普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

千の日々、千の歌で紡いで Aqours 6th LoveLive! <SUNNY STAGE> Day1 全曲感想

 2022年3月5日 (土)、埼玉県所沢市ベルーナドームこと西武ドームで開催された『ラブライブ! サンシャイン!! Aqours 6th LoveLive! KU-RU-KU-RU Rock’ n’ Roll Tour <SUNNY STAGE>』Day1公演に参加してきました。このライブは2月にバンテリンドームナゴヤことナゴヤドームで開かれた <OCEAN STAGE> に続く2公演目でした。私は、このDay2をアーカイブ配信で予習した上で、本公演に臨みました。

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メットライフドーム改めベルーナドーム

 西武ドームは、Aqoursの「セカンドホーム」とも呼ばれるほどAqoursと縁の深い会場です。2nd『HAPPY PARTY TRAIN TOUR』に始まり、3rd『WONDERFUL STORIES』および5th『Next SPARKLING!!』もここで開催されました。私も3rdと5thはこの会場で参加し、特に3rdは私にとって初めてのラブライブ! 現地でもありました。旧6th『DOME TOUR 2020 ~SECOND HOME STAGE~』は中止になってしまいましたが、Aqoursのナンバリングライブ会場としては最多の開催実績を誇ります。また、ドームを運営する西武グループ伊豆・三津シーパラダイス伊豆箱根バスなどを通して、Aqoursの地元・沼津にも深くかかわっています。

 ちなみに、西武ドームは度々命名権が変更され、その度に改称されています。2ndライブ開催決定時は「西武プリンスドーム」での開催が予告されていましたが、開催前の2017年3月から、5年間「メットライフドーム」(以下、「メラド」) を名乗っていました。そして、2022年3月1日に「ベルーナドーム」に改称されましたが、ベルーナドーム」で初めて開催されたイベントが今回のライブだったのです。プロ野球のシーズン前ということもあり、ここをセカンドホームとするグループこそ、この大役に他でもない適任だったといえるでしょう。時代を跨ぐ表現が必要な場合は、本記事でも「西武ドーム」と呼称します。

 

1. 視点高めの座席へ

 過去の「メラド」でのライブでは、2回ともスタンド席でした。今回も例に漏れず、スタンドのスコアボード側、それもかなり高い位置の席でした。ここは、ステージからは最も遠い位置にありますが、客席全体も見渡せる席です。このため、具体的な位置は分かりませんでしたが、関係者席もこれに近い位置に設置されていると聞きます。ステージのAqoursは最初とても小さく見えましたが、手前まで走ってきてくれたり、様々なパフォーマンスをしたりする中で、だんだん見慣れた9人がはっきりと見えるようになってきました。

 ベルーナドームには、様々な席の種類があります。通常の椅子もあれば、スコアボード下にはボックス席があります。また、立見席の下あたりには、今回は使用されていませんでしたが、寝転べるタイプのカーペット席もあります。ライブでは席種を問わず同じ料金で、ランダムに座席が割り当てられるので、良い席を引き当てたらラッキーといえるでしょう。また、椅子も2021年の改修で座り心地の良いものに取り替えられていました。もっとも、ライブでは座っている時間は少ないのですが……。

 席からはアリーナの部分が全て見渡せましたが、なんとアリーナ全体を使ってステージがメインステージ以外に2箇所、それらを結ぶ花道と会場を一周する回廊が設けられていました。これらがどのように使われるのか期待に胸を躍らせていると、いよいよ開演の時間になりました。

 

2. Aqoursが帰ってきた!

 最初の曲は表題曲こと『KU-RU-KU-RU Cruller!!』。コンピュータゲームをモチーフにしたステージにAqoursが現れ、パフォーマンスが始まりました。この曲は『モンスターストライク』とのコラボ楽曲ですが、PVやステージの大道具はあたかも懐かしのPCゲーム『スペースピンボール』を思わせるものになっています。配信で観たEXTRAライブの時に既にAqoursのダンスのレベルアップぶりを強烈に認識していましたが、それをついに直接目に焼き付けることができました。フォーメーションの綺麗さなど、この距離から肉眼で見ても非常によくわかるものです。

