普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

夏休みこども怪獣相談 ~ウルトラマンデッカー感想週報⑤『湖の食いしん坊』~

行楽シーズンに温泉旅行はいかが?

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  記録的に暑い夏です。今年は数年ぶりに夏祭りが復活する地域も多々あると思います。夏祭りには、金魚すくいや、あるいは亀すくいといった水性動物を手に入れられる出店も並んでいることがあると思います。しかし、安易な気持ちで手を出してはいけません。生き物のことをよく知らずに飼い始めると……。

大変なことになりますよ
 (『ウルトラマンデッカー』第5話『湖の食いしん坊』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=cdLzgBnfBLw)

 

 

1. ペットの正しい育て方

 今回の怪獣はもはやおなじみである宇宙怪獣エレキングでした。そして、ピット星人の少女*1が湖でエレキングを飼っているという設定でした。ここまではエレキングが出てくる時点である程度想像がつく範囲です。ところが、今回は「飼う」ということに思いっきりスポットライトが当てられました。ウルトラマンマックス』のエレキング登場回は『怪獣を飼う女』でしたが、今回はもっと直球勝負で「飼って」いる話でした。

 まず、ピット星人のユウコが地球に不時着し、スフィア襲来によって迎えが来られなくなった「帰宅難民」であることが明かされます。孤独なユウコの唯一の友としてのペットがエレキングのエリーであることがわかり、人の心を癒やし、希望を与えるペットの正の側面が主張されました。その一方で、地球という未知の環境でエレキングが予期せぬ急成長をし、餌の電気が足りずに周囲の民家から電気を盗んでいたことも開かされました。ついに怪獣サイズになって暴れ出し、GUTS-SELECTの駆除対象になってしまいます。ペットの中には、怪獣にはならなくても飼いきれないほど大きくなるものがあります。カメが捨てられて自然界で繁殖するような話ですが、ユウコはそれでも恐れをなさず、唯一無二のエリーを守り続けようとしていました。

 夏休みということもあってか (?) 教育的要素の強い回ですが、それぞれに命を守ろうとして空回りする登場人物たちが魅力的な回でもあります。イチカはGUTS-SELECTに怪獣も異星人も駆逐されることを恐れ、独断でメガアースを持ち出して使おうとします。メガアースは、人間が運べるサイズでシティ3日分の電力を賄える超高密度バッテリーです。それを知ったムラホシ隊長は眼鏡を外し、血相を変えて怒るのかと思いきや、自らも上層部に掛け合ってエレキングの救出に動きました。眼鏡を外したのは、正式なルートを外れてでも行動しようという意図の暗喩だったのでしょうか。

 しかしメガアースはエレキングにとっては「食べ過ぎ」。放電が止まらなくなり、暴走を始めてしまいました。ムラホシはパイロットとしては一流ですが、怪獣についてはまだまだ素人です。会議から帰ってきたカイザキ副隊長にしこたま怒られてしまいます。しかし、時すでに遅し。ウルトラマンデッカーがエレキングの鎮静化に挑みました。エレキングと一緒に遊んでなだめようとするデッカーでしたが、何が逆鱗に触れたのかさっきまで楽しそうにしていたのに攻撃をまともに食らってしまう始末。動物の気持ちというのは本当のところはよくわかりません。結局、どんな奇跡も起こせる新形態・ミラクルタイプに変身して余分なエネルギーを吸い取り、元の大きさに戻していました。

 ラストシーンでは、ユウコとイチカが怪獣研究者のカイザキ副隊長の動画を見て、エレキングの正しい飼い方を学んでいました。ペットがどんなに可愛くても、食べ過ぎは毒。そして命を大切にするには、知識が欠かせないという教訓を残しました。丸く収まろうとしていても、エリーが電気を盗んで被害を出し、危うくGUTS-SELECTに退治されるところだったということを考えると、「知識のない者は飼うな」というのは命を育てる第一歩です。

 

2. 放電竜エレキング

 章題は『マックス』のエレキングの二つ名です。今回は本編の随所に、『マックス』を思わせる要素がありました。アパートの一室で幼体のエレキングを飼う様子や、エレキング自身の名前が『マックス』のDASHアンドロイド隊員・エリーと同名だったことなどです。エレキングは『セブン』初登場時から電撃を武器にしていましたが、電気を食べて停電を起こすのも『マックス』設定です。変電所を襲う様子は『シン・ウルトラマン』のネロンガで最近見たのと被りますが、名前も相まってエレキングの電気属性はもはや盤石だと思います。ユウコが芸達者なエリーにさせていたゴルゴ松本さんの「命」のポーズも、宇宙化猫タマ・ミケ・クロに記憶を喪失させられたマックスがやっていました。

 『セブン』に登場したミクラスも満を持して登場します。ミクラスが最初に戦った相手がエレキングだったからです。ただ、電気が弱点なのは変わらず、今回も出てきたそばから放電を受けて撤退してしまいました。ダンはカプセル怪獣の選択を間違えなければもっとよく戦えると一部では言われていますが、カナタはまだミクラスしか持っていないので、今回は仕方ありません。

 一方で、今回のエレキングは本当にただのペットだったという点が、今までとは一線を画しています。『マックス』個体は地球人の美宇に飼われていると見せかけて、実は美宇の精神を支配していました。猫を飼う人は、猫に支配されていると自嘲的に言うことがあるように思いますが、少なくとも家畜のように使役するだけでない人間や星人と怪獣の関係は平成以降いろいろに模索されてきました。また、ピット星では1年でこれほど巨大化しないということになっていました。本当に地球の環境がそうさせたのか、ピット星人がエレキングの危険性をちゃんと知っていて、安全に飼育しているだけなのか、本当のことはわかりませんが、正しく飼えば子供のいる家庭で安全に育てられる愛玩動物なのかもしれません。

 

 次回は最近作品中に複数回挟まれるようになった総集編です。昨年TSUBURAYA IMAGINATIONで活躍したホッタとマルゥルが帰ってきます。感想週報は休みますが、再来週少し触れられたらと思います。

*1:ピット星人には女性しかいない