普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

これが本当の『星屑クルージング』 ~ラブライブ! スーパースター!! 第3期感想週報⑤『你好! 上海! 小籠包〜!』~

姉が用意した可可のソロステージ
 (『ラブライブ! スーパースター!!』第3期第5話『你好! 上海! 小籠包〜!』より/©2024プロジェクトラブライブ!スーパースター!!)

 ラブライブ! シリーズで海外に行く話といえば、『ラブライブ! The School Idol Movie』のニューヨーク (ただし、都市名は明言されていない) と『ラブライブ! サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』のイタリアがあります。一応、アニメ『虹ヶ咲』2期最終回では歩夢がロンドンへ旅立つところまでが描かれていますが、メンバーみんなでの旅行ではないのでこれは含めません。いずれも劇場版の映画ですが、ついに今回、地上波のTVアニメでメンバーたちが海外へ行く回が放送されました。

 今回は、「進路」「姉妹」「旅行」について、これまでを振り返りつつ感想を書いてみました。

姉妹については前回から引き続き

carat8008.hateblo.jp

 

 

 

1. 進路について: 原宿と上海、ときどき金沢

 ラブライブ! シリーズで卒業する3年生の進路の話になることは、実はあまり多くありません。『サンシャイン!!』は比較的正面から扱っていますが、『ラブライブ!』はほぼスルー。『虹ヶ咲』は断片的で、彼方だけは『スクスタ』でも『えいがさき』でも示唆がありましたが、他のメンバーについて触れられることは少なく、2章メンバーである果林とミアはともかく、エマに至っては語られないまま手番が終わってしまいました。もっと言えば、ことりやかのんの留学のように将来を見据えた展開をしても、結局決めたとおりにはならないというのがお決まりであるくらいです。

 そう言っていると、なんと今回放送の翌日、『リンクラ』活動記録にて綴理の進路の話が出てきました。リアルタイムなので3年生の11月、綴理は進路を考えてすらいなかったのです。綴理の夢はスクールアイドル。ということは、卒業してしまえば終わってしまいます。綴理はそのことを自覚すらしておらず、このタイミングで進路未定という危機的状況*1に置かれていたのでした。

 5話はまだ夏前で、比較的余裕はあります。しかし、可可もまた、将来のことを考えていませんでした。可可の夢もスクールアイドルで、そのことだけを考えていたいということは共通しています。しかし、今のままではいけないと思っている*2ところは綴理と違うところでしょう。まだ現状認識ができているし、自分の意思もはっきりと言葉にできています。なお、このときかのんと今まで通りに腹を割って話ができていたことは、4話の共同作戦の成果でもあると思います。

 ところで、可可と綴理という珍しい取り合わせをしましたが、実はあるステージで共演をしています。『異次元フェス』の『繚乱! ビクトリーロード』です。可可の「おしまいなんてナイナイナイ」に対して綴理のパートに「おしまい」があったのが一部でネタにされていましたが、2人のスクールアイドル観は少し似ています。綴理の言うところの「みんなで作る芸術」という考えに、可可もきっと共感することでしょう。学校という有限の時間の中で、集まった仲間と一緒に作り上げるものであり、それはラブライブ! で勝つことよりも大事なことだと考えていました。将来のためであっても今やりたいことに悔いを残したくないというのも、2人の共通するところだと思います。

 

2. 姉と妹

 前回は夏美と冬毬の話でした。妹の冬毬は姉の夏美に傷ついてほしくない、ずっと笑顔でいてほしいと願いましたが、夏美は傷ついたとしても、その先の笑顔はもっと良いものだと教えました。

 その後の冬毬は、以前より前向きに練習に取り組むようになりました。姉との関係も良くなったようです。それは、冬毬の中に「姉者の気持ちを知りたい」という気持ちが芽生えたからです。

 活動の中で一緒にいる時間が増えたためか、上海ではマルガレーテに急接近しています。様々な国を知っているマルガレーテに対して、「他の国のこともいつか教えてください」というのは、相手の知っている世界への興味であり、3年間にとどまらず将来にわたって仲良くしてほしいという意思表示でもあります。その姿を見て嬉しそうにしていたのが夏美でした。ずっと姉者一人を追いかけていた冬毬にとって、自分以外に「好きな人」――というと、意味を限定しすぎかもしれません――関心を抱く人ができたということは、確かな成長です。夏美が喜ぶのも当然です。夏美も仲間ができて初めて、これまで味わえなかった喜びを体感することができたのです。

 さて、今回はもう一組、鍵を握る姉妹がいます。可可とその姉、萌萌の唐姉妹です。

 可可の親は厳しく、可可に勉強ばかりさせてきました。スクールアイドル留学にも反対し、結果を残せなかったら帰国するようにと圧力をかけ続けていました。その中で、家庭内における理解者として姉・萌萌がいました。これまでも可可を心配し、何度も電話をかけてきた姉です。萌萌は可可のスクールアイドル活動を応援してくれています。そればかりか、将来も可可のやりたいことを続けるように勧めてくれ、親の言いつける進学先ではなく、音楽の道に進むのがよいという意見を持っています。

