普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

一度きりの輝きと蘇る神話 U-NEXT MUSIC FES LoveLive! Series  EXPO 2025 STAGE ~Right now!~ 感想

開場前のEXPOアリーナ『Matsuri』入口付近

 一世一代、世界が羨む舞台。

 史上最も壮絶なライブ。

 そして、居合わせたものすべてが「神話」を体感したステージ。

 そんなものがあったと知ったら、後世の人は何を思うのでしょう。

 2025年8月14日 (木)、『U-NEXT MUSIC FES LoveLive! Series  EXPO 2025 STAGE ~Right now!~』が開催され、私も行ってきました。タイトルの通り、会場は今、日本中の注目を集めている大阪・関西万博の会場。その西ゲート近くにある、EXPOアリーナ『Matsuri』が舞台となりました。1970年の大阪万博にあった「お祭り広場」からその名を取ったステージは、ラブライブ! 単独としては史上初の野外ライブとなりました。

 『U-NEXT MUSIC FES』は、8月12日 (火) から17日 (日) というお盆休みの6日間、日替わりで日本を代表する様々なアーティストを集めて開催されたフェスです。従って、イベント自体は外部の主催でありましたが、14日は最初から最後までラブライブ! だけで行われたため、実質的にラブライブ! の合同ライブと同等です。ラブライブ! シリーズがいきものがかり布袋寅泰さんと同じくらい注目されるアーティストだというのはすごいことですが、今年に入ってからの『愛♡スクリ~ム!』人気をも含めて考えると驚くべきことではないかもしれません。

 これほど終わった後の気持ちを始まる前に想像できないライブも今までありませんでした。Aqours Finaleライブと並ぶ、2025年の思い出に残るライブを振り返ります。

 

セットリスト一覧

1. What is my LIFE?

2. ヒミツミチ

3. 夏色えがおで1, 2, Jump!

4. 輝夜の城で踊りたい

5. No brand girls

6. 未来の僕らは知ってるよ

7. Suki for you, Dream for you!

8. KU-RU-KU-RU Cruller!

9. Deep Resonance

10. 愛♡スクリ~ム!

11. 繚乱! ビクトリーロード

12. CHASE!

13. VIVID WORLD

14. La Bella Patria

15. ツナガルコネクト

16. Colorful Dreams! Colorful Smiles!

17. TOKIMEKI Runners

18. Just Believe!!!

19. オルタネイト

20. Let's be ONE

21. ディストーション

22. 全力ライオット

23. アイドゥーミー!

24. Celebration!

25. アンペア

26. WAWO!

27. Edelied

28. Dream Believers

 

 

0. 野外のリハーサル

 野外ライブ、それも万博会場の只中にあるということは、リハーサルの音声も全部外に聞こえてくるということです。

 当日は9時台に会場入りしました。前日の地下鉄中央線のトラブルで朝まで会場内に客がいて、その関係で整備が遅れたため開場も30分遅れでした。前日はLDHのアーティストたちがライブ*1を行っており、その観客にも巻き込まれた人がいたことでしょう。

 11時半頃、空飛ぶクルマを見に西エリアにやってくると、『What is my LIFE?』が聴こえてきました。中断とキャストではない人の指示するような声を挟みつつ、1曲を練習していました。空飛ぶクルマが離陸すると、ローターの騒音が大きくてドラムの低音くらいしか聞こえなくなってしまいましたが、いきづらい部! が歌っているのを聴きながら空飛ぶクルマを見られる機会など、間違いなくこの日のこの瞬間しかありませんでした。もし将来、東京の空にも空飛ぶクルマが行き交うようになったら、その頃にはおそらくいきづらい部! は活動していないでしょうが、『What is my LIFE?』をかけてみようかなと思いました。

空飛ぶクルマ

 その後もパーソナルモビリティの試乗などで西ゲート付近にいたのですが、今度はμ'sがリハをやっていました。曲の間奏で観客に呼びかけるところを、ことり役・内田彩さんと思しき声がふにゃふにゃと「伏せ字」で叫んでいたのが印象に残っています。音漏れしているのは前提として、本番までのお楽しみです。

 公演中も、会場外で曲だけ聴いていた来場者が多数いたようです。

 

1. Matsuri

 16時にEXPOアリーナ『Matsuri』に入場できるようになりました。今回は5連番で、皆さんとの集合や身支度に手間取って入場は開演直前になってしまいました。

 まさに、夏フェスらしい野外ステージでした。航空写真で見ると、客席エリアは丸い形をしていたようです。

 入り口付近では、観客自ら水を汲める設備のほか、なんとスポーツドリンクの無料配布がありました。この日も最高35℃を超える暑さでしたが、暑さ対策を万全にし、暑い中でも最高に盛り上がってこその夏フェスです。ありがたく1本いただいて客席に向かいました。

