普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

海なし県、浜辺にすべてが集う時 Aqours Finale LoveLive! ~永久Stage~ Day1・2完全感想① 開演まで

 すべての想いが溢れてきます。どう言葉にしていいかは正直分かりません。

 2015年2月に始動し、同6月30日に結成されたAqoursの集大成であるAqours Finale LoveLive! ~永久stage~』が6月21・22日 (土・日) に開かれ、ついに10年の歴史に幕を下ろしました。これまでずっと応援してきたのが報われたのか、幸い両日ともに現地・ベルーナドーム (西武ドーム) のチケットを手にすることが叶いました。

 とても長くなりそうですが、私がブログをやっているのはこの日の想いを言葉にするためだったといっても過言ではありません。今の想いを、言葉を振り絞ってまとめたいと思います。

 まずは、開演前から最初の曲が始まるまでの瞬間についてです。ライブの感想は次回以降をお楽しみに。

 

 

1. ベルーナドーム

 Aqoursが集大成の場所に選んだのは先代と同じ東京ドームではなく、それを超える規模のスタジアムでもなく、2017年の2ndライブ以来事ある毎に立っているベルーナドーム (西武ドーム。2022年2月までの愛称は「メットライフドーム」) でした。

 座席数では東京ドームに劣ります。屋根はあっても壁はなく吹きさらしで暑さ寒さの影響をもろに受けます。アクセス手段も単線の西武狭山線山口線しかなく、たくさんの人が訪れるには条件の厳しい会場です。

 それでも、ここはAqours「セカンドホーム」、いわば「第2の沼津」です。2020年に『JIMO-AI Dash!』がリリースされたとき、「帰る場所」があるということがμ'sと比べても、Aqoursの特徴なのだと思っていました。客観的に最高の舞台ではないかもしれないけれど、Aqoursらしい締めくくり方だと、発表されたときには思いました。

 とはいえ、3rd・5thライブとも異なり、6月下旬はかなりの高温多湿が予想され、また確実に梅雨期間中であることから雨の可能性も高いことを懸念していました。前者の懸念は的中し、30℃を優に超えて過去一暑いベルーナドームライブとなったのですが、後者は見事に外れ、2日とも晴天サンシャインに恵まれたのでした。

 当日、スペースに限りがあるため、祝花 (所謂フラスタ) は関係者からのものに限定されていましたが、30分近い長蛇の列ができていました。炎天下でも皆が見たかったのは、μ'sからのフラスタでした。また、『ぬまづフェス』以来のヨキソバのキッチンカーにも並んだため、暑さと戦いながら合計1時間ほど列に並んでいました。

ライブ当日のキッチンカーで提供された「ヨキソバ」

 少し離れたところにあった物販コーナーではこの日から『ラブカ』(ラブライブ! シリーズオフィシャルカードゲーム) に本格参戦したAqoursのカードや、歴代のCDが売られていました。

 ベルーナドームへの観客輸送を担う西武鉄道も本気を出していました。4月からFinaleライブの開催を記念したラッピング車両の運行とスタンプラリー、記念乗車券の発売 (スタンプラリーと記念乗車券は、伊豆箱根鉄道でも) を行い、両日ともに入場にちょうど良い時間帯にラッピング車両を使用した池袋からの直通準急を走らせていました。そして、満員のベルーナドームということになるとやはり帰宅の足が心配されましたが、全力の体制で次から次へと電車を走らせ、大混雑を迎え撃っていました。それでも、ゲートから遠かったDAY1の席からは、終演から乗った電車が動き出すまで約80分を要しました (呼び出しまでは約45分)。このくらいは覚悟の上です。また、DAY2は後述の通りゲートに近い席で、終演後わずか5分で呼び出しがかかり、30分以内で西武球場前駅を離れることができました。

直通列車として西武球場前駅にやってきた40000系Aqoursラッピング車両

 

2. チケットを掴み取れ

 Aqoursの9人に会える、現時点では最後の機会ということになると、ベルーナドームほどのキャパがあっても激しいチケット争奪戦となることが予想されていました (ベルーナドームで足りないということは、仮にその1.4倍程度の収容人数である東京ドームでもおそらく足りないということ)。

 チケットを当てるために用意したシリアル付きシングル『永久hours』の枚数は、私と連番相手で5枚ずつ。自分史上最多ではありますが、Xでは数十枚、数百枚という購入枚数を見かけたので不安でした。流石に数十枚が必須だった蓮ノ空3rdのユニット別公演とは、キャパの面で訳が違うと思いつつ待った抽選の結果は、「DAY1のみ当選」でした。あまりのハードルの高さにショックを受けましたが、ここでは止まれません。続くAqoursCLUB先行も私のみ応募しましたが落選でした。

 ここで私たちは、一計を案じました。一般受付になると、指定席以外の席種も登場します。そこで、あえて進んで「完全見切れ席」を第一希望に申し込んでみたのです。9人の最後の日を正面からは見られない、もしかしたら姿も見えないかもしれないけれど、同じ場所にいたいという思いが勝りました。その結果、見事「当選」の通知をいただきました。その日はちょうど私の誕生日で、よい誕生日プレゼントになりました。

