普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

『ライバル』だけど、『仲間』!! ~ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会第2期感想週報⑫『エール!』~

 前回、終盤に向けて2つの物語が動き出したところでしたが、虹ヶ咲の外に目を向ければ"ラブライブ!"も始まろうとしていました。これだけの数のストーリーを、『アニガサキ』はどのようにまとめたのでしょうか?

旅立ちの予感は、前回の内容とも重なる

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Q. 大きすぎる想いを支え切るには?
(『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期第12話『エール!』より/
©2022 プロジェクトラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会/配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=qJT3ZLDDnmA)

 

 

1. 3つの想い

 今回の話では、3つのストーリーが同時に進みます。複線的展開が多い『アニガサキ』でも、これはかなり多い方だと思います。

①侑と作曲コンクール

②歩夢とロンドンからのメール

③彼方と遥とラブライブ!

 歩夢は、イギリスでスクールアイドル活動を始めたがっている高校生からメールを受け取り、自分たちの影響力の大きさに改めて驚きながらも、部活動もアイドル文化もない環境でスクールアイドル活動を始めようという人を手伝う方法を探していて、2週間の短期留学に辿り着きました。侑は、「やってみたいだけ」の作曲で、自分の力を試してみたいという思いが日に日に大きくなってきました。なお、このアニメで最重要な「やってみたい」に、「だけ」という過小評価が付くのが、この言葉だけが本心ではない証拠と言ってもいいかと思います。それぞれに思いがあれば、目指すところも違ってしまう、それが歩夢の悩みでした。2人ともお互い相手に背中を押してもらいたいけれど、違うところに行ってしまうのは怖かったのです。

 一方で、思いが同じだからこそ違う結果に辿り着いてしまう人々もいます。ラブライブ! 出場校です。優勝するのは1校のみですから、他の学校は夢を叶えられないことになります。日々追い詰められていく遥を見ているうち、彼方の中の大好きな気持ちや、応援したい気持ちは到底一人では抱えきれないほどになっていました。

 その3つのストーリーが、綺麗に1つにまとまるのが、この回のポイントです (最終項で触れます)。

 

2. 2年生としては異例の「旅立ち」

 前回は、3年生の卒業が取り上げられました。自由であれば変わりゆく中で「いま」を大切にできる、というのが前回のまとめですが、この回では2年生である侑と歩夢についても、離れ離れになる未来を不安に思う展開が取り入れられました。今まで描かれてきた「旅立ち」のエピソードの中でも、かなりの変化球です。もっとも、『ラブライブ!』1期ではことりの留学に纏わる騒動がありましたが、あのときは留学の予定もスクールアイドルがしたい本心も言い出せなかったことりに問題がある (その意味では1期の"ゆうぽむ"の状況のほうがまだ近い) ので、お互いの夢を口に出して相談できるようになった2人の現状とは違います。1期の"ゆうぽむ"話を受け継ぐ話であることがわかるように、1期のキーアイテムだったパスケースも登場しています。

 わずか2週間の留学とはいえ、侑と別々の道を自ら歩もうとしている以上、これからもそのようなことが増えていくのを想像するのは自然なことだと思います。先のことを考えるあまり今を見失いそうになっていたのは、前回の果林とも似ていますね。

 とはいえ、歩夢も、そして侑も、お互いを「逃げ場」にするような関係は望ましくないことは、1期であれだけのすれ違いを経験して理解しているはずです。お互いのことを応援したいからこそ、その先に待つものが怖くなってしまった侑と歩夢もまた、彼方と同じように2人では抱えきれないほどの感情を胸に秘めていたと言えるのかもしれません。

 

3. "ラブライブ!" と"スクールアイドルフェスティバル"

 『虹ヶ咲』ではわかると思っていなかった、ラブライブ! の様子が伺えました。

歴代ラブライブ! のルールをもう一度おさらい!

