普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

魔法は夢でできている 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~QU4RTZ Fluffy Magic~ 全曲感想

当日、有明ガーデン内にあったマネキン。QU4RTZメンバーを意識しているようだ

 2023年1月14日 (土) に『R3BIRTH R3VOLUTION』から始まった虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のユニットライブは、『A・ZU・NA LAGOON』、『DiverDiva GALactic Trip』を経て、3月19日 (日) の『QU4RTZ Fluffy Magic』Day2で締めくくられました。QU4RTZといえばアニメでは最初に結成されたユニットであり、ソロメインで活動してきたニジガクにありながら、ハーモニーを重んじるパフォーマンスで、その活動スタイルに大きな変化をもたらしました。

R3BIRTH

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A・ZU・NA

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 ユニットライブには合計で3回+配信2回参加し、一連のライブへの参加回数としては自分史上最多となりました (現地回数のみでは、Aqours 6thライブと並ぶ)。締めくくりとして参加した千穐楽公演の感想をまとめます。「調和」、そしてライブタイトルにもある「魔法」をたくさん感じられる、とてもかわいくて楽しいライブでしたが、ある「裏テーマ」の存在にも気づきました。

 

 

0. 『DiverDiva GALactic Trip』一言感想 ~「未来」と「距離感」~

 QU4RTZの感想の前に、2月26日 (日) に配信で参加した『DiverDiva GALactic Trip』Day2の感想を簡単にまとめておきたいと思います。

 DiverDivaの持ち味を生んでいるのは、やはり「2人だけである」というところです。ほかの3人や4人のユニットとは異なる、2人だからこそできる絶妙な距離感、もっと有体に言えば果林役・久保田未夢さんと愛役・村上奈津実さんがあの近さでパフォーマンスをするということは、他では見られないものとなっています。

 私含め、多くのファンにとって印象に残った曲を2曲選ぶとすれば、『恋するMagic!!』と『未来ハーモニー』でしょう。ダンスの動きが激しい、ストレートな2人らしさをアニメのソロ曲で表現した後の、とにかくかわいいを詰め込んだ『恋するMagic!!』。久保田さんが村上さんの腕を引き寄せたシーンばかり、何度もアーカイブで見てしまいます。後半戦で誰も予想していなかった全員曲が『未来ハーモニー』でした。TVアニメでこの曲が使われたときの経緯を考えれば、なるほどうなずけるものではありました。

 DiverDivaの前提に、一歩引いたところから未来を見つめ、夢を追いかけることに関しては同好会の中でもベテランである果林への愛の憧れというものがあります。これは村上さんの久保田さんへの恋にも近い憧れを逆輸入しているようにも思える、よく似た関係性です。スクールアイドル同士なので、憧れは対抗心にも姿を変えます。

 こうして、惹かれ合い競い合う二人の世界がDiverDivaです。その近さで、2人はお互いの光だけでなく影にも触れます。誰かを溺れさせるような『Diabolic muiler』や自分を赤裸々に曝け出す『Turn it up!』、そして2人の光と影を表現した『Shadow Effect』がそれです。そうしたことでお互いを知って、例えば村上さんは今回のライブでは久保田さんのことを「未夢」と呼ぶまでになりました*1。2人が高め合い、銀河を飛び回る「未来」が「今」になったのが、『未来ハーモニー』と言えるのかもしれません。それは、「憧れ」や「ライバル」が「仲間」になることでもあります。仲間とのかけがえのない「今」を歌うのが、『Fly into the sky』や『祭花 ~saika~』です。

 最後に、幕間アニメに関してひとつ気になったことがあります。ヤーシブ星でのライブを終え、宇宙中からの人気が上昇したDiverDivaに、大銀河宇宙連邦の栞子が出動を要請した先が「惑星ホットジュピター。「ホットジュピター」とは、木星型の大惑星で、恒星からの距離が近いものを言います。自らも太陽になれたかもしれないほど大きい存在ながら、近い太陽が眩しくて、もしそこに住人がいたら、強い重力と眩しい太陽に苦しむことになりますが、それはもしかして「川本美里」のメタファーなのではないか? と思えてなりません。

 

