普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

【セトリネタバレ注意】増えた! 結んだ! 貫いた! Liella! 3rd LoveLive! Tour ~WE WILL!!~ 愛知公演Day2全曲感想

 2022年12月11日 (日)、ラブライブ! スーパースター!! Liella! 3rd LoveLive! Tour ~WE WILL!!~』愛知公演Day2に参加してきました。

 初めてラブライブ! シリーズのライブイベントに行ったAqoursの3rdライブ以来、3度目の「アニメ2期準拠ライブ」でした。アニメの楽曲中心のライブといっても構成の仕方には様々あることがわかってきましたが、今回は「アニメのライブ化」という意味での完成度が非常に高かったと思います。

 アニメ2期も振り返りながら、ライブの感想をまとめました。

 なお、セットリストに関しては年明け千葉公演以降も大きく変更されない可能性があります。前情報を入れないでライブに臨みたい方は、終演後にお読みいただくことをお勧めいたします。

広い空港島に建つAichi Sky Expo

 

 

1. 会場

 今回は「愛知公演」ですが、会場は名古屋ではありませんでした。常滑市にある中部国際空港の、空港島にある『Aichi Sky Expo』こと愛知県国際展示場が、今回の会場です。名古屋からは距離がありますが、空港というだけあって交通の便が良いのが魅力的でした。

 展示場なので、全てがフラットなフロアでした。つまり、通常の会場でいうところのスタンド席がなく、アリーナしかないような状態です。

 そして、これは公演が始まってから気づいたのですが、どの席もステージかトロッコが通過する通路からかなり近くなっていました。それもそのはずで、Aichi Sky Expoの収容数は高々6,500人なのです。Liella! 3rdライブは、大きな変更を加えずにベルーナドーム (西武ドーム) での公演にも耐えられるステージ演出の設計となっているはずです。それを、人数5分の1の規模で見られる、贅沢なライブ会場といってもよいでしょう。私の席もセンターステージが非常に近く、始まる前からドキドキが止まりませんでした。

  一方で、会場物販についてはかなり抑えめの規模になっていました。到着時点で大半のグッズが売り切れていただけでなく、Liella! Waterさえなくなっていました。あまり在庫を置けない環境なのでしょうか。

 会場に入ると、入場者特典で、ライブでよく「発射」される銀テープが全員にプレゼントされていました。発射するとライブそっちのけで争奪戦になってしまうので、気の利いた計らいだと思います。

 

2. 再び渡される夢のバトン

 開演5分前。最終の場内アナウンスが流れ終わると、イントロがかかりました。『ユニゾンです。これは2ndライブ最後の曲で、2ndライブの夢のような時間を思い起こさせます。ちょうど、同ライブでアニメ1期最後の曲『Starlight Prologue』が開演前に流れ、メンバーからキャストへバトンが渡されたのと対になる演出です。今度はアニメ2期を駆け抜けた9人へと、ライブという道が結ばれていきます。

 オープニング映像が流れ、Liella! の登場です。最初の曲はもちろん、アニメ2期OPテーマの『WE WILL!!』です。Liella! らしさはそのままに、好戦的な歌詞が印象的な曲ですね。1stライブではロングトーンで魅了した千砂都役・岬なこさんが歌声を響かせるために、演奏が静かになるところでも、岬さんはばっちり決め、快調なスタートを切りました。その勢いのまま、『スター宣言』が続きました。

 

3. こんにちは、愛知県!

 横に並ぶとやはり9人は壮観です。MCに入り、各メンバーの自己紹介パートとなりました。人数が増えた分時間が延びましたが、今回はいつもに増して飽きさせないものになっていました。まだ1期生でさえ、客席側のコール込みでコール&レスポンスができたことはありませんが、2期生のコーレスも早くも定着しているように見えました。

 順番は番号順を左右交互に並べ、1期生を2期生が挟み込む形で、トップバッターは向かって左端の四季役・大熊和奏さんでした。大熊さんはさっそく「爆弾発言」を投下します。