 曲の途中、レフト側から赤くてまんまるなドラゴンが現れました。今回のライブのマスコットキャラクター『くるるん』です。くるるんは巨大なバルーンで、地上の通路で3人の「ドラゴン使い」が手綱を握って動かしていました。

 今回のサブタイトルが <SUNNY STAGE> ということで、セットリストに『太陽を追いかけろ!』を予想したファンが多かったようです。早くも2曲目にこの曲がやってきました。私の知る限り、西武ドームでは初披露になるはずです。広いメインステージを右に左に移動しながら、この元気いっぱいな曲を歌っていました。

 名古屋公演 <OCEAN STAGE> では、ここは『Hop? Stop? Nonstop!』でした。ここから、この2つの公演を見比べながら、そのコンセプトの違いを探っていくことになります。

 MCで言及されましたが、当日は5thライブのDay2 (2019年6月9日) から、ちょうど1,000日後であったそうです。メラドの公演が『Next SPARKLING!!』で幕を閉じて以来、Aqoursは2度の合同ライブ、2度のユニットライブ、2タイトルのライブツアー中止と新規設定されたライブの開催、キャストの故障等々を乗り越え、命名権の変わったベルーナドームこと西武ドームにはるばる帰ってきたのです。そして、Aqoursのファンたちも、同じようにここに戻ってきたのです。

 恒例のコール&レスポンスも大いに盛り上がりました。今や、文字通りの「コール」「レスポンス」だった時代の方が長いのはAqoursだけになってしまいましたが、千歌役・伊波杏樹さんはそんな中でも新しい盛り上げ方を編み出してくれました。それにばっちりついていくファンたちの愛情の深さも、私の席からなら一望できました。

 MC後はAqours最初の曲『君のこころは輝いてるかい?』、そして昨年の新曲『DREAMY COLOR』が連続で披露されました。『君ここ』は披露頻度も高いので私も何度か見たことがあります。後で言われて気づいたのですが、今回はしばらく自粛していた「馬跳び」が復活していたそうです。定番だと思って見過ごしてしまっていた節がありますが、Aqoursデビュー当初に今までのスクールアイドルとは違うことを見せつけたこのパフォーマンスは、これだけスクールアイドルが増えた今でも、Aqoursらしさを象徴するものとなっています。そのように、変化の中で大切な想いを抱き続けることを歌った曲が、次の『DREAMY COLOR』です。3年前までAqoursに声援を送り続けてきた身としては、「君の声が聞こえてくるから」という歌詞に救われます。物理的に声は出せなくても、私たちの想いは届いています。

 全員曲は一旦ここまでで、6人がステージ下に捌けて3年生の3人だけになります、3年生の学年曲は3曲ありますが、かかった曲は全員曲のはずの『待ってて愛のうた』。これも初期の名曲の一つですが、3年生だけで歌うことで新しい意味が生まれました。この曲の「恋」は、例えば「輝きを求める心」のように読み替えることができる (「スノハレ理論」。当ブログ記事を参照) と思いますが、この3人が成長するまで待たなければならなかったのはスクールアイドルそのもの、つまり3人が1年生の時の「初代Aqours」を想像させます。この曲で、3人はホームベースに最も近いステージまで下ってきて、顔が見える距離でパフォーマンスしてくれました。3人の曲が終わると、今度は1年生の3人にバトンタッチして、これも全員曲の『”MY LIST” to you!』をトロッコ上で歌いました。今度は恋を探しながら、「自分はこういうものだ」と宣言する曲です。アニメ最終回で輝きを見つける前の、自分の中にあるものがだんだんとわかってきたころに相当する曲といえます。アニメの頃から思っていましたが、Aqoursの1年生 (メンバー) はとてもしっかりしていると思います。間奏では、前日3月4日に誕生日を迎えた花丸がお祝いされていました。

 

3. メンバーの「輝き」を浴びるソロパート

 さて、<OCEAN STAGE> ではこの後、『WINTER VACATION』のデュオ・トリオ曲 (以下、「冬DT」と称する) が披露されます。しかし、私から最も遠い上手側に登場したのは、旅行鞄を持った梨子役・逢田梨香子さんただ1人。始まったのは『PURE PHRASE』でした。出会いによって変わった自分や、始まった旅を、回廊を一周しながら力強く歌い上げていました。