1. ユニットライブ千穐楽

 今回で、東京ガーデンシアターは3回目になりました。

 A・ZU・NAのユニットライブでは東京臨海高速鉄道りんかるが登場しました。これまで、東京ガーデンシアターに行くのに都バスなどを使って交通費を節約してきましたが、今回はコラボへの感謝を込めて、りんかい線で行ってみることにしました。ヘッドマーク車両は埼玉県の方に行ってしまい、見ることができませんでしたが、「虹ヶ咲学園前」まで乗ったのはアニメにも登場したJR埼京線の車両で、これもまた良いものです。

国際展示場駅の「虹ヶ咲学園前」駅名標

 今回の座席は、アリーナのほぼ最後部。なんと3回続けてのアリーナ席となりました。ただ、一番後ろということは前の人の頭次第でライブの体験が変わってしまいます。ここからどう見えるか、どう聴こえるかがこの会場の勝負どころです。

 QU4RTZの4人による場内放送 (私はこんなに舌足らずな注意事項の説明を聞いたことがありません) が終わり、皆が立ち上がりました。前の方に背の高い人は少なく、死角こそありますがステージが見えない事態は免れ、安心しました。

 

2. 夢のハーモニー

 QU4RTZの4人が登場しました。1曲目は『Sing & Smile!!』です。A・ZU・NA以降のユニットライブDay2の定番として、初めてのユニット曲を初めての衣装で披露してくれました。懐かしのブランコもステージ上にあり、ブランコに乗りながら歌うシーンもありました。床から足が離れ、揺れながら歌うのは難しいと思いますが、可憐な歌声をキープしているのは、ひとえに夢を形にする努力の結晶だと思います。

 今までのユニットも、様々にオリジナリティを見せつけてくれましたが、QU4RTZのライブには、曲が始まった瞬間に他とは違う上質感を感じました。通常、音源と共に収録したハモりを流しながら歌うところ、QU4RTZは4人のハーモニーを売りにしているので、ハーモニーからコーラスに至るまで交代しながら歌い分けていきます。音楽としての完成度において、ラブライブ! シリーズどころか他のコンテンツやアーティストに対しても、一つも恥じるところがありません。むしろ、『虹ヶ咲』を1 mmも知らない人が観に来ても、楽しめるはずです。

 2曲目はアニメの挿入歌、『ENJOY IT!』でした。前の曲以上に動きが大きくて、それでいて4人のハーモニーはそのままの、文字通り楽しい曲です。『Sing & Smile!!』で死角に入ってしまったエマ役・指出毬亜さん (最推し) が見えるところに出てきてくれて、私個人的にも高まるところでした。

 2曲を終えて、最初のMCでは指出さんが「河内、河内」*2と言い出しました。何のことかと思えば、「かわち」=「可愛い」だそうです。音楽一家の指出家は「不思議ちゃん一家」でも知られており、トークでも謎の言葉や家族風習が度々飛び出します。「かわち! らぶち! まゆち!*3」などとも変化しました。どこかで聞いたことがある3つ組ですね……? そんな「かわち」なライブが始まります。

 今回のライブタイトルは『Fluffy Magic』つまり「ふわふわの魔法」。ステージはたくさんの風船で飾られていました。これから、どんな魔法がかかるのか、どきどきしていました。

 

3. 「女の子」ができるまで

 A・ZU・NAと同様の流れで、MC後はBD特典曲が立て続けに披露されました。『Fuwa Fuwaアワー!』『Make-up session ABC』『Twinkle Town』の3曲です。

 前2曲は、お風呂の曲とメイクの曲。お風呂で温まり、身体をきれいにし、肌を整え、心を穏やかにする時間と、競い高め合いながら可愛くメイクしていく過程です。「可愛い女の子」ができるまでを見学する、バックヤードツアーのようなどきどき感があります。ステージ上に大きな浴槽が現れたり、メンバーが大きな化粧品のぬいぐるみを持って歌ったりと、大道具小道具の楽しさはA・ZU・NAのときに感じたのと近いものがありました。ちょうど『Sing & Smile!!』の衣装は透明感があって、バスローブやパジャマのようにも見えました。『Make-up session ABC』は仲良くメイクを教え合いながら、対抗心も見え隠れする、QU4RTZの数少ない「ライバル」要素を表した曲です。

 こうして女の子は可愛くなって、煌めくイルミネーションの中に繰り出します。お互いの衣装を着せ合う様子もとても可愛らしく、そして披露された『Twinkle Town』はクリスマスの情景をハーモニーの力で目の前に展開してくれる「ガチ度」の高いクリスマスソングです。実は私は、ラブライブ! シリーズのクリスマスソングの中で、純粋にクリスマスソングとして見たときにはこれが一番好きだったりします。クリスマスの「光」は、どんな過ごし方をしている人も共有できるもので、暖かく受け入れてくれるものだからです。

