普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

戸惑って、叶えようって ~ラブライブ! スーパースター!! 第3期感想週報②『トマカノーテ』~

冬毬の姉者への想いとは
 (『ラブライブ! スーパースター!!』第3期第2話『トマカノーテ』より/©2024プロジェクトラブライブ!スーパースター!!)

 いよいよ冬毬が本格的にアニメデビューしましたね。これまでのライブ幕間などからも想像された通り、冬毬はマルガレーテと一緒に結ヶ丘でのスクールアイドル活動を始めることになりました。

 今回のタイトルは『トマカノーテ』。名前を繋げただけのタイトルで、1期3話『クーカー』を思わせますが、共通するところはあるのでしょうか?

 ところで、マルガレーテについては『スクスタ』におけるミアの要素と嵐珠の要素を両方持っているといえます。それで言えば、冬毬は栞子の要素を持っていました。ある意味では、本人よりも尖っているくらいに……。

 

前回

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1. 姉者のために

 かのんとマルガレーテのもとに突然姿を現した新入生、鬼塚冬毬。彼女は夏美の妹ですが、夏美のいるスクールアイドル部・Liella! ではなく、新スクールアイドル部への入部を希望します。その目的は、スクールアイドルというものを観察し、姉にとって必要なものかどうか見定めるためでした。そして、スクールアイドルは「無意味」という答えを出してしまいます。

 家でも夏美と顔をなかなか合わせようとしない態度の背景には、何があるのでしょうか。2期を振り返ると、元々夏美が “マニー” に執着していたのは、追うべき夢を見失っていたからでした。色々な素質に恵まれているわけではない夏美は、自分が夢を見るのに相応しくない人間だと思い込んでいました。そして、老後に向けてマニーを稼がなければいけないという尤もらしい理由に納得して、冬毬は冬毬なりに “姉者” のことを応援し、サポートしていたのでしょう。

 ところが、ある日を境に姉者は変わってしまいます。それまで口にしようともしなかった「夢」を語りはじめ、並々ならぬ熱意を見せるようになりました。そのことで冬毬は戸惑ったのだと思います。変わっていく姉者を目にして、もしかすると間違った方向に一心不乱に進んでいるのではないかと案じたのです。とはいえ、姉者のことだし、スクールアイドルを通してお金稼ぎに繋げようとしているかもしれないとも考えました*1。しかし自分もスクールアイドルになり、スクールアイドルがそういうものではないと理解してしまいました。そこで冬毬が出した答えは、スクールアイドルが「姉者をきっと傷つける」というものでした。

 冬毬は、ただ姉者のことが好きで、それゆえに姉者の進む方向を心配していただけなのだと思います。軽蔑なんてそもそもしたことがないし、これからもしないと思います。

姉者のこと

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 ところで、冬毬はスクールアイドルを通してお金を稼ぐ方法や、夏美をサポートする方法を色々考えていました。ただし、夏美にもっと確実にお金を稼いでもらおうと思うならば、本来冬毬がすべきことは一つです。それはずばり自己投資、つまり夏美に勉強してもらうことです。冬毬の能力をもってすれば、数学や経済学くらいなら教えることは造作もないはずです。それをしないのは、本質的に守銭奴なわけではなく、何かに打ち込むことに飢えていてお金稼ぎをやっていた夏美よろしく、夏美のことを本当は否定したくないというのが根底にあるからでしょう。ただ、もう一つの見方をすると、スクールアイドルの配信で課金システムを考えていたように、どちらかというと短期的に利益や収穫を得ようとする傾向があるとも言えそうです。15歳ですから普通はそんなものでしょう。過去データから新スクールアイドル部の配信視聴者数を見積りつつ、マルガレーテの置かれた状況の認識が足りていなかったあたり、得意の分析にもまだ甘さがあると言わざるを得ません (この点、夏美の直感のほうが正しかったりもします)。

 そんな冬毬も、視聴者が集まらなかったことに悔しさをにじませていました。実際に行動し、努力し始めると、人の考えることは変化していくものです。不純とも言えるきっかけからスクールアイドルの世界に飛び込み、叶えたい夢ができてしまう過程が姉妹で全く一緒なのが面白いところです。(そう考えると、若干無理な展開でもこれに対応する夏美のシーンにかのんがいた必然性があるかもしれません。)

 

2. 青二才のSunday

 新たな道を進むかのんを送り出したスクールアイドル部・Liella! ですが、全員が納得していたわけではありません。特に可可は、不満を隠せない様子でした。かのんがマルガレーテに「騙されている」などと悪口が止まらず、しまいには生徒会長である恋への追及を始めます。そこではかのんと2人でスクールアイドルを始めたとき、恋に反対されたことを蒸し返し、引き合いに出していました。そのことは終わったことであるうえ、恋があの時のことを反省し、学校を守る立場として糧にしていることも、1話で描かれたばかりです。今のままでは、ラブライブ! シリーズの歴代3年生の中で一番精神的に幼いと言わざるを得ません。14歳 (2期終盤以降では15歳) のミアですらもう少し大人です。

 もっとも、『スーパースター!!』の登場人物は、等身大の精神年齢で描かれているような気がします。『虹ヶ咲』では全体として思考や言動がやや大人びているので、先程の比較は基準が合っておらず、いささか不公平だったかもしれません。

 そんな可可も、新スクールアイドル部のお披露目ライブでは感動していました。これで、かのんが本気だということや、かつてスクールアイドルを見下す発言をしていたマルガレーテもスクールアイドルに対して真剣に取り組んでいることは可可にも伝わったのではないかと思います。しかし、かのんがそのような選択をしたこと自体はまだ歓迎できないかもしれません。かのんが本気だとわかってしまえば、将来的には合流することを目指しているとはいえ、かのんが今この瞬間を頑張る場所としてLiella! を選ばなかったことは余計に悔しいのではないでしょうか?

 

3. マイナスからの上昇

 そんな新曲『Bubble Rise』は、新スクールアイドル部初の配信ライブの楽曲として制作されました。毎年開かれている代々木スクールアイドルフェスティバルの参加権を得るためには、この配信イベントで1万人以上の支持を集める必要がありました。このように結成したばかりでも数値目標が示されるのも『スーパースター!!』らしいですね。冬毬の分析では5万人の視聴者が見込め、20%以上の評価を集めればよい、ということになっていました。ところが、蓋を開けてみると視聴者は1万を大きく割る事態に。マルガレーテは自分のせいだと悲観します。マルガレーテが前年の都大会前の意気込みで、あるいは大会後の結果発表での言動で注目を浴びたことを、冬毬はプロモーションに使えると考えました。しかし、注目を浴びたと言っても実際には炎上だったので、むしろマイナスになってしまったというのです。かのんのファンにとっても、可可のように、そのような人物と組むことに反感を持ったり、「Liella! のかのん」が好きで現状に「解釈違い」を起こしたりした人は、少なくなかったはずです。とはいえ、マルガレーテはそのような状況から都大会2位につけたことがあるのですから、それだけの力があると言って然るべきです。

 そんな3人は自らを儚いあぶくのような存在に喩えました。目の前でチャンスが消えてしまったり、伝えたい想いが届かなかったり。しかしそんな泡は、深海からたえず上へ上へと上昇していきます。3人がマイナスからでも諦めず (再) スタートを切ったことを物語るもので、空高く光る流れ星を追いかけた『Tiny Stars』とも対照的だと思います。

*1:ある意味図星かもしれない