自分の運命を知ったカナタ
住宅街に現れたスピニーという小怪獣。マスコットキャラクターのような見た目ですが、その正体は、誰もがよく知る大怪獣でした。今回は、この怪獣との戦いの中で、カナタの心の痛みが描かれていきます。
1. 赤ちゃんパンドン現る!
住宅地を騒がせる「スピニー」*1という小怪獣の捕獲作戦から物語が始まります。色と見た目からまさかとは思いましたが、スピニーは逃走を続けるうちに特定の地層からエネルギーを吸収して成長し、俊敏さや火炎攻撃を身につけていきます。そして、頭が2つに増え、一頭身の身体から胴体が生え、ついに我々の見慣れた姿に変貌しました。スピニーは双頭怪獣パンドンの幼体だったのです。
3話に登場したエレキングの幼体もそうですが、有名怪獣のかわいらしい幼体姿にはギャップを覚えるものです。ただしこの幼体は、非常に逃げ足が速く、どんどん強くなっていったので、かなり厄介な個体であったことは特筆すべきでしょう。
『セブン』のラスボス怪獣だったパンドンですが、デッカー・ダイナミックタイプの二刀流戦法により、思いの外あっさりやられてしまいました。これは、後述するカナタの内面の問題に時間を割く必要があったからでしょう。
2. フォーメーション・デルタ
カナタの心に重くのしかかっていたのは、アガムスの存在でした。人類のせいでバズド星が滅ぶことを考えると、どんな失敗も犠牲も許されないと、イチカとリュウモンが怪訝に思うほど気負っていました。そのくせ、いざスピニーと対峙すると、その目つきにアガムスの形相を思い出して手が止まってしまい、助けに入ったイチカもろとも危うく焼死するところでした。パワーアップ後の苦悩回は定番とはいえ、前回あれだけはっきりとした軸のある姿を見せたカナタはどこへ行ってしまったのでしょうか。
確かに、「自分の意志で戦うこと」と「生き抜くこと」を子孫のデッカーに対して宣言はしたものの、カナタはそれを自分の軸だと自覚したわけではありませんでした。つまり、ケンゴと約束した「自分だけの答え」をまだ見つけたわけではなかったのです。むしろ、それに一歩近づいたからこその成長痛のようなものがあるのではないでしょうか。つまり、カナタにとってはこの苦悩はむしろ脱皮のチャンスなのです。
しかし、それはチームにとっては一大事です。今回のスピニー捕獲→駆除作戦は、3人1組で初めて成り立つ作戦でした。リュウモンはカナタの神経衰弱状態を認め、司令室に対して作戦変更を再三要求しました。しかし、今はどうしても3人でやらねばならないという状況でした。「今やるしかねえ!」が口癖だったのに、肝心のときに持ち味を発揮できないカナタに、リュウモンははっきりと「単純野郎が規模の大きいことを一人でぐじぐじ考えたって解決できない」「1人でどうにもならなければ、助けを求められるのがチームだ」と伝えます。苦悩すべき時に独りで勝手に苦悩させてもらえないのが大人です。その代わり、1人で立ち向かえない問題にチームで立ち向かうことができる、むしろそうしなければならないのが大人の良さだと思います。
カナタは「自分も自分の子孫もウルトラマンである」という重大な秘密を抱えながら、それでも独りで人類の運命を背負うわけではありません。GUTS-SELECTの仲間たちと共に、「大人になっていく」カナタに期待しましょう。
3. GUTS-SELECTに何が?
パンドンを倒し、意気揚々と帰還した3人を待ち受けていたのは、修羅場のような司令室でした。ムラホシ隊長が本部の取り調べを受けることになっていたのです。おそらく、アガムスのことで嫌疑をかけられているのでしょう。あるいは、これもアガムスの陰謀かもしれません。いずれにせよ、今までのTPUは (怪しい人物の潜入を複数回許したこともありましたが) 上層部の暴走や大人の世界の面倒ごととは無縁の世界でしたが、一度組織の綻びを立て直す時期に来ているのかもしれません。これを乗り切れば、TPUもGUTS-SELECTもまた一回り成長できると信じたいのですが……。