普門寺飛優のひゅーまにずむ

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【ネタバレ注意】人として、光である ~ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA エピソードZ 感想速報~

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映画館のスクリーンに光の巨人が再び現れた

 2作品ぶりに「ウルトラ映画」が帰ってきました。『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA エピソードZ』は、従来通りの映画館での上映の他、『TSUBURAYA IMAGINATION』でも配信されており、スタンダード会員 (月額550円) 以上なら追加料金なしで鑑賞することができます。むしろ、円谷としてはこちらをメインに考えているようです。

 しかし、そこはやはり映画ですから、自宅の12.1型ディスプレイで観るよりも、映画館の大画面で見るべきもの。それに、今回は近所の劇場にウルトラマントリガーが登場するグリーティングが行われるということで、それも映画館で観る楽しみの1つになりました。

 公開1週間の映画に関する内容です。まだご覧になっていない方は、映画を観終わってからお読みください。

TVシリーズの感想週報はこちらから

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目次

 

1. グリーティング

 ネタバレに入る前に、上映後に行われたグリーティングについて書きます。

 映画の上映が終わった瞬間、私の座っていた座席のすぐ横の通路を歩くものがありました。それが私たちの待望しているものであることは明らかだったので、わくわくして「登場」を待ちました。

 映画館スタッフの案内があり、スクリーン前のスペースにやってきていた「彼」の目と胸に明かりが灯りました。ウルトラマントリガー マルチタイプの登場です。映画館スタッフがフォトセッションの案内をしている間、トリガーは「スマイルスマイル」のポーズなどをとっていました。光の巨人といえども、このポーズ*1は流石にかわいいですね。(笑)

 その後短時間のフォトセッションで、変身ポーズや構え、必殺技など様々なポーズを取ってくれました。前の観客もいたため、OKショットは1枚しかありませんが、思わず笑顔になるほどのサービス精神でした。

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ウルトラマントリガーのフォトセッション

 出口でも短時間ではありますが、トリガーが見送ってくれました。接触は禁止だったので、手を振りあった後、離れた位置で「クロスタッチ」のポーズを見せると、トリガーも応じてくれました。

 何よりも嬉しかったのは、このお見送りで前にいた子どもの観客がトリガーに「大好き」と言っていたことでした。ヒーローが好きな気持ちを伝えられる相手がいることこそが、このような映画やショー、ショッピングモールや住宅展示場などにヒーローのガワというものが存在する意義だと感じました。

 

2. GUTS-SELECTの2年という歳月

 さて、映画本編の内容に移ります。

 時はケンゴがエタニティ・コアを止めに消えてから2年。地球には再び怪獣が頻出するようになっていました。それに立ち向かうGUTS-SELECTは、人間だけで怪獣を撃退できるように確実に強くなっていました。

 指揮はタツミ隊長に代わり、超古代文明の研究者だったというトキオカリュウイチ隊長 (代理) が取るようになっていました。地上班はGUTSスパークレンスに加え、ライフルやランチャーのような大きな手持ち武器を手に、怪獣に攻撃を加えられるようになりました。空はといえば、ナースデッセイ号とガッツファルコンの連携がさらに強化されました。

 TVシリーズはある世界の1つの期間を描くので、なかなか「その後」を知ることができません。それをこうして知ることができて、人間が確実に進歩していることを実感しました。ユナのメイクも少し大人びたように見えます。高校も卒業していることでしょう。

 この怪獣頻出と、その原因であるエタニティ・コアの再びの暴走に際し、「ライラー (超古代語で「光」)」と自称する人々が、光を救出するためにエタニティ・コアで儀式をするようにユナを急かします。トキオカ隊長は、超古代に関する知識を基に、この儀式の準備を進めました。儀式に使われた人工衛星ソールもCGではなく特撮も使っていて、ヒマリの呼びかけに応じるように可愛らしくエアパージしていましたね。いささか唐突な展開ではありましたが、こうしてマナカケンゴは帰ってきました

 

3. セレブロとゼット: 最後の勇者の終わりなき戦い

 帰ってきたケンゴは、光の力が散らばっていたためトリガーには変身できませんでした。そこに現れた怪獣パゴスを止めに来たのは、TVシリーズ7・8話以来の登場となるウルトラマンゼットでした。ゼットには自分の映画が無いので、銀幕初登場です。

