普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

あなたの愛したこの地球で ~ウルトラマンデッカー感想週報㉔『夢の果て』~

 年末年始で2週間空いて、久しぶりの『ウルトラマンデッカー』の放送です。2022年最後だった前回は、化けの皮を被って生きてきたバズド星人アガムスが、本当はどのような人物なのか、ようやくその片鱗が見えてきました。

アガムスの過去

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 もしアガムスがレリアの死に向き合って、レリアの想いを胸に戦い続けることができたなら、レリアが愛した世界を守ろうとすることができたのなら、レリアも浮かばれたかもしれません。カナタの必死の訴えにレリアの夢を思い出したアガムスは……。

本当はまだ、守りたいものがあった
 (『ウルトラマンデッカー』第24話『夢の果て』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=uZ7rLqGjqxs)

 

 

1. レリアの言葉とアガムスの救済

 最初にアガムスが正体を現したときに呟いていた「花……木々…… (以下省略)」が、レリアの言葉だったことは今までに分かっていました。この名刺の羅列は、レリアが覚えた地球の言葉でした。レリアは地球に行くために、地球の言葉を覚えていたのです*1前回書いた「地球に行くために地球の言葉を勉強していた*2」というのは的中していました。ただ、主語はアガムスが、ではなくレリアが、でしたが。

 大切な人の言葉を思い出すと同時に、レリアの夢を思い出しました。たくさんの星々を旅することと、その星々の仲間たちと平和な世界を築くことが、レリアの夢でした。それを忘れたまま死なずに済んだアガムスは、デッカーが願った通り、ある形では救われました。

 レリアを亡くしてからというもの、アガムスは辛い過去を忘れようと必死でした。自分の無力さから逃れようとしました。そのために、遠い過去の地球と心中しようとしました。しかし、アガムスがレリアのことを、守れなかったという事実まで含めて大切にしていなければ、あるいはアガムスが自らを殺めるようなことをすれば、レリアは本当にこの世から消えてしまいます。だから、現実から逃げないことがアガムスにとっても救いになるはずだったのです。

 レリアの分まで生き、レリアが愛した世界を守ろうと早く決意できていたならば、こんなことにはならなかったはずです。しかし、ここまで罪を犯したアガムスに、そのやり直しはあり得ません。したがって、アガムスは今からでもレリアの夢を背負いなおし、その希望を消さないように、それと引き換えに消えてゆくことでしか救われませんでした。「改心した悪役は退場する」とは物語のお約束としてよく言われますが、起こったことも、行ったことも、なかったことにはできないからです。取り返しがつかないからこそ、過去を「想い」として背負い、かけがえのないいまを生きるしかないのです。

 

2. 迫りくる絶望

 アガムスも無事改心 (と、呼んでいいのかわかりませんが) し、アガムスの中で忘れられそうになっていた希望の光も、カナタたちが必死に繋ぎとめてきた希望も、なんとか繋がっています。ケンゴもウルトラマントリガーとして宇宙で戦っていました。

 スフィアは、それを波状攻撃で打ち砕こうとしてきました。ひたすらに力が強いだけとか、悪の組織が陰謀を巡らせているとかではなく、気味悪く性悪な悪意で、地球を苛みます。「そこまでやるか」と見ているこちらがドン引きしてしまうような恐ろしさで、今までのラスボスにはない陰湿さと、怪獣としての格を兼ね備えた存在が、マザースフィアです。

 前回までで、スフィアはスフィアオベリスクを形成し、テラフェイザーを利用して地球からエネルギーを吸収していました。バリアを収縮させ、地球を捕食するまで残り僅かというところまで来ていました。それを決死の作戦で阻止したGUTS-SELECTは、動き出したテラフェイザーの直接攻撃により、隊長・副隊長ともども重傷の被害を受け、指揮系統を失ってしまいます。

 カナタはウルトラマンデッカーとなり、アガムスの説得に成功しました。しかし、バリアの収縮を止めた喜びも束の間、トリガーの敗北と同時にマザースフィアが襲来します。アガムスによれば、マザーが惑星に降り立つのは異例のことのようです。マザースフィアザウルスは、そのための姿なのでしょうか。テラフェイザーという駒を失ったことや、2大ウルトラマンと惑星の住人が思いのほか手強かったことで、スフィアも焦っているのでしょうか。マザースフィアザウルスはエタニティコアを覚醒させました。ケンゴがやっとの思いで鎮静化させたものですが、スフィアは地球のエネルギーを直接吸収しようとしているのでしょうか。アガムスはマザースフィアザウルスの攻撃からデッカーをかばい、とうとう止めを刺されてしまいます。

 デッカーが前の戦いで負けたとき、カナタの身体にもスフィアが侵入していました。これはスフィアオベリスク破壊作戦の最中にカナタを妨害したのみにとどまらず、マザースフィアザウルスの力でカナタをどんどん苦しめていきました。言語を発さないのに誰を狙うべきか理解している、この一方的な知性が、スフィアのことを汚いと思う点です。

 全員敗北の状態から、次週いよいよ最終回を迎えます。

*1:地球での日本語の通用ぶりについては目を瞑ることとする。デッカー・アスミも日本語話者である。この注は前回も書いた

*2:地球の言葉はウルトラ難しいので、天才博士であるアガムスに見合うくらいにはレリアも才女なのかもしれない