 ソロ曲は3rdライブでも披露されていましたが、この時の披露順はBD特典の発売順でした。しかし、梨子が一番手だとメンバー番号順にも、ソロアルバムの発売順=誕生日順にもなりません。次は誰が来るのかとドキドキしていると、メインステージに伊波杏樹さんが現れました。『Never giving up!』は1曲目のソロ『One More Sunshine Story』に続き、ミュージカル調の曲で、だんだん上がっていくテンポに千歌らしさが表れています。伊波さんは本当に会場の空気を一体にする力に溢れていると思います。みかん色というカラーも相まってのことかもしれませんが、伊波さんがまさに太陽のように見えました。

 それに続いたのは曜の『突然GIRL』です。曜の自己紹介は「思い切ってスクールアイドルの海に飛び込んでみたら、君に会えて、幸せ!」という台詞ですが、これを体現したような清々しい曲です。この曲の最後、千歌と梨子に向かって台詞を言った曜役・斉藤朱夏さんは、なんとステージから高飛び込みのようにダイブしてしまいました。一番上からはマットで斉藤さんをキャッチするスタッフの姿まで見えましたが、間近で見た人は衝撃を受けたかもしれません。3rdライブの『Beginner‘s Sailing』も同じ会場で観ましたが、せり上がる台から発射されてパフォーマンスが始まった演出と対になっています。

 さて、3rdライブでも2日で9曲を分けて披露していたので*1、1日目に観られるのはあと1曲か2曲です。個人的には、それまで未披露だったの『コットンキャンディえいえいおー!』または『あこがれランララン!』か、推しであるダイヤのソロ曲『Perfect SEKAI』が来ればいいなと思っていました。果たして会場には赤い光が走り、ステージ画面には赤い篆書体が。

 来ました。ダイヤ役・小宮有紗さんで、『Perfect SEKAI』です。

 この曲はAZALEAの1stライブで既に披露されていますが、ロックな和風EDMに合わせ、和服に身を包んだ小宮さんが日本刀を手に剣舞を舞う、その姿は荘厳なまでの美しさを備えていました。ダイヤのソロとして最も待望されたタイプの曲を、熱く演じてくれました。なお、この翌日、ルビィの『コットンキャンディえいえいおー!』が披露されたとき、小宮さんもステージに上がって大暴れしたそうで、その落差に驚いた方も多かったようです。

黒澤姉妹のソロ曲については以下の記事を参照

carat8008.hateblo.jp

 幕間では、ロックにRemixされたAqoursのナンバリングシングルを中心とした楽曲が流されていました。トイレ休憩に向かう観客もいましたが、座席に残った観客は手拍子やブレードで曲にノっていました。幕間といえば過去のアニメ映像や謎のショートアニメが流れるイメージが強いですが、Remixを流すのも実は歴史が長く、『HAKODATE UNIT CARNIVAL』辺りからは既に行われていたように記憶しています。

 

4. 物語ストーリーから漕ぎ出したAqours

 幕間後、Aqoursはセンターステージに横一列に並んで出現しました。斉藤さんの手には、大きな旗が握られていました。ここから、『Aqours Pirates Desire』『Daydream Warrior』『スリリング・ワンウェイ』という「かっこいい曲」の3連続コンボでした。スタイリッシュなかっこよさは、Aqoursの最も重要な魅力の一つです。『スリリング・ワンウェイ』では、観客席のブレードの動きも一気に激しさを増しました。私自身、これは身体が動いてしまう曲ですし、声も出せないのでその分全身での乗っかりたくなるのは仕方ありません。否、声を出さずに叫んでいたのかもしれません。会場の温度も、2、3℃上がったような気がしました。