 Aqours 6th <WINDY> 以来、両日現地へ足を運ぶことが叶いました。

 初日の席は「ネット裏」と呼ばれるステージに対して真正面になる場所でした。ここは野球開催のときはホームベースに一番近い「特等席」となるため、他より豪華な座席が備え付けられています。座席は折りたためませんがそれでも足下が広く、荷物を置く余裕も十分にありました。また正面なのでステージからは遠いですが、センターステージやトロッコではキャストがよく見えました。ライブの中で座っているシーンは限られているのですが、普段よりMCなどで座っている人を多く見かけるほどでした。規制退場で呼ばれるまでは時間がかかりましたが、座席が快適なので苦ではありませんでした。

 心配していたDAY2の「完全見切れ席」について、指定された席に向かってみると、なんとそこは「最前列」でした。今まで最前列なんて引いたこともないのに、最後の最後で、それも完全見切れ席で、最前列が当たりました。とはいうものの完全見切れ席は「完全なる見切れさん」(小林愛香さん) だから何も見えないのではないか、と思われるかもしれません。確かに、ステージから見て135°くらいの後ろ側で、センターで踊っている姿はステージ上の柱などの向こうにしか見えません。また、モニターもちょうど自分の方を向いておらず、極めて見づらい席でした。しかしながら、ドームという規模を考えるとAqoursが踊っている存在感を間近に体感できる場所でした。それだけでなく、学校の体育館くらいの距離感でステージの端が見えました。このため、Aqoursが近くに来ると、全身の衣装の飾り付けまで見えました。小さい会場も含めて過去一の近さでした。

 ライブの現地に足を運ぶのは、演者の存在を肌で感じ、演者と同じ空気を吸い、同じ人たちを応援するファンたちの熱狂に加わるためです。それが一番できる「特等席」が取れたということです。ライブが観たいだけならアーカイブだってあります。良い時代になりました。

 ここまで来て気づいたのは、Aqoursキャストたちが「意外と小さい」ということです。私より歳が5つは上回らない、平均身長からそこまで離れない、普通の女の子たち。10年前の時点でAqoursとして輝くポテンシャルを認められた選ばれし存在であるとはいえ、神のような存在ではなく、等身大の人間が9人いたに過ぎません。そんな9人が何度も壁にぶつかり、悩みながら笑われながら、積み重ねてきた日々の集大成を、一番近くで見届けることができたのです。

 完全見切れ席から聞こえるとかねて噂されていた円陣の掛け声、Aqours! サーンシャイン!!」は、実際にはどの席にいても聞くことができたと思います。

 

3. 波の音

 入場してしばらくは、通常のライブと同じようにシリーズの告知映像が流れていました。2週間前に「卒業公演」を終えたばかりの蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ102期生のソロ曲や、2週間後に開催を控えていた『Liella! のちゅーとりえらいぶ!』の告知、そして最新作『イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD』より、いきづらい部!『What is my LIFE!?』も流れました。

 ところが、開演15分前の放送が流れると、これらの映像は消えてしまいました。そして、真ん中のモニターに映し出された波打ち際と、波の音だけが残りました。

 波の音は、ライブ中のふとしたインターバルにも、終演後にも、事あるごとに鳴っていました。劇場版や実写PVなどの、私たちにとってとても大切なシーンがいくつも思い出されます。5月に開催されていた9周年展覧会でも、前室にAqoursラブライブ! 優勝旗が立てられた砂浜があり、波が打ち寄せていました。

 この波の音に誘われるように、私は翌23日 (月) に沼津を訪れました。そこで、本物の波の音を聞くことができました。同じことを考えていたのは無論私だけではなく、この日は1時間に1本のバスに乗り切れないほど大勢のラブライバーが沼津に押し掛けていました。

沼津・三津の砂浜 (2025. 6. 23)

4. ダイヤが書いたこと

 波の音の中、最初にステージに姿を現したのは黒澤ダイヤ、小宮有紗さんでした。新衣装に身を包み、何やら木の棒のようなものを持っていました。

 よく見ると、モニターの下には本物の砂が敷き詰められていました。小宮さんは、そこにAqoursと一文字一文字丁寧に綴っていきました。

 Finaleライブは、『ラブライブ! サンシャイン!!』のすべての始まりから幕を開けました。そうなれば、これから始まるのは『ラブライブ! サンシャイン!!』の「すべて」である。私は瞬時にそう理解しました。

 小宮さんは悪戯っぽく笑って口元に人差し指を立て、退場しました。この笑いはダイヤの魅力の1つです。名家の令嬢で生徒会長という役割の陰で、密かに好きを膨らませ、自分の世界を広げてきた人がダイヤです。

 その後、短いアニメーションが流れました。なるほど『ラブライブ! サンシャイン!!』本編から取った映像……ではありません。映像内の沼津駅の駅舎には、オレンジ色の「JR」の文字が。JR東海Aqoursと関わるようになって以降、『サンシャイン!!』のアニメなど制作されていません。このライブのためだけに描き下ろされた新規映像です。Finaleともなるとこれほどの贅沢が許されるのですね。

 いよいよ、Aqoursメンバーの入場が始まりました。いつものようにオープニングムービーが流れ……ません。静かに波の音だけが聞こえる中、キャストが一人一人入場して、ポーズを決めてポジションにつく、というのが9回繰り返されました。9人は、何にも頼らず、一言も発さず、ポーズ1つでメンバーに「成って」いました。その雰囲気は厳かでさえありました。しかしながら、これまで何十回も参加したどのライブよりも、「始まり」の高揚感を高める演出でした。そしてそれは、他のライブでもやればいいというものではありません。このライブにしか許されない始まり方でした。

三津の砂浜に書かれた「Aqours」。木の棒で彫るのではなく、砂利を並べて書かれていた (2025. 6. 23)