普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

スクールアイドル、ここに在り ~虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! <Next TOKIMEKI公演> Day2全曲感想~

武蔵野の森総合スポーツプラザ (一部加工済み)

 2022年9月18日 (日)、ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! ~虹が咲く場所~ <Next TOKIMEKI公演>』Day2に参加してきました。私は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 (以下、作品名としては『虹ヶ咲』、アイドル集団としては「ニジガク」) のライブの中で4thライブだけは参加しましたが、今回は3rdライブで行くことを見送った『アニガサキ』のライブです。そして、チケットが1つも当選しなかった1stライブと同じ武蔵野の森総合スポーツプラザ (以下、「武蔵野の森」) が会場でした。それらの拾いきれていなかった要素が、一つに繋がるようなライブでした。

3rdライブの開催自体に寄せた文

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4thライブ感想

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 なお、5thライブは前週に <Colorful Dreams! Colorful Smiles! 公演> が東京ガーデンシアターで開催されています。こちらもDay1を配信で視聴したのですが、本稿では同公演を <CC>、今回の <Next TOKIMEKI公演> を <NT> と表記します。

 

1. 虹が咲く場所

 前夜、私はとあるツアーに参加しており、朝は果林役・久保田未夢さんの出身地である秩父市にいました。今回は自宅ではなくここから会場を目指します。途中3rdライブの開催地だった所沢でミアの大好物・ハンバーガーを食べていると、急に外の雨が土砂降りになりました。ライブの待機中にずぶ濡れになるのではないか、そもそも電車が止まってたどり着けないのではないか、大いに心配しましたが、無事に到着すると、何と空が晴れてしまいました。私は見ることができなかったのですが、会場上空に本物の虹が架かっていたようです。ライブというものは時に奇跡を呼ぶのです。

 今回の席はスタンド4階席でした。以前この会場で参加したGuilty Kiss1stのときはアリーナだったので、武蔵野の森のスタンドは初めてとなります。その中でもステージ下手側にかなり近い位置で、最前列でした。目の前はガラス張りの柵で、ステージだけでなく客席の様子も真下まで見えました。Liella! のアコースティックライブのときも、ぴあアリーナMMで同じような条件の席でした。

 ステージは上下に分かれ、左右の階段で結ばれていました。下のステージの後ろ側に映像を映せる壁があり、『アニガサキ』の特徴である、スクールアイドルの世界を表現する演出が映し出されていました。画質が良く、立体的に見えました。

 開演5分前、『虹色Passions!』が流れました。会場を暖める前奏曲であると同時に、このライブが「夢の始まり」(3rdライブ) の続きに位置することを表していると思います。

 

2. おかえり、はじめまして侑ちゃん

 最初に、会場内の注意事項の放送がありました。通常はスタッフが放送を行うことが多いですが、今回は侑役・矢野妃菜喜さんの放送でした*1。侑ならではの盛り上げや、メンバーへ気合入れを振るシーンなどもあり、姿は見えないながら、侑のいるスクールアイドル同好会の結束を感じました。私は3rdライブに参加していないので、矢野さんの出演を生で見るのは初めてとなります。

 短いオープニング映像の後、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の12人がステージに立ちました。今回は、1人も欠けない12人。身体の不自由のため、なかなか全員曲のステージに立っていなかったせつ菜役・楠木ともりさんは、今回はステージ上手方の階段の踊り場に姿を現しました。この後の曲も含め、歌うだけでなく、想像以上にダンスも踊っていました。(これに関して、後に本人の口から語られます)

 1曲目はアニメOPテーマ『Colorful Dreams! Colorful Smiles!』。アニメ準拠ライブでは伝統的な始まりです。この時点ですでに、会場の空気は1つになっていました。

