今回はドイツ語のタイトルからしてマルガレーテの回だということがわかりやすかったと思います。2期終了後、マルガレーテがLiella! に加入することが判明したとき、「やはりか」という納得と共に、驚きというか納得しがたい部分がありました。あれほどLiella! に反抗的だった人が、どのようにしてLiella! の一員になるのか? Liella! に入ったとして、馴染むことができるのか? 今回は、それらの問いの答えに最後のピースが埋まる回です。
マルガレーテ、ついにLiella! に加入
1. マルガレーテの得意なこと
マルガレーテは、今までずっと一人でした。日本にやってきてスクールアイドルになっても、可可のようにグループのメンバーは探さず、一人でステージに立ち続け、一人のまま都大会次点まで上り詰めてしまいました。
マルガレーテが人と関わるのを避けてきたのには、実力が匹敵する人があまりいなかったのもありますが、あまりに素直ではなかったからです。可可が距離を詰めようとラブライブ! のことを話題に出すと、「興味ないわよ、あんな大会」と無理しかない言い訳をして逃げてしまいました。その大会のためにどれだけ人生を狂わされ、1年間どれほど捧げてきたか計り知れないのがマルガレーテだというのに……。
確かに千砂都の言う通り、このときのマルガレーテは、誰かに手を差し伸べられること、気を遣われることに対して神経質になっていました。振り返れば他ならぬかのんにも同じような時期があったものです。スマホのゲームにさえ「ばーか」と当たり散らしていた時期が確かにありました。しかし、それ以上にマルガレーテは誰かに手を差し伸べられる、つまり誰かの「下」になることが苦手なのではないでしょうか。助けられれば恩を返す義理堅さがあるからこそ、気を遣ってしまって神経がすり減る、という面もあるでしょう。
一方で、マルガレーテは澁谷家でありあに地元のお菓子、ザルツブルガー・ノッケルンの作り方を教えていました。相変わらず物言いは強いですが、生き生きしていたマルガレーテを見てかのんは気づきました。マルガレーテは、リードされるよりもリードするほうが得意だということに。ただ単に誰かのペースに合わせることが苦手で、Liella! の中で孤立していたのだとしたら、やり方を変える必要があるとかのんは考えたようです。
そういえば、前年にLiella! を配信で挑発したときの言葉は「私が本当の歌を教えてあげる」でした。もしかすると、挑発しようとしたわけではなく、本当に「教える」つもりだったのかもしれません。つまり、自分が優位になるコミュニケーションしか知らなかった……のでしょうか (?)
2. マルガレーテの変化
それならば、マルガレーテをLiella! の中で指導的な立場に就かせればメンバーたちとコミュニケーションが取れるのではないかとかのんは閃きました。しかし、そう上手くもいきません。なぜなら、マルガレーテはグループで活動するスクールアイドルに対して自分のやり方が通用しないことに気づいていたからです。自分のやり方でやろうとすれば、実力が足りないきな子や夏美は端に追いやることになってしまいます。しかし、スクールアイドルがそういうものではないことは、トマカノーテでの活動を通してわかっていました。
「みんなの心がひとつになることが何よりも大切」ということは、他ならぬLiella! から教えられたことではあります。しかし、Liella! ではない環境で頑張ることで、身をもってそのことを学べたといえます。マルガレーテは自分が良いと思うことをするとスクールアイドルに大切なことと反してしまうことを自覚していたのでフォーメーションを考えるのに乗り気ではなかったのです。実力不足のメンバーを傷つけるようなことをすれば、Liella! 全体の連帯も弱まってしまうかもしれません。
しかし、実際にはそうはなりませんでした。名指しされたきな子と夏美は他の誰よりも頑張り、年下で新入りのマルガレーテにも教えを請うてきました。マルガレーテはこれまで、「教えてあげる」という高圧的とも捉えられかねない態度で孤立してきた部分があったのだと思います。そして、誰かに素直に教えを請うことは、マルガレーテが苦手としてきたことでもありました。
「Liella! は敵」とまで言ったマルガレーテがどのようにLiella! の一員となったか、という問いについては、形式上は「Liella! と真剣勝負したい」という願いにけじめがつき、ユニットの仲間になったかのんや冬毬の想いを大切にしたいという気持ちが芽生えたことという答えができます。それに加えて、Liella! が大切にしているものを守るために、変わることができたことという、一歩進んだ答えもあると思います。後輩に実力不足を指摘されて折れるでも反発するでもなく、自分に足りないものを求めてひたすらに努力するきな子や夏美は、マルガレーテにとっても立派な「先輩」と思える存在でした。「全員が手を取り合って前を向いている」この瞬間にすべてを懸け、マルガレーテはLiella! の一員としてラブライブ! に挑みます。
3. 開幕! 3度目のラブライブ!
一昨年は『ノンフィクション!!』、昨年は『Chance Day, Chance Way!』を歌ったLiella! のラブライブ! 予選。今年はどんな曲が出てくるのかと思ったら、まさかの『Let's be ONE』でした。OPテーマが決勝のアンコール以外で歌われるのはシリーズでも初めてだと思います。正式に11人になったLiella! として、対外的には初めての曲です。劇中のファンにとっても、かのんの離脱という波乱を経験し、不安を抱えた半年間だったと思います。Liella! もひとつになり、そんなファンたちにも「ひとつになろう」と呼びかけるような選曲だったと思います。