普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

遠回りのマイロード ~幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR- 感想週報⑦『女子会ってなぁに?』~

ヌマヅを救う方法は?

carat8008.hateblo.jp

 

 ルビィの提案した女子会*1ラブライブ! シリーズでは女子の話なのが当たり前であるためか、ほとんど登場したことのないこの言葉は、私たちの耳にとっても新鮮だったのではないでしょうか。誰も女子会をやったことがなかったのは、ヨハネたちも一緒でした。初めてのことに取り組むときは、人の今まで知らなかった一面が明らかになるときです。

 

 

1. 変幻自在の妖精

 まずは今回、これに触れないわけにはいかないでしょう。

ルビィ、2形態の比較
(『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-』第7話『女子会ってなぁに?』より/©PROJECT YOHANE)

 

祝・ルビィ人間態登場

 雑誌版で登場していたルビィの人間態ですが、ついにアニメで動く姿が見られるようになりました。

 身長154 cmまで巨大化 (?) し、羽根も隠したその姿。こちらもとてもかわいいです。こちらの姿のほうが8年間かわいいと思ってきた黒澤ルビィの姿に近いのですから、かわいいのも当然です。何より、皆と会おうとするときの精一杯のおめかしが「変身」であるのがかわいいところです。

 さて、3話ではルビィはダイヤのバイクと一体化していました。これを踏まえると、やはり「変幻自在」であることが妖精の能力なのでしょう。

 そのルビィは、ダイヤが言えなかった本音を、密かにヨハネに伝えてくれました。ルビィは確かにダイヤの自慢の妹です。それは、どの世界でも同じです。しかし、その本領は、実は姉のいないところでこそ発揮されるのかもしれません。

 

2. わたしの理想の女子会

 前回ルビィが考えた女子会の幹事を任されたのは、今まで女子会などしたこともないヨハネでした。ヨハネは、その女子会に向け、日夜準備を進め、分厚いしおりを持ってその場に臨みました。そこに、女子会に参加する自分以外の8人のやりたいことを詰め込んで、細かいスケジュールを立てていきました。

 しかし、現実はその女子会からかけ離れていました。実際に9人が一堂に会して、海を目の当たりにすると、ついついはしゃいでしまう人たちばかりで、ヨハネの想定は大きく外れていたのです。

 ヨハネは、トカイで歌手を目指していたときも、ヌマヅで占い屋になったときからもわかるように、極度の形から入るタイプです。それは、ヨハネ理想家である面と、その理想の自分を人に認められたい見栄っ張りな面に由来しています。かつてのヨハネは、自分を受け入れてくれる存在を知らずにヌマヅで辛い思いをし、自分の内にあるものに気づかずにトカイで痛い目を見ました。

 今回は、初めてできた仲間のやりたいことを集めて、ヨハネの思う最高の女子会を作ろうとしました。たとえそこにヨハネ自身の承認欲求があろうとも、それ自体は善意に他なりません。マリを外の世界に連れ出そうとしたときも、ヌマヅを去ろうとするリコに気持ちを伝えた時も同じで、今度はみんなへのお返しがしたいという気持ちがあって、それを不純だと否定することはできません。それでも、張り切りすぎて倒れてしまったとき、ヨハネは自分の中のそれ以外の感情に気づきました。うまくいかないことは嘆きつつも、自分を過度に卑下することもなく、至らなかったことに一つ一つ気づいていける謙虚さも持ち合わせているようです。

 そして、ヨハネのしおりでハナマルが指摘したことがもう一つ。やりたいことリストの中に、ヨハネ自身のやりたいことが入っていなかったのです。ヨハネの言う通り、みんなのために張り切ることは確かにヨハネのやりたいことでした。ただ、みんなのことを想うとき、そこに新しい願いが芽生えました。

 

3. 人生に正解はない

 理想とはかけ離れていても、最高に楽しかった女子会。でもこれは果たして女子会として成り立っている? ヨハネは問います。

「これが私たちにとっての女子会ずら」

 ハナマルが答えました。

 最初から、決められた「正解」などなかったのです。

 それと同じで、ヨハネは確かにトカイで失敗して帰ってきたかもしれませんが、それは間違いだったといえるのでしょうか?

 ヨハネがゼロから自分を探したから、チカやダイヤ・ルビィに出会えました。ヨハネのゼロにならなかった部分、つまり歌が好きな気持ちを忘れていなかったから、そのヨハネの歌に影響されて頑張ったハナマルが、ヨハネに勇気を返してくれました。そうしてヨウやカナンと仲良くなったヨハネは、今度はマリとリコに手を差し伸べることができました。

 チカの言う、「バカでもいい」とか、カナンの「ヨハネちゃんがトカイでうまく行ってたら今日はなかった」などと、言葉は悪いかもしれませんが、ヨハネにとって、まっすぐに歩めなかった道のりだからこそ出会えたかけがえのないものはたくさんありました。遠回りも道のひとつだったということでしょう。

 大切なものができたということは、やりたいことができたのと同じことです。この仲間で一緒に一つのことに取り組むこと、そしてずっと一緒にいることが、ヨハネにとっての新しい夢になりました。

 余談ですが、チカも姉ミトに「バカチカ」と言われたことがあるかもしれません。腹だって立つと思います。『きみの心の音を聴かせてラジオ ヨハラジ』にて、チカ役・伊波杏樹さんが「こっちのチカも抜けているところはある」と言っていましたが、その自覚はあって、それでもなお自分の弱いところも受け入れて生きているからこそ、ヨハネに対しても親身になれたのだと思います。

 

4. ヌマヅ夏祭り

 前回、ヨハネの歌がヌマヅを異変から救うかもしれない、という可能性が提示されました。そこで、女子会の準備と並行して、ヨハネが歌を披露する機会についても検討がなされていました。活躍したのは、行政局のダイヤでした。ヌマヅで行われる夏祭りで、ヨハネの歌を披露できるように計らったのです。

 目標が決まったヨハネ。女子会を通して一番大切なものが仲間だと気づいたヨハネは、夏祭りでみんなで歌うことを提案しました。この中には、人前で歌ったことのある人は、ヨハネ以外にいません。しかし、未経験のことに懸命に取り組んだヨハネの姿を見て、8人もこのアイデアに賛同しました。

 スクールアイドルの存在する世界と違って、この世界ではみんなで声を重ねることは一般的ではないのかもしれません。その中で、それぞれに違う「心の音」を重ねることができれば、ヌマヅから失われた音を取り戻すことも可能なように思えます。もっとも、ヨハネがそういうことを考えたというよりは、純粋に9人で取り組むことが「やりたいこと」だったということが、このアイデアの本質ではあります。

 実は、女子会の準備だけで2週間経っているので、ヨハネの誕生日から始まった物語の時間は、既に約1ヶ月ほど経過していると思われます*2。夏ももう後半です。次は夏祭りに向けて、そしてヌマヅに平和が訪れる日まで、9人の挑戦は続きます。

*1:前回記事初版でこの部分が誤っていたため、訂正しました

*2:現実の沼津夏祭りは7月末なので、夏祭りの時期は異なる