 1曲で一旦全員が退場しました。その後で、通常は最初に流れるメンバー紹介映像が流れました。これも、今回は矢野さんがメンバーの名前を読み上げていたのですが、配信を観た <CC> Day1では読み上げるだけだったのに対し、<NT> Day2ではその後に「侑が」メンバーを呼んでいました。呼び方ももちろん歩夢なら「歩夢ー!」彼方なら「彼方さーん!」のように、侑による呼び方に準拠していました。歌わないメンバーである侑は、前例がないこともあり、他のスクールアイドルたちのようにステージで実在感を出すのが大変だったことと思います。それでも、まだキャストが姿も現していないこの時点で侑の実在性も打ち立てられていました。最後に侑が紹介されるところでは、あの決め台詞「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!」が飛び出しました。ちなみにこれは厳密には侑の台詞ではなく、矢野さんによる「あなた」の代弁であることに注意が必要です。

 

3. 駆け抜けるアニメ2期

アニメ2期の感想はこちらから

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 アニメ2期の本編映像が始まります。1話の「NGシーン」などあらすじを流しつつ、ピンチの同好会のもとに嵐珠が現れるシーンまで来ました。ここで、劇伴曲『露一手给你们看看』が流れ出します。観客の血を騒がせ、会場のボルテージを短時間でMAXまで上げていく恐ろしい力を持ったサウンドに、観客たちは自然と手拍子をしてしまいます。本編と同じようにステージを赤い光が染め上げ、その真ん中に嵐珠役・法元明菜さんが姿を現しました。曲目は『Eutopia』です。ラブライブ! シリーズのライブでは、演者、バックモニター、舞台演出、果ては観客席と、見たい景色が多すぎて「ヒトツダケナンテエラベナイヨー!」状態になりがちですが、このときばかりは法元さんに釘付けでした。あの瞬間、確かに世界の中心は鐘嵐珠でした。

 <CC> Day1では、この曲に苦戦する法元さんの姿を見ました。トップバッターの重圧もそうですし、1人で会場を釘付けにしなければならないというプレッシャーもあったでしょう。とはいえ、同じような状況に置かれた1stライブの歩夢役・大西亜玖璃さんや2ndライブのかすみ役・相良茉優さんのことを考えると、涙の一つも浮かべなかったのは流石嵐珠パワーなのだろうかとは思いました。<NT> Day2では、それも完全に払拭し、「最強の鐘嵐珠」が現出していました。何をやってもパーフェクトな「スター型」嵐珠と持ち味で魅せる「アイドル型」法元さんの違いはありますが、パフォーマンスのパワフルさは嵐珠そのものです。

 『Eutopia』から間を空けずにQU4RTZが登場しました。『ENJOY IT!』は、孤高の『Eutopia』とは対極にあるような曲です。このパートの尺が駆け足なのもありますが、あえてぶつけてもいると思います。劇中でも嵐珠に向けて作られた曲です。

 ユニット曲パートはさらに立て続けで、DiverDivaが『Eternal Light』を披露しました。このDiverDivaの衣装は、白色ベースなのですが、登場した果林役・久保田未夢さんと愛役・村上奈津実さんは、なんと銀色ベースの衣装を着ていました。そのほうが、銀河を駆けるDiverDivaの世界観を表現できると思い、アニメの表現にとどまらない仕上げ方をしたのでしょうか。DiverDivaといえば、果林と愛がライバル関係で高め合うユニットですが、その競い合い高め合いの関係は、メンバーとキャストの間にも存在していることを理解しました。

 一転して『Infinity! Our wings!!』のA・ZU・NAの動物衣装はアニメ本編に忠実でした。楽しいものを全部足し合わせた「ソロのようなユニット曲」という大発明であるこの曲では、本来はセンターである楠木さんが上側にいることでステージが広々とし、ダンス的にも、3人の表情も伸びやかでした。

