
1月12日 (日)、前年6月 (アプリとしては11月) にサービス開始から10周年を迎えた『ステーションメモリーズ!』(『駅メモ!』) の声優トークイベント『駅メモ! Memories Fan Meeting 2025 10周年をもっとたのしく!』が開催されました。同作初のオフラインイベントでした。
私は、初期からこのゲームのファンです。昼夜2公演両方に参加し、「交流」を楽しみ尽くしました。
1. 『駅メモ!』とは
『ステーションメモリーズ!』は、日本全国の鉄道駅をテーマにした位置情報収集ゲームです。アプリを開いて「チェックイン」をすると、直線距離で最も近い駅にアクセスでき、そこで得られるスコアやアクセス回数、アクセス駅数などを伸ばしていきます。また、駅毎にグルメ情報などを書き込める掲示板があり、リアルな情報ツールとして使うこともできます。
『駅メモ!』のゲームの部分を担うキャラクターが、独立思考型駅情報収集ヒューマノイド「DENCO(H)」です。略が正式名称とどう対応しているのかがわからないので以下「でんこ」と書きます。平たくいえば、でんこたちは「鉄道車両の擬人化」です。子どもたちに人気のあの車両、あなたの街を走るあの車両が、美少女の姿になり、手に乗るくらいの大きさの人形としてあなたの周りをふわふわ浮いている、という設定です。
主人公であるプレイヤーは、鉄道の衰退により人間の移動が著しく困難になった未来の「奪取er協会」*1からやってきたでんことともに駅情報を収集する「ステーションマスター」となり、未来を救うために鉄道が走っている時代の駅の思い出を集める、というのが、『駅メモ!』のストーリーです。日常回や、その本筋から外れたイベントストーリー、さらには鉄道の衰退の黒幕である組織・IKS*2から来た敵キャラクターと戦うストーリーなど、でんこの物語にもいろいろあります。
私は、アプリ1年目である2015年5月に、SNSの広告を見てインストールしました。本格的に遊び始めたのは2016年以降でした。以来、同じ『駅メモ!』をプレイする人 (公式には「ステーションマスター」または「マスター」だが、「駅メモer」や縮めて「メモラー」と呼ばれることもある) と一緒に出かけるなど、このゲームを楽しんできました。全国9,300駅以上のうち収集した駅は既に9,000駅を超え、最長の「7両編成」(デッキに入れられるでんこの数) を実現できる9,100駅が目前に迫っています。
メインストーリーで描かれる「鉄道の衰退した未来」について、以前は非現実的なことだと思っていたものの、コロナ禍を経て差し迫った危機だと実感したことがあります。人が移動をしない、人が人と会わない、移動したとしても公共交通機関を使わない時期が現実のものとなり、それが定着する時代が来てしまうのではないかと何度も空を仰ぎました。幸い世界は数年で形式上「正常化」しましたが、交通網や物流の危機はなくなったわけではないと思います。本作はそれほど「社会派」のゲームというわけではありませんが、人が移動することや人と人が交流することに重きを置いており、それだけにこのような、実際に交流できるイベントが企画されたことには意義がありました。
2. キャスト陣
今回のイベントの出演者は、以下の通りでした。
・のぞみ役 ブリドカットセーラ恵美さん (昼夜)
・新阪ルナ役 香里有佐さん (昼夜)
・恋浜みろく役 柳原かなこさん*3 (昼夜)
・為栗メロ役 会沢紗弥さん (昼)
・象潟いろは役 富田美憂さん (昼)
・東海なな役 内田秀さん (夜)
・王子しぐれ役 黒木ほの香さん (夜)
・天下さや役 日向未南さん (夜)
実は、香里さんは『異次元フェス』Day2に桜守歌織役として出演していたため、一度その姿をお見かけしていました。内田さんはご存知ニジガクのミア・テイラー役です。それ以外の声優さん*4とは、「はじめまして」*5でした。
今挙げたラブライブ! やアイドルマスターのシリーズをはじめ、様々な作品で活躍されている声優の方々が集まって何をするのかと思っていたら、終わってみれば『駅メモ!』らしいイベントでした。
3. 爆笑フリップトーク
イベントの内容は、バラエティ番組のような、お題に対してそれぞれの回答をする企画にはじまり、『駅メモ!』や鉄道に関するクイズ、観客全員参加での抽選会、そしてオリジナルの朗読劇という内容でした。 この記事では、その中で特に印象に残った出来事を紹介します。
