。これもライブ中度々使われた、劇場らしい興味深い演出です。私たちが見ている星の光は何万年も前のもので、今はそこになかったとしても私たちを照らす希望となっていることを思い出しました。

 

5. 結ばれ、広がってゆく想い

 8話盤B面曲は『瞬きの先へ』です。この曲は、劇場版『サンシャイン!!』の『キセキヒカル』のような劇伴にボーカルが付いたものです。かのんたちが花の想いに辿り着き、恋にその真実を伝えるシーンで流れていた曲ですが、ここでは恋がスクールアイドルに加わるシーンをミュージカル風に歌う演出になりました。恋のパートはサビの最後の「僕もきっと」です。かのんたちにかけられた言葉に応えるように、力強く返し、そしてスクールアイドルとしての葉月恋が始まるのです。間奏では恋のバレエが披露されます。やっと自由にやりたいことができることに気づいた恋がほんとうに輝かしくて、それを全身で表現する青山さんの実力も相まって、今までで最も近い舞台のライトは、涙に屈折して星の瞬きのように見えました。「あの日の想い」に背中を押されてスクールアイドルに加入するシーンも再現され、そのまま『Wish Song』に入ります。

 Liella! Firstは、ここまでが前半戦とされています。この後にMCが入り、キャスト同士の「褒め合い」が行われました。伊達さんにバレエのときの凛々しい表情を褒められた青山さんが、照れ隠しに「顔芸」を決めたのが可愛らしかったです。

 後半戦1曲目はすみれのセンター曲『ノンフィクション!!』。MCから連続なので、『Wish Song』の衣装のまま披露されました。2ndライブ以降では、印象的なエピソードにも結び付いた衣装も披露されるのでしょうか*3。その後の10話盤B面曲『Day1』は、『ノンフィクション!!』の続きのような曲です。どことなくセクシーな『ノンフィクション!!』とは違い盛り上げる曲ですが、会場を色とりどりのサーチライトが舞い、ペンライトが勢いよく振られる、たくさんの光の中心にすみれことペイトンさんがいる光景は、まさにすみれが夢見た「ギャラクシー」なステージそのものでした。アニメでは見られなかったすみれの活躍を見られたようで、ここでも泣いてしまいました。

 『Dream Rainbow』は、B面曲とは言いながら11話の本編内で一部が流れます*4。一緒だから怖くないとかのんの背中を押すような歌が終わると、伊達さん以外の4人ははけてしまいます。伊達さんだけにスポットライトが当たり、伊達さんは不安そうに辺りを見回し、決心したように観客の方を向いて歌い始めます。その表情も、身振りも、まるでミュージカルの主演女優のようでした。まるで、というより、私たちは本当にミュージカルを見ていたのかもしれません。アニメ『ラブライブ!』から始まったミュージカル路線が、8年半経ってここに結実した、ということもできるでしょう。伊達さんが『私のSymphony』を歌い始めたとき、私は両手に握ったマリーゴールドのライトに、心からの応援の気持ちを込めました。他のファンも同じ気持ちだったと信じています。

 舞台の端で見守っていた4人は、2番から歌唱に加わりました。何年も苦しんだ悪夢から抜け出し、「私」を叶えたかのんを祝福するようにメロディが続いていきます。

 映像は12話に辿り着きます。生徒たちがステージを作ってくれていないと勘違いしたかのんの鬼気迫るブチギレシーンが流れたとき、会場内からは拍手がこぼれました (笑)。これも伊達さんの演技力の高さを物語るシーンだからでもあるでしょう。そして、劇中で1年間の集大成だった『Starlight Prologue』が力強く披露されました。事前にファン有志が仕込んでいた、劇中の光の色にペンライトを合わせる企画も概ね成功して、5人の前にメンバーカラーの光の道が現れていました。最後にEDである『未来は風のように』が披露され、このパートは終わりになりました。

 

6. 『この街でいまキミと』~星の光と母なる大地~

 『ラブライブ!』シリーズのライブではアンコールがあることがほとんどなので、5人が退場した次の瞬間、客席のあちこちからアンコールの拍手が沸き起こりました。今回はこの時間は比較的短く切り上げられ、Liella! のこれまでを振り返る映像が流れ出しました。ここに至るまで、キャストはどれだけの涙を流したのだろうと思いを馳せていました。