 自分の席は、ステージに最も近いブロックでした。肉眼でキャストの顔が見えたほどです。アリーナ席なので前後左右は狭く、後々それで苦労する部分はありました。

 

2. いきづらい部!: はじめまして、開拓者たち

 ライブのオープニングアクトとして後から情報発表されたのが、最新作『イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD』よりいきづらい部! です。2月のアジアツアー横浜公演で制作発表され、7月にお披露目 (それも外部フェスでのデビューであり、これは史上初のこと) したばかりのニューフェイスです。私は池袋・サンシャインシティでの無料ライブイベントに足を運んでいましたが、ライブには間に合わず、お渡し会の様子を眺めることで、いきづらい部! の10人を初めて目にしています。ということで、今回初めて生でパフォーマンスを見ることになりました。

 池袋のライブのハイライトをYouTubeで見てから来たのですが、わずか1ヶ月足らずで見違えるほどに成長しており、その幅に驚きました。

 ここまで何度も、それこそリハでも聴いた『What is my LIFE?』(表記はこれで正しく、読みは「ワッツマイライフ」のようです。ヨミヅライブ!……) の次は、その池袋のステージで初披露され、恥ずかしながらあまり聴き慣れない『ヒミツミチ』だったのですが、ここで私自身に予期せぬことが起こります。泣いてしまったのです。まだオープニングアクトなのに……。

「もっと変わりたい でも私を歪めたくない」

「ひとに勝ったり負けたりしなきゃ 叶えられないことばかりなのかな」

 いきづらい部! のメンバーはそれぞれに課題を、あるいは叶えたい夢を抱えています。それと同時に、こだわりが強いメンバーが多く、それゆえの苦労を重ねてきました。序盤も序盤で感極まったのは、そんなメンバーたちの過去と今が、万博で見てきた光景とオーバーラップしてしまったからです。どの国にも歴史と文化があり、譲れない部分があります。あるからこそ国境線を引いて、出入りすらも制限します。そんな背景やこだわりを抱えたまま、時にはそれを強みに変えて、必死にそれぞれの社会課題に立ち向かっています。世界がたとえ一つにならなくても、こだわりをこだわりのままに、この万博のように一つの輪の中に集まることで築かれる未来社に、夢を見たくてたまらなくなりました。

 道がないならみんなで作ろう。「共創の万博」にふさわしいその意気込みから、世界の未来に希望を持たせてくれたいきづらい部!。まだまだこれからに期待です。

 

3. μ's: いきなりの真打

 真打とは最後に出てくると相場が決まっています。しかし、オープニングアクトが終わって最初に姿を現したのは、まさかのμ's (選抜メンバー: 穂乃果・ことり・真姫) でした。リハの順番通りといえばその通りですが、その順番がどうなるかは意図的に考えないようにしていたので、ここは素直に驚きました。『ラブライブ! フェス』(2020) でAqoursより先に出てきた日程もありましたが、合同ライブでこれほど序盤なのは初めてのはずです。

 μ'sは、本編1曲目から、このライブが何なのかをはっきりと位置づけてきました。披露した曲は夏色えがおで1,2,Jump!です。この一発で、このライブの「夏フェス」という性格が決定付けられました。夏の野外ライブという絶好のロケーションと、今年4月に上海で開催されたイベントで披露されたことから、この曲を予想した人も多かったと思います。しかし、国内では実にFINAL以来の披露*2であったようです。すごい瞬間に居合わせたことになります。

 1曲目から圧倒的なスター性を見せてくれた一方、MCは「いつものμ's」でした。内田さんは、にこの「にっこにっこにー」をもじり、「みゃっくみゃっくみゃー」という今回限りのコール&レスポンスをやっていました。ことりのコーレスはμ'sの中で最後に成立し、使われた回数が少ない分、自由度が高くなっていると思います。このコーレスのために、内田さんはにこ役の徳井青空さんに許可を取ったと話していました。『夏色えがおで1,2,Jump!』も、にこがセンターの曲です。コーレスだけでなくそのパフォーマンスにも、にこへのリスペクトが見られました。

