徹底的に合理的なことを追い求めていた夏美の妹、冬毬。歴が長いファンからすると、栞子と姉・薫子のエピソードを思い出す*1ところですが、極端に夢を否定する冬毬の過去が明かされました。2期6話で見た夏美の過去は実は断片的なものに過ぎず、本当は妹の存在抜きには語れないものだったのです。
2期生の絆の鍵を握る人物
「楽しいを越えて 傷ついて知った もっと楽しいって気持ち」
「大好きだから突きつめて 足りなくて悩む」
1. 初めての共同作戦
練習中に鉢合わせたと思ったら、二人揃って姿を消してしまった冬毬と夏美。2人を追って、Liella! と新スクールアイドル部の初めての共同作戦が始まります。四季が付けた発信機をたどって9人がたどり着いたのは、まさかの茨城県牛久市。9人にとって聞いたこともない土地です。まさか、ニジガクのしずくと並ぶ遠距離通学のスクールアイドルが存在したとは*2……。
かのんがみんなを連れてきた場所は、夏美のいるところ……ではなく、牛久大仏でした。ミッションそっちのけでみんなとの思い出を作りたがるかのんの行動はいくらなんでも緩んでいるような気がしますが、鬼塚姉妹の問題に向き合うに際して少しでもLiella! とマルガレーテや、Liella! メンバー同士の距離感を少しでも近づけておきたいというかのんなりの計らいだったのでしょうか? 考えすぎな気もしますが……。
2. 姉を背負い続ける妹
鬼塚関連エピソード
今回明らかになった、夏美と冬毬の本当の関係。
2期6話では、夏美が幼い頃にたくさんの夢を見て、それを諦めてきた回想が入りました。このときは完璧に隠されていましたが、その隣にはいつも冬毬がいたのです。いつでも姉者の夢を応援して、たくさんアドバイスもして、姉者が夢を叶えられるのをずっと期待してきました。しかし、それらは何一つとして叶うことはありませんでした。中学受験 (または、養成所のようなところのオーディション?) に失敗したという、これまでは語られていなかった過去も明かされました。
ついにすべての夢を失った夏美も、ひとりではありませんでした。むしろ、ひとりでなかったからこそ、問題だったともいえます。ずっと夏美のそばに居続けた冬毬が、同時にすべてを失ってしまったのです。
夏美は頭脳や運動などの才能に恵まれていませんでした。そして、冬毬はそれらすべてを持っていました。確かにそれは、夏美のことを支えるには十分な能力でした。しかし、冬毬は夏美がただ一つ持っていたかけがえのない才能である、何度も夢を見て挑戦するという才能を、皮肉にも持っていなかったということもできます。その部分で姉者に依存していたのです。
姉思いで、姉の将来を心配している理性的な妹、という冬毬評を2話の感想で書きました。しかし、それは冬毬の一面に過ぎません。冬毬は、姉のことを勝手に独りで抱え込んでいます。姉妹といえども、いずれは別の人生を歩んでいくものです。まだそんなことを自覚する年齢ではないのは確かですが、姉が一生傷を引きずり続けるかもしれないという理由で姉の友人の励ましを無責任だと詰るようなことは、姉への依存体質が度を超えているように思われます。
夏美が冬毬に軽蔑されていると思っていたのは、才能ある冬毬への劣等感からでした。そんな冬毬も、おそらくかのんの歌の才能を圧倒的だと感じていて、「夢を見ることが許されている人種」だと見抜きます。これもまた夏美が言ったことを受けた考え方なのですが、本当の夏美はそう思っていても夢を追うことをやめられない人物なのです。そういう思い込みがあってか、2期では夏美自身やきな子、そしてマルガレーテをも立ち上がらせたかのんの「神通力」が、ここでは不発に終わってしまいます。
それにしても、何万人ものスクールアイドルが願っても叶えられない夢である「ラブライブ! 優勝」を叶えた夏美にとってスクールアイドルが最終的にマイナスになると考えるのは、その栄誉を軽視していると捉えられても仕方ありません。実際「届かなかった」当事者であるマルガレーテにしても納得いかない言い分であったに違いありません。
3. 夢の先に待つもの
姉者が不合格になった日が本人以上にトラウマになり、傷つくことを恐れていた冬毬。今回は「傷つくこと」をテーマに扱っています。今回は、というより、1期は丸々かのんに関して同じことをしていたともいえます。
冬毬の考えにあまり共感できなさそうなのが、千砂都とマルガレーテでした。千砂都は、信頼している相手であれば、たとえ傷つけたとしても相手が立ち上がり、前に進めることを信じて強く背中を押すタイプです。マルガレーテは、自分が傷つくことは覚悟の上で夢に向かって突き進んでいます。やはり名前にマルがつくだけあって根っこのところは似ています。
もう一つ、他の学校 (今回ラブライブ! のルールで「一校一チーム」と明言されたので、別の世界であることも判明) の例を挙げると、蓮ノ空の小鈴は、失敗してもほとんど傷つかない人物です。そのため、成功するまでやればよいとばかりにいくつもの「チャレンジ」を重ねることができるのですが、その半面「負けるつもりで戦っている」と、直近の『活動記録』で新たなライバル・桂城泉に指摘されてしまいました。それもまた一長一短な「不屈」のパターンです。
しかし、普通の人は自分が傷つくことも誰かを傷つけることも恐れます。この人たちは、それだけで普通ではありません。そんな「普通の人」の代表がLiella! 2期生たちであるといえます。
Liella! は、ざっくり言えば超人である1期生と常人である2期生が一緒に作り上げてきたチームです。ラブライブ! 優勝の高みに上り詰めてもなお、2期生たちは常に1期生に対する劣等感を抱えながら活動してきました。日々現実に打ちのめされる中でも、Liella! がこれからも輝き続けるために、1期生を超えようと挑戦を続けています。
そんな2期生が出した答えは、「雨の後にしか虹はない」というものでした。傷つくことを経験しなければできない笑顔があります。傷つくのは、本気で向き合うからに他なりません。
確かに夏美も、あの日のあと「マニーを稼ぐ」などと言って本気になることから逃げていたときがありました。最初はへらへらして、冬毬のことも安心させていたのでしょう。夏美も夏美で、打ちひしがれる冬毬を見て安心させたいと思っていたのかもしれません。しかし、それにさえ夏美は夢中になってしまいます。そのうちに株で負けてしまったり、手間暇かけた動画がてんで伸びなかったり……。夏美は、結局のところ何かに夢中になることをやめられない運命なのです。
「やってもないのに向いてるかどうかなんてわからない」
「諦めるくらいなら夢なんて語ってほしくない」
2期における、夢見ることに対する想いが人一倍強い人ならではの言葉でした。そして、夏美はこれまでとは違い、みんなで叶える夢に出会います。同期の仲間たちは、「神通力」を持たない普通の子たちです。選ばれし者でないからこそ、冬毬の心にも言葉が届いたのではないでしょうか。
冬毬は、夏美が次から次へと夢を思い立っては書き留め、すべてに×をつけて捨ててしまったノートを大切に持っていました。冬毬が求めるものが夏美の笑顔だけであるならば、今本当にすべきことは、冬毬自身ついに捨て去ることができなかった夏美の夢を、今度は一緒に見ることかもしれません。次は冬毬がその運命に気づくときです。
次回のサブタイトルは『你好! 上海! 小籠包〜!』。1期1話のかのんの台詞を少し変えたものですね。1期、2期でもこの時期に遠征回がありました。いざ可可の故郷へ、劇場版では過去2回あったものの、TV放送ではシリーズ初の海外渡航となるのでしょうか?