普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

今と未来を結ぶ星空/あなたはどっちのLiella! がお好き? ~MTV Unplugged Presents: LoveLive! Superstar!! Liella! 感想~

会場の電子寄せ書き

 2022年5月28日 (土)、MTV Unplugged Presents: LoveLive! Superstar!! Liella!』Day2に行ってきました。会場は2ヶ月前の2ndライブと同じぴあアリーナMMですが、あの時とは違って今回は本編がアコースティックで演奏されるライブで、心が洗われる体験をしてきました。今回はSaint Snow 1st GIG以来の定番となった有料生配信が存在せず*1、現地来場者だけが体験できた貴重な舞台となりました。

 なお、Liella! のワンマンライブイベントにおいては2週後のファンミーティングから、2期生を加えた9人*2での出演となります。私は2ndライブ大阪公演には行かないので、今回が5人のLiella! を見る最後の機会となりました。

前回のぴあアリーナMM

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1. おいでよ、横浜の森

 今回の席は客席の横腹に当たるスタンド2階席。着席すると、ステージ上はキャンプ場になっていました。ステージ両脇には4つのテント、手前に5つの椅子、奥にはいくつかの楽器、一番後ろには大きなテントが配置されていました。1stライブで様々な景色を映し出していた後ろの幕には木々が映され、会場はすっかり森の中でした。開演が近づくと、風が木の葉を揺らす音や、キャンプファイヤーの燃える音など、静かな環境音も聞こえてきました。今流行りのASMRというやつでしょうか……?

 私は連番者に指摘されるまで気づきませんでしたが、両脇のテントは黄色、赤、青緑色、桃色という配色になっていました。これは、2期生のメンバーカラーを思わせます。

 

2. 音楽に癒される前半

 開演時間になり、出演者が入場してきました。オープニングムービーも幕を使った演出もなく、音楽一本勝負です。Liella! メンバーは真っ白なドレスを着ていて、清純で癒し系の印象を受けます。

 Liella! のメンバー5人の他に、バンドのメンバーがそれぞれの席に着きました。楽器はピアノ、ギター、パーカッション、ドラム、ベース、バイオリン、チェロで、ベース以外に電子楽器はありません*3。7人とも女性でした。今のところ、男性のパフォーマーが出演したのは『サンシャイン!!』関連のライブのみとなっています。

 今回のセットリストは、1stライブ『Starlines』のものを基にしています。『START!! True dreams』から始まり、簡単なMCがありました。ただし、恒例のコール&レスポンスはなく、すぐに1期の曲を披露し始めました。1stライブの全曲ではなく、『未来予報ハレルヤ!』『1.2.3!』『Tiny Stars』『バイバイしちゃえば!?』『常夏☆サンシャイン』と、一部を抜粋した形です。

1stライブの詳細はこちらから

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 普段全身を使ってやるパフォーマンスが、すべて声に載っていました。ライブでは、他の観客と一緒に盛り上がりたいという気持ちと、落ち着いて曲を聴きたい、歌うキャストをよく見たいという気持ちの板挟みに常に悩まされます。ここでは、もちろんラブライブレードは振りながらですが、演者に集中することができました。また、バンドの演奏も含めてライブとして完成するようになっていました。心地よいアレンジで、特にパーカッションが曲のスパイスのようになっていて、楽しい音楽体験でした。

 もう一つこのライブの特徴と言えるのは、キャストの入退場がないということです。『1.2.3!』から『常夏☆サンシャイン』までは、歌うメンバーが限られている曲ですが、歌わないメンバーがそれを聴いている様子をずっと見ることができました。特に、青山なぎささんが『バイバイしちゃえば!?』や『常夏☆サンシャイン』で楽しそうにリズムに乗っているのを見て、この時点では自分の夢を閉じ込めてしまっていた恋が救われたような気分になりました。 

 

3. 過去と未来、結ばれた想い

 ここで短いMCが入り、バンドメンバーが紹介されました。1stライブでは、このあと『リエラのうた』から2 - 3曲が選ばれました。しかし、今回は特別なライブです。ここで披露されたのは、まさかまさかの『星めぐりの歌』でした。これはLiella! の曲ではありません。作詞・作曲は宮沢賢治、代表作の『銀河鉄道の夜*4でも言及される、歴史ある歌です。