 ユニット曲が終わると、一旦アニメ7話の映像を挟みました。栞子と薫子の姉妹の関係の部分が流れ、栞子の『EMOTION』でライブが再開します。表情は目が良ければ小さく見えるくらいの距離で、むしろ蝶の舞う中、栞子役・小泉萌香さんの手足の長さに見蕩れるような場所ですが、この曲はなんと言っても小泉さんの表情の変化*2に注目したいところでした。現地にいるのに勿体ない気はしますが、映像で見たいパフォーマンスでした。もちろん映像もバックモニターがあるので問題なく見られます。硬かった表情が緩み、サビで笑顔を見せられるようになるのはアニメと同じですが、ラスサビに向かって、さらに情感豊かになるのが見られました。栞子のソロ曲は、いつも同じ悩みを持つ誰かに自分の「今」を届けることに忠実ですが、ラスサビ2回目の転調は、さらにまだ見ぬ未来へ開いているように感じました。

 『TOKIMEKI Runners』も、8話をおさらいしての披露となりました。1話の果林のNGシーンでもそうでしたが、侑の「トキメカナイヨー!」という「迷場面」で拍手が起こるのも、ニジガクのライブならではです*3。映像中、暗いステージでは蝶が掃除され、ピアノがセットされているのが見えました。スクールアイドルと同じように自分の好きを自分の形で表現したいという思いを胸に、ピアノに臨むは矢野さんです。3rdライブでは大変でしたが、<CC> Day1では指先まで迷いのないピアノ演奏を見せてくれました。ところが、最終日の重みがのしかかったのか、今回は出だしで躓いてしまいました。モニターに映る矢野さんの顔には涙のようなものが見えた気もします。歩夢役・大西亜玖璃さんの囁くような応援が聞こえます。今度こそ『TOKIMEKI Runners』のアニメ2期8話版前奏を弾き終え、スクールアイドル9人のパフォーマンスが始まりました。ただやり遂げたことに価値があります。後でも触れますが、侑は「架け橋」です。今回はこれまで3公演参加していなかった楠木さんも加わり、アニメの完全再現に至りました。

 ここもクライマックスのようで、まだライブは続きます。いつまでも聴いていたくなるような、美しく力強い歌声です。今度は9話の映像から、『stars we chase』です。私は振り付けを見るのがとても苦手なので、残念ながら1つも気づきませんでしたが、ミア役・内田秀さんは振り付けの一部を嵐珠の楽曲の振り付けに変更していました。法元さんの練習を文字通り見て盗んだようで、似た者同士であり憧れである嵐珠への愛を、身をもって表現した形になりました。楽曲が進むにつれて内田さんの居場所とパフォーマンスの形態が変わるのも面白いところです。MVも同じような作りをしていますが、最初はステージの上の方でスタンドマイクを握る歌手としてのミア・テイラーだったのが、途中彷徨い、歩きはじめ、サビでは雲海のステージで、全身を使って自分を伝えるスクールアイドルのミアになる、という演出です。

 晴れて同好会が13人になったところで、『Love U my friends』2期10話版です。アニメ本編ではライブパートではありませんが、矢野さんもステージ上に登場してパフォーマンスが行われました。この話のラストで13人が一列に並んで写真を撮ったのも再現してくれました。

 ここまで約50分間ライブを進めて、ようやく初めてのMCが入ります。史上最も遅い自己紹介MCではないでしょうか。この自己紹介では、最後だからというのもあってか、<CC> Day1と比べても、キャストたちは自由奔放にやっていました。法元さんに友達として紹介してもらいたくて背後にべったりとくっつく小泉さん、全員にハイタッチしつつ久保田さんには熱烈なハグをする村上さん、あたかもその自由さに対抗するかのように、妨害してくる大西さんをわざわざ遠くへ連れ去ってから矢野さんに抱きつく久保田さん*4など、思わず参加者から笑いがこぼれる名場面が連発していました。1stライブで失敗してしまった楠木さんの『スクスタ』を下敷きにしたコール&レスポンスも、発声ではないにせよ成功を収めました。

 

4. 侑がくれたもの

 自己紹介を終えたところで、アニメのセットリストはあと少しになりました。<CC> では「5thライブ内での1stライブ」として再現されていた13話のライブは、今回は思い切って省略という形になりました。この回では劇中の参加者になりきってエア感想を書いているので、そちらをお読みください (笑)。

