普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

ふたりの間の新しい引力 ~ラブライブ! スーパースター!! 第2期感想週報④『科学室のふたり』~

 今年も高校野球の夏がやってきました。近江*1vs鳴門、鳴門が6点差で負けていた9回の表で、1点でも返すことができないかとはらはらしながら見守っていました。偶々見た試合で負けている側を応援したくなってしまうのはサガでしょうか。

 とはいえ私たちにはこの試合が早く終わってほしい事情もあり、私の中では2つの感情が相反していました。『ラブライブ! スーパースター!!』2期4話は、1期の同じく4話での歴史的大遅延ほどではありませんが、この試合に押され、1時間10分遅れのスタートとなりました。

すみれの加入回は3時間15分遅れ

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 今回は、公式Twitterアカウントからもこんなエールが送られていました。少なからぬラブライバーが放送の遅れに気を揉みながらも試合の行方を見守ってしまうのは、そこに「輝き」があるからかもしれませんね。

 敗退してしまった鳴門高校の野球部員たちも、学校の生徒たちの誇りであり、スーパースターであることに違いはないはずです。それを目指して学校に入ってくる新入生もいて……という話が、4話のストーリーに繋がります。

熱戦・ラブライブ!

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身体が動き出す
(『ラブライブ! スーパースター!!』第2期第4話『科学室のふたり』より/
©2022 プロジェクトラブライブ! スーパースター!!/配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=mgDSlrtu96M)

 

 

1. 若菜四季と米女メイ

 今回は『ラブライブ!』1期4話、『サンシャイン!!』1期4話と同様、仲良しの1年生2人の回です。しかし、四季に関しては1話からかなり大胆に行動していて、もうその印象が焼き付いてしまっているのではないでしょうか。2話でのきな子への猛烈なアプローチは、まさにメイのためでした。「沈黙は金」座右の銘に置く四季ですが、ここではむしろ「行動は雄弁」あるいは「不言実行という感じです。4話でも、突然スクールアイドル部に体験入部し、先輩たちを引き連れてメイの家に張り込み*2を試みるなど、何も言わずに行動を起こしています。とはいえ2話でのきな子を巻き込んだ行動は、きな子がまっすぐで熱意に溢れているもののややデリカシーを欠いていたため、これもうまくはいかなかったのですが……。

 当のメイはといえば、もはやLiella! への憧れを隠し切れていませんでしたが、それを人前でばらされると、あるいは四季に指摘されるのさえ、恥ずかしくて怒っていました。1話の時点でLiella! に憧れながら、あからさまに距離を取ろうとしていて、「推し」と自分の間に見えない壁を作っていました。確かに「推し」に突然自分のテリトリーの中に入られて、こちらの準備もないのにプライベートな問題について言及されたら (普通はそんなことはファンタジーですが)、身構えてしまうことは間違いないでしょうし、メイがかのんに対して声を荒げたのも気持ちはわかります。しかし、「スクールアイドルとはそういうものではない」という誰かの言ではありませんが、メイの場合ももう「始まって」いるのに、自分の気持ちから目を背けようとし続けていました。スクールアイドルになりたいか聞かれているのに、四季はどうなんだと逸らしてしまいます。

 

2. ふたりのキモチ*3

 3話までの描写では四季が一方的にメイに好意を抱いているかのようにも思えましたが、そもそもの発端はメイの方から四季にシンパシーを抱いてついてくるようになったことです。二人ともコミュニケーションが下手で自信がないゆえに、最初から一人でいるのが好きな四季と、おそらく運動部などをやっていたのもあり、複雑だった人間関係に疲弊してしまったメイ。二人でいれば、傷つくことはないことに気づいてしまいました。