「ここを世界一、宇宙一熱い場所にして、ここ常滑は周りが海なので、常滑を火の海にしましょう!」

 どこぞの総○記しか使わないような表現に客席一同、困惑です。とはいえ、映像演出で火が燃える表現 (『揺らぐわ』) も海の中の表現 (『水しぶきのサイン』) もあったので、後になってみれば大間違いでもなかったかもしれません (?)。

 首都圏以外での公演では、出演者が方言を使ってアピールすることもよくあると思います。今回も愛知の方言を試すキャストが何名かいましたが、すみれ役・ペイトン尚未さんはなんと三河弁」を話していました。前日が名古屋弁だったとのことですが、愛知のことをしっかり知らないとこの発想は出てこないと思います*1

 Liella! の「わちゃわちゃ」には、本物の部活のような、内輪のノリのようなものが強く出ている気がします。味噌煮込みうどんを食べた話になったとき、うどんが好きだという岬さんが「私の身体は麺で出来ている」と言ったとき、周りが引くような素振りを見せたあたりにもそれを感じました。

 「火の海」とはいきませんが、大盛り上がりで会場が暖まったMCでした。

 

4. マルからのリスタート

2期の感想はこちらから

carat8008.hateblo.jp

 2期をなぞる本編パートに、シームレスに突入します。1期生5人がステージに残り、『Welcome to 僕らのセカイ』が始まりました。劇中では1期生のみの曲はこれが最後です (その後、BD4巻特典曲として『Hoshizora Monologue』が登場)。歌うのは1期生のみなのですが、サビ直前に、確かステージ下手後方から、きな子役の鈴原希実さんが「ひょっこり」。アニメの完全再現となりました。ちなみに、鈴原さんの登場位置は各公演で異なるという情報もあります。

 この曲が終わると、会場の雰囲気が一気に暗くなりました。薄暗い中を青い光が迸り、観客たちのブレードは青系の色へと変化しました。この後、どの色を灯すべきか私にもわからなかったのですが、とりあえず同じ色にしてみました。

 暗闇の中から、壮大な音楽とともに、ウィーン・マルガレーテ役・結那さんが出現しました。その雰囲気から、一瞬でこれまでのラブライブ! とは全く違うことを察しました。結那さんの舞う姿は、人の世のものとは思えないほどしなやかで、激しいものでした。ここだけFPSが違うのかとさえ思ってしまいました。そんな『Butterfly Wing』が終わり、マルガレーテにLiella! が敗北したシーンからアニメ映像が流れました。

 見る者を魅了し、釘付けにする『Butterfly Wing』と正反対なのが、『Go!! リスタート』です。メインステージからセンターステージへ、1期生に鈴原さんを加えた6人がやってきました。改めて自分の席からのセンターステージの近さに驚いてしまいます。表情から衣装の細かいところまでよく見えました。学校の体育館で文化祭のパフォーマンスを見ていても、ここまで近くで見られることはなかなかありません。そう、この曲が披露されたのはアニメでは学校の体育館ライブだったのです。連番の友人が言っていたとおり、全体がフラットな展示場になっていることで、この曲の再現度はより高くなっていました。誰がセンターということもなく、センターステージに円形に立って客席のファン全員と向き合い、会場全体がひとつになるというコンセプトが実現していました。衣装でも、頭の飾りの色が全員自分以外のメンバーの色になっていたのがよく見え、「結ぶ」ことの体現、Liella!の連帯を感じました。

 それにしても、ここまで近いと本当に「目が合った」ように感じました……。

 

5. リエラのうた2

 ここで一旦アニメ本編の流れを中断して、1stライブでも好評だった『リエラのうた』パートに移りました。TVアニメと同じヨーヨーミラクル社によるアニメーションが流れますが、TV版と違ったのは映像の中身がアニメ本編の物語を踏まえたものになっていたことです。例えば、ゴーカートで遊んでいるのが恋とメイになっていたり (2期7話に相当)、コーヒーカップ (メリーゴーランドだったかもしれません) で目を回し、ベンチに横たわったきな子が恋と千砂都から水をもらっていたり (2期2話に相当。ただし水をくれるのは大体かのん)。これまでこんな物語があったなと懐かしみながら、それを遊園地での休日に置き換えた楽しいアニメーションでした。