星めぐりの歌』の歌詞と、宮沢賢治と音楽の関わりを紹介する展示
(2022. 4. 29 『SL銀河』車内)

 宮沢賢治は、人は農作をして生きるべきだと考え、羅須地人協会という学校を設立しました。作家は彼の一面に過ぎず、化学や生物学、天文学に精通し、音楽や絵画も嗜み、農民たちに教えてもいました。このような多角的な知性によって、自然と心を結んでいたのです。また、博愛主義者で、妹を失ったときでさえ、自分一人だけ悲しみから救われてはならないと、1人のために悲しむ自分を罪であると責めていました。そして、彼自身も37歳で早世しました。

 ここで、アニメ1期、および1stライブでの、Liella! と「地」のかかわりを振り返ると、Liella! は星の輝きに手を伸ばすと同時に、昔の人々の想いが刻まれた同じ土地で、再び咲くスクールアイドルといえます。『リエラのうた』はそれを前面に押し出した楽曲群でもあります。どこかそこは、宮沢賢治の著作と通ずるところもあり、ひいては結ヶ丘を作った恋の母、花も若くしてこの世を去った賢治と共通するものを感じるような気がしてきます。

 この曲が注目すべきものである理由はこれだけではありません。この曲は、2021年に開かれた東京2020オリンピック*5で最後に披露された曲でもあるのです。このときは大竹しのぶさんと杉並児童合唱団*6が歌い、聖火が消灯されました。海外のTV局が主催しているライブなので、最近海外の多くの人が聴いた日本の歌を歌うという意味合いは強かったと思います。それに加えて、閉会式が行われた国立競技場はアニメ1期OPの舞台で、劇中のラブライブ! 決勝会場でもありました*7。そして、2ndライブのアンコール映像でも仄めかしていた通り、Liella! 最大の夢が国立競技場でのライブであることはほぼ確実だと思います。ここで改めてLiella! と国立競技場の共通項を増やすことで、夢への決意を確かにする意味があったと思います。会場に溢れていた星の光が、神宮音楽学校があった時代から、Liella! が夢の舞台に立つ未来にも繋がっていることを感じられます。そういえば、キャンプファイヤーはどこか聖火にも似ている気がします

 Liella! が初めて歌う曲の直後に、1st同様の『瞬きの先へ』『Wish Song』が続きました。もはや情緒が休む暇を与えてくれません。ようやく母の真の願いに出会えた恋のことを想い、前が見えませんでした。感情の怒涛のあとに、優しい気持ちになれました。

 『瞬きの先へ』は、綺羅星のような想いに照らされてその先の未来へ進めるという歌です。その前に来る歌としては、全天を眺めるように歌う『星めぐりの歌』はとてもよくはまっていたと思います。ちなみに前日のDay1では『ピノキオ』の挿入歌『When You Wish upon a Star』だったそうです。こちらも「願う→願いを受け取る」という流れができていたものと想像しています。

 1stライブと違い、MCを挟まずに『ノンフィクション!!』に繋がりました。アコースティックにアレンジされ、原曲とは違うベクトルで大人っぽかったです。今回のペイトン尚未さんは、白装束のおかげもあり、清純の極みのような美少女でした。2ヶ月前、同じステージで爆発を起こしていたのとは別人のようでした。

 一度MCを挟み、『Dream Rainbow』ついで『私のSymphony』が披露されました。今回も、1stライブ仕様で1番をすべて伊達さゆりさんがソロで歌います。1stライブはこの曲を通し、伊達さん自身歌に苦しんだこともあった3ヶ月だったそうですが、2ndライブも開催中であり、「もう大丈夫」と感じられる歌声でした。

 綺麗系の歌声が多いLiella! 1期生にあって、伊達さんは振り絞るような力強い歌い方が特徴的で、私はついついこういう歌い方に惹かれてしまいます。とはいえ、それは傾向の話であり、今回のような聞かせ方だと、歌声の引き出しの数が増えたのを実感できます。

 最終回挿入歌の『Starlight Prologue』で一度締まります。ここで私は一つミスをしてしまいました。『Starlight Prologue』は、フォーメーションに合わせて客席の点灯色が分かれますが、今回は着席でのパフォーマンス*8なので、フォーメーションが動きません。したがって、ステージにメンバーが並んでいる順番と、点灯色が異なることになります。そのことに気付くのが遅れ、曲がある程度進行するまで、周りが千砂都のピーチピンクを点灯する中、すみれのメロングリーンを点してしまいました。