 今までのシリーズでこの二人に一番よく似た関係は、『虹ヶ咲』の侑と步夢なのではないでしょうか。四季とメイの関係は中学から*4ですが、二人の関係が長い間惰性の中にあったことは共通しています。二人の関係を変えたのが、「ゆうぽむ」なら優木せつ菜であり、「しきメイ」ならLiella! でした。メイはすっかりLiella! の虜になってしまいましたが、Liella! への憧れを人には隠してしまいます。コミュニケーションが苦手で、憧れを否定されるのが怖いのでしょう。目が悪いのに眼鏡をかけたがらないのも、変わりたくなさの現れに違いありません。

 一方四季は、先述のようにメイのためならなんでもしてきました。そのため、二人はすれ違ってしまいます。さらに、メイのためだけに体験入部した四季の心にも、新しい気持ちが芽生え始め……。

 お互いの存在の大切さには、惰性の中では気づきにくいものです。

 

3. 行動で示せ!

 行動力はありながら、メイに思いを伝えきれずにいた四季。ここで力を発揮したのが、Liella! の行動力の化身、千砂都でした。

 メイが迷いのさなかにいるちょうどその頃、結女スクールアイドル部では部長決めという問題が起こっていました。新設校なのでいろいろなものが整っておらず、1年間部長不在で活動していたようです。それはそれで驚きですが、メンバー全員が当然のようにかのんを指名します。こういう体育会系的なごり押しが時々起こるのがLiella! らしさではありますが、かのんはその強引さに待ったをかけて、議論はそこで止まっていました。

 四季が「一緒にいてくれなんて頼んだことない」「むしろ迷惑」などときつい言葉を使ってしまったのは、メイへの想いが祟っています。スクールアイドルに向いていないと思うメイは自分から行動を起こすことはなく、四季はメイだけのことを考えすぎて、逆に言葉も行動もメイの心を動かすことができません。二人に欠けていたのは「自分が自分として行動する」意志だったともいえます。

 嵐千砂都を成り立たせてきたのは「意志の力」と「澁谷かのんの存在」でした。泣き虫だった頃、かのんという光がいつでも隣で輝いていて、かのんの隣にいるために強くなろうと決意しました。千砂都はかのんに部長になることを勧められたときも、自分が部長には向いていないと一時は否定しますが、メイの様子を見ていてそれができない理由にはならないことに気づきました。今はかのんだけではなく、Liella! の皆もいます。「一人でも、独りじゃない」。昨年1年間をかけて、千砂都とかのんがそれぞれに証明してきたことでした。Liella! は仲間の存在があって、自分が自分の意志を貫ける場所であり、そこでこそ千砂都は「部長」を引き受けることができたのです。

 千砂都が部長に就任し、かのんはそれを踏まえてメイにも自分自身の気持ちに、そしてメイとよく似た四季の気持ちに向き合うようにエールを送りました。その頃、四季は体験入部を経て、身体が勝手に動くほどになっていました。四季の本心に触れたメイは、ついにLiella! に入ることを決意しました。

 四季とメイの手の繋ぎ方が変わったのは、二人の関係の変化を意味しています。ここでこれ見よがしに「恋人繋ぎ」にしてくるところが、流石『ラブライブ!』だと思うところですが……。四季が中盤で言っていた通り、惰性で一緒にいた二人の関係には名前がありませんでした。それが、お互い自分の気持ちに向き合うことで、改めてともに同じ気持ちであることを確かめ合い、関係性が意味のあるものに再構成されたということです。「こい」とは、関係性に名前が付いた一例です。

 

 昨年の1期4話もそうでしたが、早くも劇中にも夏がやってきました。奇しくも「四季」の名の通りに季節が変わっていきます。そして次が、「夏」美の個人回です。

*1:"おうみ"高校。『虹ヶ咲』ファンが想像する読み方ではない

*2:いつもの

*3:『サンシャイン!!』1期4話のサブタイトル

*4:2期生発表直後のラジオ番組で「幼馴染」という言及あり。ルビィと花丸よろしく、中学からの関係に「格下げ」された