 ここで幕間のアニメを挟みました。

 パワフルさで誰の追随も許さないR3BIRTHのライブ。

 たくさんの「大好き」を集めて、目いっぱいに叫んだA・ZU・NAのライブ。

 時に競い合い、時に惹かれ合う2人の距離感に魅せられたDiverDivaのライブ。

 皆、すごい世界観を持っていました。

 その中で、ニジガクメンバーが挙げるQU4RTZの世界観とは、「空を飛ぶような浮遊感」でした。それを聞いたQU4RTZは、「空を飛びたい」という夢を持ちます。シングル『PASTEL』のドラマパートでは、4人は夢の中で気球に乗って空を飛ぶ夢を見ました。4人はそれを頼りに、色々な方法を探りますがや、やはり魔法でもない限り、空に気ままに浮かぶのは難しいものです。

 

4. 虹の思い出、道の先

 幕間アニメが途切れると、ソロ楽曲に移りました。メンバーが4人いるので、ボリューム満点の8曲聴くことができます。

 トップバッターは璃奈の『ツナガルコネクト』でした。璃奈役・田中ちえ美さんは歌もダンスも安定感が非常に高く、やはり圧巻のパフォーマンスです。声出しも綺麗に揃っていて、璃奈とファンの「繋がり」を感じます。この曲のコールは、ほぼ無予習でしたが感覚で入れられてしまう気がします。ラブライブ!シリーズのソロ曲で歴代第2位のYouTube再生数を誇るだけあります*4

 アニメ挿入歌で唯一コール曲ではなかったのが彼方の『Butterfly』です。結果的に、このパートの中では一番じっくりと聴くことができました。想いが曲に、パフォーマンスに、映像に溢れていました。最近はAqoursやLiella! のソロ曲の強さも相当ですが、やはりソロでスタートしただけあって、ソロのレベルの高さはニジガクがピカイチではないかと感じます。

 その次はエマの『La Bella Patriaでした。それまでのエマには珍しかった王道アイドルソングで、コールもよく入る曲です。こんなに綺麗な歌声に合いの手を入れてしまうのはもったいないかと、始まる前は思っていましたが、そんなことはないくらい楽しかったです。

 さて、この流れで来れば、かすみのソロ曲はアニメ挿入歌の『Poppin' up!』だと思われるでしょう。しかし、このライブ、この会場だからこそできる、かすみんのとっておきが存在します。

 ざわめく会場を一筋の光が貫くようにかかったイントロは、『無敵級*ビリーバー』です。「満を持して」の、声出しはもちろんのこと、有観客初披露は、無観客での初披露と同じ、ここ東京ガーデンシアターとなりました。アニメ『虹ヶ咲』始まりの曲であり、言うなれば「第0話挿入歌」でもある歌です。ただ『無敵級』を聴くだけではありません。皆で「Woh Woh」できるのです。「アニガサキ」という伝説の開幕を、2年越しにかすみ役の相良茉優さんと8,000人ものファンの間で共有することができました。「長い夜明けて 朝目が覚めたら 新しい私に出会えるはず」という歌詞は、まさにこの時のためにあるかのようです。これこそが、ニジガクがようやくコロナ禍の負債を返しきった瞬間と言っても過言ではないでしょう。辛かった過去を乗り越えて、相良さんが今までで一番 “かすみん” として煌めいた瞬間でした。