 さて、『リエラのうた』パートは1stライブでも完全シャッフルで、誰がどの歌を歌うかお楽しみでした。曲は7曲あり、うち2曲が全体曲で残りは2人ずつのソロ曲、だったのですが……。アニメーションが終わると、センターステージにいきなり3人登場しました。1st前半では1人ずつ歌っていましたが、後半以降と3rdライブでは、ソロ曲は歌っている2人が両方登場してデュオとして、全体曲は何人かで歌うという形式のようです。かかった曲は『プライム・アドベンチャーでした。好きな曲ですが、本来は全体曲なのでまさかこんなにすぐに聴けるとは思いませんでした。一瞬誰が出ているのか混乱してしまったので、ブレードの色をころころ変えてしまい、一番が終わる頃にようやくメイのルージュ・四季のアイスグリーンホワイト、夏美のオニナッツピンクの3色にセット完了しました*2

 3人のダンスを見ていると、本当に楽しそうに遊ぶ女子高生3人組に見えてきました。現在は、18歳の夏美役・絵森彩さんを含めて全員高校生よりは年上なのですが*3、不思議なのは、『Go!! リスタート』のセンターステージでパフォーマンスしていた6人は、高校生であるLiella! メンバーとシンクロしているようには見えても、幼く見えるという意味で高校生のように思えたわけではないということです。同じ高校生を演じるにしても「オン」と「オフ」で差が出るように演じられるということでしょうか。あるいは、もしかすると2期生だけで集まると、決して悪い意味ではなく未熟に見えてしまうのかもしれません。9人で並ぶと全くそういうことはないのですが、劇中で何度も取り沙汰されていた1年生と2年生の実力差というのは歌唱力やダンス力よりも、そういう貫禄やオーラの部分だった可能性さえ見えてきます。無邪気に見える3人のかわいらしさを楽しみつつ、少し考えさせられてしまいました。

 センターステージでのパフォーマンスが終わると、メインステージから2人のスクールアイドルが出走しました。お互いを強烈に意識し合っている可可とすみれの『エンドレスサーキット』です。2人はトロッコに乗り込み、外周の通路を進みます。そのトロッコの速度が、驚くほど速いものでした。Aqours6th東京ドーム公演で使われた高速移動台車ほどではありませんが、風圧の強さに驚いたと可可役・LiyuuさんがMCで語っていました。2人は、トロッコをゴーカートに見立ててレースしていたのです。

 ちなみに、1stライブ、2ndライブではトロッコパフォーマンスが行われなかったので、Liella! は1期生も含めて3rdライブで初めてトロッコに乗ったことになります。ツアー全体では宮城公演Day1の『パレードはいつも』が初のようです。

 センターステージに近い私たちには、もう1つの光景が見えていました。先ほどパフォーマンスをしていた2期生の3人が、ステージから可可とすみれの対戦をキャッキャと*4応援していたのです。先ほどの疑問の答えにもつながりますが、ここが遊園地だからこそ、Liella! メンバーの「かわいい女の子」性が強調されていただけに過ぎない気もします。

 かのんと千砂都の『駆けるメリーゴーランド』は少し違いました。浮いたり沈んだりしながら、一方がもう一方を追いかけて、今や並んで進んでいる2人の関係は、幼い女の子の関係性にしては厚みがありすぎるものです。その点、ゆったりした曲調も相まってほかのメンバーのパフォーマンスよりも大人びて見えました。かのん役・伊達さゆりさんの歌唱力はどちらかというとパワー寄りなのですが、こういったしっとりとした曲もどんどん自分のものにしていくのが頼もしいです。

 ここまで見てきた通り、2期『リエラのうた2』は、花をモチーフにしていた1期と異なり、遊園地の乗り物がテーマになっています。虹ヶ咲学園のA・ZU・NAもユニット曲で歌っているスクールアイドルのテーマパークがあったら、行ってみたいですね*5

 

