普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

誰も悲しまない答えはきっと ~ラブライブ! スーパースター!! 第3期感想週報⑦『Liella! に勝つために』~

他愛もない時間が団結の鍵に。
「お冬毬会」などと、まさかマルガレーテがダジャレを言われる側になるとは……
 (『ラブライブ! スーパースター!!』第3期第7話『Liella! に勝つために』より/©2024プロジェクトラブライブ!スーパースター!!)

 

 『ラブライブ! スーパースター!!』の視聴者は皆、結末よりも過程に注目して見ています。なぜなら、結末は皆知っているからです。もちろん、ラブライブ! 優勝するかどうかは終わってみなければわかりませんが、11人がひとつになるという結末は変わりません。

 しかし、11人がひとつになるという筋書き通りに進行する物語だとわかりきって見るのもまた味気ない、というのがジレンマです。1話で、あるいはあの衝撃的な予告で「私はLiella! には戻らない」とまで言ったのを茶番にしてはならないはずです。

 早いもので3期も折り返し、7話はそのことについての作り手の思いさえ伝わってくるような回でした。

11人がひとつになる体験

carat8008.hateblo.jp

 

 

 

1. 欠けた月

 かのんと千砂都を呼び出した理事長は、ファンの声として冒頭に書いたようなことを2人に伝えました。Liella! 内では、特に2期生を中心に11人になることが既定路線かのような反応がありました。上海で、11人でひとつのステージを作り上げるセンセーショナルな経験をしてしまったのです。かのんの「いつかひとつになる」という言葉を信じているLiella! メンバーにとっては、夏休み明けの現状はお預けを食らったような気持ちにもなるはずです。

 ただ、Liella! が一枚岩かといえば、そうでもありません。まず、千砂都はかのんの考えを十分理解しているはずです。さらに、もう1人揺れているメンバーがいました。新スクールアイドル部・トマカノーテに探りを入れに来たのは夏美でした。夏美は冬毬とマルガレーテに対して、Liella! に誘うように言われていましたが、2人を前にしてしどろもどろ。冬毬に言いたいことを見透かされ、振られてしまいました。このとき、2期でも使われた四季の発明品で冬毬たちのところへ強制的に走らされていましたが、勢い余って行き過ぎたり、戻ったりしていました。これは夏美の心の迷いを反映していたのではないでしょうか。2期1話のきな子のときもそうでしたが、四季の発明は人の心を映す鏡で、発明品で無理矢理動かされているように見えても実はその人の自由意志が大切であることがあります。

 肝心のかのんはこのときいませんでした。家の水道の修理で練習に出られなかったのです。普段このようなことは父親がやっていたのですが、父は海外で仕事中です。父の欠けた澁谷家からは、いなくなって初めて気づく存在の大きさを感じます。それと同時に、その欠けた部分を補うように、残された家族たちが力を合わせていることもわかります。これも、かのんが欠けたLiella! と重なるところがあります。8人のLiella! では、四季がセンターに挑戦したのをはじめ、かのんがいたときにはなかった成長が見られます。ただそれでも、父が不要になることが決してないように、メンバーたちはかのんの帰還を待ち望んでいたのです。

 

2. 君の願いは君の力で

 トマカノーテがなぜLiella! に合流せず、3人で活動しているかといえば、それぞれに自分の力で叶えたい夢があるからです。

 マルガレーテのやりたいことは、Liella! に勝ち、ラブライブ! で優勝することです。別に、好きでLiella! に喧嘩を売っているわけではありません。Liella! を倒すことで自分の歌の力を証明することができさえすれば、それ以上Liella! と仲違いする理由はありません。また、ラブライブ! も、自分に勝ったLiella! の力を借りて優勝しても意味がない一方で、一勝一敗*1、自分たちと互角の力を持つLiella! と手を取り合って頂点を目指すなら、それは必ずしも悪い話ではありません。

 冬毬のやりたいことは、姉のスクールアイドルに対する想いを知り、姉に笑顔でいてもらうことです。もしトマカノーテがLiella! を破り、ラブライブ! の出場権を得た場合、冬毬は自らの手で夏美の夢を挫くことになります。夏美自身は傷つくことも覚悟の上ですが、互いの全力をぶつけ合った上で最後は笑顔でいたいという冬毬の願いは切なるものです。

 そしてかのんが目指すのはもちろん11人でのラブライブ! 優勝ですが、「誰もが納得するやり方」であることが大前提です。誰かを取り残すようなやり方は、2期の時から避けてきたものです。今年はトマカノーテのリーダーとしてマルガレーテと冬毬のことを本気で考えつつ、Liella! メンバーが困ったら助けに入るという形で、結ヶ丘のスクールアイドル全員を成長させられるように動いていました。

 それらの夢を、自分たちの力で実現することこそ、『ラブライブ! スーパースター!!』の1期から変わらないテーマです。1人で目標に立ち向かったかのんや千砂都の例がわかりやすいですが、恋の1期・2期両方のエピソードに見られるように、チームの中で「私を叶える」のも同じくらい大切です。今回は、トマカノーテがトマカノーテとして「私たちを叶える物語」が動き出したのだと思います。11人の心がひとつになった日からトマカノーテが得たものは、ひとつになる素晴らしさでした。ならば、11人ひとつありきではなく、3人が団結することも同じくらい素晴らしいといえると思います。

 そこでかのんが考えたのがお泊まり会でした。3人でお互いのことを知る中で、冬毬とマルガレーテの中では互いを悲しませたくない、互いのことを尊重したいという気持ちが強くなっていったのだと思います。

 それぞれの願いの先にある3人の新たな目標は、「私たち3人でLiella! に勝って、____________」

。肝心のところが耳打ちで視聴者にも聞こえません。ただ、「ひとつになる」ニュアンスのことが入るのは間違いありません。おそらく「11人でラブライブ! 優勝」です。

 Liella! が11人になることがわかりきっているからこそ、その過程次第では興を削いでしまうというのが、今期の話作りの難題だったと思います。ここで『スーパースター!!』の基礎に立ち返り、3人が自分の力で叶えたいことを結び合わせた結果が11人になるのだとすれば、大いに納得感があります。

 連覇・雪辱・姉との初優勝。それぞれの願いが乗った熱戦が、次回からいよいよ幕を開けます。

*1:マルガレーテはメイ・四季・夏美の3人が加入する前のLiella! にもう1勝している