 一旦ステージが暗くなり、バックモニターにオルゴールが映し出されました。オルゴールの音色に迎えられた4人は、白いドレスを着て椅子に座っていました。

 QU4RTZならではのパフォーマンスである、アコースティックアレンジ楽曲が披露されました。ファンミーティング (『QU4RTZ Sweet Cafe』。以下、単に「ファンミ」と呼ぶ) でも同様のアコースティックライブが行われたので、これに期待してQU4RTZのライブに来たと言っても過言ではありません。Liella! (1期生) では生演奏付きのアコースティックライブに参加しましたが、いつかそのような機会があることにも期待したいです。ファンミのときは『未来ハーモニー』がかかりましたが、4人が歌い出したのは『虹色Passions!』でした。意外にも、ユニットライブでOPテーマを歌ったのはQU4RTZのみとなりました。アップテンポな原曲からはイメチェンしていましたが、明るいイメージはそのまま残された良いアレンジでした。ファンミのときと同様、音楽の素養がある指出さんがメンバーを引っ張っているようで、可愛くも頼もしく見えました。1曲だけだったファンミと異なり、もう1曲披露されました。同じ1期の最終回挿入歌『夢がここからはじまるよ』です。ここでは、ファンからどよめきが上がっていました。どうやら、Day1では『未来ハーモニー』だったようです。こちらもとても楽しみにしていたのですが、同じくらい新曲が聴きたい気持ちもあったので、どちらが聴けても同じくらい満足できたかなと思います。『未来ハーモニー』はDiverDivaも新しい解釈で歌っていたので、比較できた方は幸運だったと思います。

 4人は椅子から立ち上がり、『ミチノサキ』を歌い始めます。こちらもまるでアニメの最終回のような、思い出を胸に未来へ歩き出す曲です。このパートでは、時系列順でいえば『無敵級*ビリーバー』から『夢がここからはじまるよ』まで、アニメ1期に関連する曲をやってきました。世間的にはまだまだ辛い時期に私たちの心を癒してくれたアニメ1期の思い出が、自ずと曲の歌詞とリンクします。

 ここでMCが入りますが、指出さんと田中さんは退場してしまい、相良さんと彼方役・鬼頭明里さんだけが残ります。この2人は次のソロパートで先発なので衣装替えに入っているのですが、その間を残り2人のMCで繋ぐもので、以前のLiella! ではよく見られたものですが、ニジガクではあまり例が多くないかもしれません。特に、ユニットライブでは人数の関係でQU4RTZでしかできません。Day2でだけ披露した『夢がここからはじまるよ』に関しては、「計画通り」とサプライズ成功を喜んでいました。ここで、相良さんがステージ上の風船に触れました。触れました、というのは、言及したという意味でもありますが、物理的にしっかり触っていました。これからこの風船を使って何かをすることを仄めかしていて、Day1に参加したファンは何なのかわかっているようでしたが、情報を遮断していた私は何が始まるのかわくわくして待つことしかできませんでした。

 

5. 埋まっていくピース

 璃奈の『First Love Again』から再びソロ曲の時間になりました。今度は4thアルバム、すなわち『校内フィルムフェスティバル』の曲です。4ユニットのライブで、『ヤダ!』以外すべて披露されましたが、声出し解禁であるのみならず、この後で落ち合った友人の友人の指摘で、「東京初公開」であることにも気づきました。もっとも、これは何度でも初めて感動を味わいながら聴けるバラードなので、それがいつなのか、どこなのかはあまり関係ないかもしれません。

 『First Love Again』はバラードですが、他の3曲はエマの『いつだってfor you!』、かすみの『TO BE YOURSELF』、彼方の『Silent Blaze』と、皆で声を出して盛り上がれる曲です。考えてみればエマにしても彼方にしても、コロナ前に存在したソロ曲はコールが入るような曲ではありませんでした。エマも彼方も、あるいは指出さんも鬼頭さんも、自分 (の役) に合った曲とわかっていながらも、本当はこのような盛り上がりを心待ちにしていたのではないかと思ってしまいます。そう考えると、ニジガクの可能性を大きく広げた4thアルバム・4thライブの存在に感謝すると同時に、今まで欠けていたピースが埋まっていくような心境になります。

4thライブの感想・考察

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 かすみのソロ曲は『無敵級*ビリーバー』に次いで『TO BE YOURSELF』と、ライブテーマでもある「魔法」に絡めた曲の組み合わせになりました。かすみの「魔法」は、自分に自信を持つためのものという考察を聞いたことがあります。『無敵級』も鏡の中の自分を奮い立たせるような応援歌です。それと同時に、かすみが自分にかけた魔法が、どれほど多くの人に勇気を与えているかということにも思い至ります。エマのように皆を癒したいとか、彼方のように特定の誰かに愛を注ぎたいとか、そういう高尚な目標でなくとも、自分のために頑張ることでも皆の笑顔を生み出せる存在が、“かすみん” というスクールアイドルなのです。

