11月3日は『ゴジラ』誕生の日です。今回の『デッカー』には、それを記念してゴジ……もとい、ゴメスが登場しました。暗闇の中を闊歩する黒い影や、怪力だけで町を破壊し、ウルトラマンを苦しめる姿は、やはりそれを意識していると思わざるを得ません。『X』でも、この時期にゴメスが登場しましたね。
さて、それに立ち向かうはずのGUTS-SELECTは、この一大事に取り調べを受けていました。その取り調べにやってきたのは、まさかのマルゥル……ではなく大人のメトロン星人でした。その名を、ナイゲルといいます。
今回は、リュウモンの過去と、このナイゲルの個性が印象的でした。
カナタを潰した岩の下からデッカーが出現した時点で、バレているのでは……?
1. リュウモンのヒーロー
リュウモンがTPUに入ったきっかけは、小さい頃に遭遇した怪獣災害で、TPUの隊員に命を救われたことでした。そのため、命を救う仕事に人並み以上の使命感を持って取り組んでいます。
今回、調査にやってきたナイゲルが疑ったのは、ムラホシ隊長の10年前の隊律違反のことで、それが「民間人の少年を救うためだった」ということです。このときのムラホシの行動の結果、当時戦っていたヒュドラムを取り逃がしています。現場の目撃者が折らず、少年の身元もわからなかったため、ムラホシ隊長はピンチに陥りました。
その少年とは、リュウモン ソウマでした。
ソウマ少年を救ったムラホシは、ヒュドラムの攻撃を受けて負傷します。そして、そのことを組織にも認めてもらえませんでした。それでも命を救うことに命を懸けた姿を少年は忘れることができず、今もその背中を夢見て戦い続けています。ムラホシの想いは、しっかりと繋がっていたのです。
それにしても以前出てきたリュウモンの過去をここで解き明かして1話分の物語として仕上げるシナリオの伏線回収のうまさには、舌を巻いてしまいます。
2. データ人間の矜持
内部調査局長として本部からやってきたメトロン星人ナイゲルは、冷徹で嫌な感じのデータ人間でした。アガムスの一件でムラホシ隊長を疑うまではいいとして、異星人への肩入れ (ナイゲル自身も異星人の筈ですが……) や、10年前の隊律違反を指摘し、ムラホシ隊長を追い詰めました。ムラホシ隊長がいくら人格者だろうと、過去の行動に疑わしい点があり、その反証ができない以上、疑いを晴らすことはできないというのです。コミエシティ郊外に出現したゴメスへの対処でも、同市が対怪獣災害モデル都市であることを根拠に、出動の必要はないとの判断を下しました。もっとも、コミエシティの防御が突破されたときに備え、副隊長による指揮を本部に打診済みでした。これだけ見ても悪い人ではなさそうですが、現場の危機感とは乖離していることは否定できません。
しかし、『デッカー』らしい面白さは、ナイゲル局長がただの嫌な奴ではないということにあります。彼女 (彼?) の責務は「データを重んじ、ルールを厳格に適用すること」。リュウモンがかつてムラホシの救った少年であり、ムラホシ隊長の行動の証人となり得ることを知ったナイゲルは、すぐさまムラホシ隊長への嫌疑を取り消しました。この潔さ、そして自分の貫くべき矜持からぶれない姿勢こそが、大人らしさだといえるでしょう。
「データ人間」も個性の一つです。リュウモンが「見つめる天才」であり、イチカが「まっすぐの天才」であるのと同じことです。たった1話のゲストキャラですが、ナイゲルは大人として立派であり、キャラとして立っているところを見せてくれました。
なお、次回の総集編でも内部調査局は特務三課に調査に入ることになっており、もしかしたらもう1回だけ出番があるかもしれません。
3. カナタの秘密
リュウモンは、カナタがウルトラマンデッカーであることに、おそらく気づいています。
デッカーがパンドンと戦った時に負った傷をカナタも負っていたことに言及していましたし、なによりもリュウモンほどの観察力のある人が、デッカーが現れているときにカナタがいないことに気づいていないはずがありません。その話題を振られたカナタは、軽率にも「地球人の姿になってたら見分けようがない」などと口走ってしまいました。マルゥルに鎌をかけられたときのようにあっさり口を滑らせはしなかったので、同じ手を食わないように学習はしているのですが、それでもリュウモンにとっては十分すぎるヒントです。
カナタがデッカーになって戦っているとき、リュウモンはイチカに「パンドンにやられた腕が!」と言っています。ちょうど先刻、カナタに腕の怪我のことで鎌をかけていたのを覚えているイチカにも、リュウモンは真意に気づいてもらおうとしています。それはあたかも、「俺たちだけがカナタの秘密を知っているから、俺たちで支えよう」と言っているかのように聞こえました。
デッカーは本当にリュウモンたちのすぐそばにいる存在です。それと同じように、リュウモンにとってのヒーローも、「意外とそばに」いた、という物語でした。