6. 人数も、できることも、増えていく

 閑話休題、映像はアニメ本編に戻ります。メイ、四季夏美が加入するまでの流れを振り返り、Liella! は9人になりました。この記念すべき時に披露された曲は、それにしてはあまりに楽しげな『ビタミンSUMMER!』です。まさにLiella! の変化を象徴する曲です。ステージでもド派手に目立つ蛍光色に、頭に耳や触覚が生えた独特のデザインの衣装は、まさに「映え」に全振りしていました。この光景をカメラに収められるのは公式のカメラマンだけですが、歌詞だけでなく視覚的にも大変キャッチーなものでした。この曲はその週に放送された『FNS歌謡祭』でも披露され、同席した芸能人たちやお茶の間の視聴者にも強烈な印象を残していきました。

 キャッチーな曲が続きます。Liella! の日常を、SNSの書き込みのような軽快なラップで綴った『POP TALKING』です。この曲からトロッコに乗って、次のユートピアマジック』までファンのすぐ近くでパフォーマンスをしていました。友達に、仲間になれたことを、全身を使って歓ぶような2曲ですが、このセットリストが表しているものは、7話『UR 葉月恋』8話『Chance Way』中盤の、ゲームで遊んだり、一緒に原宿の街を歩いたりするような、2期生と1期生の関わりの中で変化し、成長しつつあるLiella! です。アニメの映像を使わずに曲のパフォーマンスでこれらが表現されるのもアニメ準拠ライブの面白さです。このあたりから、本編を意識した巧みなセットリスト展開に吞み込まれていきました。

 その流れから連続で繰り出されたのが、いよいよラブライブ! の予選楽曲となる『Chance Day, Chance Way!』でした。9人で花道を進み、メインステージからセンターステージへずんずんと進んでくるところでは、本当に担いでいる神輿が見えるかのようでした。外苑の銀杏も再現され、空から次々に舞い降りてきました。考えてみれば、ここは中部国際空港です。飛行機の発着地であり、道路と鉄道が通じ、さらに同空港特有の事情として、津なぎさまち*6行きの船便が就航しています。これほどまでに「道が集まり、人々を結ぶ場所」であるライブ会場も他にないかもしれません。

 今回は、『ビタミンSUMMER!』衣装のままでの披露となりました。1stの『ノンフィクション!!』や、Aqours3rdライブにおける『MY舞☆TONIGHT』のように、衣装替えのタイミングなどを理由に、肝心の衣装がお預けになってしまうことは時々あります。その分、後日それらの衣装がお披露目になったときの感動は大きいものになります。今後に期待ですね。

 

7. 本当の歌を探して ~セットリストの妙~

 『Chance Day, Chance Way!』が終わったあと、MCを挟んで、センターステージで『揺らぐわ』が披露されました。『揺らぐわ』はこれまた新しいLiella! らしいロックなナンバーで、9人の真剣な表情がかっこいい曲です。力強く、しかしどこか心細くも聞こえるピアノの伴奏と、炎の揺らぐ映像演出も印象的です。

 後のMCで鈴原さんもこの曲の良さを伝えていましたが、この曲の歌詞は理想通りにいかないなかで夢を追いかけてもがく2期生の歌であることを思わせます。Cメロの「ヒーローは」「揺れたり迷ったり僕と同じ」という歌詞には『私のSymphony』に通じるところも感じます。そしてここまでの、アニメのストーリーをライブで表現するという文脈に落とし込むと、9話で可可との秘密の約束のために非情な決断をするすみれや、それを受けて自分たちにできる歌をすみれに届ける2期生たちを想像します。

 そんな暗闇に射す光明、『揺らぐわ』のアンサーソングともいえるのが、『色づいて透明』でした。ライブの予習をしていたとき、この曲が刺さるかな、と薄々感じていましたが、大的中でした。9人に増え、次々に新しい色に染まり、その中で葛藤や衝突もあったけれど、心の底は透き通ったままという歌詞が響きました。そもそも、1期最終話から2期にかけての「絶対優勝!」という血の気の多い雰囲気 (『WE WILL!!』) の中で、何か大切なものを見落とすのではないかという不安がずっとありました。事実、すみれにはそれ以外に人には言えない大切なものがあって、そのために根本の大事なことを見失いかけました。しかし、かのんの、可可の、そしてLiella! メンバー全員の心は、皆で今を楽しむこと、応援に応え、観てくれる人々のことも励ますこと、喜びを分かち合うことといった、スクールアイドルの根底にあるものを忘れない、透明な心のままだったのです。それこそがLiella! が今年優勝しなければならない理由でした。本当は心配もしたけれど、サビの最後で「だから心配しないでね」というメッセージを伝えられ、Liella! を信じてよかったのだと心の底から思いました。短いながら希望を感じるアウトロも好きです。