 この後は、幕間アニメの後半です。QU4RTZの幕間アニメは、実は4ユニットの中で唯一現実世界を舞台にしたストーリーとなっていました。魔法や、SFチックな力などが無い世界で、4人は空に浮かぶ雲に想いを馳せます。雲の形に想像を膨らませると、不思議と今まで悩んでいた気持ちが軽くなります。こうして癒されることがQU4RTZの与える浮遊感の正体だと気づいた4人は、ライブに来てくれた同好会メンバーにも同じ体験をしてもらい、ライブ前にリラックスしてもらうことにしました。

 私も、いくつも「大好き」を掛け持ちして奔走する日々の中で、こういう時間を忘れていた気がします。「夢見心地」という言葉がありますが、QU4RTZが忘れていたそれをもたらしてくれました。ここまで熱くなるソロ曲が連続したので、それをクールダウンする効果もあったかもしれません。

 

6. 青空に描く夢

 幕間アニメが終わったあとの流れは、A・ZU・NAでもDiverDivaでもかなり盛り上がるものがありましたが、QU4RTZもその世界観を表現した『PASTEL』の披露となりました。現実世界を舞台にした幕間アニメと同じように、『PASTEL』にも日常の風景が詠み込まれていて、放課後の微笑ましい光景を想起させてくれます。青空をキャンバスに、雲のパステルで描く、その「描く」という言葉の目的語は、まさしく「夢」です。4人はこの曲で気球に乗って、ふわりと浮かび上がっていました。「飛びたい」という気持ちと、それを託した自由な想像力が、4人を浮かび上がらせました。

 『4 SEASONS』『Swinging!』と続く曲も、色を変えていく空の下、そばで想ってくれる仲間の存在を意識させてくれました。

 以前、Liella! 2ndライブの感想で、「夢」とは「そこにないものである」と書きました。QU4RTZのライブでは、そこにないものを思い描くことそのものの楽しさを歌っていました。しかし、夢は夢なので、切ないものであることに違いはありません。想い人と別れたあと、また会えるとわかっていても募る会いたい想いは、描いてもそこになく、届かない夢のようで、ほろ苦いものです。そんな切なさを歌ったのが『Beautiful Moonlight』です。

Liella! の夢

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 4曲続けて、QU4RTZの声の重なりに浸ることができました。ノンストップの曲数が多いと、キャストは大変だと思いますが、ファンにとってはより長く歌を味わっていられてよいものです。こんなに終わってほしくないライブも久しぶりです。A・ZU・NAと違って、もう会えないかもしれない人がいるわけでもないのに、そう感じるほどでした。

 MCでの一人一言の感想は、キャストだけでなく「メンバー」からも寄せられました。4人とも特徴的なキャラ声なので、この演出がより一層楽しかったです。田中さん演じる璃奈のコメントでは、なんと紙の璃奈ちゃんボードが使われ、メンバーとファンを繋ぐのに一役買っていました。各キャストとも、これまでのユニットライブを振り返っていました。他の3ユニットのライブのおかげで色々な夢を見ることができ、頑張ることができたというのは本当で、現実も幕間アニメの通りだったようです。

 ニジガクのライブは、当分発表されていません。その代わり、4月から初めてのファンミーティングツアー『にじたび』がスタートします。今まで首都圏以外では大阪でしか公演したことがなかったニジガクが、東京と大阪に加え、新たに広島、愛知 (名古屋)、福岡、北海道 (札幌) の各都市を巡ります。ただ、各都市の出演者は3名ずつなので、行きたい都市と会いたいメンバーが噛み合わないという問題が発生しがちだと思います。私は今のところ考え中なのですが、大方は矢野妃菜喜さんの唯一の参加公演である東京公演に人気が集中しているようです……。

 お別れが近づいてきました。寂しがる私の気持ちをくみ取るように、『Not Sad』がかかりました。たくさんの夢を描いたから、そしてまた会えるから、別れも希望に満ちているのを教えられ、元気がもらえる曲です。余談ですが、右を向くと通路の向かいにいた観客が6本もの「スカーレット」を振っていました。『Not Sad』の歌に乗せて感謝の気持ちを伝えたい、ここにはいない誰かに宛てられていたに違いありません。

