普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

この出会いは奇跡 LoveLive! Orchestra Concert感想

 2024年2月・3月に、TVアニメ『ラブライブ!』10周年 (実際には、このイベントが開催された時期には11周年を迎えていた) を記念したイベントが開催されました。2月23日 (金・祝)・24日 (土) には『LoveLive! Special Talk Session』、3月30日 (土)・31日 (日) には『LoveLive! Orchestra Concert』と、ライブではない形でTVアニメ『ラブライブ!』を振り返り、μ’sキャストの歌唱を聴ける新しいイベントでした。

 3月31日は、μ’s FINALライブから8年の節目にあたります。あのときはまだ会えると思っていなかった、その後はもう会えないと思っていたμ’sに会う機会としては、この日がうってつけだと思いました。オーケストラコンサートはラブライブ! シリーズでは初の試みということであり、いつもお世話になっている友人たちと3連番で参加してきました。

会場内で大行列ができていたμ's9人のスタンドパネル。
撮影位置の関係で、全員横並びの構図は不可能だった

 

 

セットリスト一覧 (ピンク字は歌唱あり)

1. 僕らは今のなかで

2. Private Wars/絶望

3. 愛してるばんざーい!

4. 幼き日の夕陽

5. ススメ→トゥモロウ

6. 気まずい空気

7. 憂いの夕暮れ

8. START:DASH!!

9. 友情

10. 作戦開始

11. 誰もいない

12. START:DASH!!

13. 花陽の決意

14. 強き者

15. にこの過去

16. これからのSomeday

17. 過ぎ去りし日々

18. 絵里のやりたいこと

19. μ’sのはじまり

20. 僕らのLIVE 君とのLIFE

21. 大切なもの

22. Wonder zone

23. 逆境からのスタート

24. No brand girls

25. 未練

26. はなればなれ

27. 始まりの朝

28. START:DASH!!

29. きっと青春が聞こえる

休憩

30. 新生徒会長登場

31. これまでのラブライブ! ~ミュージカルver.~

32. それは僕たちの奇跡

33. 大変です!!!

34. プレッシャーに押しつぶされて

35. いつもどんなときも、全員のために

36. Shocking Party

37. ユメノトビラ

38. 凛の戸惑い

39. Love wing bell

40. ハロウィーン・ストリート

41. 軽やかな昼下がりB

42. Dancing stars on me!

43. 希の胸の内

44. みんなが支えてくれる

45. 雪の降る町

46. Snow halation

47. すぐ先にある未来

48. 悲しみの夜

49. 始まりの朝

50. ラブライブ! 決勝

51. KiRa-KiRa Sensation!

52. 夢のあと

53. 僕らは今のなかで

54. 愛してるばんざーい!

55. Oh, Love & Peace!

56. Happy maker!

57. どんなときもずっと

アンコール

58. Snow halation

 

1. ラブライブ! とオーケストラ

 ラブライブ! シリーズの公式企画でオーケストラの生演奏が行われたのは、2018年のAqours4thライブと2022年の同6thライブ <WINDY STAGE> でした。いずれも夢舞台・東京ドームでの公演であり、オーケストラ「浦の星交響楽団」は客席に近いピットの中から、幕間の度に劇伴曲を演奏していました。そして、一部の楽曲ではAqoursの歌唱に伴奏を行い、夢のコラボを実現していました。

Aqours 6thライブ

carat8008.hateblo.jp

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 オーケストラの演奏でいえば、今回のイベントはこれ以来ということになりますが、今回はμ'sのライブではなく、あくまで演奏がメインのイベントと位置づけられました。ラブライブ! シリーズのライブが歌とダンスで物語を構成するように、今回も劇伴曲をアニメ本編に合わせて演奏していくことで物語を表現するという、ラブライブ! らしいイベントになりました。このタイプのイベントは、まもなく14周年を迎えるラブライブ! シリーズでは初の試みでした。

 今回演奏を担当したのは、110年以上の歴史を持つ東京フィルハーモニー交響楽団です。そして、指揮者の栗田博文さんは、クラシック音楽はもちろんのこと、アニメやゲーム音楽にも強い人で、これまでにも数々のオタクを相手にオーケストラのタクトを振るってきたようです。また、編曲は『ラブライブ!』の劇伴を作曲した藤澤慶昌さん本人が手掛けました (ラストのカーテンコールにのみ登壇)。