 そのMCの中で、「暑いね」と言いながら、3人がおもむろに扇子を取り出しました。その流れのまま、輝夜の城で踊りたい』*3が始まりました。この自然な流れ、まさにベテランです。この曲が披露されるのもFINAL以来、9年以上ぶりのことです。信じがたいことが立て続けに起きています。

 『輝夜の城で踊りたい』といえば、かつてはサビのコールが正しく打てるかがラブライバーの格付けチェック的に機能していたことがありました。「優しくさらわれたい」のあと、「fuwafuwa」ではなく「はっ!」である、というものです。9年ぶりの披露となった万博では、もはやそれを知らない人の方が多いくらいでした。ではここに集まっている人は新規のファンが多いかといえば、そんなこともありません。私がラブライブ! シリーズを知ったときは、ほぼすべてのファンが無印『ラブライブ!』、μ'sから入っていました。それがいまやそうではなく、それぞれのきっかけでそれぞれの作品から好きになり、シリーズが好きな人だけでなく、例えばニジガクだけを追っている人、蓮ノ空だけを追っている人などもこの会場に入っていました。その中には、『ラブライブ!』のアニメを見ていない人もたくさんいます。それが受け入れられる時代になり、「ラブライバーなら輝夜のコールが云々」という話も聞かなくなりました。その時代に『輝夜』が披露されることが、まさに時代を超えた奇跡なのだと言えるでしょう。

 その勢いが止まらないまま、No brand girlsに繋がりました。暑い夏のフェスをさらに熱くする曲です。アニメ劇中では大雨の中の披露ですが、ここでは炎天下で歌われました。しかし、このときまだ気付いていなかったのですが、会場後方 (北側) には不穏な気配があり、μ'sと同じステージ側から見ていたならばそれに気付いたはずです。コールというより、とにかく演者も観客も叫ぶ曲です。『Matsuri』で1万人以上が1曲まるごとに渡って、こんなに全力で叫んだことも、会期中他にあったでしょうか。

 驚くべきことに、アジアツアーのセトリと重複する曲は、この一曲しかありませんでした。昨年のTVアニメ10周年イベントからこの方、「μ'sは終わったアイドルではない」ということを思い知らされ続けています。

 

4. Aqours: 歌いながら、雨に濡れながら

 「晴れを呼ぶ少女」高坂穂乃果 (新田恵海さん) が退場しました。すると、顔に雨粒が当たったのに気付きました。

 μ'sに次いで現実の歴史に登場したスクールアイドルはAqoursです。その順番に従って、次に出てきたのはAqours (選抜メンバー: わいわいわいの3人) でした。Aqoursにとっては、Finaleを終えた後初めてのステージです。選抜メンバーではありましたが、わずか53日で戻ってきてくれました。

 そのAqoursの姿を見て、私はこのステージがAqoursにとってとても意義深いものだと確信しました。『smile smile ship Start!』の衣装は、本来『Aqours 5th Anniversary LoveLive!』で着るはずだったものです。すなわち、Aqoursが実現できなかった野外ライブの、4年越しの実現であるということです。実は私もこのライブの意義をそのように認識しており、ライブにはこの野外ライブのタオルを持ってきていました。野外の夏フェスといえば、通常の屋内のライブに比べてもタオルが必須アイテムであるはずです。持ち物ひとつではありますが、Aqoursと気持ちが通じた気がしました。

 当時、世間は1年間延期された東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を巡って揺れていました。結果的に五輪は無観客で開催されましたが、その時に実現できなかった様々な「お・も・て・な・し」が、この大阪・関西万博では実現されていると思います。

 最初の曲は未来の僕らは知ってるよです。アニメの主題歌であり、FinaleのDay2でも披露されましたが、合同ライブであるここではまた違った良さがありました。それはCメロの「I live, I live LoveLive! days!」というフレーズです。Finaleのときの感想、あるいはこの曲が使われる度に感想記事に書いていると思うのですが、このフレーズはラブライブ! 総合マガジンの誌名の由来です。合同ライブだからこそ、この言葉の普遍性が強調されるものだと思います。これから先も、何度でも声に出したい言葉です。

 Aqoursが登場した頃に降り出した雨が、曲中で次第に強くなってきました。私たちにとっての拠り所は、雨の中でもステージを続けるAqoursの存在、あるいは「「ぜったい晴れる!」と、信じてるんだよ」という歌詞そのものでした。これまで、野外のライブはなかったものの、こういう日に雨に降られるのもAqoursらしさです。