FIRST LIVE with You なりきり全曲感想

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 映像は途中で、アニメから実写の侑 = 矢野さんに切り替わります。アリーナ席最後方に、本物の矢野さんが立っていました。アリーナの通路で間近で矢野さんを見た人には、一生忘れられない思い出となったことでしょう。矢野さんは劇中の台詞を言いながらステージへ向かうのですが、私にはそれは全く台詞とは感じられませんでした。たまたま劇中の台詞と一致しているだけの、矢野さんの心からの言葉を私たちに伝えているとしか思えませんでした。それにしてもかなりの距離を、早足で歩きながらステージへ上った矢野さん。「辛いときや困ったとき、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はあなたのそばにいる」というとても心強い言葉を語りかけ、『Future Parade』が始まりました。

 12人がパフォーマンスを始めると同時に、矢野さんは下手に用意されていたトロッコに乗り込みました。トロッコは私たちがいる方に向かって走り出しました。矢野さんはスクールアイドルに向けてブレードを振りながら、時々色を変えつつ、私たちのほうもたくさん見てくれました。これぞまさに「侑ちゃんパレード」です。(なんつって)

 歌を歌う12人も、ソロ曲の振り付けを取り入れてダンスしている名場面なのですが、私は侑のことばかり考えていました。今回のステージ装飾では、モニターの左右に虹ヶ咲学園の名前の由来と思われるレインボーブリッジがあしらわれていますが、橋桁の部分がピアノの鍵盤になっています。これは、侑が虹の架け橋であることを意味しています。都心とお台場、つまり私たちの日常*5と『虹ヶ咲』の世界を結ぶ橋が、高咲侑という存在なのです。このライブだけでも、侑は色々な姿を見せてくれました。ファン代表として楽しそうにブレードを振る姿や、自らもピアノを弾いてトキメキを発信する姿、そしてメンバーたちの中心的な立ち位置で「アイドルにとってのアイドル」という姿……。スクールアイドルの与えてくれるトキメキや勇気を表現するために楽曲を作ったことと、スクールアイドルをきらきらした目で見つめる表情、そのどちらが欠けてもこれほど愛されるキャラクターにはなっていなかったはずです。侑が生まれ、矢野さんがそれを体現したことが、私たちファンのあり方も大いに変えていったと思います。

 その侑が「次はあなたの番!」と皆に語りかけるアニメのラストシーンが流れ、『夢が僕らの太陽さ』がかかりました。この曲でも矢野さんはステージに立ち、13人で同じステージでのパフォーマンスとなりました。メンバーたちが持っている花が侑の花かごに入れられていきました。矢野さんがこぼした笑い声が、<CC> Day1でもマイクに入っていたのを覚えています。『虹ヶ咲』は、このように心が満たされていく物語です。

 

5. 客席生まれの光

 アニメ2期の物語は、これでおしまいです。しかし、『Next TOKIMEKI』はその先を描きます。2期から加入したR3BIRTHメンバーの、客席からライブを見たいという思いに応え、1期組の9人が3rdライブ (=1期) の曲を披露します。

野球も終わり、静まり返る深夜のベルーナドーム (2022. 9. 17)

 実は、私は前日参加していたツアーで、深夜のベルーナドーム (西武ドーム) 前へ行っていました。メットライフドーム (当時) で開催された3rdライブには参加を見送ったのですが、あのとき「夢がここからはじま」ったのだと噛みしめました。今思うと参加したかった思いもありますが、2期の3人も当時同好会に加入していなかったり、コンテンツとしてはメンバーであっても出演できなかったりだったので、3人と同じように新鮮な気持ちでステージを観られたので嬉しかったです。すべてショートバージョンでしたが、曲数が多いので箇条書きで、感想も抜粋します。

『ツナガルコネクト』(璃奈)

『Butterfly』(彼方)

『DIVE!』(せつ菜)

『Solitude Rain』(しずく)

