普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

はじまりの目撃者 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ デビューアルバム発売記念イベント『Dream Believers』 感想

新たな始まりの地、豊洲PIT

 2023年、新たなスクールアイドルプロジェクトが始動しました。「バーチャルスクールアイドル」こと『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』です。

 4月15日 (土) に仮リリースされた新アプリ『Link! Like! ラブライブ!』(リンクラ) をプラットフォームに、バーチャルでライブ配信などの活動を早速始めています。

 もちろん、今までのラブライブ! シリーズ同様、キャストによるリアルライブも展開されます。その第一号にあたるデビューアルバム発売記念イベント『Dream Believers』が、4月21日 (金) に開催されました。平日にもかかわらず、熱気に満ちていました。

 

 

1. お披露目イベント

 初めてのライブは、今までも1stライブより前に、「リリースイベント」や「お披露目」の名目で開催されてきました。私の思い出に残っているのが、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のお披露目イベントです。ダイバーシティ東京プラザの階段で『TOKIMEKI Runners』が披露されました。作中でも何度も伝説の始まったこの階段が登場し、折に触れて思い出すことになりました。一方で、お披露目イベント『始まりはみんなの空』をオンラインで開催したのがLiella! です。『始まりは君の空』に始まるシングルの4曲を披露していました。Liella! はその駆け出しから世相に翻弄されながら、耐えて戦い続けて、先日のベルーナドームでの声出し公演まで辿り着きました。

 そして今回蓮ノ空が、ニジガク以来の対面お披露目公演をリリースイベントとして開催しました。

 ラブライブ! シリーズでの豊洲PITは、以前Aqoursがミニライブに使用して以来となります。豊洲PITはライブハウスなので、通常、座席はスタンディング、入場にはワンドリンク制となっています。ライブハウスに行くのは初めてだったので少し緊張していましたが、実際に入場してみると通常のライブ会場同様に椅子が並べられ、ドリンク売場は閉鎖されていました。逆に面食らいましたが、ラブライブ! シリーズで会場の条件を揃えてくれているのは余計な心配が要らず、気が楽です。私の席はまさかの会場最後列でした。前の人の背が高く、かなり観るのに苦労しましたが、その分客席の雰囲気は誰よりも感じることができました。

 

2. 意表を突くスタート

 入場すると既に蓮ノ空メンバーが自己紹介する映像が流れていました。時間になり、オープニング映像が流れ出しました。映像は、お淑やかな蓮ノ空のイメージを覆す、ロックバンドの紹介映像のようなかっこいいものでした。

 キャスト6名が姿を現し、オープニングそのままのかっこいい雰囲気の曲がかかりました。デビューミニアルバム『Dream Believers』の収録曲、On your markです。まさに「スタート」を飾るに相応しい曲名です。そして、収録曲の中でもインパクトの強い、ライブ映えする曲です。

 とはいえ、演出上仕方ない『スクールアイドルミュージカル』はともかく、今までデビューシングル・アルバムの表題曲以外が初ライブパフォーマンスの楽曲になることはありませんでした。μ's1stライブに始まり、Aqoursメルパルクホール、ニジガクのダイバーシティ、Liella! のオンラインリリイベともれなくそうだったので、すっかりこちらも『Dream Believers』のつもりでいました。蓮ノ空はお披露目の瞬間から、度肝を抜いてきました。

 曲調に合わせて、ダンスパフォーマンスもハードなものになっていました。前の人の頭越しではありますが、初めてとは思えないキレの良さを目の当たりにしました。

 

3. 6人の色

 トークパートのあるイベントでは定番の流れに従い、1曲終わったら着席してのトークパートが始まりました。実は私は、ラブライブ! シリーズでライブとトークパートが両方あるイベントに参加するのは初めてでした。それだけでなく、この手のイベントの中ではコロナ禍後初の声援可能なイベントでした。

 トークパートの大半は、キャストが自分の担当メンバーを3つのキーワードにまとめて紹介する「On your introduction」に割かれていました。序盤あるあるなコーナーですね。キャスト自身の性格だけでなく、紹介の仕方に担当メンバーの色が反映されるのは、これまでのラブライブ! シリーズでも同じです。しかし、今回はそれに加えて、ユニットの特色も前面に押し出されていたように思います。みらくらぱーく! が3つのワードをひらがなに統一していた一歩で、スリーズブーケが漢字に統一していたのがよい例です。

 紹介の中で、『リンクラ』の内容にはどうしても触れざるを得ません。リリースと同時に「TVアニメ1クール分」に相当する第6話までのアニメーションが公開されました。会場に足を運んでいる人の中には、それを1週間足らずで完走してしまった人が何人もいたと思います。しかし、キャストの皆様はネタバレをしないように、それでいて魅力が伝わるように注意を払ってトークをされていたと思います。事実、私はこの当時第1話のパート2までしか視聴できていませんでした。思えば、ニジガク1stライブ (Lvで参加) のときも、『スクスタ』のストーリーをほとんど読めておらず、当時のせつ菜役・楠木ともりさんの、栞子との対立を踏まえたMCの真意を後から知る始末でした。ただ、実際本記事を書いている段階で1話を見終えてみると、このイベントには先にでも足を運んで良かったと思います。