 2曲目は、『SUKI for you, DREAM for you!』でした。これも野外ライブの頃に開催される予定が、1年間延期された『輝け! Aqoursぬまづフェスティバル』のテーマソングです。この「フェスティバル」の意味は、文字通り『Matsuri』です。沼津の祭りと、日本・世界の祭りでは規模こそ違いますが、あのとき私たちは沼津の「パビリオン」をみんなで一緒に作ったはずです。Aqoursの10年の中で、独特の思い出になっているイベントなので、ここで取り上げられたことが嬉しかったです。

 連番の1人が、今回はアジアツアー2024のセットリスト (おそらく、横浜公演Day1が念頭) がベースだと言っていました。しかし、『SUKI for you, DREAM for you!』だけはどの公演にもなかったはずです。ここに来るまで、万博らしい曲、大阪らしい曲、「ミャクミャク」らしい曲がないかと予想を巡らせていました。その答えがこの曲です。

 実は、このときのノベルティにあったサコッシュが、万博を回るのに大活躍していました。スマホや鉄道のきっぷを入れておき、ポケットのない夏服を着ていながらにして、スマホを多用する万博をスムーズに楽しむことができました。ポケットよりもスマホが熱を持ちにくいという利点もあると思います。

 雨は一時落ち着いていましたが、再び強くなってきました。

 先述の通りアジアツアーベースのセトリで『KU-RU-KU-RU Cruller!』『Deep Resonance』が続きました。この一連の並びは、Finaleとは大きく印象を異にします。Aqoursが自分たちの輝きを見つけるまでを振り返ったFinaleに対して、こちらは2019年以降、すなわちAqours「第2部」の曲が中心です。Aqoursとセカイが困難に見舞われ、そこから立ち上がった時代です。今やそれも懐かしいですし、Finaleの印象の強さゆえにこちらもセトリをがらりと変えたという感覚になっていました。

 雨が強くなり、雷も鳴り出しました。「堕天使」ヨハネのはずの善子役・小林愛香さんがへそを押さえていました。その一方でMCでは「結界」を張るしぐさをしていました。

 急に冷えてきた空気に反して、踊っている3人はどんどん熱くなっていました。Aqoursは、その暑さを冷やす曲を歌う、と言い出しました。まさか、と会場が湧き上がります。

 もちろん大好き、2025年のアンセムこと『愛♡スクリ~ム!』です。

 このライブでは、AiScReamのメンバーが揃っていません。それどころかルビィ役の降幡愛さんしかいません。既にアジアツアーなどで披露されているとはいえ、9月に『TOPPING LIVE』も控えており、メンバーの揃わないここで披露されることは予想していませんでした。その反面、同じフェスのDay1ではTik Tok界の「同期」にあたる、CANDY TUNEの『倍倍FIGHT!』が披露されており、ここで『愛♡スクリ~ム!』が披露されないことが惜しいと思っていました。何のことはなく、Aqoursもとい、わいわいわいがやってしまいました。結局、流石降幡さんというところに尽きるのかもしれません。あるいは、『浦の星女学院RADIO!!!』でのアピールが実を結んだというべきでしょうか。考えてみればわいわいわいもAiScReamもラジオ発祥のユニットです。

 一番サビの終わり頃、舞台袖からスクールアイドルがぞろぞろと姿を現しました。中には、頭に「ミャクミャク」を付けたり、顔の周りに「いのちの輝き」ロゴを纏って自分自身が「ミャクミャク」になっているメンバーも……

 現れたのは、キービジュアルに描かれていた「チーム・ミャクミャク」です。メンバーカラーが万博イメージカラーの赤と青である、真姫・曜・果林・メイ・セラスの5人*4とミャクミャクがイラスト化されていました。あの有名な2番Aメロが、先輩である真姫から今回限定の歌詞で歌われます。

「真姫ちゃん! 何が好き?

ハニーレモン よりも あ・な・た」

「ルビィちゃん! 何が好き?

チョコミント よりも あ・な・た」

「曜ちゃん! 何が好き?

ソーダフロート よりも あ・な・た」

「善子ちゃん! 何が好き?

ダークチョコレート よりも あ・な・た」

「果林ちゃん! 何が好き?

レモンフレイバー よりも あ・な・た」

「メイちゃん! 何が好き?

ピスタチオ よりも あ・な・た」

「セラスちゃん! 何が好き?

烏骨鶏ソフトクリーム よりも あ・な・た」

「麻衣ちゃん! 何が好き?