『サイコーハート』(愛)

『La Bella Patria(エマ)

『VIVID WORLD』(果林)

『Poppin‘Up!』(かすみ)

『Dream with You』(歩夢)

 曲順がDay1と異なっていたようで、後ろの方から毎度驚きの声が上がっていました*6

 『Butterfly』と『サイコーハート』はトロッコパフォーマンスとなりました。彼方役・鬼頭明里さんは間近を通り、愛役・村上さんは私とは反対側での演技になりましたが、村上さんは次の『La Bella Patria』の最中に回送されていくトロッコに乗りながら、スポットライトに照らされない暗い中で私たちに手を振ってくれていました。もちろん、推しのエマ役・指出毬亜さんの演技中だったのですが、トキメキが多すぎて大いに迷ってしまい、まさに「侑ちゃん状態」でした。とはいえ、指出さんが伸びやかな歌声から繰り出す草原と青空に、駆け抜ける村上さんの太陽という取り合わせは、絵になるばかりでした。この2人は1期4話で会話しているほか、現在小泉さんと3人で『がさらじ』のユニットを構成しています。

 直後の曲順が『VIVID WORLD』だったのも良かったところで、エマの想いを受け取っての果林のパフォーマンスとなりました。サーチライトが乱れ舞う、本編の再現度の高いステージでした。

 R3BIRTHの3人が登壇して9人のパフォーマンスを振り返り、9人と矢野さんが後から合流して全員揃いました。客席から9人のことを見ていたというのは、メンバー3人*7もそうですが、既に出演が決まっていたキャスト3人もそうであり、この1期メドレーから徐々にキャスト側の文脈にシフトしてきているのを感じました。<CC> の東京ガーデンシアターは劇中の1stライブ会場ですが、武蔵野の森は現実の1stライブ会場です。アニメ2期に関する内容から、ニジガクに侑が加わったこと、R3BIRTHの3人が登場したことと、少しずつ時系列を遡って、振り返っていました。最後は、この場所で披露された『Love U my friends』を12人で歌って、ライブの本編パートは幕を閉じました。

 

6. 「あなた」の名前とアンコールメーター

 5thライブはアンコールのタイミングがシリーズのライブの中でも特に早かった*8のですが、私が注目したのは恒例のアンコールメーター*9です。真ん中にツインテールが特徴的な侑の顔の黒いシルエットが現れ、それが中心になって12色の花弁が開きました。そして、会場の拍手やTwitterでアンコールをすると、花弁にエネルギーが溜まっていき、メンバーごとに異なる色と模様の花弁ができあがるというものです。

 2020年に「あなた」に当たる『アニガサキ』主人公の名前を決める公募および投票が行われました。決定案は勿論「高咲侑」ですが、私は公募で「高橋令花」と応募し、12の候補から選ぶ決選投票では「真中双葉」に投票しました。今思うと、この演出ではツインテールの双葉が開いて、侑が花の中心に来る形で虹の花が咲いていました。自分で考えた方ですが、「令」は令和の令で、「零」の略字でもあることから、ニジガクの「No.0」を意識して考えました。「零」も原点で、みんなの中心にあります。そして、このライブでは侑が虹の架け「橋」*10であることも示されたのです。皆それそれに想いを込めて応募したり投票したりしたと思いますが、少なくとも私はその想いが侑に届いていたと思いました。決まったらノーサイドで、今や皆侑のことが大好きです。

 そして、虹の花が咲く歌といえば……。

 

7. 繚乱! 虹ヶ咲!