 中盤、アキトとユナのお化け屋敷のシーンや、高圧送電線をリングに見立てたプロレスシーンなど、ギャグシーンも盛り込まれていましたね。バラエティに富んだエンターテインメントである『Z』の良さも活かされています*2

ウルトラマンゼット登場回

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 前回はバロッサ星人を追ってきたゼットとハルキですが、今回は本編最大の宿敵だったセレブロが逃げ出したというのです。本編内でも次々に人間に憑依し、恐ろしい殲滅兵器を作らせて遊んでいた脅威ですが、最終回でオオタユカ隊員と、長らく憑依されていたカブラギシンヤによって小動物の如く捕縛されていたはずです。ユカが早く解剖しなかったのが悔やまれます。

 セレブロは、ライラーたちに手を貸していました。ライラーのボス (後述します) も、トリガーの光の力の回収のためにセレブロを利用していただけなのですが、セレブロもまた、しまいにはすべてを乗っ取ってやろうと画策していたに違いありません。ライラーを利用して、おびき寄せたゼットに接近しました。

 とうとうセレブロは、ゼットの中にいるハルキを乗っ取ることに成功します。予告編では「結膜炎」などと弄られたシーンですが、このせいでゼットは暴走します。セレブロにとっては、宿敵を意のままに操れる、願ってもない楽しい時間だったと思います。とはいえ、ゼットはゼット、ハルキ、ベリアロクからなる3人1組のチームです。誰かがおかしくなっても、他の誰かが止めればよいのです。憑依するには相手が悪すぎたというしかありません。

 結局、セレブロは自らの「自滅ゲーム」によって自滅してしまいます。再び捕縛され、ハルキにストレイジのいる地球へ連れ帰られるのですが、セレブロはどうせまた同じことを繰り返すと思います。そのときまた、ゼットたちは戦いを終わらせるために立ち上がるでしょう。ウルトラマンゼットの名はアルファベットの最後の文字、「戦いを終わらせる最後の勇者」という意味を持ちますが、世界から戦いがなくなる日はまだまだ遠いかもしれません

 

4. 人としてできること

 ライラーのボス・ザビルの正体こそ、トキオカでした。わかってから思うと、口調も安定せずどこか怪しいところはあったのですが、隊に溶け込んでいただけに驚きました。『エピソードZ』がゼットのZなのはもちろんですが、「ザビルの物語」という意味でもあります。

 ザビルは3000万年前、闇の巨人との戦いでユザレをはじめとする仲間を失ったにもかかわらず、事件が巨人同士の間で勝手に解決してしまったことにずっと無力感を抱いていました。そのため、人間が光になるしかないと確信し、現代のシズマ会長に接近しました*3。さらに自ら書き残した石板を教え子のアキトに解読させ、スパークレンスの改良、トリガーの復活、そして闇の巨人の撃退という、TVシリーズ本編の出来事のすべてにおいて、裏で糸を引いていました。ついに光を手にしたザビルは、イーヴィルトリガーに変身します。

 しかし、変身したザビルは、完全に狂ってしまい、「私は光、私は神」しか言わない存在になってしまいました。なぜザビルは光を手にしながら、光に溺れてしまったのでしょうか。

 ケンゴは正体を顕す前のトキオカに、「人間としてできることをする」と言いました。もちろんこれは『ティガ』のダイゴの台詞です。トキオカは、なぜ光はウルトラマンになれなければどうやって生きていくのかとケンゴに問いました。ケンゴは、それを聞いたうえで、光の力を宿したキーが見つかるや否や、トリガーに変身しようとします。人でありたいと言いながら光になろうとする行動は一見矛盾しています。

 GUTS-SELECTの隊員たちは、トリガーの正体がわかってから、トリガーのことを一貫して「ケンゴ」と呼んできました。また、ケンゴは光として、ザビルがケンゴのGUTSスパークレンスの周りに作ったシールドを打ち破ろうとしますが、ただの人間であるアキトが加勢したことでようやく打ち破られました。このように、人には人の名前があり、役割があります。そして、協力し合うことで、光の化身でもなし得ないことを可能にすることができるのです。そのためには自分の死力を尽くすことを惜しんではいけません。ケンゴはトリガーとして、ユナはユザレとして、イーヴィルトリガーとの戦いに臨んだのでした。