ラズベリーフレイバー よりも あ・な・た」

 曜役・斉藤朱夏さんは、『浦ラジ』で「ガリガリ君 よりも あ・な・た」と歌っていました。流石に商標権に引っかかったようですが、味わいは踏襲しています。

 善子が「善子ちゃん!」と呼ばれれば、当然「ヨハネよ!」と返します。今回の小林さんも、「はーい!」ではなく期待に応えてくれました。

 セラスの好きな烏骨鶏ソフトクリームは、「金沢烏鶏庵」で実際に販売されているそうです。今年から金沢市民になったセラスですが、早速金沢のアピールをしてくれました。万博には輪島塗の地球儀が見られる『夜の地球』や、『ビーバー』の店舗など、歴史的に関西と繋がりの深い石川県のものも多数あり、石川県に行きたくなってきます。

 セラス役・三宅美羽さんの後ろから、麻衣役・遠藤璃菜さんが現れたのには驚きました。てっきりオープニングアクトだけだと思っていました。SNSで「ラズベリー」が「Raspberry Pi」のことという考察を見て、一本取られたと思いました。表裏ある性格が興味深いメンバーです。

 会場の外にいた、ラブライバー以外の来場者にもこの曲を聴いたことがある人が多かったようで、反響も相当ありました。間違いなくこのライブのハイライトとしての仕掛けであり、この部分だけYouTubeで公開されてすらいました。それにもかかわらず、雨脚がとどまることを知らず、とうとうバケツをひっくり返したような降り方になってしまいました。体感温度は一気に10℃以上、下手すると20℃くらい下がりました。『愛♡スクリ~ム!』で涼しくなったかキャストに聞かれましたが、流石にやりすぎです。

 

5. 助けて! ラブライブ!

 スタッフが懸命に機材を屋根の下に下げたり、ステージの水をかき出したりしても、あまりの雨の激しさに追いつかず、とうとうライブは一時中断されてしまいました。スマホで雨雲レーダーを確認すると1時間に100 mmほどの雨で、おそらく10分ほどは降り続いたでしょうか。客席内での傘の使用は禁止されていましたが、自分を含めほとんどの人が傘を差していました。

 もちろん、野外ということは雨に降られることを想定していなかったわけではありません。傘の代わりに身を守るレインポンチョは荷物に入り切らず、自分の身は犠牲になっても荷物を守るためにゴミ袋を用意してきていました。しかし、それらは咄嗟の時に荷物の奥底から出てくることなく、ついぞ役に立たずに終わりました。後で確認したところ、先述の『ぬまづフェスティバル』サコッシュに入れていたものは一切濡れていませんでした。Aqoursが荷物を救ってくれました。なお、スマホはリュックに直接入れていたので、かなり濡れてしまったのですが無事でした。中国資本になってもFCNT製は頑丈です。

 雷鳴と稲光もかなり近くなってきました。周囲からは、ライブが続行されるのか、中止されるのかを不安がる声が聞こえてきます。しかし、私の心を占めていたのは、そんなことより早く助けてほしいという気持ちでした。さっきまで楽しんでいたライブが「そんなこと」になるのも酷い話ですが、キャストがステージを去ったことで、一気に心細くなってしまったのです。僭越なたとえをすれば、孤独な雪の夜をスクールアイドルに救われた幼き日のエマの反転、といえるでしょうか。

 「助けて」といっても、助かるのも簡単ではないでしょう。万博会場では、雷雨が接近すると来場者を大屋根リングの下に避難させるオペレーションになっています。10万人以上の人の中で、不運にもパビリオンの中にいなかった数万人を一周2,025 mの巨大な構造物で匿うのです。ただでさえ人でいっぱいなので、追加で『Matsuri』にいる一万人以上を安全に収容できる場所はもはやどこにもありません。そもそも、ここから観客を外に出すだけで10分以上はかかるでしょう (終演後は規制退場が予告されていました)。たとえライブを中止しても、私たちの安全が確保されるわけではなかったのです。

 そんな中、運営からの放送が入りました。「『Matsuri』は “避雷ドーム” であり、雷が鳴っていても安全」とのことです。後で調べたところ、“避雷ドーム” とは一定の範囲内に雷の放電を起こさせないようにするための設備だそうです。その場所に雷を落とさせて建物などを守る避雷針とは逆の仕組みです。つまり、善子が張っていた「結界」そのものです。冗談はさておき、この万博では先端技術のすごさを見せびらかしていたにとどまらず、実際に来場者のいのちを守っていたことになります。もちろん技術だけでなく、ライブの再開に向けて人力でステージを掃除してくださったスタッフの方々のいのちも、輝いていました。万博のテーマは細部に宿っていたのです。