 一つだけ注意したいのは、可可はスクールアイドルなのでもちろん歌うことは好きですが、必ずしも将来も音楽を続けたいと思っているわけではないということです。可可自身、自分がどうしたいのか答えを出していないと思います。なので、萌萌は可可の味方であるにせよ、2人がすれ違っている可能性はまだ否定できません。

 Liella! とトマカノーテは、可可を救ってほしいとのことで上海でのフェスに招待されました。10人を迎えるサプライズとして萌萌が用意したのは、可可のソロステージでした。可可はソロ曲『星屑クルージング』を、中国語で歌い上げました。ちなみに、『虹ヶ咲』以外のアニメで、通常版がシングルまたはアルバム (サントラではない((こちらはすみれ『グソクムシのうた』など))) として収録されているソロ楽曲を披露したのはマルガレーテに次いで2人目で、また既存曲のソロを歌ったのも『虹ヶ咲』1期1話 (せつ菜『CHASE!』)、2期13話 (ワンマンライブの各曲) 以来3回目と、ソロ曲自体が非常に貴重です。

 一体これから、何が起こるのでしょうか?

 ところで、かのんたちと萌萌が出会うシーンには少し物申したいことがあります。萌萌がLiella! をよく知っていることについて、かのんは不思議がりすぎです。「なんで私の名前を……?」とまで言っていましたが、まだ可可の姉であることを知らないまでも、かのんたちは日本最高峰の、あるいは世界最高峰のスクールアイドルの大会を制しているのです。日本に近い国のみならず、音楽の聖地であるオーストリアでさえスクールアイドルが注目されている時代なのですから、世界のどこで誰がLiella! を知っていても不思議ではありません。間違いなく『サンシャイン!!』(イタリアの人たちは、ほとんどスクールアイドルを知らなかったはず) や『虹ヶ咲』(歩夢が英国でスクールアイドルを広めた) の時代よりスクールアイドルの知名度・注目度は上がっています。まして世界に歌を響かせることを目標にしているかのんのこと、見知らぬ人が自分を知っていても喜びこそすれ、訝しむことはないはずです。5日後の航空券を送りつけられ、中国渡航に必要なビザはどうしたのか……というツッコミが話題になっていますが、それは『無印』や『サンシャイン!!』の劇場版におけるパスポートの問題にも言えることで、長くラブライブ! シリーズを見ている人であれば不問にしてもよいところです。むしろこちらの方が引っかかります。

 

3. 旅するスクールアイドル

 『スーパースター!!』1期は神津島、2期は北海道と少しずつ遠くへ行くようになった合宿回ですが、ついに海外に出てしまいました。少し視点を変えると、スクールアイドルが遠くへ旅をする物語、つまり各作品の劇場版を思い出させる演出が端々に盛り込まれていました。

 まずは、突然届くエアメールから。ことりの留学の件もありますが、今思い出すのは『ラブライブ!』最終回から劇場版へ向けての展開です。ラブライブ! で優勝し、卒業式を終えたμ’sに舞い込んだ、突然の海外ライブの誘い。そして旅立った先には、大都会の摩天楼が待ち受けていました。

 一方で、劇場版『サンシャイン!!』と似たところもあります。メンバーの血縁者が現れ、その人物の導くままに行動するところです。仲間たちはそのメンバーを探そうと、写真を手掛かりに様々な名所を巡ります。『サンシャイン!!』劇場版では鞠莉の母は正体を明かしてこそいましたが、真の目的を偽ってAqours接触しました。一方で、こちらにも曜のいとこである月が当初は正体不明のまま曜に接触しているところをほかのメンバーが目撃するシーンがありました。

 さらに、ホテルでの水着カットでは最新であり、まだ一部劇場で公開中の『えいがさき』第1章を思い出しました。流石に毛色の違う作品なので似たところはあまりありませんが、第2章以降とも似ているかもしれません。

 当ブログでは、1期、2期ともに『スーパースター!!』にある歴代作品要素に触れてきました。地元とともに歩むSunny PassionにAqoursを感じたり、何も残さなかったと思いきや、学校そのものを次世代に託すことで想いを繋いだ花にμ’sを感じたり……。それら歴代アニメ作品はいずれも、2期が終わった後に劇場版が待ち受けていました (『虹ヶ咲』は間にOVA『NEXT SKY』が挟まる)。結ヶ丘のスクールアイドルたちのような旅は、2期をやり遂げたスクールアイドルの特権なのかもしれません。(?) 

*1:仮に進学を選んだ場合、大抵の理系大学になら難なく合格しそう

*2:だからこそ、可可は今のままではいけない