 「デイドリ・スリワン」コンボは、初披露の2ndライブ以来の伝統です。なお、2曲ともアニメBDの特典曲でしたが、2020年に『Aqours CHRONICLE』として一般発売されてからは、有観客では初披露となります。これに『Aqours Pirates Desire』を加え、「序・破・急」のような3連続ができあがりました。「Aqoursの野望に限界はない」、「しかし現実は時に非情で、願いを挫いてくるけれど、運命さえも自分で決める」「何度挫けても突っ走るのが僕らの希望」という、ひとつながりの流れができあがっています。

 このパートの衣装は、6thライブのために制作された新規衣装です。元となるアニメ・ゲームなどの衣装はなく、現時点ではキャストのAqoursだけが着用する衣装となっています。そのデザインは、高校生というよりも、20代後半の女性の魅力を引き出すような大人の服でした*2。ストーリーを離れ、キャストのAqoursが主導する物語ナラティブの「今」を刻み付ける、印象的な衣装です。ちなみに、キャラクターが着用しない衣装としては、μ’sの1stライブに登場した衣装 (通称・初号機衣装。μ’s最初の衣装であり、エヴァンゲリオン初号機とカラーリングが似ていることから) があります。まだ背負うべき物語がなかった10年前のμ’sとは、今のAqoursは対照的です。

 MCで一通り衣装の紹介などがなされた後は、『HAPPY PARTY TRAIN』と『届かない星だとしても』でした。ナンバリングシングルはマイルストーンのようなもので、発売された頃のことを思い出してしまいます。『HAPPY PARTY TRAIN』も、発売からまもなく5周年です。ちなみに、この曲は1日ずつで『恋になりたいAQUARIUM』と対になることが多いですが、今回は <OCEAN> で2日とも『恋アク』だったので、<SUNNY> は2日ともこちらになったようです。

 

5. シン・青空Jumping Heart ~変わらないようで、変わってきたもの~

 幕間を挟んで登場したAqoursは、今度は『青空Jumping Heart』の衣装でした。と言っても、普通の『青ジャン』ではありません。なんと、6thライブのために新調された「シン・青ジャン」衣装なのです。この衣装では、『青空Jumping Heart』のほか、『Wake up, Challenger!!』『Step! ZERO to ONE』が披露されました。

 この「同じようで違う衣装」は、変わらぬ思いを大切にしながら変化を続けてきた、今のAqoursの姿そのものなのではないでしょうか。「日」という字を書くと、”sun” の意味と ”day” の意味、両方を指します。5thライブからの1,000日の間も、太陽は1000回昇って、1つとして同じ日はなかったのです。そうして少しずつ「成長してる」姿が、この新衣装として表現されたと言っていいと思います。

 『Step! ZERO to ONE』は1stライブの表題曲ですが、今回はトロッコでのパフォーマンスとなりました。伊波さんがわざわざ柵のない最後尾に乗って、落ちそうなくらい身を乗り出して手を振っていたのが目に焼き付いています。『Step! ZERO to ONE』は、2020年の無観客カウントダウンライブ『WHITE ISLAND』でも「2020年から2021年になる」という意味で年越しの曲に採用されました。ゼロになりそうな悔しい思いをしても、何度でも時計の針を進めてきた、「Aqoursの太陽」がそこにありました。

 MCに入ったところで、懐かしいチャイムが鳴り響きます。Aqoursのライブでは以前から情報発表の時にチャイムが鳴っていましたが、最近は使われていませんでした。ライブでの情報発表がなかったり、Day2のみで行われたりするのが主流になっているからです。私個人としても、とても久しぶりにチャイムというものを聞きました。今回の情報は「Liella!・Aqours虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が、パ・リーグのそれぞれ2球団ずつとコラボする」という、なかなか突拍子もないものでした。Aqoursと西武の長い付き合いは冒頭で述べた通りですし、想えば先日のニジガク4thライブ、その前のLiella! 1stライブ大阪公演と、オリックスの子会社・大阪シティドームが運営する施設で行われていました。知らない間にできていた繋がりが、このようなシリーズ全体でのコラボ企画を呼んだのでしょう。実際の試合でもコラボ企画が予定されていますし、各球団のホームスタジアムでのライブ開催などにも期待したいですね。