 とはいえ、その当時は全く安心できませんでした。雷は避けられても雹が降ってくる可能性が頭をもたげたからです。これほど防ぐもののないところで大きな雹の直撃を受けたらどうなるでしょう。負傷者多数でスーパーアンビュランスでも出動してくるのでしょうか。会場内でそれほどの災害が起これば、万博反対派が勢いづくでしょうか。それとも哀れなオタクたちとして、ネット上で嘲笑われるのでしょうか。幸い、そのようなことは起こりませんでした。

 近くに特大の雷が落ちたと思うと、再びアナウンスが入りました。ライブ再開宣言です。正直耳を疑いましたが、ほどなく雨が急速に落ち着いてきました。雨雲の監視精度の高さに驚きました。そして、「敵」の最後の一撃を躱し、「敵」が力尽きたことへの喜びが湧き上がってきました。急いで傘を畳んでブレードに持ち替えます。

 

6. ニジガク: 雨上がり、差す光

 再開したとなれば、最初から全力。そうわかっていました。

 いきなり『繚乱! ビクトリーロード』虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 (選抜メンバー: 果林、せつ菜、エマ、璃奈) のステージが始まりました。4人しかいないのでショートバージョンでの披露ですが、冷え切った身体を暖めるには十分すぎる選曲でした。

 そのあとは、お待ちかねのソロパフォーマンスです。控え室にいるであろう次世代のソロ集団・いきづらい部! に対しても、先輩の素晴らしいところを見せていきます。今回は、アニメ1期楽曲のメドレーでした。2曲あるせつ菜は『CHASE!』で、せつ菜 (林鼓子さん) をトップバッターにパフォーマンスが始まりました。果林の『VIVID WORLD』は、野外フェスの会場で披露された、まさにアニメの完全再現となりました。

 アニメ1期といえば、思い出すのは13話のエピソードです。みんなの「好き」を集めて作られたスクールアイドルフェスティバル。そのメインステージが、突然の雨で中止を余儀なくされます。一度は諦めかけたものの、最後の最後でニジガクのライブが実現しました。虹は雨上がりにかかるもの。『EXPO2025 STAGE』において、現実の空はまだ曇っており、虹は出ていなかったものの、こうしてニジガクの4人が『Matsuri』に綺麗な虹を架けてくれたのです。

 その後は『Colorful Dreams! Colorful Smiles!』『TOKIMEKI Runners』『Just Believe!』と盛り上がる全体曲が続きました。水没したズボンと靴、靴下が重すぎてジャンプができなくなっていましたが、腰から上で曲と1つになりました。

 

7. Liella! (と見せかけてCatChu!) : 煌めく星は目の高さにも

 雨もすっかり上がり、周囲は日が落ちて暗くなってきました。Liella! (選抜メンバー: CatChu! の3人) の出番です。

 CatChu! の3人の出演なので、CatChu! の曲をやるかなと思っていました。しかし、それどころか実際に披露されたのは『Let's be ONE』を除いて全部がCatChu! の曲でした。わいわいわいの3人で出演しながら『愛♡スクリ~ム!』(これすらもオリジナルメンバーは含まれているものの、カバー曲) 以外Aqoursの曲をやったAqoursとは対照的で、振り切ったセットリストでした。

 その背景には、このわずか3日前に有明アリーナで開催された『Liella! Special LoveLive! ~Connect the Stars~』があります。Sunny Passionを交えて、ユニット主体で開催されたライブです。有明アリーナでは、『Liella! 1st Generation LoveLive! ~Wonderful Starlines~』と合わせ、計3日間の開催でしたが、その結果1期生かつCatChu! メンバーである伊達さゆりさんとペイトン尚未さんは、この週だけで4日間もライブに出演するという怒濤のスケジュールをこなしました。1stライブ当初の「12週連続ライブ」も恐ろしいですが、それを乗り越えた強者ならではのパワーがこの夏も発揮されました。このライブで3曲を披露した直後ということもあり、その最新の姿を見せてくれることになったのでしょう。

 それもありますが、一番はこのフェスがそれぞれのグループにとって、自身の最高にロックな姿を見せる場所であったことが理由と考えられます。Liella! のロックさは、いろいろありますが、その最も濃い部分はCatChu! が持っています。CatChu! は「全員ボーカルのロックバンド」だという言葉を聞いたことがあります。かのんはギターが弾ける (ただし伊達さんは元々経験者ではなく、Liella! のライブで弾き語りを行ったのみ) ので、本当にバンドにしてしまう手もあるかもしれませんが、2次元×3次元のバンドは飽和状態なのでこの形がベストでしょう。

