Liella! とトマカノーテの対立は、お互いの思惑がある中で、文化祭のステージで執り行われることになりました。勝ったチームだけがラブライブ! に出られる、という前提でしたが、果たして本当にそれでよいのか? と悩み続けた結果、これまでの半年間、あるいは結ヶ丘開校からの2年半が結実する答えが出ました。
勝てばよいのか?
1. 結実
最初に結論を言ってしまえば、Liella! とトマカノーテの両方が、勝利したら相手チームと合流して11人でラブライブ! に出場することを望んでいました。したがって、勝っても負けても結果は同じだったのですが、そうはいっても戦わないわけにはいかなかったのです。
夏美と冬毬の姉妹も、同じ家で寝起きして、同じように学校に通いながら、対決することになっていました。冬毬の人となりや2人の関係は3期の前半をふんだんに使って掘り下げられてきました。今回は、その2人の和解が描かれました。2人とも姉妹でまっすぐ向き合いたくて、しかしそれが怖かったのでしょう。両チーム2人ずつを出す曲作り会議で、冬毬はおそらく来るであろう夏美に身構えていました。一方で、夏美は湧き出る恐怖を抑えつつ、確実にいるであろう*1冬毬のもとに自ら向かいました。4話で示したとおり、冬毬のことが好きだから、まさに自分が傷つくことも覚悟の上で冬毬と正面から向き合おうとしたのです。
少し前の冬毬ならそれを受け入れることはできなかったかもしれません。しかし、トマカノーテの活動の中で、かのんやマルガレーテを相手に少しずつ自分を出すことを覚えてきました。
そうした2人の積み重ねが実を結びました。姉妹の和解は、結ヶ丘にあった2つのスクールアイドルが一つになることの象徴です。冒頭での朝のシーンと、和解後の朝のシーンで同じような構図を繰り返し、2人の距離の変化を描いていたのがとても印象的でした。
他のメンバーも2期以前の振る舞いとは変化していることがありました。メンバーのいるところどこにでも現れていたかのんでしたが、今回は鬼塚家の前まで来て、安心したような表情で特に何もせずに去って行きました。かのんや千砂都にとって、この度は後輩たちに任せることができると確かめたかったので、それが達成できたのが嬉しかったはずです。昨年はどこまでもかのん一強で出ずっぱりでしたが、それが必要なくらいメンバーが未熟だったに過ぎません。また、曲作り会議にはメイがいましたが、マルガレーテに挑発されても喧嘩腰になることはなく、終始落ち着いて話し合いに臨んでいました。大きな成長を感じたシーンです。
2. 証人は全校生徒
文化祭の楽曲『Dazzling Game』は、一つの楽曲の中で2チームが競い合う楽曲となりました。コンセプトだけ聞くとDiverDivaの『Eternal Light』を思い出しますが、より直接的な歌い分けと歌詞からなり、衣装も赤と青という対決を意識させるものでした。
曲がかかった瞬間、マルガレーテが提案した激しいロックの曲調が生かされていることに気づいて嬉しくなりました。マルガレーテがこのようなサウンドを好んでいることには意外性がありましたが、誰よりも音楽の才能と経験があることを考えると「決闘」というテーマにぴったりな曲を導き出したと考える方が自然です。会議ではマルガレーテの意見を否定したわけではなく、独りで決めないでほしいということだったのですね。冬毬が考えていたコンペ方式 (おそらく、夏美と腹を割って話すのが怖かったから) では出せない答えだったと思います。
自己アピール色の強い歌だったにもかかわらず、途中でひとつになりたいという願望が表出してしまい、サビでは衣装の色まで混ざり合ってしまうという、ミュージカル的な演出が盛り盛りでした。この時点でもなお、どちらか一方がラブライブ! に出場するつもりだと言い張っていますが、歌を歌うときは人間は (少なくともスクールアイドルは) 正直にならざるを得ないということでしょうか。
さて、ひとつになることを望んでいたのはLiella! とトマカノーテだけではありませんでした。いずれか一方を選ぶことを求められた結ヶ丘の生徒たちの多くも、11人でのラブライブ! 出場を希望して、署名活動を行っていました。流石に署名で全会一致というのは現実的ではなかったようですが、あたかも人前結婚式のように、全校生徒の拍手に包まれて、11人のLiella! は門出を迎えたのでした。
署名といえば、2年前、恋を糾弾する目的で署名が集められていました。攻撃手段だった署名が、こうして学校がひとつに、結ヶ丘の生徒たちの大切な存在がひとつになるために使われているのも感動的です。
また、今の結ヶ丘でLiella! を応援している人たちにはかのんを応援していない人はおらず、かのんのファンだからといってLiella! と対立する人がいないのはわかりますが、かつてLiella! に対して暴言を吐いたことで孤立していたマルガレーテが、いまや結ヶ丘に受け入れられているところも喜ばしいポイントです。
全校生徒という証人の承認*2によって、「『Liella! は敵』はもうおしまい」と3期の対立が解決すると同時に、1期と2期それぞれの対立ももはや過去のものになったことがよくわかります。