 本編最後の曲、『未来は風のように』は、またヒーリング系のアレンジでした。この曲はED主題歌なので、1stライブ同様、終わると本編は一旦終わりです。

 

4. アンコールは「いつもの」

 一旦出演者が退場したタイミングで、アンコールを拍手で送ります。最初はアリーナとスタンドでタイミングが大きくずれていましたが、あるタイミングでぴたりと揃いました。会場内の空気が一つになる瞬間は気持ち良すぎます。

 ステージが明転すると、ステージ上の楽器は端に避けられていました。そして、現れたのは「いつものLiella!」でした。『始まりは君の空』は楽曲衣装で披露され、2番では上着を投げるパフォーマンスもいつも通り行われました。私の席は高いところについていたので、上着を受け取るために舞台下で待機しているスタッフの姿まで良く見えました。

 アコースティックのパフォーマンスをするために、抜けた曲がありました。本来は2曲目だった『だから僕らは鳴らすんだ!』です。これはやはりみんなで手を叩いてこそです。アンコール曲の『Dancing Heart La-Pa-Pa-Pa!』と『Dreaming Energy』は両方聴くことができました。最後は、『この街でいまキミと』で、1stライブでも恒例だった「自撮り」を撮って終わりました。惜しむらくは、ぴあアリーナMMの構造上、客席全体を画面に入れることができないことでしょうか。この曲で終わると、1stライブの時と同じような清々しい気持ちになりました。

 Liella! のこれまでの積み上げとして、本編で歌の新しい可能性を十二分に見せてくれたと思います。とはいえ、最初のリリースイベントのときに思った以上に本格的だと感じたダンスも、Liella! の強みの一つに違いありません。やはりこれも魅せなければLiella! のライブにならないと思ったのでしょうか。私たちからすれば、1回で2個ライブを観られたような、お得というか、「デザートは別腹」のような満足に満足を重ねられるものでありました。

 

5. 総括: 「今」を歌で受け取り、新しい歌声へ

 今回のライブは、『MTV Unplagged』という番組の一貫として開催されたものです。そのため、Liella! が「お客様」になってしまうのではないかという不安はありました*9。しかし、蓋を開けてしまえばそれは杞憂に終わりました。今回のライブは、Liella! がこの1年半 (キャストのそれまでの修練も合わせれば、それ以上) 積み上げてきた歌の力を、今までのどのライブよりも引き出してくれるものでした。バンドメンバーが女性であることもそうですが、演出の1つ1つもラブライブ! スーパースター!!』という世界観をリスペクトしてくれていたと思います。世界観とストーリーがしっかりしているのが、『ラブライブ!』シリーズの特徴であることは今更言うまでも無いと思います。

 また、アンコールは、10都市22公演あった1stライブそのもののアンコールも兼ねていると思いました。22公演で1stライブが足りていなかったということは断じてありませんが、今回の1stライブアレンジのモチーフとして、観客が求めていたものだと思います。事実、観客のほぼ全員が1stライブの会場に足を運んでいたようでした。それだけでなく、今回はほぼ全編を通してキャストがキャストの顔をしていたように見えました。つまり、キャストが主人公だった2ndライブとのいいとこどりでもあることになります。

 さて、Liella! は2期生メンバーの加入を控えています。7月以降は9人での歌唱を聴くことも多くなるでしょう。どんな歌声が加わるのか、今から楽しみでなりません。

*1:米国系TV局であるMTV社との契約の関係か

*2:ライブは1期生の5人のみ

*3:流石にウッドベースではなかった

*4:一部の映像化作品では挿入歌となっている

*5:このときはアニメ1期も何回かの放送休止を挟んだ

*6:実は杉並児童合唱団は『ラブライブ! スーパースター!!』にも出演している。かのんが所属していた合唱部として、『いつか』を歌っている

*7:劇中では「神宮競技場」

*8:観客も本編中は着席必須

*9:ただし、ラブライブ! のスクールアイドルたちは、『バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル』のような外部のイベントでも自分たちのリズムでライブができることは実証済み