 ちなみに、予想していた新曲『Aspire』は来ませんでした。如何せんこの曲、11人では未披露ですからね……。坂倉花さんの復帰が決まった7thライブに期待しましょう。

 ロックさは、形式ではなくパフォーマンスに表れます。『オルタネイト』に、地面に這いつくばる振り付けがあります。『ユニット甲子園』での衝撃的なパフォーマンスから、「甲子園の砂集め」とも言われるパフォーマンスですが、今回のステージではどれほど床の雨水を念入りに拭いていたと言っても、衣装が濡れてしまったことでしょう。それなのに、それからあと3曲も、激しいダンスを披露し続けました。服が濡れて「跳びポ」くらいで跳べない、などと言っていた自分が恥ずかしいほどでした。傷や苦しみを誇りに変えるからこそ、ロックなのですね。そう考えると、Liella! そのものがロックだともいえます。

 後半で披露した、「可愛い曲」であるディストーション、「楽しい曲」である『全力ライオット』でも、その思想は一貫しています。3日前のSpecialライブで絶賛だったというのも納得の仕上がりでした。泥臭さとアイドルらしさが表裏一体のまま共存する、スクールアイドルの神髄に迫るパフォーマンスを浴びながら、いよいよ日没の時間を迎えました。

 

8. 蓮ノ空: 夜に咲く新たなる華

 日が暮れました。これからは「夜のスクールアイドル」、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの出番です。

 ステージに現れたのは、さやか役・野中ここなさんただ1人。このフォーメーションで『Runway』でないとすれば (その可能性はほとんどないでしょう)、新曲『アイドゥーミー!』の初披露に他なりません。103期生 “蓮ノ三連華” を中心とした曲で、後輩5人は後からステージに登場しました。

 初披露と書きましたが、今回の蓮ノ空は何をやっても「初披露」でした。なぜなら、これが102期生 “蓮ノ大三角” 卒業後、初めてキャストが直接立つステージだったからです。『アイドゥーミー!』は、この間で唯一開かれたFes×LIVEで初めて発表された曲でした。これはまさに劇中の蓮ノ空がロックフェスに出演した経験からできた曲なので、実際にここで使うことを前提に制作された可能性もあります。私たちもここで披露してほしいと思っていましたし、これを聴きにわざわざ万博に来た人もいたかもしれません。

 『アイドゥーミー!』の自己と向き合う力強い歌詞は、遺された者の決意の歌です。偉大な先輩がステージから去り、次は自分たちの番というシチュエーションは、このライブの出演順とも重なります。あるいは、大阪・関西万博に来て、叶えたい未来と現代の社会とのギャップを痛感したときに湧き上がってきた想いとも重なるかもしれません。ここまでにステージに上がった煌めく星たちや、雨に打たれながら責務を全うしたスタッフの皆様がいて、ここに夜の花が咲きました。

 蓮ノ空は今年、昨年まで瑞河女子高校に所属していたEdel Noteを合わせ、4ユニットになりました。挨拶の後、4ユニットがメドレー形式で曲を披露していきました。105期ミニアルバム『Dream Believers』に収録されている曲です。何年も受け継がれ、私たちの前には梢と花帆・綴理とさやか・慈と瑠璃乃という形で初めて現れた伝統のユニットの、再解釈ともいえる曲たちです。皆それまでの曲調から転換しつつ、決して忘れないように「らしさ」を遺していました。大屋根リングのある万博会場で『WAWO!』が披露され、万博の使命とも重なっていたのが面白かったです。

 尺や構成は、Fes×LIVEを現実世界に落とし込んだような感じでした。まさに「フェス」というわけです。

 楽しい時間はあっという間というのは本当で、最後の曲は『Dream Believers』でした。『リンクラ』のテーマソングとして『蓮ノ空』のコンテンツ最初の曲であり、劇中ではOGであるかつてのスクールアイドルクラブがラブライブ! で初優勝したときの曲、とされています。この曲は、2025年3月のFes×LIVEで『SAKURA ver.』として卒業する3年生 = 102期生によって歌詞が変更され、105期のバージョンでも変更された歌詞のまま歌われることになりました。つまり、”大三角” が変えた歌詞を受け継いだことで、間接的に “大三角” も万博に連れてくることができたということです。いのちが次の世代へと受け継がれるように、こうして「いま」を生きる人たちが、過去を未来へと連れていくのです。大三角推しとしては、大三角のいない最初のステージとしてこれ以上ないものだったと思います。それは『Edelied』を披露したEdel Noteにとっても同じで、102期生卒業公演でやり納めたはずの曲を、瑞河と一緒にここに持ってきたとも解釈できます。

