普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

「特別」のためのユートピア ~にじよん あにめーしょん感想週報⑦『ランジュとジョーカー』~

 前回は、ニジガクテーマ別活動のIT活用チームがリリースしたゲーム『TOKIMEKI RunRuns』を元ネタにした回でした。

 

前回の感想週報はネタ解説回

carat8008.hateblo.jp

 

 その次に同チームが制作したのは、神経衰弱ゲーム『Love U match friends』です。

 

たった今24枚を遊んだところ、37秒8であった

lovelive-app.jp

 

 さらに、昨年発売された『ニジガクトランプ』により、ニジガクメンバーの神経衰弱を物理カードでもプレイできるようになりました。なお、こちらの商品は既に受注生産を終了しております。

ニジガクトランプ

 というわけで、今回はトランプの話です。

高鳴るシンパシー?
 (『にじよん あにめーしょん』第7話『ランジュとジョーカー』より/©プロジェクトラブライブ!にじよん あにめーしょん/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=vg8Qs-9x5Wg)

 

 

1. 嵐珠と「特別」

 「特別な者はいつもひとり」とジョーカーに自分を重ね合わせていた嵐珠。「特別」で孤高、その実は孤独だった嵐珠の姿はアニメでも2期前半で幾度となく見ることができましたが、ここではあえて一昨日の生誕祭でもあまり触れている人が多くなかったように思える『スクスタ』の話をします。

 

古い記事なので間違いもあり拙文ですが、こちらもぜひお目通しください

carat8008.hateblo.jp

 

 『スクスタ』で嵐珠の心を折ってしまったのは、幼馴染の栞子の一言でした。嵐珠が作った「スクールアイドル部」*1で伸び悩む栞子に、レッスンも楽々できる嵐珠が、できる者の立場から良かれと思ってかけたアドバイスに対して、栞子は「ランジュは特別だからなんでもできるのでしょうが、人にはそれぞれ適性というものがあるんです」と返しました。嵐珠にとってはこの「特別」はネガティブな意味でした。嵐珠は抜きん出すぎるゆえに、昔からせっかく仲良くなったと思った人たちが離れて行ってしまっていたからです。

 2話でも触れたとおり、嵐珠は「天才」なので、その本心が嵐珠自身にしかわからない突飛な行動をとることがあります。例えば今回でいえば、ババ抜きで歩夢からジョーカーを引いたとき、それを堂々と報告してしまいました。かすみには冷静に突っ込まれていますが、嵐珠ほどの人物がババ抜きでジョーカーを引いたことを報告し始めたら、私なら嵐珠が高度な心理戦を仕掛けに来たと思ってしまい、逆に動揺してしまいそうです。歩夢は心理戦を仕掛けられたとしても、わりあい同情しなさそうではありますが。余談ですが、このときと終盤の対決相手が歩夢なのも印象深いです。なぜなら、歩夢は逆に、自分のことを特別だと露ほども思っていなかった特別なスクールアイドルだからです。

 自分は理解されないであろう存在だから、せめて自らの力を見せつけ、それだけでも理解してもらうしかないと、アニメ2期の前半ではたった一人でゲリラライブを繰り返していました。ただ、結果的には、「虹ヶ咲学園に来た」という選択が、嵐珠の人生を変えることになったのです。

 

2. 人には人の「特別」がある

 だいたいのトランプにはジョーカーが2枚封入されています。2枚目のジョーカーは予備か、あるいはゲームによっては2枚とも使うこともあるそうです。

 そんな特別なカードが2枚と言わず、数千枚存在しているのが虹ヶ咲学園です。

 虹ヶ咲学園にやってくる生徒は、自らの個性がほかの何かに埋もれる心配をする必要がありません。特別なだけで友達ができないような場所ではありません。現に同好会のメンバーたちも、有体に言えば、皆どこかしら「変」です。ニジガクでは、「特別」が一人なわけがないのです。

 嵐珠と同様に同好会が誇る天才である愛*2が持っていたもう1枚のジョーカーが、璃奈の手に渡り、侑、そして嵐珠へと手渡され、ジョーカーは見事ペアを作ることができました。本編でも、美里が幼い愛の、愛が璃奈の、璃奈がミアの、そしてミアが嵐珠の背中を押す流れ、あるいはせつ菜が侑と歩夢の心に火をつけ、それがせつ菜を蘇らせ、再び侑と歩夢の心に渡された夢のバトンが嵐珠に届くという「リレー」が行われていました。今回はだいぶ端折られていましたが、その再現になりました。

 ところで、愛がジョーカーを取り出す前、ミアは何を言いかけたのでしょうか? それはミアのみぞ知るところですが、ミアは嵐珠が特別だからこそ惹かれた、という経緯を考えると、この場を解決するキーパーソンにはなりにくかったかもしれません。

 ここで余談をもう1つ。嵐珠がジョーカーに例えられるのはあまり耳慣れなかったかもしれませんが、ババ抜きの原型となるゲームは、ジョーカーではなくQを1枚抜いた状態でプレイし、Q1枚が最後に手元に残った人が負けというルールでした。これは「Old Maid」という英語名の由来ともなっています。そして嵐珠の最初のソロ曲と言えば『Queendom』です。もしかするとこちらのほうが意識されたのかもしれません。

 

3. 3分に詰め込まれる要素

 実は今回は、

・グッズ (ニジガクトランプ) の販促

・過去作のリスペクト

・キャラの掘り下げ

 という3つを3分でやってしまった、相当ハイレベルな脚本となっています。特撮番組でも毎度これをやってのけるのは難しいと思います。

 2番目ですが、『ラブライブ!』2期5話『新しいわたし』におけることりと海未の伝説のババ抜き対決です。このときの海未の「顔芸」は、ラブライバーでない人も一度は見たことがあるかと思います。最近も、新年特番の学校対抗ババ抜き対決で梨子役・逢田梨香子さんが「ウノ!」と叫ぶなど、珍プレーが見られましたね。ラブライブ! シリーズでババ抜きはもはや定番かもしれません。

 惜しむらくは、ニジガクトランプを正規に入手する手段がもう無いということでしょう。再販が望まれるところです。

*1:同好会とは別の団体。嵐珠が同好会メンバーと友達になるために作った部だったが、逆に興味を示した者とそれ以外を分断してしまう結果となった

*2:13人でプレイすることは難しいババ抜き1回戦には不参加。混乱が生じないようにゲーム外の人が持っていたと思われる