回答企画では、フリップを使ったトークが展開されていましたが、こういう企画につきものの大喜利のようになる場面がありました。昼と夜で共通していたのが、「美子さん」に関する問いでした。「美子さん」はアプリのチェックインボタンに描かれているキャラクターですが、「でんこ」ではないし、喋ったりプロフィールが明かされたりすることのない謎の存在です。エイプリルフール企画でチェックインボタンから逃げ出したり、ストーリーで主人公の夢の中に「美子さん座」や「AI美子さん」になって現れたりすることはありましたが、どんな存在かを解き明かすヒントには当然なりませんでした。
そんな美子さんの台詞を考えて声を当ててみよう、というのが昼のお題であり、何も見ないで美子さんを描いてみよう、というのが夜のお題でした。昼にトップバッターを務めた富田さんは、いきなり「マッチングアプリで男探しをする美子さん」を演じ、笑いの渦を巻き起こしました。その後もロボットや酔っ払いなど、突飛なキャラが次々に飛び出しました。ジョークなのはわかりますが、奪取er協会は時々謎のセンスを披露するので、あながちあり得なくもないところです……。
夜の部では、今度は資料を見ないで美子さんを描く、というお題が出ました。PASMOのロボットのように四角くなってしまったり、頭からパンタグラフではなくアホ毛が生えていたりと、記憶だけを頼りに姿を再現するのは難しいものでした。その中で、構図や美子さんらしいパーツをほぼ描けていたのが内田さんでした。ただ一点、表情だけを除いて……。内田さんの美子さんは、白目のある独特の表情になっていたのでした。ちょうど内田さんが『艦隊これくしょん -艦これ-』時代に創作し、サンリオにもキャラクターとして公認されている「ボクカワウソ」の顔のような感じでした。そのシュールさに失笑する人もいれば、内田さんを知っているからこそ納得している人もいた「迷場面」でした。
また、自分の担当でんことおでかけしたい場所を発表する『駅メモ!』らしいコーナーもありました。昼の部では「鎌倉」や「新横浜」など具体的な駅名を交えたトークだったのに対し、場が温まってきた夜はより個性が弾けていました。柳原さんが提案したのが山登りだったのですが、その理由は「みろくは遭難しても諦めなさそうだから」という、ポジティブなのかネガティブなのかわからないものでした。さらに内田さんが提案した北海道の理由も「ななの好きなカチカチアイスをよりカチカチに」。実際には、ドライアイスで凍らされている通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」がより硬くなることはないと思うのですが、そのぶれなさ、あるいはこだわりの強さであったり、また「マスターを励ます」即興演技で見せた実直さから、ななのモチーフである東海道新幹線 (N700S系車両) らしさを感じることができました。自分の鉄道趣味者としての感覚も合わせて、知っている声優さんが他のキャラクターも大切に演じてくれていることが実感できたということです。

4. 鉄道のことは鉄オタに聞け!?
クイズコーナーでは、『駅メモ!』や鉄道に関するクイズが出題され、キャストたちが5問連続正解にチャレンジしました。キャストは、解答の際にアイテムを使うことができました。某クイズ番組と同じルールですが『駅メモ!』のアイテムにちなんだ名前が付けられていました。「原典」と同じく、5問中それぞれ1回ずつのみ使用することができました。
・レーダー (観客席にアンケートを取れる。所謂「オーディエンス」)
・マイルグングン (観客1名に解答を聞ける。所謂「テレフォン」)
・フットバース (4択を2択にできる。所謂「フィフティ・フィフティ」)
中でも一番盛り上がったのが「マイルグングン」です。ゲーム中ではでんこの親密度にあたる値を増やしてくれるアイテムですが、会場に集まる『駅メモ!』ファンはほとんどの場合鉄道ファンなので、ここぞというときに鉄道に詳しい人に答えを聞けるお役立ちアイテムでした。
昼の部では、「選択肢の『○才駅』の中で実在するのはどれ?」という問題に対して香里さんが使用しました。会場内から挙がる手の中で、香里さんが指名したのは、なんとイベントに来る途中に実際にその駅にチェックインしたという人。北陸新幹線長野—飯山間で付近を通る、しなの鉄道北しなの線の「三才駅」が正解でした。