 ところで、ラブライブ! シリーズが音楽に取り組んでいる人々に現在進行形で与えている影響には計り知れないものがあります。2023年7月にパルテノン多摩で非公式の演奏会を開いた『ラブオケ!』なる有志団体は、そうした人々の集まりでした。『花陽の決意』や『Determination』、『結ばれた想い』などの名劇伴曲が数多く披露されたほか、アンコールには「野生のウィーン・マルガレーテ」(歌唱を担当したNepiさんは、以前『輝け! Aqoursぬまづフェスティバル』に出演した、広義のラブライブ! シリーズキャストでもある) が登場するなど、話題を呼びました。こうした演奏を行う団体は沼津や金沢など各地に存在しており、もしかしたら近い将来、その中からもラブライブ! シリーズの楽曲制作を手掛けるような人が出てくるかも知れません。

 

2. さらばスクフェス

 このイベントが開催された3月31日の15:00をもって、『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE』がサービスを終了しました。2013年4月15日以来様々な媒体でリズムゲームなどを出していた『スクフェス』シリーズの現役稼働作品は、これを最後に姿を消しました。(『スクフェスAC』コンシューマ版はまだプレイすることはできるが、新コンテンツの追加は既に行われなくなっている)

 『スクフェス』は、言うまでもなくμ's全盛期と重なるラブライブ! ブームを形作った一翼で、アニメファン以外に広く『ラブライブ!』が認知されたのは『スクフェス』のおかげです。当初の目標を果たせなかった『スクフェス2』でしたが、元々期待された部分は大きく、『スクフェス』シリーズの終焉という観点から最後が惜しまれていました。

 サービス終了時刻は開演1時間半前で、パシフィコ横浜前に集まった人々もあちこちでぎりぎりまで『スクフェス2』をプレイしていました。特に、大きな外付け画面を持ち込んで『僕たちはひとつの光』をプレイしていたファンの周りにはギャラリーが形成されていて、最後の1プレイが終わり、画面がエラーに切り替わった時には拍手が起きていました。

 これから始まるコンサートは、そんな『スクフェス』なき時代の最初に位置するものにもなったのです。

 

3. 僕らは今のなかで

 会場に入ると、μ'sのスタンドパネル撮影に長蛇の列ができていました。私もこれを撮った後客席に向かったので、席に着いたのは開演ぎりぎりの時刻となりました。

 開演時刻より前に、ステージ上にはオーケストラの団員がぞろぞろと入場してきました。ライブであればオープニングの演出などが入りますが、今回は早速楽曲の演奏が始まりました。幾度となく聞いたことのあるイントロが流れる中で、舞台袖からμ’sキャストが入場してきました。今回は9人のうち、穂乃果役・新田恵海さん、ことり役・内田彩さん、海未役・三森すずこさん、凛役・飯田里穂さん、真姫役・Pileさん、希役・楠田亜衣奈さんの6人の出演です。6人とも、メンバーカラーに近い色の美しいドレスを纏っていました。6人は、オーケストラアレンジされた1期OPテーマ僕らは今のなかでを歌い、退場していきました。μ'sは、1期と2期のOP・EDテーマを、それぞれオーケストラアレンジをバックに歌っていました。

 ついに、μ’sの歌を聴くことが叶ってしまいました。アレンジであり、9人揃っていないなど、オリジナルとは違う形ですが、決して見られないと思っていた光景が、決して聴けないと思っていた歌声が、現実に私の経験になりました。既に4年以上前の『ラブライブ! フェス』でさえ現地のチケットが手に入らなかったのです。今回も競争率はなかなかだったらしく、今回チケットを取ってくれた連番者には頭が上がりません。ある意味、これまでμ’sは私にとって欠けていたピースではなかったのです。その姿を見られたことが奇跡そのものだからです。

 これが終わると、スクリーンにTVアニメのダイジェストを流しながら、劇伴曲と挿入歌のオーケストラアレンジの演奏が始まりました。1期1話から順を追って振り返るのですが、その1曲目がいきなり『(絶望)』で笑ってしまいました*1。順を追えば、確かにそうなるのですが、意表を突かれました。穂乃果が最初に廃校を知るシーン、今思うとどうしてあんなにコミカルなのでしょうか……。

 

