可可の姉、萌萌がLiella! メンバーたちに求めたのは、スクールアイドルのフェスに出演し、可可が歌を続けてくれるようにすることでした。しかし、それは可可の意志なのか……? というところが、前回わからずに終わったところです。
突然の姐姐
可可の意志でした。紛れもなく。
しかし、可可は相反するもう一つの意志を持っていて、それによって歌を続けたいという気持ちを隠してしまったのです。
そんな可可の心を開いたのは、あの言葉でした。
1. 可可とかのんとすみれ ~特別な存在~
可可を巡って、1期と2期で展開されてきた人間関係のうち主要なものは、「クーカー」と「クゥすみ」です。もちろん、Liella! のどのメンバーも可可の大切な宝物ですが、可可に始まりをくれたかのんと、時々張り合いながら互いを認め、密かに自分の特別を相手に与えようとし合ったすみれの2人は、特別の中の特別です。
クーカー
クゥすみ
2人のキャラの違いから、可可の事情を知ったときの関わり方も変わってきます。かのんは、まずは可可の話を聞きました。その上で、萌萌の思いなどにも触れつつ、可可自身の歌を続けたい気持ちを引き出そうとしていました。このように、とにかく優しいのがかのんです。自分を歌の世界に引き留めてくれた特別な存在である可可に対してだけではありません。はっきり言えば、かのんは誰に対しても優しいのです。
それに対して、すみれは自分の願望として、可可にステージパフォーマンスを続けてほしいという気持ちを伝えました。臆病なところがあるにもかかわらず、自分が中心に立ちたい、もう少し広く言えば「わがままを通したい」という気持ちを心に燃やし続けてきたすみれらしい言葉でした。
最初のかのんの言葉では、可可から歌を続けたいという気持ちを引き出すことはできませんでした。日本でスクールアイドルにけじめをつけて故郷へ帰ること、結果を残さなければそれすら叶わないことは可可にとって前提でした。そう思って悔いのないように頑張ってきたのです。その一方で、すみれのわがままな願いは、スクールアイドルでなくなると同時にステージを降りることを決めていた可可の心を揺らします。そのことを直接知らなくても、可可の決心を知ったかのんはもう一度可可と向き合うことを決めました。今の可可は、あの日の自分と同じだと思ったのです。私から見れば、2年以上そのつもりで覚悟を持ってきた可可とは全く同じではないと思ったのですが、それはそうだとしてもパフォーマンスを続けたい気持ちに蓋をするのは間違っていると、かのんは主張したかったのです。
かのんは可可に、あのときの可可と同じ言葉をかけました。
「好きなことを頑張ることに、おしまいなんてあるの?」
1期1話の台詞であり、私が1期1話どころか「予告で」号泣した台詞です。
「好きなことを頑張ることに、おしまいなんてあるんデスか?」
結局『ラブライブ! スーパースター!!』のほかに、予告編で泣くアニメに私は今のところ出会っていません。
先ほどかのんは誰に対しても優しいと書きましたが、それはそれとして可可は特別な存在なのです。そして可可を特別だと思っているのは、萌萌やすみれやかのんだけではないことをも、かのんは示しました。トマカノーテとしてLiella! の前座に立ち、上海の人々に可可の名前を呼ばせたのです。
可可に対する立場も思いも違う、可可にとって大切な2人。その役回りは、可可の夢を見出して背中を押すというところで、最終的には一致することになりました。スクールアイドルを続ける中で芽生えた可可の夢。可可自身気持ちに蓋をしていましたし、親だってきっとそうとは知らないだけなのでしょう。まだ反対するとは言っていません。そして、応援してくれる人はあんなにたくさんいます。可可は幸せ者だと思います。
2. 王道
進学という親に、あるいは中国社会に敷かれたレールと、スクールアイドルという夢。その2つの間で何年も揺れ動いていた可可は、仲間の言葉に背中を押され、自分の好きなことを続けることを選びました。……と書くと、いかにもラブライブ! シリーズで定番の展開という感じがします。今期の冬毬や四季に関する回も、ざっくり言えば流れは同じということになります。「自分の好きな気持ちに正直になりなさい」というメッセージ自体が、ラブライブ! シリーズではありきたり、といえそうです。
その点に関しては、あまり感想・考察も書きようがないのが事実です。確かに、かつて自身がかのんにかけた言葉に可可が奮い立たされるところには感動して目が潤んだのですが、薄々予想もできてしまっていました。「感動しました」だけでは記事になりません。何とかこの回らしさを探せないか……と考えると、後述するように、可可が答えを出した対象がスクールアイドルの「後」であることはユニークといえるでしょう。