 メーターが完成し、暗転したステージに12人が横並びになります。12人は特攻服 (?) *11を身にまとい、刀のような長いブレードを握りしめていました。皆お待ちかねの「問題作」、『繚乱! ビクトリーロード』です。この曲の前奏では、不良の成人式よろしくステージから爆竹が上がります。このことは <CC> Day1の配信で知っており、身構えていたのですが、煙の量が想像以上に凄まじく、知っていても度肝を抜かれました。「不良」に扮して皆思い思いに暴れる曲で、本格的にスケバンになりきる大女優しずくがいる一方で、日本の不良漫画が好きでコスプレして喜ぶ外国人といった雰囲気のエマもいて、マンスリーアンケートなどで色々なものになりきってきたからこその説得力を感じました。

 この曲は、1人ずつまとまった長さのソロラップから構成されているという特徴があり、それぞれがソロ曲のような雰囲気を持っています。1人が歌っている間、他の11人はそのメンバーを思わせるダンスをしていて、『フェス』等で既に見られた他メンバーがバックダンサーを務めているのの延長線上にあります。栞子の時など全員正座してしまい、特攻服姿の生徒会長にひれ伏しているかのようであまりに面白いです。演出に気を取られて忘れがちですが、この曲の歌詞も「スルメ」で魅力的なので、いつか別途考察したいと思っています。

 <CC>ではこの後R3BIRTHが残って『MONSTER GIRLS』を披露しており、また <NT>Day1では『Level Oops! Adventures』が披露されたようで、どちらも会場を沸かせ盛り上がる系の曲でした。しかし、『繚乱』終盤ではステージ両側に3台のトロッコが用意されました。何を歌うかと思えば、この盛り上がりから一転して『トワイライト』でした。放課後という短いながらかけがえのない時間、青春の時間の象徴と、確かな友情を感じる歌詞が心に沁みます。エマが2期11話で「昨日や明日のことで悩んでたら、楽しい今が過ぎちゃうよ」と言った、かけがえない宝のような「今」です。Cメロの「はじまりのこの場所でまた」が栞子のパートなのが、『繚乱』でさっぱり乾いていた涙腺にまた響きました。栞子たちにとっては、はじまりの日に立てなかったステージで、今皆と手を繋ぐことができている、そのことを実現させられるまでに育んできた友情があるのです。

 

8. 迷いながら生きて、友情が生まれた

 12人はそのまま退場しました。すると、『未来ハーモニー』が流れ出しました。先程の2期11話でOff Vocalで使われた曲です。映像は、ダイバーシティ東京プラザでのお披露目イベントを映し出していました。私が初めてニジガクキャストと出会った場所です。そこから、映像はニジガクの歴史を振り返っていきました。2018年からの4年間、メンバーが増え、ライブを取り巻く状況は目まぐるしく変わりました。ニジガクも、その間に予定になかった奇跡のアニメを勝ち取り、それを推し進めてきました。前々から身体の不自由があった楠木さんが途中までできていたフォーメーションダンスが困難になり、他のメンバーも諸々故障が発覚するなど、その道筋は一筋縄ではありませんでした。むしろ、μ’sAqoursが辿ってきた道筋を辿らない、独自路線でずっと茨の道でありました。その度に悩み、苦しんできましたが、そのすべてに今に繋がる価値があったのです。

 「いつだって、いまが最高!」。それが、ニジガクが出した答えです。

 12人が、新衣装に身を包んで姿を現しました。流れ出した曲は、未発売の新曲『永遠の一瞬』です。『スクスタ』で既に使われていますが、Fullを聴くのは初めてです。今この瞬間も、いつか振り返った時に消えないものを作っている。そんな「永遠の一瞬」です。ニジガク初の、未発売曲のライブ披露となりました。

 一瞬暗転して、明転すると12人は手に旗を持っていました。旗の「ニジガク」の文字は、手書きだったのでしょうか。<CC> でも披露されていた『Hurray Hurray』ですが、今回は1期のオリジナルバージョンと異なる12人での披露となりました。1期BDの特典曲ではありますが、「僕らの友情どこまでも」や「送ろうよエール」のように、2期後半でニジガクが辿り着いたものを感じる歌です。そして、曲後半で上側ステージに空けられていた空間には、応援の気持ちを同じくする存在、侑こと矢野さんが現れました。矢野さんはひときわ大きな旗を振り回していました。

 