 このMCが終わると、ライブはラスト2曲です。そのうち1曲目は『涙×なみだじゃない』でした。『Aqours CHRONICLE』下巻の新曲で、これまでの歩みを振り返るようなバラードです。私もこの曲を初めて聴いたときは泣いてしまい、「涙じゃん」と突っ込んだ覚えがありました。強がっているかのような曲名ですが、ライブで聴いてその意味が理解できた気がします。紡いできた過去も、こみ上げてくる感情も、「涙」という言葉では到底足りないものだから、「涙じゃない」ということです。早い話が涙は誰でも流せますが、共に夢を追いかけたAqoursしか持っていない何かが目から零れ落ちているのです。

 最後の曲は、まさかの『WONDERFUL STORIES』でした。TVアニメ最終回のラストを飾る曲で、TVアニメ準拠ライブでしか披露されないとばかり思っていました。しかし、これこそまさに <SUNNY STAGE> の意味するものです。TVアニメ2期最終回では、ずっと輝きを探し続けてきたAqoursが、その輝きを求める心に、そうして行動し続けてきたことそのものに、「輝き」を見出します。太陽のような輝きとは、Aqoursの内面にあり、その過ごしてきた日々にあったのです。後述しますが、<SUNNY STAGE> は、それを前面に押し出すセットリストだったと思います。

 

6. 会いたい気持ちが呼ぶアンコール

 退場していくAqoursを見て、私はこのまま終わるのが惜しい気持ちに駆られました。もちろん、アンコールがあるのはわかっているのですが、「Aqoursに会いたい」という気持ちを込めて、決してそれを「お約束」と思わない、必死の手拍子を送りました。運営側もそれを織り込んでいるのか、ニジガクのようなアンコール演出は起こりません。AqoursのファンとAqoursが、疑似的にかもしれませんが、直接結ばれている状態です。この必死のアンコールで、3rdライブでは「Aqoursコール」、4thライブでは「ダブルアンコール」、5thライブでは「観客席の虹」など、様々な奇跡が起こりました。

 ここでは、5thライブ以降EXTRAや <OCEAN> でも架かった、観客席の虹が架かりました。事前に企画を確認していませんでしたが、周りの席を見て花丸のイエローを振りました。発声できないので「Aqoursコール」はありませんが、時々ブレードを三角に組んで「Aサイン」を作ったりもしました。とにかく、自分の気持ちを可能な形で表現しました。

 Aqoursは私たちに応えてくれました。『ラブライブ! シリーズのオールナイトニッポンGOLD』タイアップ曲でもある『not ALONE not HITORI』は、会えなくても繋がれる、楽しいことがたくさんできるという曲です。改めてAqoursに会えたタイミングで聴くと、本当にまたこうしてライブに参加できたという喜びが溢れ出してきました。

 そして、その「会いたい」気持ちに一番応えてくれた曲が、本当の最後の曲、『SUKI for you, DREAM for you!』です。9人が広いステージいっぱいに広がって、ファンの近くまで来てくれたのです。この特殊なステージ構成自体、ファンのAqoursに会いたい気持ちに応じて設計されたのかもしれません。そして、この曲は、観客席にもう1つの「虹」を作りました。何も示し合わせていなかったはずですが、各キャストの周りから、その上方のスタンド席にかけて、それぞれのメンバーカラーに染まったのです。キャストの位置が入れ替わると、色も入れ替わりました。こうして私たちも思い出を抱きしめながら、変化していくのです。Aqoursからファンへ、ファンからAqoursへ、感謝の気持ちを交換することができたと思います。

 6thライブは、総じてアーティストAqoursによるエンターテインメント全開のライブでした。Aqours自身が今まで積み重ねて来たものや、ファンにも今まで積み重なってきたものがあるために、そこに人それぞれに感動を覚えるようなライブだったと思います。

 

7. Aqoursにとっての <OCEAN> と <SUNNY> とは?

 <OCEAN STAGE> と <SUNNY STAGE> のセットリストの最大の違いは、<OCEAN> が冬DTだったのに対し <SUNNY> がソロ曲だったことです。これについては、冬DTがアニメ1期の物語をなぞったものであることがヒントになります。つまり、Aqoursにとって海は、ここまでAqoursが辿ってきた『ラブライブ! サンシャイン!!』の物語を意味しているのに対し、太陽とはAqoursの中にある輝きを意味している、と考えることができます。