 『揺らぐわ』『色づいて透明』がこれほどまでに強い曲になったのは、パフォーマンスや演出もさることながら、大胆な曲順の組み替えのおかげが大きいでしょう。これらは『Welcome to 僕らのセカイ』『Go!! リスタート』のバージョン違いのB面曲です。アニメを追いかけているときは序盤でこれらの曲を既に聴けていましたが、後半のここにこそ相応しいことに気づいた人は天才だと思います。

 自分たちの中で変わらない大切なものに気がついたLiella! に、マルガレーテが挑戦状を叩きつけます。アニメでの都大会前の映像が流れ、ついに決戦の火蓋が切られました。ステージ上段の側壁にはアニメ本編のモニターと同じ「LoveLive!」の文字が踊り、これが大会のステージなのだと理解させてくれました。その壇上にマルガレーテ役・結那さんが再び現れました。『エーデルシュタイン』での結那さんのパフォーマンスはさらに激しさを増し、会場に歌を叩きつけていました。特に鳥肌が立ったのは、結那さんとバックモニターをカメラで正面から捉え、その映像をバックモニターに映すことで、ステージ上のマルガレーテが合わせ鏡に囚われる演出です。合わせ鏡が表すのは、孤独と永遠です。観客が「合わせ鏡」を覗いても、その姿は映りません。私たちは、何があっても独りで願いを叶えようとするマルガレーテの心を覗いてしまったのです。

 対するLiella! が披露したのが、『Sing! Shine! Smile!』です。会場は明転し、皆で手拍子をして、会場は一気にひとつになりました。現代のライブイベント環境において、手拍子が最強の応援方法であり、それで客席を暖め、心を結ぶこの曲がライブにおいて力を発揮するという期待は、見事に現実のものになりました。この曲の衣装は2ndライブで先行登場しており、メンバーがキャストから引き継いだものでもあります。2期生が着るのは3rdライブが初となりますが、まさに9個の結び目が6,000人の心を結んでいました。余談ですが、この衣装のデザインは東海汽船が運航する『セブンアイランド結』号の塗装とも似ている気がします。もしかすると敗退したSunny Passionのことまで背負って歌っているのかもしれませんね?*7

 とはいえ、皆の心をひとつにしたのは、手拍子だけではなかったと思います。アニメ通りではありますが、私はここでも「曲順」が効いていると思いました。そもそも、マルガレーテの「本当の歌」も、依然として本当の歌であることに注意が必要です。マルガレーテは都大会でLiella! にこそ敗れましたが、2位入賞したのです。マルガレーテの歌を浴びた後、Liella! と一緒に手を叩いて、なおもマルガレーテを選んだ人が少なからずいたのです。このライブで『エーデルシュタイン』を聴いて、マルガレーテの孤独を覗いたとき、私の心も虚空を見つめていました。まるで、自分の中の孤独に触れてしまったようでした。人は誰でも孤独で、だからこそ孤独にあがくマルガレーテの決意が心に深く刺さるのだと思います。ところが、そうして開いた心の穴を、Liella! が結びつけ、満たしてしまいました。Liella! 自身もマルガレーテに触発されてあの曲を作ったというのもあります。逆だったら負けていたなどと極論は言いませんが、まさにあの出演順だったからこそ、Liella! は観る人々がちょうど求めていたものを届けられ、予選突破に繋がったと言ってもいいかもしれません。マルガレーテにとっては、パフォーマンスが良ければ良いほど、後のLiella! がますます煌めく、皮肉な結果になりました。

