普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

生まれた日常、壊された日常 ~ウルトラマンデッカー感想週報①『襲来の日』~

 「ニュージェネレーション」として復活したウルトラマンのテレビシリーズの記念すべき第10作は、昨年の『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』と同じ世界が舞台になりました。ニュージェネレーションで続編なのも実に『ギンガ』と『ギンガS』以来ですが、どうしても『ティガ』の続編の『ダイナ』を思い出してしまうところです。私が初めて知ったウルトラマンはダイナ*1でした。つまり私のウルトラマン好きも一巡したということになります。さて、どんな物語が描かれていくのでしょうか?

武居監督の得意技? 微笑ましい日常風景
 (『ウルトラマンデッカー』第1話『襲来の日』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=7JTIJiAc70M)

 

 

1. 『ダイナ』時代味

 OPテーマ『Wake up Decker!』はパラパラ風。つまり、平成前半テイストです。まさに、ウルトラマンダイナがTVで活躍した頃を思わせる楽曲になりました*2。『ダイナ』を小さい頃に見ていた、今現在小さい子供の親になりうる世代を直撃する嬉しい仕掛けです。「You can now send! Sing out!」という、あえて日本語に聞こえる英語歌詞を書くのもこの時代の傾向だったはずです。EDテーマも影山ヒロノブさんで、かなり寄せてきています。この世代は親になっていれば子どものおもちゃを買いますし、なっていないファンもお金を落とす力を持ったボリュームゾーンなのだと思います。

 デッカーの姿も必殺技もダイナによく似ています。ところが、必殺技「セルジェンド光線」のモーションの一部がどこかエメリウム光線風だったり、ディメンションカードの怪獣がカプセル怪獣だったりと、『ウルトラセブン』に寄せるところも見て取れます。リアルタイム世代は相当高齢のはずですが、時代を超えて愛される作品としてモチーフになっているのでしょうか。

 

2. 9年後の「日常」

7年前の戦い

carat8008.hateblo.jp

 イーヴィルトリガーが倒され、地球に怪獣が現れなくなってから7年。『トリガー』の本編の時代から9年が経ったことになります。束の間の平和の下で、宇宙の開拓が進み、人類が宇宙に行くのが当たり前の時代になっていました。あたかも平成の時代、思い立ったら気軽に海外旅行に行けたような、あの感覚で火星や、おそらく月などにも、旅行に行けたのです。この作品の冒頭では、「日常」の象徴として宇宙旅行や移住が描かれています。武居監督が以前手がけた『ウルトラマンR/B』でも、日常のすぐ近くにいるウルトラマンを描いていましたが、やはり今回も「商店街の福引き」と「火星旅行」を共存させる、SFとホームドラマが融合した日常を感じる作りになっています。
 しかし、『デッカー』が描くのは、日常が壊された世界です。そう、我々が生きるこの現実世界のように、です。もちろん怪獣ものなので、あらゆるウルトラシリーズにおいて日常は壊されるのですが、我々が生きる世界の日常が壊されるのを、ここ最近我々は色々な形で体験しています。怪獣の出現は、気づけば現実のすぐそばまで来てしまっています。『デッカー』の世界に現れたのは「スフィア」。対話不能の脅威による惑星際無差別攻撃、そして人と人との交流の完全な遮断です。『ダイナ』にも出てくる敵であると同時に、そのもたらす被害は私たちにとっても想像可能なものとなっています。
 まとめると、『デッカー』1話は、現実世界とは違う日常を描いた上で、その日常が壊されるという構成です。

3. 1話から敗北?

 果敢に立ち向かっていったアスミ カナタを取り込んだスフィアの中から現れたのは、新たなる光、ウルトラマンデッカーでした。デッカーは力強い戦い方で、スフィアが生み出した怪獣スフィアザウルスを倒しました。初戦としては、普通ならこれで勝利を収めたことになるのですが、『デッカー』では怪獣を倒したところで、侵攻してきたスフィアの大軍がまだ残っていました。『トリガー』でもゴルバーを召喚したカルミラとの戦いになりましたが、カルミラを撤退させています。ところが、デッカーはスフィアの親機を倒しにいこうとして反撃され、敗北してしまいました。1話でウルトラマンが倒されるのは極めて異例ではないでしょうか。喋らず、その悪意を実力をもって見せつけてきているといえます。広義のニュージェネレーション10作品のうち、人間と同様の知性を持ったヴィランが登場しないのは、実に『X』と今回『デッカー』(現時点では) のみとなっています。脅威の描き方も、懐かしくも新しいものになりそうです。

 スフィアはシールドを張って、地球と地球外との往来・交信を完全に遮断してしまいました。火星旅行中だったカナタの両親の安否も不明です。

 スフィアには目的があるのでしょうか。スフィアに攫われたカナタは、自我を失いそうになっていました。それに抗ったことでデッカーの光と出会いました。デッカーも同じように、スフィアに囚われていた存在だったのでしょうか?
 そのカナタは、現場で受けたTPU訓練校・ムラホシ校長のスカウトに応え、訓練生になりました。この行動力もアスカ シンを彷彿とさせます。次回は入隊に向けた訓練編となります。もしかすると、主人公が組織に入るまでの鍛錬をじっくり描いた「あの人気作品」を思わせる展開があるかもしれません……?

*1:当時1歳なので、その時に買い与えられたVHSビデオや書籍で後から知った

*2:カイザキ サワ役宮澤佐江さんも言及