 再び5人が戻ってきて、『始まりは君の空』からアンコールが始まりました。何度も涙腺が緩むたびに、目のゴミが洗われるのか、それとも心が洗われるからかわかりませんが、5人の姿がより鮮明に見えるような気がしました。Aqoursもやっていた、上着を脱ぎ捨てる演出ですが、今まであまりしっかりと見ることができなかったその瞬間を、しかと目に焼き付けられました。スムーズで美しい「早着替え」でした。この後の曲は、Day1では『Dreaming Energy』です*5

 最後のMCでは、キャストの皆様が大阪の人々のノリの良さと人情の温かさに触れていました。私は大阪の人間ではありませんが、光や拍手による観客とキャストのコミュニケーションを見ていて、私自身その温かさを垣間見ることができ、遠征した甲斐があったと思います。

 最後の曲は『この街でいまキミと』。伊達さんたちキャストは、それぞれの会場、日程でファンの空気感が違うと言います。そこで、その場所、その瞬間にしかない景色を切り取るため、大サビ前の間奏でキャストが観客全員を入れた「自撮り」を行います。私は後ろなので顔が写ることはありませんが、小さな光の一つとして写ることができました。私は初めてこの曲を聞いたとき、「原宿らしい歌」だと思ったのですが、それがそれぞれの開催都市での人々との思い出を刻む歌として再解釈され、各都市を繋いで星座を作るというライブツアーのトリに相応しい歌になりました。

 思えばLiella! は、タイトルにもある星のモチーフだけでなく、「土地」も重要なモチーフにしていることがわかります。神宮音楽学校と結ヶ丘女子高校という同じ土地を継ぎ、想いを結ぶ学校の物語であること。『リエラのうた』に見られる、花が実を結び、種を残し、芽を出し、新しく自分らしい花を咲かせるというメッセージ。学校を創立した葉月「花」というネーミングも関連しているとみてよいでしょう。大地に根差して大きく咲くことと、新しい星として誰かに輝きを届けること、その両方がLiella! にとって大事なテーマとなっています。アニメの時に気づけなかったことに、Liella! キャストの方々と直接会えたことで、気づくことができました。

 

7. ライブ全体を通して

 ライブが終わり、規制退場のため後方席は早めの退場が促されました。落としたアクセサリーも無事見つかり、周りの観客より少し遅れていそいそと客席を出ました。壊れたアクセサリーは、結局当日物販で買い直しました。

 会場を後にするときの感想は、今までも様々なものがありました。Aqours 3rdやGuilty Kiss 1stでは圧倒されて言葉が宙に浮いてしまうようでした。Aqours 4thと5thでは感謝の気持ちで一杯になりました。虹ヶ咲のお披露目では、いずれ伝説の目撃者になったことになるだろうと確信し、今思うとそれは現実となりました。今回は、憑き物が落ちたような、清々しい気持ちで、お別れも不思議と寂しくありませんでした。世間や個人的な多忙が、1年半このような場所に足を運ぶことを許さなかったというのもありますが、今までになく泣いてデトックス効果があったことや、演者が皆若く、こんなこともできるようになった、と全力で誇らしげに表現してくる、そのかっこよさと可愛さに心を揺さぶられたことが、そういった感想に繋がったのだと思っています。

 デビューシングルを聴いたときから思っていましたが、Liella! は歴代スクールアイドルの中で歌唱力も表現力も特に高いと思います。その歌を2,000人あまりの会場で共有することで、音楽に身体を委ね、一体になる感覚が生まれました。視覚と聴覚だけでない、身体全体の感覚を使えることが、ライブ会場に行く良さだと再認識することができました。

*1:公演の空く年末には合同カウントダウンライブが待ち受ける

*2:本稿では1日目を示す「Day1」と曲名の「Day1」が混在するが、文脈で見分けていただきたい

*3:Aqours 3rdで披露されなかった『MY舞☆TONIGHT』の衣装が4thで披露された前例がある

*4:挿入歌扱いはされていない

*5:Day2では『Dancing Heart La-Pa-Pa-Pa!』。実はこちらの方が好き