高咲侑。
スクールアイドルに虜になり、スクールアイドルをそばで支えるという役を買って出ながら、自らスクールアイドルに憧れ、目指すことはなく、彼女たちに刺激されつつ作曲という自分の道を選んだ存在。
スクールアイドルの魅力を表現するだけでなく、自分の心に芽生えた気持ちも形にできるようになったことで、侑の心には新しい気持ちが芽生えていました。
高咲侑という可能性
1. 一人前
『にじよん あにめーしょん2』では、アニメ2期から言われている「侑もスクールアイドル」という言葉の掘り下げが行われました。そこにきて部室に集うスクールアイドルたちを改めて見渡せば、誰もが他のメンバーに負けないように頑張っています。今のところ、誰かが勝ち負けを決めるわけではありませんが、ファンにもっと好きになってもらうため、1人でも新しいファンを増やすために、日々競い合っています。
そんな仲間を見ていた侑の心にも、ついに「負けたくない」という感情が芽生えてきました。自分をスクールアイドルとしては認識しておらず、メンバーのことも「仲間」であり「友達」であり「推し」としか認識していなかった侑は、自分の気持ちに驚くというか、戸惑っていました。
その侑の感情を言い当てたのは果林でした。時に一歩引いた視点から人の気持ちを見透かすのが得意な果林らしくもあり、一方で負けず嫌いな果林もまた、既に侑のことを
ライバルとして意識するということは、相手が少し格上だと認識してリスペクトしつつ、自分がそのレベルに手が届く未来を思い描いているということです。瞳に映る光たちは、侑の描く未来の数だけありました。夢よりも近くにある具体的な目標を持てたことこそ、一人前の証かもしれません。
『仲間でライバル』は、アニメ1期9話と全く同じタイトルです。仲良しこよしでなくても初期のように同好会がバラバラになることはなく、絆は維持できること、つまり「仲間でライバル」の関係性を確立したのがこの回で、果林のイベントへの出演がきっかけでした。1期を振り返ると、同好会復活の表の立役者が侑、裏の立役者が果林という関係性もあると思います。今回も果林が一役買ってくれるのではないかと期待していました。
2. 虹の色のひとつに
12話は、視点が校舎の上の空を映すカットで終わりました。空には、虹がかかっていました。
このカットは、『にじよん』1期1話のラストとよく似ています。あの時は、「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」の「エラベナイヨー」の文字が校舎から空へ向かって飛び出していました。
もはや『虹ヶ咲』を代表するフレーズである「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」ですが、ラブライブ! イズムの観点からすると、いささか受動的であり、否定形の言葉であることは問題あるかもしれません。何度も言うようですが元はと言えばこれは侑の言葉ではなく、一般ファンの気持ちを代弁したものです。しかし、11話で見たように侑は「あなた」の1つの可能性であり、その言葉を代弁できる立場にあります。だからこそ、侑の台詞に「昇格」したのです。
しかし、「ただ見ているだけの存在」という立場は、スクールアイドルになるならば、本来はどこかで決別しなければならないマインドでもあります。今でも時々「ただのLiella! オタク」が出てきてしまうメイも、ステージでは立派にLiella! の一員を務めていますし、みらくらぱーく! の姫芽も今後ますますそのような姿を見せてくれるでしょう。現実では人一倍強いプロ意識を見せた坂倉花さんがそのポジションかもしれません。しかしながら、彼女たちは「ただのオタク」から抜け出しつつも、好きという気持ちをずっと持ち続けています。「あなた」が「あなた」のまま、1人の主体になる道がここにあると思います。今までのように同好会のメンバーを推しながら、「私もみんなに負けないよ!」と自分の道でそのメンバーたちに並ぼうとする侑も、これからその道を駆け抜けていくのです。
なお、サービス終了から間もなく1年が経つ『スクスタ』では、全く別の解が示されました。メインストーリーの最後の台詞は、「ここにいるみんなが一番!」でした。一人だけなんて選べないという否定形は、答えとしての完成形とは言えません。「あなた」は「あなた」という、「ただのオタク」のまま、「推し」を超えて同好会メンバー全員に100%の「愛」を注ぐ、心からの肯定形の言葉です。
新たなゲームソフト『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 トキメキの未来地図』の「あなた」は、どんな「私」を選ぶのでしょうか?
そして、今回も13話~15話が本日6月26日 (水) 発売のBDに収録されています。これも感想を公開予定です。