夜の部では、「福、祝、寿、幸」の中から実在しない駅名を選ぶという問題に対して黒木さんが使用しました。これの正解は「祝」です。夜の部では、4人目の黒木さんまででアイテムを使い切ってしまっていたのですが、アンカーの内田さんに出題されたのが「選択肢のうち、『駅メモ!』と同じ2014年デビューではない列車はどれ?」という超難問でした。可愛く「おねだり」をすることで特別に「マイルグングン」を獲得した内田さんが早速使用しましたが、このときに指名された人は誤って大井川鐵道の『きかんしゃトーマス号』 (2014年7月12日運行開始) を選択してしまいました。その途端にざわつく会場。それを見て内田さんは確信を得られず、解答したファンも間違えたかもしれないことに気づき焦っていました。結局、そのファンは『ななつ星 in 九州』*6かもしれない、と2択に絞ることにし、内田さんは『ななつ星 in 九州』(2013年10月15日運行開始) を選んで何とか正解することができました。
実は私も『ななつ星 in 九州』ではないか、と思って手を挙げていましたが、自信がなくてあまりぴんと腕を張ることができていませんでした。ステージからは、客席にいる人の表情まで見えているのでしょうか。結局私は指名されず、内田さんと話す機会を逸してしまいました。
それでも私は悔しいというよりは、こうした交流を心から楽しんでいました。自分たちの方が詳しいことに関して声優たちが質問してくれるというシチュエーションは自己顕示欲をくすぐるもので、鉄道知識自慢のファンにとっては願ってもないものです。そして、キャストたちはこのようにオーディエンスとの交流にかけては一流の人たちです。まさに需要と供給の一致であり、キャストたちが皆の夢を実現してくれた時間でありました。
5. 朗読劇
最後は、ここでしか聴けない書き下ろしストーリーの朗読劇でした。でんこたちが10周年を祝い、ナビゲーターののぞみへの感謝を伝える内容で、ストーリーを読んでいなくてもわかる内容でした。『駅メモ!』キャストたちは、ゲーム内のストーリーに声を当てています (フルボイスの話と一部ボイス付きの話がある)。特にアニメーションがあるわけでもないので、今回はゲーム内のストーリーが生音声になっただけの「完全上位互換」でした。そのため、ストーリーを読んでいるとより貴重なものに感じたと思います。
アプリのストーリーと一番違ったのは、生で演じている分朗読劇としての「間」があったことです。アプリのストーリーを読み進めるときは、どうしても画面をタップするタイミングで間が決まってしまいます。その一方で、今回の朗読劇がより自然な会話に聞こえたり、登場人物たちの気持ちが伝わりやすくなったりしたのは、朗読劇として練られたリズムがあるからだと思いました。
アプリの収録は、完全に個別に行われるということで、ゲーム内ででんこたちの掛け合いがあっても、実際の掛け合いではないそうです。こうして集まることは声優の方々にとっても貴重な機会であり、その良さが活かされた企画だったのではないでしょうか。
最後に『駅メモ!』からの新情報発表や、キャストの挨拶があってイベントはお開きとなりました。夜公演の挨拶の中ではブリドカットさんの「山手線のE235系に抱きつきたい」という迷言でざわつく場面があるなど、最後まで大盛り上がりでした。
6. ついに叶った交流
『駅メモ!』は、オンラインゲームであって、オンラインだけのゲームではありません。列車に乗って、あるいは他の手段でもとにかく外に繰り出して、駅を集めてスコアを稼得しつつ、現実の駅や旅の情報も仕入れることができるアウトドア派のアプリです。つまり、身体が駅や鉄道を通して世界と繋がるのを補助するゲームアプリというわけです。
アプリの中だけにいたでんこは、岩手県でのコラボを皮切りに現実世界にも姿を現し始めました。今ではJR各社をはじめ全国の鉄道会社や自治体が「ステーションマスター」をおもてなししています。

その延長線上で、『駅メモ!』によっておでかけするようになった人と人を繋ぐイベントも、望まれたものだったのではないかと思います。でんこに声を吹き込んでいるキャスト同士、キャストとファン、ひいてはファン同士が『駅メモ!』を通して交流することは、『駅メモ!』が現実世界を良い方に変えていることの表れなのではないかと思います。
今後もし同じようなイベントがあるなら、今回いなかったキャストにもお会いしたいです。また、『駅メモ!』にはキャラクターソングもあるので、歌唱を伴うイベントの夢を見てもいいかもしれません。