4. 神劇伴たち

 最初はちょっと面白かったとはいえ、流れる劇伴のチョイスは文句なしの名曲揃いでした。

 1期前半で早速訪れる超名曲が『花陽の決意』です。劇伴曲の曲名がわかるのはやはりコアなファンが中心だと思いますが、その中にあって相当の知名度もあると思います。普段のライブなら歓声やペンライトによって会場の盛り上がりがわかりますが、今回は客席の息遣いから、周りの人々もまた自分と同じように感動しているのだと実感しました。なお、このイベントではペンライトを使うこともできましたが、基本的にキャストが出演しているときのみ使っている人が多かったです。

 有名ゆえに期待もされていた『花陽の決意』ですが、私個人としてそれ以上だと感じたのが『μ'sのはじまり』でした。絵里と希が加入し、μ'sの9人が揃うシーンの曲ですが、恥ずかしながら私は曲名を覚えておらず、しかし「あのシーンの曲」としては認識していました。だからこそ、私はここでこの名曲に「出会った」という一面もあり、改めて涙したのかもしれません。とはいえ、実際この曲は予想以上にオーケストラ映えしていたと、私より先にラブライバーだった連番者も言っており、ここの演奏が素晴らしかったことは確かだったようです。

 個人的には、μ'sメンバーの加入編の中で好きなのはにこ編です。にこがスクールアイドルに懸けている想いだけでなく、それに対して穂乃果が100%で応えることでにこの夢が叶い、穂乃果のアイドル性もわかるからです。『ラブライブ!』は、第一作として当然ではありますが、後発作品に比べても「スクールアイドルがいかにアイドルか」を丁寧に描いている気がします。

 2期も、『大変です!!!』という軽妙なものから始まり、『希の胸の内』『悲しみの夜』といった名シーンの劇伴が演奏されました。

 セットリストに特に巧さを感じたのは、メインテーマである『始まりの朝』です。単に劇伴曲を演奏するというだけなら、一番最初に演奏されそうなものですが、溜めに溜めて1期の一番ラスト、そして2期ではμ'sの解散が決まり、ラストライブに定めた決勝へ向けて動き出すタイミングで満を持して演奏されました。いずれも、「これこそが『ラブライブ!』」というべきシーンです。誰の耳にも残るメインテーマを一番の盛り上がりに持ってくる展開に痺れました。

 

5. μ's・オーケストラアレンジ

 アニメに登場する挿入歌は、ボーカル無しのオーケストラアレンジにされていました。ただ編曲するだけでなく、歌詞がなくても曲が伝わるように音を跳ねさせてみたり、逆にしっとりした曲調に変えたりと、意欲的なアレンジが多かったように思います。特に、三拍子にアレンジされたLove wing bellには驚きました。

 演奏を中心になって作り上げる指揮者の栗田さんも、劇伴曲になるとひときわ躍動的になっていたような気がします。というよりも、時々本当に跳ねていました。

 この編曲にも、たくさんの想いが込められていました。例えばSTART:DASH!!なら、真姫が作った音源→3人のファーストライブ→最終回での9人のライブと、3回演奏されるのですが、演奏される度に少しずつ楽器が増え、それがそのまま想いを重ねてきたμ'sの軌跡を表しています。愛してるばんざーい!も1期1話と2期最終回で使われ、最後から最初を思い出せました。複数回使われた楽曲でもう一つ注目すべきが僕らは今のなかででした。1期OPが、実は最終回での決勝戦アンコールだったという「種明かし」にもあたるシーンですが、OPではμ'sの歌唱が入ることもあり、少しテンポはゆっくりながら原曲に比較的忠実なアレンジだったのに対し、アンコールではとても壮大なアレンジに変化しており、「優勝」の重みを感じられるようになっていました。

 

6. Snow halation

 μ'sのライブを象徴する楽曲*2といえば、Snow halationです。このイベントでも、もちろん演奏されました。

 まずは2期9話、雪の中のライブシーンは、他の挿入歌と同様にオーケストラのみで演奏されました。ここだけは、観客もペンライトで参加していました。通常のライブと同じくUOが使える*3ので、ラスサビでは光の景色が再現されました。私にとっては、『異次元フェス』における「アイマスのスノハレ」以来2度目の体験となりました。とはいえ、後からラブライバーになった身としてはやはり経験できても変則ばかりなのだなあ……と思っていたところ、そんな私にとっては驚きのプレゼントが用意されていました。

 2期EDテーマどんなときもずっとが終わり、μ'sと栗田さんが、ついでオーケストラの団員が退場していきました。団員の皆さんを見送る拍手は鳴り止まず、程なくして団員たちは帰ってきました。そこに栗田さんと、μ'sの6人が現れました。そして始まった演奏が、『Snow halation』だったのです。