 『Sing! Shine! Smile!』で具体的な形になった「本当の歌」を掘り下げるのが、『名前呼びあうように』だと私は考えます。ゆったりとした優しい曲調ほど歌うのが難しいと連番の友人が言っていましたが、ここでは9人の歌唱力をじっくりと味わうことができました。この歌は、抱擁のように聴こえます。歌詞にも、「目と目がいまかさなった」「名前呼びあうように」「肩を寄せあいながら」とありますが、目や名前は、ひとの魂に直接繋がっているものです。「本当の歌」は、言葉だけよりも、魂同士の触れ合いができるものだと、Liella! は伝えたいのだと思います。魂と魂が擦れ合うので、当然傷つくこともあります。しかし、本当の歌の楽しいという気持ちはその先にしかありません。ひととひとが、「まつ毛をつたってこぼれたこの雫が君」まで一体化する境地です。

 マルガレーテの歌にも、人の心の奥底に届く力がありました。しかし、マルガレーテ自身がその力の意味に無自覚だったことが敗因の一つだと思います。マルガレーテはきっと、Liella! の歌を聴いて自尊心が傷つけられたでしょう。しかし同時に、その心を抱きしめるのも歌の力です。

 「本当の歌」は、再び形を持ち、皆のよく知る歌になりました。3rdライブでの『私のSymphony』は、9人バージョンで、さらに全編バラードでの披露となりました。この曲は、最初のオンラインリリースイベントから、1期OPEDオンラインリリースイベント、1st、カウントダウンライブ (唯一のオリジナル版)、2nd、アコースティックライブ、2期OPEDリリースイベントと、披露を重ねるごとに毎度バージョンが変わり、その歌が響く文脈も変化していきました。なので、この歌を聴くと今までのことを思い出し、それと同時に新しい曲として感じ取ることができます。過去のようで、未来のようでもある歌が『私のSymphony』です。あるいはそれを「今」というのかもしれません。9人で本当の歌を見つけたとき、「新しい私」がまた始まったのでした。

 

8. 展望

 ここまで曲を披露したところで、TVアニメ2期11話12話の、かのんの留学に関わるシーンが流れました。これらの回と、その挿入歌『未来の音が聴こえる』は、今回のセットリストの中でもやや浮いた印象が否めませんでした。悪い意味ではなく、それはLiella! が次のステップに進んでいるからなのですが、もしかするとこの歌の本当の意味はこれからわかってくるのかもしれないと、未来に希望を抱かせるような歌声の中で感じていました。実は、1期の『Starlight Prologue』もそうでした。なぜμ’sの『Snow halation』を思わせるような演出をなぞったのか、なぜここで「Prologue」で、なぜここで負けてしまうのか、放送当時は謎の多い曲でした。しかし、Liella! の挑戦や、端的に2期のプロローグというだけでなく、2ndライブの「プロローグ」となることで、キャストというもう1つのLiella! の物語の始まりを告げる曲にもなりました。また、2期生たちもアニメの劇中で共通してこの曲に憧れていました。6話で夏美がきな子に嘘をついたときにとっさに出てきたのがこの曲の話題だったのが象徴的です。夢がないという夏美の中にも、無意識的にこの曲を歌ったLiella! への憧れがあったのだと思います。『未来の音が聴こえる』も、これから優勝を果たしたLiella! が自分たちの手でその価値を創り出していくことを期待せずにはいられません。

 挿入歌を歌いきってMCに入りました。このMCに限りませんが、メイ役・薮島朱音さんが、愛おしくてたまらないという風にアニメでのメイのことについて語るのが印象的でした。ここでは、神宮競技場という大きなステージを前にして緊張してしまったメイが可愛いという話でしたが、その真似をしてほしいと大熊さんに振られて舌打ちをしていたのが会場の笑いを誘いました。アイドルは舌打ちなんかしませんが、メイの一番のファンとしての薮島さんから瞬時に役者としてのモードに切り替わるのには一周回ってかっこよささえも感じてしまいます (?)。

 最後はEDテーマ『追いかける夢の先で』を歌ってお別れです。伊達さんの「心の中で一緒に歌ってください」という言葉に、昔『ラブライブ! サンシャイン!!』のEDテーマを一緒に歌ったことを懐かしみながら、いつかLiella! にもそんな日が来ることを夢見ていました。

 