 そして本編最後の曲は、おそらく『Love U my friends』あたりが来るか……と思いきや、4人の足下に傘がありました。ということは、『NEO SKY, NEO MAP!』です。ラブライブ! シリーズのEDテーマといえば、会場の皆で一緒に歌うものという伝統があります。Aqoursのライブでも、何度か歌ったものですが、もはや声援禁止のライブの方が経験が多くなってしまい、それが受け継がれるのかどうかわからなくなっていました。Aqours EXライブ (2023) では、確かに皆で歌うことができました。その一方で、Liella! 3rdライブ埼玉公演では、キャストは一緒に歌うことを期待していましたが、歌声はまばらでした。声援解禁後初のEDテーマ披露となったニジガクがどうかというと、結論から言えば、キャストの4人と会場の皆で声を重ねることができました。種明かしをすると、この時はモニターに歌詞が表示されていたのです。Liella! にはありませんでした。カラオケに行く機会も以前より減り、歌詞を覚えていない人が多かったというのもあるでしょう。また、歌って良いのかどうかわからず、周りをうかがってしまうというのもあるかと思います。本当は歌いたければ好きに歌ってしまえばよいと思うのですが、なかなか歌えないのは私も同じです。そんな私たちの気持ちをくみ取って、皆で声を合わせられるように歌詞を出してくれたのだと思っています。一緒に歌うことは気持ちを合わせることです。ソロ曲においても私たちの声がピースになりつつありましたが、それがここにきて私たちもQU4RTZと調和するに至ったのでした。

最近のライブでのEDテーマ

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7. QU4RTZコール

 アンコールの時間です。キャストがステージから去ると、早くも会場から聞こえてきたのは「QU4RTZコール」でした。A・ZU・NA以来、以前声出しができた時代にはなかったたくさんのグループやユニットが、こうして名前を呼ばれるようになりました (固有コールが成立したのは、Aqours、Guilty Kiss、CYaRon!、A・ZU・NA、Liella!、QU4RTZ)。他のグループに比べて「QU4RTZ」はあまり語呂が良くないのが懸念材料で、DiverDivaでは揃わなかったので心配していましたが、前日揃わなかった反省が生きたらしく、皆で声を重ねることができました。ここまでくると、もはやラブライブ! シリーズの伝統に数えて良いと思います。

 QU4RTZが、気球に乗って帰ってきました。ステージ下から気球のゴンドラが現れ、意表を突かれました。『PASTEL』2度目の披露です。

 アンコールに湧いたのも束の間、2度目のお別れが慌ただしくやってきてしまいます。24曲もあったライブは公演時間もだいぶぎりぎりだったようです。最後の最後には、一番盛り上がって、一番楽しくて、一番感動する曲、『TOKIMEKI Runners』でお別れです。

 QU4RTZは退場したあと、舞台裏から皆に語りかけました。「気球を浮かばせていたのは、夢だった」。そらは私がライブ中考えていたことが、本当だったということです。

 そして、ここで夢を詰めた風船が、観客にプレゼントされるというサプライズがありました。相良さんが途中のMCで匂わせていたのは、このことだったのです。会場全体から抽選で4名の座席番号が選ばれ、その番号が読み上げられるたびに、会場が拍手で沸いていました。

 その後、もはやお約束となった「規制退場ニキ」が現れ、観客の誘導をしていきました。規制退場ニキも、この4ユニット8公演を懐かしく振り返っていました。繰り広げられる茶番劇にツッコミを入れ続けていた私たちにとっても、それはかけがえのない思い出になっていました。DiverDivaの公演から、規制退場ニキは最初に配信の人を退場させる (このタイミングで配信を切る) ようになりました。本当は配信の人に退場の誘導など必要ないのですが、それが惜しいとまで思えてしまいます。またどこか、出口の人流が悪い会場などで、規制退場ニキに盛り上げてもらいたいと思います。

 

8. 総括・現実の魔法

「夢ってステキな言葉 言ってるだけでイイ気分」

 今回も最後の曲となった『TOKIMEKI Runners』にこんな一節があります。この歌はニジガク最初の曲にして、その後のニジガクの展開に繋がるあれこれが詰まっているのですが、今回のライブはこの部分に対する掘り下げに位置づけられると思います。つまり、夢を見ることそのものの楽しさが、たくさん詰まったライブだったということです。

 夢の中では自由に空を飛べるQU4RTZの4人でしたが、現実の世界、過ぎてゆく日々の中で、本当に空は飛べなくても、青空に夢を描きさえすれば、日々の悩みを忘れてリラックスできるということが、幕間アニメが伝えたかったことです。