 ところで、蓮ノ空で夏の曲といえば『夏めきペイン』がありますが、一度きりのステージでの夏フェスというまたとない機会に、この曲は披露されませんでした。実は、2週間後のFes×LIVEで、この曲の初披露の舞台である徳光海岸にて105期ver. の初披露が行われたのです。たとえ万博という大舞台でも、曲の成立への、あるいは本来のセンター慈への敬意が揺らがないということを見せつけられたわけです。あるいは、「本物」は万博会場ではなく、本国・石川県にあるとも言えそうです。

 私たちの夏は、こうして思い出と共に去っていきました。

 

9. 総括 ~どんなときも、スクールアイドルはそばに~

 今回のセットリストは、オープニングアクトのいきづらい部! と、μ'sから蓮ノ空まで、それぞれのグループの魅力の詰め合わせのようでした。わずか数曲でありながら、あるグループではTVアニメを見渡せ、あるグループではとにかくかっこいい姿を見られ、またあるグループは最新の姿をどこよりも早く見せてくれました。

 また、「夏フェス」という文脈を非常に重視したものになっていました。それをラブライブ! シリーズでやったらこうなる、という1つの提言であったと思っています。私はこういう場に足を運んだことはありませんでしたが、映像や写真で見たことのある「熱さ」がそこにありました。μ'sが『夏色えがおで1,2,Jump!』で始め、『輝夜の城で踊りたい』『Suki for you, Dream for you!』『繚乱! ビクトリーロード』、劇中のフェス風景を再現する『VIVID WORLD』、さらにLiella! はCatChu! 曲に絞ってロックを畳みかけ、蓮ノ空は最新の『アイドゥーミー!』を出し、どのグループも自分たちの考える「夏」や「フェス」を出し合っていました。

 と、いうようなライブが意図されていたのだと思いますが、実際には途中の大雨があって、よりラブライブ!追体験となる要素が意図せず追加されることになりました。

 晴れと猛暑 (μ’s) から、突然の雷雨が巻き起こり (Aqours)、その雨が上がって (ニジガク) 夜が訪れる (Liella!、蓮ノ空) まで、あたかも意図したはずのない自然の力がライブによって呼び覚まされたかのようでした。スクールアイドルたちがかつて直面した逆境を想像させる嵐が本当に起こり、その中でもがむしゃらに立ち向かったことで、スクールアイドルが世界を変えるほどの力を発揮したのです。ラブライブ! という神話が、万博会場を舞台に再現されたのです。

 なぜそのような幻想を見たかといえば、刻一刻と変化する状況に、共鳴する音楽があったからだと思います。

「歌いながら雨に濡れながら 「ぜったい晴れる!」と、信じてるんだよ」

「痛みが 嘆きが 君の夢を貪る」

「土砂降りでもね まぶしく照らしたら 鮮やかに浮かぶ道」

「雨と太陽が混ざり合った時」「ズブ濡れの髪も乾かないで」

「泥濘に塗れて暴風雨に晒されて」

 これは、このライブの状況においてたまたまそうだったというわけではないと思います。むしろ、どんな状況にあってもラブライブ! の歌詞や、スクールアイドルたちが私たちの隣にいてくれるということの証左であると、私は考えます。

 そして、私と連番を組んでくださった4人のみならず、あの場にいた1万人以上の人々が、同じ経験をしたことで、お互い言葉には出さなくてもそれとなく感じる連帯感があります。これから先、このライブのTシャツやタオル、「ミャクミャク」のブレード (私はこのブレードしか持っていませんが) を見れば、あの日の嵐を共に乗り越えた戦友なのだとわかります。

*1:入場時に流れていたのは『桃色片想い♡』のカバーだった。奇しくも同曲は『Link! Like! ラブライブ!』内でもカバーされている

*2:ただし、その間になんといきづらい部! が、しかもお披露目ライブでカバーしている。さらに、蓮ノ空は2024年に海外で開催されたバーチャルライブでカバーし、9月にはAiScReamがカバーしたため、史上最速で全ラブライブ! が披露した楽曲になった

*3:直前のいきづらい部! に「此花輝夜」というこの状況そのままの名前のメンバーがいるのは偶然か

*4:いきづらい部! はいない。出演者の中で、せつ菜とさやかも色は一致するが、選ばれていない