 FINALライブから8年にして、ついにμ'sの『Snow halation』を生歌で聴く機会が訪れました。挿入歌は尺に合わせてTVサイズを元に編曲されていましたが、こちらは堂々のフルサイズです。

 そんな奇跡が起きている中で、少し面白かったのは、普段のライブより静かな環境の下、客席のそこかしこで一斉にUOが折られたので、中のカプセルが割れる音が会場内に響き渡っていたことです。さらに、編曲にもポイントがあり、ラスサビの前で一旦演奏が止まっていました。ラブライバーならば誰もが知っている「折りポ」を意識した演出だと、私は思っています。一部には、映像がオレンジの光に染まるタイミングはもう少し後なので、それに合わせてUOを折るべきだという意見もあるようですが、ここで溜めがあるということは、少なくともこのイベントにおいてはここで折るべきだったのでしょう。

 Snow halation』はもはやステージも客席も関係なく、そこにいる全員で作るものという共通理解ができあがっています。

 と、ここでμ'sから情報発表がありました。現役で稼働していないμ'sであり、かつオーケストラのコンサートで情報発表があると思っていなかったところ、その存在自体が思いもよらぬものでしたが、その内容も意表を衝くものでした。一昨年実施されたラブライブ! シリーズとプロ野球パシフィック・リーグのコラボを、一気に3作品増やして再開催するというものでした。当時まだ本格始動していなかった『幻日のヨハネ』、キャラクターすら発表されていなかった『蓮ノ空』に加え、満を持して『ラブライブ!』も加わることになりました。これで6球団に対して6作品となり、1作品が1球団を担当します。『ラブライブ!』μ'sは、千葉ロッテマリーンズを担当することになりました。

 ところで、なぜここでオーケストラとは関係なさそうな野球の話が出てきたかについて考えると、ここでμ'sの次の展開を明かしておくことに意義があったからと考えられます。Day2の公演をやっている時点で、もう『スクフェス2』はありません。ということは、『LoveLive! Days』はあっても、μ'sキャストが定期的に声を入れたり、出演したりするコンテンツはなくなってしまったということです。ここで間髪を入れずにμ'sキャストが出演するイベントの告知を行ったことは、「μ'sはこれで終わらない」という決意表明に他なりません。FINALライブから8年、最後の新曲から4年、何度でも「さようならへさよなら!」してきたグループのさらなる未来が現実のものになろうとしています。

 

7. 総括 ~μ’sic goes on~

 なによりもこの企画に感謝しなければならないのは、μ'sFINALより後から本格的にファンになった私を、μ'sと会わせてくれたことです。正直、そんな未来が来るとは思っていませんでした。古参のファンはμ'sとまた会えることを願い続け、後輩グループたちは「ラブライブ!」というものの歴史を繋ぎ、そして運営はアニメ『ラブライブ!』の10周年を盛大に祝おうと企画してくれました。それぞれがそれぞれの形で思い出を胸に歴史を繋いでいった結果、奇跡が起きたのだと思っています。

 次に、この企画は稀有な音楽体験であると同時に、『ラブライブ!』というアニメの特別濃厚な視聴体験ということができると思います。台詞や歌唱は入らなくても、音楽だけで映像に魂が宿り、物語としての形をなしていたのです。もし、この続きである劇場版『ラブライブ! The School Idol Movie』でも同じことができたらどんなに楽しいでしょう。『ラブライブ! サンシャイン!!』で、『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』で、あるいは『ラブライブ! スーパースター!!』で、とにかく自分の推しが活躍するシリーズでも同じことができたら、どれほど夢があるでしょうか。またアニメを観たときにも、違った心境で観ることができると思います。

 10周年を超えても色褪せることのないアニメ『ラブライブ!』。小さなラブライバーの中には、もしかしたら放映当時生まれていなかった人もいるかもしれません。これから10年も経たないうちに、彼女たちの誰かがまたキャストとして起用されることでしょう。そうなった頃にも、無印『ラブライブ!』が語り継がれ、歌い継がれ、奏で継がれていてほしいものです。

*1:表示上の曲名は『Private Wars/絶望』

*2:「ライブで一番盛り上がる曲」かどうかは、そうとも言えるような言えないような……

*3:現在普通に使えているのを見ると、最後にμ'sが9人揃った『ラブライブ! フェス』当時は、ルール上使用できなかったのが惜しまれる