普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

同好会だから、できたこと ~ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会第2期感想週報⑪『過去・未来・イマ』~

変わらない同好会らしさが、今この瞬間の手を握って走る
(『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期第11話『過去・未来・イマ』より/
©2022 プロジェクトラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会/配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=1km8dpCiyJY)

 前回の最後で消えていく線香花火の話をしました。このとき、かすみが持ってきたのは打ち上げ花火セットでした。線香花火のように優しく咲いて儚く散る花火と違って、打ち上げ花火は一瞬だけ堂々と大空に開きます。その一瞬にすべてをかけるには、スクールアイドルとしてもどんな一瞬も表現できる力が必要です。

花火はまだまだ続く

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1. 「同好会」とは何か?

 一般に、多くの学校では「部」より格下の組織として「同好会」を設けています。放送同日に"入学式"が行われた結ヶ丘女子高校もそうでした。人数が多くなり、活動も本格的になり、まして全国レベルの知名度になると、それは「部」になるのが当然とされています。

普通の意味の「同好会」

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 虹ヶ咲学園には、「同好会」がたくさんあります。それぞれの好きなものが尊重され、好きなものが自由にできるので、人数を集める必要もなく、小さいながらも部室や予算がもらえるので、「部」になるレベルでなくても活動が成り立つのだと思われます。

 さて、スクールアイドル同好会は2度のSIFを成功させ、学校の顔といえる存在まで成長しました。ここまでくるとそんな学園生たちも、部になるのが自然と考えるようになりました。しかし、同好会メンバーはこれからも同好会でい続けることを選びます。

 ここで興味深かったのが、部への昇格がメンバーが一丸となった活動を意味しているということをメンバーたちがある程度共通認識として持っていたこと、そして一部のメンバーはそれへの憧れを隠さなかったことです。別に名前だけ「スクールアイドル部」になることはできたはず*1です。しかし、メンバーたちは部になることにはそれなりの責任がつきまとうと考えたようです。とりわけ、この世界にはラブライブ! があります。わざわざ部になれば、ラブライブ! への出場を期待されることは確実でしょう。出れば勝てるほどの人気と実力はあります。

 やはりというべきか、せつ菜は過去の出来事を未だに引きずっています。しかし、かすみはどちらかといえば部やラブライブ! のこともを前向きに検討しているからこそ悩んでいるという感じがしますし、前々回まで誰かと仲良く活動することさえ避けてきた嵐珠とて、自分にはグループ活動はできないと思っているだけで、興味はありそうな口ぶりでした。一つの大好きを追いかけることには失敗したとはいえ、気持ちが重なった時にユニットやグループで歌えることはもはや全員わかっていて、可能性としては気付き始めているのです。

 結果としては、それだけ引き出しが増えたことこそが、同好会という選択肢の根拠になりました。形を変えながら自分たちらしくあり続けるには、柔軟な形がふさわしいということです。同好会に「スクールアイドルという好きを同じくする集まり」という意味を持たせたのは『スクスタ』でも同じでしたが、より深い結論になったと思います。

 

2. 同好会という答えが卒業生に贈るもの

 同好会が同好会でい続けることを決めたとき、一人だけポールを隔てたり、位置を違えて描かれていたメンバーがいました。果林です。こういうときの果林が臆病なのは1期から描かれてきた通りですが、この回で面白いのは、果林に次に訪れる変化が「高校生活の終わり」だということを悟らせるためのきっかけとして様々な要素がスムーズに処理されていくことです。同好会が「同好会」を選んだのもそうですし、璃奈の自主練、かすみが勉強にも精を出しつつ部長としても頼もしくなったこと、嵐珠が同好会メンバーたちに学ぼうとしているのも全部そうです。せつ菜が生徒会長を降り、栞子が立候補を決めたのもその一環になってしまいました。2人とも生徒を支える仕事がしたいという思いと、スクールアイドルとして気持ちを伝えたい願望があって、後輩が先輩の背中を追う形になっているのが熱いです。メンバーが増える2期には観る側にも、もちろん作る側にも"思うところ"があって、気になる要素はさっさと処理して『アニガサキ』の物語に集中してもらおうという意図が感じ取れます。

 「卒業」はすべての学園もの、とりわけ限られた時間の中で輝くスクールアイドルの物語では避けては通れない問題です*2。歴代作品でも、それに対してどのような答えを出すかに物語の最大の個性があると言ってもいいと思います。μ'sが解散を選んだのは、μ'sはあの9人しかありえないからです。Aqoursは全員が廃校という別れを通して、そこまで頑張った過程に意味を見出し、新しい学校でもAqoursの名前を背負うことを決意します。

 同好会はどうかと言えば、既に前半で結論は出ていました。どんな形でも活動ができること、全員がそれぞれの形でこの場所が好きと言えること、それはどんな「今」も表現できる自由さを意味しています。この場所が持つ意味をメンバーたちで再確認したからこその、同好会初、そして現メンバーで迎える最後の単独ライブが始まろうとしています。

 

3. 未来ハーモニー

 TVアニメのパイロット版という性格もある『未来ハーモニー』のアニメーションPVですが、流石アニメというべきか、完全再現されていましたね。この8話の『TOKIMEKI Runners』がニジガクの始まりの曲であるのに対して、アニメのニジガクの始まりの曲がこれです。

 ただし、今回のポイントは、例によって (キャラクター作風仮説)「今のニジガク」を表現するという今回の結論を、アニメのシナリオ自体が自己実現していたところです。『未来ハーモニー』に登場するメンバーは9人ですが、今の虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は13人です。パイロット版と同じ風景を、栞子、ミア、嵐珠、それに侑を含めたメンバーが走っていく映像は、まさにニジガクにとって、変わっていくものと変わらないものが何かを表すものになっています。

 

 同好会としての新しいライブが、2期のゴールに据えられました。しかし、侑にはもう一つの目標が浮かび上がります。作曲という夢の線上に現れた作曲コンクールです。さらに、歩夢にも謎のメールが届きます。『アニガサキ』は、最後まで重層的に展開していきそうです。

*1:そもそも「スクールアイドル同好会」を再翻訳すると「スクールアイドル部」(School Idol Club) である。『スクスタ』の「スクールアイドル部」はSchool Idol Association

*2:『スーパースター!!』も、3年目の物語がもしあれば直面することになる