 全員ではありませんが、何人か気になったキャストについて触れておきます (順不同)。

 大沢瑠璃乃役・菅叶和さんは、キャストとして話すときも常にほとんど瑠璃乃と同じ声でした。「瑠璃乃と一緒にいると喋るのが下手になった」とこぼす菅さんですが、既に瑠璃乃に人格を乗っ取られかけているのでしょうか? とはいえ、私たちのために頑張って言葉を紡ぎ出しているのは本当のようです。藤島慈を演じる月音こなさんのフォローも入りますが、その月音さん自身もすっかり慈に染められているかのようでした。

 一方で、オンオフの切り替えがとてもはっきりしているのが夕霧綴理役・佐々木琴子さんです。菅さんと同じく、キャスト発表のときは前のキャリアで話題になった方ですが、こちらは日本を代表するアイドルグループにいただけあってトークはお手の物。しかし、一度綴理の「スキン」を被れば、極度なマイペースキャラと化し、その世界に観客たちを取り込んでしまいます。

 声優やアイドルの経験者が多い蓮ノ空にあって、「新人」なのが乙宗梢役・花宮初奈さんです。花宮さんの魅力は、なんといってもその声です。歌声も普段の話し声も、声でビジネスをしている声優が何十人も集まるラブライブ! シリーズにあってトップクラスの綺麗さだと思います。元気な声を張り上げて観衆に聴かせる、楡井希実さん演じる同じユニットの日野下花帆と比べると、じっと聴き入らせてしまうような声をしています。地声が「ASMR」と呼ばれるほどです。

 私が一番気になったのが、村野さやか役・野中ここなさんでした。最年少の17歳にして、皆をまとめるリーダー気質です。それでいて、お茶目で、活発でよく喋り、歌やダンスの完成度も見事なものです。ちょうど出会いたかったタイプのキャストラブライブ! の世界に現れたな、と思いました。

 トークパートとライブパートの間には、キャストの活動を振り返る映像が流れました。『虹ヶ咲』以前の作品にもメイキング映像はありますが、Liella! で大々的にイベントに取り入れられた流れを継承してきました。

 

4. ユニットの蓮ノ空

 以前から「ソロのニジガク」ということを言ってきましたが、それとの対比でいえば「ユニットの蓮ノ空」ということになります。蓮ノ空のライブパートは、ユニット曲から始まりました。

 1曲目は、スリーズブーケの『水彩世界』。リリックビデオを観たときから気に入ったとても綺麗な曲なのですが、ライブを観てもいい意味で印象が変わりませんでした。すなわち、その世界観を忠実に表現するパフォーマンスだったということです。私にとってこの曲の一番好きな部分は歌詞であり、その歌詞が楡井さんと花宮さんの綺麗な声で紡がれることです。3ユニットともリリックビデオを背景に背負ってのパフォーマンスでしたが、その意味では、この曲が一番リリックビデオの効果があったように思います。

 次はDOLLCHESTRAの『AWOKE』です。かっこいいユニットとして当初からファンの人気を一番背負っていたユニットですが、初めて聴いたときには、正直狙いすぎではないかと思ってしまいました。「ラブライバーってこういうのが好きなんでしょ」と言われているようで、一推しするかは一旦保留しよう、と思ったのですが、実際にライブを見てみると、ほかのどの曲よりもライブのパフォーマンスそのものが映える強い曲であることを実感せざるを得ませんでした。野中さんと佐々木さんはともにアイドル経験があり、曲自体もその実力に裏打ちされたパフォーマンスに期待して生み出されていたのではないでしょうか。

 最後はみらくらぱーく! の『ド! ド! ド!』でした。この曲は、最近キャッチーな曲が増えてきたラブライブ! シリーズといえども異質中の異質な電波ソングです。生で聴くと、菅さんと月音さんが本当にこの声で歌うんだという衝撃がありました。既にリリックビデオの時点で、めちゃくちゃ楽しい曲だと驚いていました。実際、かなり激しくコールが入る曲で、自分の前側のブロックのファンたちはほとんどずっと飛び跳ねたりブレードを振り回したりしていました。正直、今の私には楽しすぎて疲れる曲でした。公演に何度か足を運べば、それも心地よくなるのかもしれません。

 ステージに6人が揃い、簡単なMCを挟んで『永遠のEuphoriaを披露しました。6人曲では唯一のコール曲なのですが、この3ヶ月で見たどのグループよりも元気のいい声が飛び交っていました。キャスト陣も若くてパワーがあり、それが反映されたのかもしれません。あるいは、ナンバリングライブなどではなくリリースイベントに来るほど熱心な人が集まった結果なのかわかりませんが、全体的に蓮ノ空はガチなアイドルオタクを集めていたような気がしました。

 最後の曲を前に、一人一人が感想を話すパートでは、野中さんや花宮さんが「蓮ノ空が受け入れられるかどうか」、「ラブライブ!という名前の重さ」といったことを話していました。