9. スクールアイドルという生き様

 スクールアイドルは、というよりもむしろスクールアイドルを演じるキャストには、そのスクールアイドルとしての生き様に心を打たれることが多くあります。「侑ちゃんに、みんなに会えてよかった」という矢野さんの言葉や、「後から入ったメンバーとして、当たり前にここに居られることに感謝」という法元さんの言葉など、一つ一つの重みを感じて、必死に拍手を送っていましたが、今回も、というべきでしょうか、楠木さんの背負うものの大きさには涙が止まらなくなりました*12

 身体の不自由を抱えた楠木さんがステージに立っていなかった理由は、「不完全なせつ菜を見せられないから」でした。自分がせつ菜になれないことにずっと葛藤を抱えていたのです。それでも、メンバーもファンも、どんな形でもいいからステージに立って、歌ってほしいと願い続けてきました。私たちにとってそれは当然で、せつ菜は楠木さんしかいないからです。それでもどうしても思い入れが強く、歌えなかったのが『TOKIMEKI Runners』で、<NT> Day1まではステージに上がっていませんでした。確かに <CC> Day1では8人で歌っていました。この仲間とだから実現したステージが、この日の『TOKIMEKI Runners』だったのです。

 私はこの話を、あまりにも、あまりにもせつ菜だと感じながら聞いていました。せつ菜は、スクールアイドルとしても、生徒会長の中川菜々としても、とても理想が高く、それゆえに挫折も多い子です。そして、悔いが残るくらいなら、退くことを選択してしまうこともありました。もし、菜々が今の楠木さんと同じ境遇に置かれたとしても、同じ選択をしたかもしれません。

 皆がラブライブ! に出られないならとスクールアイドルを辞めることを選んだ菜々に、侑は言いました。

「だったらラブライブ! なんて出なくていい!」

 楠木さんほどではないにせよ、ファンの側にも葛藤はあります。楠木さんが悩んで出した答えに対して、それは「大好き」の押し付けではないのか。それでも願い、祈りました。これほどせつ菜を愛してくれている楠木さんだってステージに立ちたいはず。だから、その願いを叶えてほしい。楠木さん自身の「大好き」を実現してほしいと。それは、せつ菜の「大好き」を叫んでほしいという侑の想いと重なります。2期最終話で侑が言った「次はあなたの番!」は、もう始まっていたのです。

 これ以降も、それぞれ演じるメンバーの役回りを意識したMCを聞くことができました。例えば、久保田さんはいつも大人の視点から言葉を語ってくれます。2期最終話にも触れて、ライブがたくさんのスタッフ*13に支えられて実現していることに感謝していました。

 最後の曲は、1stライブの会場に相応しく、『TOKIMEKI Runners』でした。この曲には通常・スクスタ17章・アニメ2期8話と様々なバージョンがありますが、今回は通常版を12人で歌うという、今までにないものでした。変わり続けていく虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の重ねてきた歩みが、「今この瞬間」として再構成されていきました。

 この後、侑を含めた13人がさっと退場してこれまでのライブは幕を閉じていたのですが、矢野さんと大西さんが退場した後、何やら意味深な間が……。

 会場内の拍手が大きくなり、揃いはじめます。この高揚は、あの「約束の地」で経験したものとほぼ同じでした。「来る!」大きなトキメキのうねりに押され、精一杯手を叩きました。

 ニジガク初のダブルアンコールが実現しました。曲は『Future Parade』で、ステージいっぱいに広がって皆に会いに来てくれるようなパフォーマンスでした。今度は矢野さんもステージに並んでいました。TVアニメが終わっても、今度は『にじよん あにめーしょん』があると発表されたとおり、侑を含めたニジガクメンバーにまた会えるということを、早速示してくれました。

 ダブルアンコールの退場も、矢野さんと大西さんの2人が最後でした。まさにどんな道を辿っても、2人に始まり2人に終わる関係です。

 