とはいえ、定番は優れているからこそ定番なのです。私たちは仲間と共に好きなことを追いかけ、夢を叶えようとする少女たちの物語を見るのが好きです。なぜ「クーカー」が人気かといえば、一人では始まる前に終わっていたであろう挑戦を、二人で始めたからです。どこかで見たような展開は、その人気に応えるだけの「王道」です。考えてみれば、『絶対的LOVER』のLiella! 側の衣装は、『Tiny Stars』を発展させたもののようにも見えます。惜しむらくはかのんが同じものを着られなかったことですが、こればかりは仕方ありません。3期準拠の6thライブの先、7thライブあたりで11人揃いの衣装が実現するかもしれません。
3. 夢見ていた! 唐可可のアイドル続行宣言
前回、これまでのシリーズではスクールアイドルの進路があまり描かれてこなかった、という話をしました。実は、その中でもさらに、スクールアイドルでなくなった後、現役アイドルとして活動を続行することを表明したスクールアイドルはもっと少ないのです。卒業後も音楽を続けることを明言しているかのんとマルガレーテ、本来既に高校を卒業しているミアは別にして、スクールアイドルからプロのアーティストに転向することを決めたのはA-RISEくらいのものです。おそらく言われなくてもにこはアイドルで居続けるのでしょうが、明言はされていません。(と、言っていたら慈も事実上現役続行と取れる発言をしました……)
そもそも、『スクールアイドルミュージカル』でも、劇場版『ラブライブ!』でも、スクールアイドルは既存のアイドルとは別のものであるということが強調されていました。スクールアイドルはメジャーデビューのための踏み台ではないし、そのようなスタンスは好まれないということは前提のようになっていました。別の夢のためにスクールアイドルになった人といえばしずくが挙げられますが、彼女の目指すのは女優という別の路線です。また、スクールアイドルは長くても3年間で終わりで (もっとも、マルガレーテのように早期に活動を始めることも不可能ではないようです)、だからこそ輝けるのだというのが、スクールアイドルの美学であるかのように語られてきました。とはいえ、推しの引退というものがファンにとって辛いものであることは論をまちません。挙げ句の果てには「めぐちゃん*1留年して」などという本末転倒なコメントも見られるほどです。
しかし、スクールアイドルはアイドルになるための過程ではなく、卒業したらスクールアイドルは終わりであるということは、スクールアイドルを引退したらアイドル活動を辞めなければならないということを意味していなかったのです。何より、「好きなことを頑張ることにおしまいなんてない」ですし、可可のように今を全力で頑張ってきたスクールアイドルの元には、その先を見てみたいという人がたくさん集まります。そんな人がスクールアイドルの「先」を夢見たなら、それが叶ってほしいと願ってしまうものです。
可可は「これからもステージに立つ」としか言っておらず、アイドルとしてデビューするとは明言していません。しかし、「可愛いもの、きらきらしたものが好き」と言っているので、ただ歌うだけというわけでもないのでしょう。「きらきらしたもの」はステージから見える景色であり、「可愛いもの」は自分のなるべき姿です。
前回の記事で述べた、姉が思い描く可可のやりたいことが、可可自身が本当にやりたいこととずれているのではないかという懸念は、結果として取り越し苦労に終わりました。もし、可可が親の望むエリートコースでも、姉が応援する歌の道でもない道を選んだとしたら、それはファッションに関係することなのではないかと想像していました。可可はLiella! の衣装を作っているからです。中学時代、スクールアイドルに出会う前の可可が綺麗な衣装に憧れるシーンが6話にもありました。
おそらく、可可はこれからも衣装にこだわり、芸能界でも自分で衣装をプロデュースするなどして、ステージに生かしていくのでしょう。それも含めて可可の新しい夢なのだと思います。
4. 選択
それにしても『スーパースター!!』は、登場人物にシビアに二者択一を迫るものですね。2期終盤にはかのんも留学か残留かという選択を迫られました。可可の親孝行したいという気持ちだって、本物だったと思います。これが『虹ヶ咲』なら、どちらも犠牲にしない新しい解決策へたどり着くところだと思います。決断には痛みを伴うというのが、『スーパースター!!』の哲学のようです。
この二つだけを比べるのもあまり印象が良くないので、ならば『サンシャイン!!』はどうかというと、より残酷で選択すらできず、運命を突きつけられてしまいます。運命は決まっていて、しかしその中で懸命に頑張ることは無駄かといえば、そうではないといいます。
この回もありきたりなようで、実はとても『スーパースター!!』らしいのかもしれません。
*1:藤島慈