 満を持して最後の曲に選ばれたのが、『Dream Believers』です。様々な顔を持ったメロディが合わさった歌で、それが季節が巡るように移り変わっていくのを感じます。1曲で5分を超える尺もボリューム感に一役買っているのでしょうか。初めてのイベントにしては随分と長時間だったような、しかしそれもあっという間に過ぎていったような気がしましたが、この曲を聴くと、季節が巡ってまた会えることを信じられた気がしました*1

 この曲は、これからも「歌い継いでいく歌」として紹介されました。いうなれば、ニジガクの『TOKIMEKI Runners』やLiella! の『私のSymphony』に相当するということです。どちらの曲も、グループの変化・成長に応じて「いま」を刻み、変化し続けている曲です。つまりここで聴けたことが、これからの蓮ノ空を追いかける第一歩になったことは間違いありません。

 

5. ブレードを振って

 最後の挨拶が終わり、キャストが退場すると、同時に画面上に6人のバーチャルスクールアイドルが現れました。キャストだけでなく、メンバーからも挨拶がありました。これが新時代のスクールアイドルです。

 さて、このイベントでは、退場時に「お見送り会」が実施されました。出口にキャストが立っているというのは理解できましたが、どのようなイベントなのか期待を膨らませつつ、順番を待ちました。出口には最前列から1列ずつ案内されていったので、1,000人ほどしかいないにも関わらず出るまでに20分ほどかかりました。出口でキャストが待っているので大人しく客席で待っていると、これこそが「究極の規制退場」なのではないかと感じました。

 お見送り会なので、おそらく6人と接近できるのはわずか数秒であることは、計算するまでもなくわかっていました*2。このために小道具を持ち込んだファンもいたようですが、イベントに参加して推しが決まった私としては、できることはシンプルに気持ちを伝えることだけです。注意事項はなぜかマイクを使わず、肉声で案内されていたのでまったく聞き取れませんでしたが、おそらく場の空気からするとお見送り会場での声出しNGがアナウンスされていたものと思います。ということは、使える武器は1つだけ。

 ようやく席を立った私はブレードを用意*3し、青色に点灯しました。6人は想像より近くに立っていました。手は届かないまでも、禁止されていなければ会話くらいはできそうな距離でした。列に従って歩きながら、ブレードを目の前の野中さんに見せて振りました。野中さんのレスポンスはとても早く、満面の笑顔で応えてくださいました。キャスト側は1,000人の相手をしているわけで、その人数の後でよくこれだけの返しができるものだと思いますが、1対1のコミュニケーションというものは、応援する側にとってはもちろんのこと、される側にとっても普段のパフォーマンスと違う経験になっているのではないかと思います。私だけでなく、たくさんのファンの気持ちを1つ1つ受け取ってくださったことに感謝しています。

 

6. ラブライブ! の境界線

 今回のイベント、そして『リンクラ』のストーリーを少しずつ進めてみて、『蓮ノ空』には、ラブライブ! シリーズが『サンシャイン!!』、『虹ヶ咲』、『スーパースター!!』と展開してきた中で、置いてきたタイプのアイドル性が含まれていることがわかりました。私がラブライブ! シリーズのライブに参加するまで思い描いていたアイドルのライブに比べると、このシリーズのライブには舞台鑑賞に近い部分があります。もちろん、一緒に盛り上がれる曲もたくさんあって、今までにもコールやブレードで気持ちを伝えることはたくさんやってきましたが、『ミュージカル』のような企画も成り立つように、アニメ準拠ライブでなくても、物語を見に来ている要素がありました。一方で、『蓮ノ空』の場合、私たちの日常生活と物語が『リンクラ』を通して同時進行しており、ライブがライブに振り切っていたように感じます。もちろん、これはリリースイベントなのでライトな人は来ていなかったというのもあるかもしれませんが、会場の雰囲気はより純度の高い「アイドルのライブ」だったかもしれません。

 その意味でも、『蓮ノ空』はシリーズに「ありそうでなかった」作品です。今までに参加したことのない雰囲気のイベントだったので、私は驚いたというか、正直少し疲れました。それでも、この新感覚の「みんなで叶える物語」を、可能な範囲であっても、追いかけないのはもったいないと感じました。応援したいキャストも見つけました*4始まりの目撃者になってしまうと、これからに期待をしないわけにはいきません。

 

花帆が配信で勧めていた金沢グルメ「ハントンライス
(2023. 4. 21 神田グリル アトレ大井町店にて)

 

セットリスト一覧

1. On your mark

トークパート

幕間映像

2. 水彩世界

3. AWOKE

4. ド! ド! ド!

MC

5. 永遠のEuphoria

MC

6. Dream Believers

*1:6月の『Bloom the Dream』の当落はこの当日で、自分は落選、連番相手の結果は公演開始時点でわかっていなかった

*2:計算してみると、1,000人で20分間、6人のキャストがファン2人分の間隔を空けて立っていたとすると、キャストの前を通過するのに12秒かかる

*3:持っていたのはQU4RTZのブレード

*4:メンバーの推しは、みらくらぱーく! のストーリーが始まるまで保留ということにしている