 その夢を叶えるため、というより、この場合正確には、夢見心地をより強く味わうためかもしれませんが、創意工夫と努力ももちろん忘れてはなりません。煌びやかなクリスマスの街に繰り出すのに、お風呂で身体と心を癒したり、メイクで自分の可愛さに磨きをかけたりすることで、夢を見るのに相応しい自分に変わることができるのだと思います。何よりも、声を重ね、ハーモニーを生み出すことはお互いの気持ちに寄り添ったり、誰かがリーダーシップを取ったりというチームワークが必要です。QU4RTZの楽曲の収録にはとてつもない時間を要すると聞いたことがありますが、必要な訓練の量から、それだけ長い時間を一緒に過ごすことになります。一緒に過ごす大切な「今」を歌う歌が多いことは、この辺りが関係していると思います。その結果、ドラマCDにあったように、4人で同じ夢を見るほどの繋がりが生まれるのです。

 「魔法」や「調和」がテーマのライブですが、実は裏テーマは「現実」かもしれません。

 ところで、引用した歌詞と真っ向から対立するように思える歌詞が、ラブライブ! シリーズにはあります。

「つらくない夢なんてあるわけないでしょ?」

 先日、衝撃の先行披露を果たしたLiella! の『Second Sparkle』です。夢が大きく輝くからこそ、それを追い求めてもがき苦しむこともあるはずです。とはいえ、そんな苦しいことをなぜするかといえば、大好きなことだから、夢が魅力的なものだからに他なりません。一方で、QU4RTZも夢見ることの切なさを歌にしています。一見矛盾するこの2つの歌詞は、物事の両面を歌っているに過ぎないのです。

 

9. 総括・ユニットライブを振り返って

 当初、ユニットライブはQU4RTZだけを目指していました。しかし、ライブでのパフォーマンスが際立っているR3BIRTHのライブにも参加することに決めるまでに、それほど時間は要しませんでした。

 そこにきて、11月1日 (火) に楠木ともりさんの引退発表がありました。ここで、2月のA・ZU・NAのライブが最終公演となることはほぼ確定しました。ただ、それだけを理由にA・ZU・NAのライブに行くのは、なんだか失礼な気がしたのです。転機は、その月のうちに本物のテーマパークに行ったことでした。すべてが徹底された世界でした。それは、決して妥協を許さない楠木さんの向き合い方にも通じるものでした。その作り上げてきたものを観たいと願い、A・ZU・NAのライブにも申し込むことに決めました。残念ながら本当の最終日のチケットは取れませんでしたが、Day1に参加し、配信で最後まで見届けました。

 こうなると、残されたのはDiverDivaです。既に現地には間に合わない予定を入れてしまっていたので、配信で参加したのですが、これにも現地で声援を送りたい気持ちが生まれてしまいました。ただ、それも好きなことを後悔のないように進めた結果の選択です。

 どのユニットも、持っている曲を全部ぶつけつつ、独自の世界を描いていました。

 「爆発力」と新しい「挑戦」、その中で育まれる「友情」。

 「大好き」を「自由」に叫ぶ、そんな存在への「祝福」。

 「未来」の訪れにはやる「競争心」、それによって近づく「距離感」。

 「現実」の時の中、夢という「魔法」が生み出す「調和」。

 そして、それらすべての根幹をなす「個性」。

 4ユニットのライブは、ニジガクにまつわる様々な概念を突き詰めたものでした。

 

セットリスト一覧

1. Sing & Smile!!

2. ENJOY IT!

MC

3. Fuwa Fuwaアワー!

4. Make-up session ABC

5. Twinkle Town

幕間

6. ツナガルコネクト

7. Butterfly

8. La Bella Patria

9. 無敵級*ビリーバー

10. 虹色Passions![AC]

11. 夢がここからはじまるよ[AC]

12. ミチノサキ

MC

13. First Love Again

14. いつだってfor you!

15. TO BE YOURSELF

16. Silent Blaze

幕間

17. PASTEL

18. 4 SEASONS

19. Swinging!

20. Beautiful Moonlight

MC

21. Not Sad

22. NEO SKY, NEO MAP!

アンコール

23. PASTEL

24. TOKIMEKI Runners

*1:度々いつもの癖で「みゆたん」と呼んでしまい、訂正されていた

*2:4thライブの京セラドーム大阪や、指出さんも参加する『にじたび』大阪公演は河内ではなく摂津。こちらもせつ菜の愛称を思い出す

*3:相良茉優さん

*4:第1位が何かは、言うまでもない