普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

「大好き」はいかにして溢れるか ~にじよん あにめーしょん2 感想週報②『歩夢と菜々とはじまり』~

 1話放送翌日の早朝、1話の題材だった『繚乱! ビクトリーロード』の衣装を着たニジガクメンバーたちの駅広告を大急ぎで撮影してきました。現在は掲示が終了していますが、山手線 (+錦糸町駅) にデカデカと歌詞が張り出されており、インパクトが大きかったです。

繚乱! 虹ヶ咲!

カオスこそ虹のハーモニー (?)

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 続く2話のサブタイには「せつ菜」ではなく、「菜々」が入っていました。『にじよん あにめーしょん』1期10話が「楠木ともりさんの優木せつ菜」をこれでもかと溢れさせる回であるなら、それを反転 (?) させた「林鼓子さんの中川菜々」が、ついにヴェールを脱ぐのがこの回でした。

この表情の真意、あなたは見抜けましたか?
(『にじよん あにめーしょん2』第2話『歩夢と菜々とはじまり』より
/会©2022 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ©プロジェクトラブライブ!にじよん あにめーしょん2)

 

 

1. 中川菜々 (CV: 林鼓子)

 皆様ご存じの通り、優木せつ菜役は昨年2023年4月1日をもって (『スクスタ』サービス終了までの3ヶ月が実質的には移行期間となった) 楠木ともりさんから林鼓子さんに交代しました。このことが発表された最初のプレスリリースにおいて、「楠木ともりさんが "優木せつ菜・中川菜々" 役から降板」と記されていました。ということは、せつ菜と同一人物である菜々も、当然林鼓子さんになったのですが、それから1年間、菜々を演じるところを見ることはできませんでした*1

まだ林鼓子さんがせつ菜を受け継ぐことは知らなかった頃

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 TVアニメでは、2期第6話にてせつ菜は自らが菜々であることを明かし、以後はほとんどのシーンでせつ菜として過ごしていました。終盤では生徒会長の役目も降り、真の姿でありながら、自分の「大好き」を隠すためのペルソナのようになっていた「菜々」は、もう自宅以外で使う必要がなくなってしまったように見えました。

 ゆえに、林鼓子さんが演じる菜々は、激レアなのです。

正体バレ

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 林さんのせつ菜は、爆発です。せつ菜が抱えていた葛藤を乗り越えるところまで、楠木さんが演じ切ってくれたので、あとは心の赴くままに大好きを追いかける解放された存在を存分に演じればよいとばかりに、底抜けに明るい姿を見せてくれます。

 では、そんな林さんが「菜々」を演じたらどうなるでしょうか? その答えが今回です。大人しそうな三つ編みメガネで、「菜々」という形に収まっていながらにして、息遣いや言葉の端々から「せつ菜」が少しずつ漏れ出している、というのが今現在の菜々でした。正体を隠してせつ菜でいる必要もなく、あくまでスクールアイドルではない時間を過ごしながら、「大好き」をどこかへ押し込める必要もないとなれば、このような形にもなりうるのです。せつ菜にとって、今が一番気楽だと思います。

 まして、隣にいるのが歩夢です。菜々も安心して当然です。

 

2. ステレオタイプを逆手に取って

 歩夢とせつ菜の関係は、特にそこに侑が絡むと、やや歪んだ形で認知されているきらいがあります。

例えば、こんなふうに
(『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第1期第11話『みんなの夢、私の夢』より
/©2020 プロジェクトラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)

 『虹ヶ咲』の物語においてすべての始まりであるダイバーシティ東京プラザでのせつ菜のライブ。侑がその時のときめきをいつまでも忘れず、今もせつ菜にその話をしていることを菜々が歩夢に話すと、歩夢の顔はみるみる曇っていきました。

 ステレオタイプな歩夢なら、せつ菜と侑が親密なことに対して不満を抱く、というのが定石であり、二次創作でもよく見る姿です。むしろ、歩夢役の大西亜玖璃さんが積極的にそういうイメージをもたらそうとしているまであります*2

 しかし、それだけの歩夢というのも、一面的に過ぎないでしょうか?

 歩夢は誰の影響でスクールアイドルになったのでしょうか?

 歩夢が嫉妬したのは、まさかの「侑に対して」でした。

 歩夢はせつ菜に憧れてスクールアイドルになるくらい、せつ菜のことが好きなのです。

 よく考えれば、歩夢と侑がギクシャクしたときも、歩夢はそれを自分自身の問題だと捉え、わざわざ自分が八つ当たりした相手であるせつ菜に相談しています。歩夢は侑に置いて行かれることに対する恐怖で我を忘れたときでも、それがもとでせつ菜に不信感を抱くことなど一度もありませんでした。

 歩夢とせつ菜の間の関係に対する誤解が世の中にあることを前提にして、それを逆手に取った展開にし、せつ菜に対する想いを歩夢に告白させた今回のシナリオは、端的でワンダフルでした。

 それにしても『トワイライト』*3が流れていたシーンで、雨が上がっていたことをせつ菜に知らされたときの歩夢の思わせぶりな台詞を思うと、これが歩夢の人を魅了する天賦の才なのだなと思ってしまいます。歩夢を推している人が、歩夢を「あなたの歩夢」だと思っているのもうなずけるものです。

 それと同時に、こうしてせつ菜が世界を「大好き」で溢れさせる前に、まずは隣人から「大好き」を溢れさせていることにも注目できます。もしかしてこの2人、ものすごく相性が良いのでは……?

*1:この間にサービスを開始し、終了した『スクフェス2』で演じていたかもしれないが、私はすべてのストーリーを確認していなかった

*2:よく考えると大西さんが楠木さんや林さんに突っかかる光景はあまりなかった気がする。むしろよく標的になるのは相良茉優さんか、指出毬亜さんか……

*3:なぜかクレジットされていない