9. アンコール ~Liella! の夏と次の季節~

 ステージからキャストが退場したらやることはなんでしょうか? そう、彼女たちの名前を呼ぶことです。今回も例によって捌けた数秒後から手拍子が始まりました。Aqours6thライブ <WINDY STAGE> で、Aqours「Aサイン」が大々的に復活したことを書きましたが、今回カメラにはブレードを使った複数の「L」が映し出されていました。あのライブに参加していた人が多数来ているのか、それとも9人という数がファンの心をくすぐったのでしょうか。私たちは、Liella! がこの時間をあまり待ってくれないことを知っているので、短時間ですが懸命に手を叩きました。

 Liella! のアンコールは、毎度映像から始まります。今回は、2ndライブ千秋楽の、アニメ2期のPVが公開された瞬間から振り返りが始まりました。2期生が初参加したファンミーティングや、4人で一緒に観たという1話、2期生と1期生各キャストの意気込みなどを紹介していました。Liella! の振り返り映像としてはやや短期間を扱ったものになりますが、アンコール1曲目でその理由がわかりました。

 再びステージに立ったLiella! が歌ったのは『水しぶきのサイン』です。この曲が発売されたとき、正直に言うと私はぴんと来ていませんでした。EDテーマのB面枠といえば、最初の『輝夜の城で踊りたい』から直近の『繚乱! ビクトリーロード』まで、かなり際立った楽曲がひしめいていたからです。『この街でいまキミと』はその意味では普通の曲でしたが、ステージ上で客席を巻き込んで自撮りをするという独特の演出がありました。そういうバイアスを抜きにすれば、『水しぶきのサイン』は、歌として聴かせる、歴とした名曲なのです。なぜ夏の歌なのだろうという初聴時の疑問も、先ほどの映像があったことで解けました。私たちにとって、この夏が、毎週の『ラブライブ! スーパースター!!』を楽しみに待ち、Liella! の成長を見守った「Liella! の夏」だったことを思い出したからです。2ndライブ千秋楽は6月、アニメ最終回は10月で、やや広いですが十分夏といえる範囲です。昨年も『ラブライブ! スーパースター!!』は夏アニメでしたが*8、Liella! の季節は夏であるという認識は、感覚としておかしなものではないと思います。

 その後、Liella! はトロッコに乗り込み、昨年の楽曲を新たに9人バージョンで歌いました。『Dreaming Energy』『Day1』と2曲続けて盛り上げてくれました。『Day1』は、昨年は『ノンフィクション!!』との抱き合わせで、すみれの曲という印象が強かったのですが、その後音楽フェスなどでも披露の機会に恵まれたようで、今ではLiella! の代表曲の1つに数えられるまでになりました。

 最後のMCもとても楽しいものでした。まずは『Dreaming Energy』でトロッコに乗りながら、バブルガンでシャボン玉を飛ばしていた話をしていたのですが、薮島さんが恋役・青山なぎささんにシャボン玉をかけていたとか、大熊さんが岬さんにシャボン液をつけていただとかという話でじゃれ合っていました。これもスクールアイドルという部活動の「内輪」を覗かせてくれるような微笑ましいワンシーンです。それから、結那さんも呼ばれて10人でのMCとなりました。呼ばれた結那さんは、一人だけステージ上段に現れ、劇中のマルガレーテが度々そうしていたように「澁谷かのん!」と高らかに叫び、会場を沸かせました。結那さんは、前日のMCでも出たという「うれちー! たのちー! あいちー!」という一発芸 (?) を披露するなど、マルガレーテのキャラクターからは想像もつかないくらい弾けていました。凛々しさとかわいさと面白さの振れ幅の大きさは、青山さんと共通するところもありますが、これはミスコン*9出身者に共通するスキルなのでしょうか?

 ところで、10人はグッズと同じライブTシャツの上から、シースルーのポンチョのようなものを羽織っていました。その色がメンバーカラーになっていたのですが、結那さんのそれは紫色のように見えました。これがマルガレーテのメンバーカラーなのかもしれません。何のメンバーカラーかは、きっと3期で明らかになることでしょう。

 9人に戻り、最後の挨拶に移りました。大熊さんはまた「これが年内最後なので実質カウントダウンライブ」という怪しい発言をしながら何かを踊っていました。その時は気づかなかったのですが、2期生は参加していない『LIVE with a smile!』*10の振り付けでした。なお、キャストの皆様が口を揃えて「ワンマンライブとしては今年最後」と発言していましたが、実際に12月21日に『ASIA EMOTIONAL MUSIC FES 2022』に出演しました。ここで告知することができなかったのは、契約の関係でしょうか?

