普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

おふざけの中でこそ見えるもの ~ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA 感想週報⑳『青いアイツは電撃と共に』~

 前々回は、視聴者に人の不幸を嗤うように仕向ける、やや後味の悪いギャグ回でした。それに比べると、今回は頭を空っぽにして笑える、むしろ笑うしかない良いギャグ回でした。

相も変わらずエモとギャグを交互に振り向けてくる

carat8008.hateblo.jp

 そんなカオス回で、光るものがありました。キャラクターたちの素の個性です。

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「アキトならこうする」がばっちり描き込まれたシーン
 (『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』第20話『青いアイツは電撃と共に』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=SCV7g5NKzPE)

 

1. おふざけ怪獣バリガイラー

 前提として、『タイガ』の雷撃獣神ゴロサンダーの話をします。『タイガ』の新規怪獣の面々の中で、最もタイガの父である『タロウ』の怪獣らしいのがゴロサンダーです。その間抜けな外見、コミックリリーフ的な活躍、それでいて確かな実力。これらは『タイガ』のメイン監督である辻本監督が意図して『タロウ』を意識したものだそうです。そして、今回その兄弟分 (有り体に言えばリペイント) として登場したバリガイラーも、辻本監督によって生み出されました。

 冒頭からヒュドラムに呼びだされて人間大で登場し、関西弁で応答するというシュールな言動を見せます。その後も、お菓子に釣られる、人間に聞こえる声で喋りながら街を破壊する*1、トリガーに対して相撲を挑むなど、珍妙な言動を繰り返しました。その周りも、お約束のように監督の愛犬むーちゃんが登場したり、ガッツファルコンで交戦するヒマリが釣られて関西弁を発したりと次々にギャグが仕込まれています。

 とはいえ流石に擁護できないツッコミどころが一つあります。バリガイラーに囚われ、ユザレの力で心の中に直接話しかけたユナが「めっちゃ騙されてんやでw」と言った時、バリガイラーはそれを (つまり、自分の喋っている言語を)「関西弁」として認識しているのです。3000万年前の超古代から生きているバリガイラーですが、ひょっとして超古代から関西弁があったのでしょうか。関西弁はおろか関西地方すらなかったような気がしますが……(笑)。現代になってから関西弁を喋るようになったならまあいいですが、やはり頭を空っぽにして観るに限ります。

 ここぞとばかりにふざけまくった辻本監督ですが、ミニチュアの作りこみは辻本監督の回がピカイチではないでしょうか。ビルの中から戦いを見るのは勿論、走る電車の中のアングルや*2、怪獣の手前でドリフトしてぶつかる車など、今回のミニチュアにはびっくり箱のように驚くべき仕掛けがたくさん詰め込まれていました。

 

2. 混沌の中で「活きる」キャラクター

 トップ画像は、人質になったアキトがGUTSスパークレンスでバリガイラーのへそを撃って脱出を図るところです。閉じ込められてすぐこの攻撃を試みる辺り、攻撃判断が早い、悪い言い方をすれば沸点が低いのかもしれませんが、アキトの取りそうな行動を正確に表現しているように思えます。物語が進む回では脚本の都合で動かされてしまうキャラがいることもありますが、今回のような回でこそむしろ素の個性が見えるのではないかと思います。

 ユナ=ユザレに対するタツミ隊長とイグニスの態度の違いも面白かったです。今回でGUTS-SELECTがユナの秘密を知ることになるのですが、タツミ隊長は組織の責任者として、隊員の保護者のような一面があり、隊員のことは自分が責任を持って守らなくてはなりません。立場上、ユナ自身を狙う敵のところにユナを向かわせることはできないのですが、自由人であるイグニスは、守護者としてのユナの自由も重んじ、ユナの出撃を手引きしました。自由と言ってもイグニス自身復讐に囚われていたのですが、守りたいものを守れなかった過去があるので、ユナの守りたい想いを尊重せざるを得なかったのでしょう。

 余談ですが、イグニスはユザレのことを「極上」と称したことはありません。あくまでユナに対してなのです。もしそれがユナの素質を見抜いてのことなら、大したものです。ユザレを狙いながらユナに惹かれていったダーゴンもそうですが、「光か人か」がウルトラマンだけでなくユザレにあたる存在にも当てはまるのが、『トリガー』がこの問題を複線的に扱っている証です。

 それにしても、イグニスの挑発に強気で応えていたユナはその兆候がありましたが、ケンゴも案外ノリが良いことがわかりますね。相撲を挑んできたバリガイラーにパワータイプで応戦し、結局勝ってしまうのも驚きました。バリガイラーはタイタスを力で押さえ込んだゴロサンダーよりも弱いのでは……? という疑惑も浮かびます。弱くても戦士の誇りがあったのがバリガイラーでしたが、同時にお菓子に釣られてしまう危なっかしさも垣間見えます。長い時間を生き、宇宙の暴れ者として名を轟かせてきた中で、ヒュドラムのような強烈な悪意とは無縁だったのでしょうか?

 いろいろなキャラの色々な側面が見え、funnyなだけでなくinterestingでもあった今回。最後には、バリガイラーのようにニッコリでした。

*1:避難する重機乗りと会話しているようにも見える

*2:安全のために止まることはなぜかない