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 本作では、以下の通りでした。

・12月25日に都大会が行われる。 (『ラブライブ!*1『スーパースター!!』に近い)

・この大会は、無観客配信で公開される。(『スーパースター!!』と同じ)

・大会参加者は1箇所のスタジオに集まり、パフォーマンスを行う。(『ラブライブ!』『サンシャイン!!』*2に近い)

 ラブライブ! が本筋ではないからでしょうか。過去作品のハイブリッドのようになっていました。

 この大会には、もちろん他にも参加校はあったのでしょうが、SIFに出場した東雲学院、藤黄学園、Y.G.国際学園、紫苑女学院という臨海部の学校*3が、すべて出場を決めています。都大会ともなれば、ただでさえそこに至る予選を勝ち抜くのも困難だと思われます。すべてが予選を突破できる区割りの妙もあったのでしょうが、グループの人気も、メンバーの士気も、SIFによって高まったのは間違いありません。来年以降、SIFがラブライブ! を目指すグループの踏み台にされるようなことがなければいいのですが*4……。

 それよりも何よりも、この4校が強い絆で結ばれた仲間同士だったのが、SIFの最大の効果です。これほどの仲間同士の対決になった都道府県レベルの大会は、この世界の過去にも例がないと (勝手に) 思います*5『ライバル』だけど、『仲間』という、虹ヶ咲の10人→13人に宛てられた言葉が、ある意味"本家"であるラブライブ! の場にも拡張されたのです。

 

4. 押してくれた手の温もりは残る

「背中を押して距離が離れたって、押してくれた手の温もりは残るよ」

 この長文を無意味化するくらい、端的で綺麗な彼方の言葉です。余談ですが、この直後のシーンで役目を果たしたとばかりにいつも通りのすやぴになっている彼方は可愛いですね。

 ラブライブ! の出場校の生徒たちの、応援の気持ち。SIFの主催校のスクールアイドルとして、皆を応援したい同好会メンバーの気持ち。それらが集まった時、あれほど大きかった横断幕が、いつの間にか綺麗なサイズに収まってしまいました大きすぎる想いを支える方法は、共有することです。

 彼方も、東雲の生徒たちと気持ちを共有することで、それに気づきました。誰よりも多くのものを共有してきた侑と歩夢なら、どれだけ距離が離れても大切に想い続けられると、彼方は考えます。

「夢を追いかけてる人を応援できたら、私も、何かが始まる…!」

 侑の最初の嘘のような予感は、本当になりました。始まるだけでなくて、たくさんの人に共有され、広がっていったのです。

 さて、当ブログで何度も取り上げた「キャラクター作風仮説」ですが、そろそろまとめに入らねばなりません。今回は、冒頭で述べた3つのストーリーが、それぞればらばらのことをやっていたにもかかわらず、「大切な人を応援する気持ち」を通して、まさにその応援したい気持ちが集まったかのように、1つにまとまってしまいました。

 そればかりでなく、「大きすぎる想いを支える方法は、共有すること」であることは、ここまでの2期のストーリーの総まとめでもあります。2期の前半はユニットの話であり、後半はそのことを嵐珠たちが理解する話でした。『アニガサキ』の物語自体が今までの積み重ねを発揮する舞台が、まさにラブライブ! の大会だったことは、この作品が『ラブライブ!』であることを証明していると言ってもよいでしょう。

 

 気持ちを共有する人と一緒にステージに立つことを、嵐珠も夢見るようになりました。そのためにまだユニットを組んでいない栞子とミアを誘い、何かを始めようとしています。2期は残り1話なのですが、『アニガサキ』のペースなら、まとめられると期待しています。

 12人と1人の今をぶつける舞台、同好会の"1stライブ"が、ついに開幕します。

*1:こちらは同規模の大会が「東京地区予選」

*2:Aqoursが出たのはもちろん東海地区予選

*3:すべてモデルの建物が判明しており、その通りの位置にあれば所在地はそれぞれ江東区江東区江戸川区、品川区

*4:そのような顛末を辿り、新人スクールアイドルの登竜門になったのが『代々木スクールアイドルフェスティバル』なのかもしれない

*5:μ'sとA-RISEは同格の東京地区予選で、Liella! (1年目) とSunny Passionは同じ都大会で対決。AqoursSaint Snowは公式戦での対決なし。