 いよいよ最後の曲です。新曲の中で1曲だけ残されていたので最後にとってあるのだと確信していましたが、『TO BE CONTINUED』は、まさにこのライブを締めるのに相応しい曲でした。アニメ『スーパースター!!』2期は、「3期に続く」こと自体が結末です。言わずもがな、ラブライブ! シリーズでは前代未聞だからです。すると、『TO BE CONTINUED』は、2期の真のEDテーマといえます。ライブの最後の曲としては、千秋楽などの特殊な公演を除けば、1stが『この街でいまキミと』、2ndが『ユニゾン』でした。9人になり、それらから一転してのアップテンポな曲でのお別れは、例えばAqours6thの『SUKI for you, DREAM for you!』と同じく、清々しい気持ちになれるものです。

 退場時、通常は全員が一斉に退場するか、最後に主演キャストを残すように順次退場していきます。しかし、今回残ったのは薮島さんでした。

「何見てんだ! ばーか!」

 「米女メイ役」として、言うことのない完璧なファンサービスです。2期生も「ラブライブ声優」としてこの域に達しているのです。

 

10. 総括・意志の未来

 今回のライブの要点は、「人数が増え、Liella! の可能性が増えたこと」「変わらないものと『本当の歌』を見つけたこと」といえます。

 ライブタイトルと表題曲のタイトルは、ともに『WE WILL!!』でした。助動詞の ”will” は、「未来」の助動詞です。また、名詞としては「意志」を意味しています。

 セットリストの最初と最後の曲の歌詞を振り返ってみると、「一周回った未来」「てっぺん越えても終わらない」とあります。それぞれ、Liella! が2年目に入ったことと、ラブライブ! に優勝して、なお物語が続くことを意味していますが、実はともに「時計の針」を想起する表現でもあります。午前0時のことを「てっぺん」と言いますね。そして、このライブの導入に流れた曲『ユニゾン』は、今がずっと続くように願っても「秒針は変わらずに進む」という曲でした。つまり、この1年が始まる前は、Liella! にとって未来は今を連れて行ってしまう不可抗力だったのです。それが、2期生やマルガレーテと出会い、迷いの中でも自分たちが曲げたくない信念を貫き、心で触れ合う「本当の歌」を歌ったことで、この先の未来へ駆けだそうという決意に繋がりました。Liella! にとっての未来が、受動から能動に変わったということです。それが “will” です。アニメで描かれたのと同じように、Liella! が時の中で成長する姿が、ライブの中で見られたのです。

 私にとっては、首都圏と大阪以外で初めて参加したライブになりました。愛知もよい場所だったので、後ほど旅行記も作成したいと思っております。

*1:なお、常滑尾張に属する

*2:なお、Liella! 2期生に対応したブレードは一本しか持っていないので、ルージュはスカーレット、オニナッツピンクはピンクで代用

*3:1stライブ・2ndライブ横浜公演当時はペイトンさんが高校生だった

*4:もちろんジェスチャーのみで、声は出していない

*5:2022念は5月の『Aqoursぬまづフェスティバル』に参加。また、11月に19年ぶりに東京ディズニーリゾートへ行き、本物のテーマパークの作りこみの完全性に感銘を受けた

*6:なぎさ

*7:デザインの人そこまで考えてないと思うよ

*8:一般公募オーディションが4月終了というスケジュールを考えると、3期は夏ではない可能性がある

*9:青山さんはMISS CIRCLE CONTEST 2019準グランプリ。結那さんはミス・ワールド日本大会2021年度準優勝

*10:グループ単独での披露はLiella! 1stの東京追加公演Day2のみ。CDにはAqours版とニジガク版も収録されているが未披露で、後者に至っては楠木ともりさんの降板が決まり、オリジナルは事実上お蔵入りとなった