普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

心の音に耳塞いだら ~幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR- 感想週報⑩『いってらっしゃいヨハネちゃん!』~

 決着が見え始めている、ヨハネの夏の宿題。

 そして、ヨハネライラプスの大切な思い出と、関係性の綻び。

ライラプスは「ぽむ」化するか?

carat8008.hateblo.jp

 

 そのような要素はありつつも、ヨハネにはまだヌマヅでのんびりと変わらない日常を送るという選択肢は残されていました。街の人々にも信頼され、自分の歌も愛されている、平穏な日々です。

 しかし、平穏な日々は終わりを迎えます。それは本来は、いいことのはずだったのですが……。

 

1枚の手紙から事態は急変する
(『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-』第10話『いってらっしゃいヨハネちゃん!』より/©PROJECT YOHANE)

 

 

1. すれ違いと本心

 まずは、ヨハネライラプスのこれまでを振り返ります。

 4話では、それまでヨハネを見守る優しい存在だったライラプスの間で、互いに信頼ではない感情があることが確認されました。

「宿題の答え見つけても、今度こそ……」

「ごめんね、ヨハネ

 2人の感情は、ヨハネにだんだん仲間が増えていくにつれて、すれ違いの様相を深めていきました。

 そして前回9話は、ヨハネライラプスの出会いの記念日でした。ところが、ここで2人のすれ違いは決定的になってしまいます。

「みんなライラプスのこと探して」

ヨハネの魔法は、あの時からじゃない」

 そして、ついに恐れていたことが起きました。ついにトカイへの再挑戦を決めたヨハネを、ライラプスは見送りに来なかったのです。ヨハネの口からも衝撃的な事実が飛び出します。

「あの時も私のこと応援してくれてなかったよね!?」

 これが、4話の「今度こそ」の答えです。その後には、「応援してくれる?」が続くはずでした。そして、4話の時点で既にそれにNOを突き付けられていたのです。

 それどころか、1話でライラプスがなかなか「おかえり」を言わなかったのも、ヨハネが「ただいま」を言わなかったからだという発言を私も信じて、好意的に解釈していましたが、必ずしもそればかりとも言えなくなってきてしまいました。ただ、ヌマヅ駅まで迎えに来てくれている以上、仲違いしても好きであることに変わりはありません (母からの使命を守っただけとも考えられますが)。

 ヨハネからすれば、9人でずっとヌマヅにいたいといえば「本当にそれでいいの?」と疑問を呈され、かといってトカイへ旅立とうとすれば否定され、だったらどうしろというんだ、と憤っても無理はない態度を向けられています。まるでライラプス自身の葛藤をヨハネに押し付けているかのようです。とはいえ、表面的に見ても、ライラプスにはライラプスの考えがあるし、やることもあります。それに、ヨハネヨハネで、みんなのことは考えられるのに、ライラプスが相手になると自分のことばかりになってしまっていて、ライラプスへの甘えが見られると思います。ライラプスの気持ちも知らず「お守りから解放してあげないと」なんて言ったり、そうかと思えば、ライラプスが寂しがっていると思ったのか、一緒に来るように提案したり、悪意なくライラプスを追い詰めてしまっていたのです。

 とはいえ、本人の前ではそんな態度をとっていても、ヨハネライラプスのことを好意的に解釈しようとしていましたし、何よりも自分のライラプスに対する本心をはっきりと言葉にできるくらいには成長していました。ライラプスは、なぜ自分の想いをちゃんと言葉にしないのでしょうか。本来は言葉を喋れる存在ではなかったので、その「聴こえない気持ち」は、ヨハネが感じ取るほかないのでしょうか?

 

2. 転機は外からやってくる

 これまではヨハネと仲間たちや、ヨハネライラプスのやり取りを中心に、ヌマヅの中で起こる出来事が物語の中心になってきました。しかしここにきて、以前ヨハネのオーディションを担当した審査員が、ヌマヅの夏祭りを見てヨハネの実力を認め、再びのオーディションに招待しにきました。

 この、ヌマヅの外からやってきた事件は、光の速さでヌマヅ中を駆け巡ります。前回のライラプス出奔事件*1でもそうでしたが、多少の尾ひれを伴いつつ、いつの間にか行政局長官まで話が行っているというのはギャグのようでもあり、ホラーのようでもあります。

 こうして、あれよあれよという間に送別会が催されてしまいました。退くに退けなくなってしまったヨハネです。ただ、そのおかげで自分の夢が、みんなの想いを背負ったものだということを認識することができ、ようやくトカイへ向かう覚悟が決まったのも事実です。前のトカイへの旅立ちとはまるで背負っているものが違うのです。

 送別会のスピーチでライラプスのことを話したのは、ヌマヅのみんなが一見一つになってヨハネを送り出している状況だからこそ、そうでない者、つまりライラプスのことを知ってほしかったからでしょう。

 しかし、その送別会は中止になってしまいます。あの「異変」が、今度はヌマヅ全体を覆う霧として出現したのです。

 狭義のラブライブ! シリーズであれば、ヨハネが気持ちをはっきり、それも人前で話すことができたなら、あとはボールはライラプスに渡ったも同然です。ところが、『幻日のヨハネ』では、ここで外から異変が襲来してしまいます。

 ただ、本当に「外から」来たかということに関しては、少し考えなければなりません。というのも、異変が起こるようになったのは、ヌマヅから歌が失われ、人々の心の音が閉ざされたから、と説明されています。であれば、私には、ヌマヅの希望の星・ヨハネと、人助けを繰り返すヌマヅの名犬ライラプスという、ヌマヅを背負う者同士の「心の音」がすれ違うようになってしまった現状と、過去最大級の異変が起きたことは、切り離して考えることができませんライラプスも人知れず異変を察知してヨハネたちの元を離れていますし、そのことが異変の直接の原因であるかどうかは異変の正体が判明していない以上結論付けることはできませんが、マリなら、事情を知ればその関係に気づくことがあるかもしれません。

 

 こうなってしまった以上は総力戦しかありません。頑張れヨハネ! 頑張れライラプス

*1:無論、真相はヨハネとの思い出の場所へ出かけただけ