 たったひとつの光は、他の全てのものに影を落とします。それこそがザビルが光に溺れ、「影を継ぐもの」となった原因です。しかし、一人一人が光り輝いていれば、誰かの影を他の誰かの光で照らすことができます。したがって、ケンゴにとって「人である」ことは、自分にできること、つまりウルトラマンとして頑張ることを当然に含んでいるのです。ラストシーンでGUTS-SELECTの全員のことを一人一人名前で呼んでいくシーンも、ケンゴが人として生きていくことの表明に他なりません。繋がっていることそれ自体が光であり、それゆえにウルトラマントリガーは「光を繋ぐもの」なのです。

 余談ですが、名前を呼ぶことは、人と人を繋ぐもの、つまり「光を繋ぐもの」と言えると思います。今回その台詞は出ませんでしたが、「ご唱和ください、我の名を」を合言葉とするゼットがやってくるのは、その意味では必然だったかもしれません。

 

5. トキオカは止まれなかったのか?

 ところで、トキオカにも守りたいものがありました。だからこそ光に手を伸ばし、狂ってしまったのですが、トキオカは本当に光になることは不可能だったのでしょうか。

 思えばガゾート戦でのトキオカ指揮下でのGUTS-SELECTとトリガーの連携は見事でした。ウルトラマンと防衛隊が同じ作戦に参加することは、普通は防衛隊がウルトラマンの正体を知らないため、難しいのですが、このようなウルトラマンバレ後であれば可能です。この時点でトキオカは実現目前となった自らの作戦に囚われ、そこから何かを見出すことは不可能だったかもしれません。トキオカは昔、仲間との絆に無力感を覚え、そのために仲間というものを信じられなかったのです。

 しかし、この物語には、仲間を失っても新しい仲間を見出すことで光になれた前例がいます。もう一人のウルトラマントリガー、イグニス (336)*4 です。仲間を奪ったヒュドラムへの復讐のために力に手を伸ばしても、その胸の内にある思いにGUTS-SELECTの面々が応えたことで、その力は闇だけでなく、光にもなり得ることが証明されました。それであれば、トキオカもGUTS-SELECTと2年も一緒に活動する中で、少しでも誰かに思いを打ち明けることができていたら、何かが変わった可能性もゼロではなかったと思います。3000万年間ずっと光の力を手に入れる機を狙っていたザビルにとって、2年はほんのわずかな時に過ぎません。しかし、教え子であるアキトには自分を重ねることができたはずです。ザビルが一番守りたかった相手はユザレであり、アキトも本当は光になって幼馴染のユナを守りたかったのですから。

 アキトもイグニスも、誰かに思いを打ち明け、変われたからこそ光り輝いています。カルミラやザビルのような滅ぼされてしまった者たちは、本当に大切だったものを見失ったために、闇に、影に、堕ちていきました (その点、変わることができたのに滅ぼされたダーゴンは一番不憫ですが……)。傍に誰かがいれば、その誰かの言葉を受け入れられればよかったのにと嘆くほかありません。

 

6. そして、明日へ……

 『TSUBURAYA IMAGINATION』版では、ラストに映画館では見られなかった映像が収録されています。新たなる光、ウルトラマンデッカー』のティザームービーです。

 『ティガ』の翌年、同一の世界観で『ダイナ』が製作されたのと同じく、『デッカー』にもGUTS-SELECTが登場し、同じ世界観の物語となることがわかっています。ダイナにそっくりなシルエット、宇宙のような胸の模様と、ウルトラマンナイスのような左胸に偏ったカラータイマーを持つ、懐かしくも新しいデザインのウルトラマンが、今年の7月から活躍することが予告されました。

 当ブログでも、7月からウルトラマンデッカー感想週報』を連載する予定です。新たなヒーローの活躍、そしておそらく登場するであろう『トリガー』勢との再会が楽しみでなりません。

*1:ウルトラマンを見たことのない方向けに説明すると、中須かすみのポーズとおおよそ同じ

*2:無論4話のように『トリガー』にもギャグ要素はある

*3:封印などのブランクなく3000万歳なのだとしたら、ウルトラシリーズ歴代最高齢キャラの1人であると思われる

*4:本編終了から2年経ち、意味深な数字ではなくなった