10. 総括・Next TOKIMEKI

 今回は2期の振り返りのライブでしたが、<Next TOKIMEKI公演> はそれに加えてニジガクの歩みも振り返るという、欲張りな内容になっていました。4thライブがニジガクの総まとめライブだったので、それ以上のものがわずか半年で来るとは思っていませんでした。アニメでは時に悩み、時に変化を受け入れながら、青春を生きる13人と、それを取り巻く人々が描かれました。それは現実でも同じで、1人でステージに向かうという重圧と戦い、辛いことは仲間と分け合って、ファンのほうもニジガクと真剣に向き合い、ともに悩んできたのです。それも今回のセットリストの、特にアンコールに盛り込まれていて、現実とアニメの重なりの部分を、新曲まで使って表現していました。一見ちぐはぐに見えた『繚乱! ビクトリーロード』からの特攻服のままの『トワイライト』も、ニジガクが築いてきた「スタイル」と、育んできた「友情」が不可分であることを表しています。

 「次のトキメキ」を作り出すのは、ニジガクがこれまで繋げてきた「連鎖」だと思います。例として、稀代の天才作曲家・シンガーであるミア・テイラーが歌えるようになったのは何故でしょうか。自らの人生に割り込んできたスター・鐘嵐珠がいて、孤独に寄り添い、背中を押してくれた天王寺璃奈がいたからです。では、なぜ璃奈にそれができたかといえば、かつて宮下愛に同じことをしてもらい、愛も川本美里に背中を押されたからです。また、嵐珠がわざわざミアのところにやってきたのは、侑が生み出したSIFがあったからで、その原動力は中川菜々が優木せつ菜としての最期と覚悟したライブでした。こうして繋がってきた世界は、キャラクターとキャスト、それらとファン、さらにはまだニジガクを知らない人へと繋がっていきます。

 これは私がラブライブ! シリーズに願った姿です。誰にでも、真剣に生きていればその背中を追いかける人が現れると、『虹ヶ咲』は教えてくれます。もしあなたが私のように、自分のことを何も持っていないただのオタクだと思うのならば、その何かを探すと同時に、とりあえず『虹ヶ咲』のある毎日が楽しいということを発信し続けるのはひとつの選択肢だと思います。ニジガクという「大好き」を持っているだけであなたが何も持っていないということはありませんし、ミアのように大きなポテンシャルは持っているけれど、何か勇気を与えてくれる存在を必要としている人に、『虹ヶ咲』が届くかもしれません。誰かに届いて、連鎖したら、素晴らしいことです。

 虹の先のお台場に、武蔵野の森という始まりの場所に、そして私たちの心の中に。「スクールアイドル、ここに在り」という言葉で、長文を締めくくりたいと思います。

*1:虹ヶ咲ユニットライブ & ファンミーティングではユニットメンバーたちが放送。Aqours6th <WINDY> ではレポーター役・高森奈津美さんが収録で放送

*2:もう一つ、表情が特徴的だったのが、<CC> でのみ披露された『テレテレパシー』で、田中ちえ美さんが「璃奈ちゃんボードをしていない璃奈」の表情を再現している

*3:Liella! でもあったような……

*4:結局駆けつけた大西さんに引き剥がされた

*5:お台場在住のニジガクファンもいるだろうが

*6:一度や二度驚くのはいいが、本来歓声は禁止なので、あまり繰り返すようだと気になってしまう

*7:第1回SIFの、その場に居合わせたのは栞子のみ。嵐珠は映像で見て、ミアは後から知った

*8:<CC> のほうが顕著

*9:アルコールメーターではない。Twitterのコメントも表示されるが、「アルコール」はカットされていた模様

*10:とはいえ日本人の苗字第3位を付けたのは悪手だったかもしれない。「高」は決定案よろしく「高坂穂乃果」「高海千歌」につられた

*11:公式のMCやオフショットでは「学ラン」と呼称

*12:直後の鬼頭さんが上を向いて変顔をしていたが、涙をこらえていたのだろうか

*13:「寿汰ッ譜」。私はこの法被を見ることはできなかった