 <OCEAN> では「デイドリ・スリワンコンボ」を崩して『君の瞳を巡る冒険』が入っていましたが、<SUNNY> では人気コンボが復活しました。また、大方の予想にあった『太陽を追いかけろ!』が入るなど、全体的に懐かしい曲が多く、ファンの期待を裏切らないようなセットリストだったと思います。思えばこの1,000日間、集まった観客の多くは、後からAqoursを知った人たちでない限り、Aqoursのことを全く考えなかった日はなかったのではないでしょうか。これは、とてもすごいことだと思います。それだけ皆が考えていたAqoursが、考えていた通りの、しかし前より大きくなった姿で現れたのです。

 ところで、Aqoursにはもう一つ、始まった時から「追いかけて」きた光がありました。<OCEAN> になく、<SUNNY> にあった曲に、『HAPPY PARTY TRAIN』と『届かない星だとしても』があります。『HAPPY PARTY TRAIN』の歌い出しの、「開いた花の香りから 受けとったよ次の夢を」は、μ’sの咲かせた花から夢が生まれたという意味を持つとも言われています。また、『届かない星だとしても』の『スクフェス』におけるジャケットイラストのロゴの文字はμ’sメンバーのカラーと対応しており、「届かない星」がμ’sを暗示していると言われています。劇中では、μ’sを追いかけないことで、自由に輝きを探すという決意をしますが、μ’sが全ての原点であることは今も変わりません。『スクスタ』34章でもこのことが語られています。「海のAqours」を象徴するような『恋になりたいAQUARIUM』『WATER BLUE NEW WORLD』の代わりにこの2曲が入ったのは、「最初に見た光」へ、Aqoursの今を届けるためだったのかもしれません。

 

8. リアル脱出ゲーム ベルーナドームからの脱出

 さて、家に帰るまでがライブなのですが、ここでこの会場特有の事情が発生します。ベルーナドームの目の前には西武球場前駅がありますが、ここを出る路線が単線の西武狭山線と、同じく単線でしかも定員の少ない西武山口線しかないのです。大半の観客は狭山線に乗って、池袋方面を目指します。終演後は増発され、1時間に8本程度はやってきますが、それでも運びきれずに、長時間待たされたり、満員電車になったりという事態が発生するのです。今回は観客数が少なめに抑えられていたので、終演後30分で会場を出られました。フルキャパの5thでは1時間近く待たされた覚えがあります。さらに、3rdや5thでは寒い雨の中改札の前で長時間待たされたのですが、それもなく、退場したらすんなり駅に入れました。しかし、駅構内や電車内が満員なのは変わりませんでした。結局、終演約40分後の池袋行きに乗りましたが、池袋方面の線路と合流する西所沢駅で混雑に耐えかねて降りてしまいました。ただ、ここから池袋方面には電車がたくさん走っているので、今後もベルーナドームでのAqoursのライブに参加したり、野球観戦に行ったりするときは、有効な方法だと思います。

 

9. そして、Day2では……

 Day2は配信も含めて参加していませんが、ここではついに東京ドームでの追加公演が発表されました。その名も <WINDY STAGE>。「風」といえば「Aqours SHIP」のような帆船の動力源なので、Aqoursの原動力を歌にしたステージが繰り広げられるのでしょうか。それとも、海陸風のように『ラブライブ! サンシャイン!!』の世界へ吹き、こちらの世界に吹いてくる風のようなAqoursが見られるのでしょうか。また今回は、4thライブ以来の浦の星交響楽団の出演もあります*3。何にせよ、楽しみでなりません。

 夢の2度目の東京ドーム公演、改めておめでとうございます。

*1:Aqoursはニジガクではないので、1日に9曲分のソロの尺はない

*2:Aqoursは、2021年8月16日の斉藤さんの誕生日から、2022年8月8日の逢田さんの誕生日までの約1年間だけ、全員が20代後半

*3:『LOST WORLD』にも映像出演