絆される3巨人の一人!
3巨人の物語の原点でもある劇場版『ティガ』の目玉は、やはりティガダークと言ってもよいでしょう。闇に染まったティガが破壊と殺戮を行うという信じられない光景です。
『トリガー』にも、闇の姿だった時代がありました。
1. 3000万年前の出来事
今回ケンゴは3000万年前の超古代に飛ばされ、エタニティ・コアが奪われた日の出来事を目撃しました。エタニティ・コアは超古代文明よりもさらに昔、封印されたもののようです。宇宙を誕生させ、滅ぼすほどの力を持つ存在が、いかにして封印されたかは謎ですが、これを手に入れて宇宙を意のままに操ることが闇の4巨人の目的でした。エタニティ・コアに巨人が接触したことで、超古代文明は滅亡したのでしょうか。それでも、人類の文明は現代に近づき、再び誕生しました。
この間、4巨人は石像になっていましたが、バラバラに眠っていました。トリガーは火星の地下遺跡に、カルミラは宇宙空間に、ダーゴンは小惑星にスケキヨ状態で埋まって、ヒュドラムは不明ですが100年以上前に覚醒してリシュリア星人を食い荒らしていました。誰も地球にいなかったのは何故なのでしょうか? たちどころに滅びたならエタニティ・コアのそばに眠っているはずですが、その間何が起こったのでしょうか。
ペラペラと喋る3人の巨人とは対照的に、トリガーダークは言葉を発しません。終盤のケンゴとの殴り合いで唸り声を上げていますが、それだけです。これが不気味で恐ろしい印象を与えました。しかし、その真意は別のところにあるのかもしれません (後述します)。
2. ルルイエ: 君の名は希望*1
超古代を訪れたケンゴは、ユザレと遭遇します。そして、闇の巨人の作戦に干渉を試みます。このことによって、ケンゴは過去を変えたのでしょうか。それとも、運命をただなぞるだけだったのでしょうか。
カルミラたちは地球人を見くびっているので、地球人一人乱入したところでなんとも思いませんが、それが未来の自分自身が送り込んだ存在なのには、当時は気付いていなかったはずです。3000万年後のカルミラたちは、トリガーに宿る光を超古代へ送り返すことで、現代のトリガーと超古代のトリガーを結び付け、現代にトリガーダークを覚醒させようとしました。その光が人間であることには、気づいていないのだと思います。
少し話が逸れますが、このトリガーダークに「闇黒勇士」という怪獣のような二つ名が付いていたのは少々意外でした。トリガーダークといえどもあくまでウルトラマンの一形態であるのに、です。
しかし実際にはカルミラが狙った以上のことが起こりました。その光は意志ある人間で、超古代のトリガーの存在に干渉しはじめました。
GUTSスパークレンスを持たずに超古代にやってきたケンゴは無力でした。しかし必死にユザレを守ろうとします。ユザレはそんなケンゴのことを、「ルルイエ」と呼びました。『トリガー』で「ルルイエ」といえば、ケンゴが育てている花のことでしたね。それは、超古代の言葉で「希望」という意味なのだそうです。ケンゴは無意識にそんな名前を植物に付けていたのですね*2。そしてそれは、その前にケンゴがユザレに言った「自分は光である」という言葉を、ユザレが解釈した結果でもあります。元はといえば、これは現代に現れたユザレのホログラムが伝えた言葉です。ユザレに託されたスパークレンスを手に、ケンゴはトリガーに無理矢理一体化を試みます。この干渉は、一人ではできなかったことです。
ユザレもまた果敢に、闇の巨人に「誰の中にも希望の光がある」というケンゴの言葉をぶつけます。そのことで、トリガーは一瞬、逡巡したように見えました。しかし、トリガーはそんなユザレを退け、カルミラに従ってエタニティ・コアに接触してしまいます。その一瞬の迷いが、嘘ではないと信じたいのですが……。
3. 死闘! ケンゴ VS トリガー
ケンゴは、自分の願いを拒絶するトリガーとインナースペース内で戦うことになります。現代では、ケンゴとトリガーは意志レベルで一体化していますが、超古代では別々の存在なので、このようなことが起こるのでした。
ウルトラマンと人間の関係性は、歴史の中で非常に多岐に渡っています。人間そのものが力を得てウルトラマンになるケースや、別々の存在が一体化して戦うケース、その中でもウルトラマンと人間の意志が一体化しているケースと意思疎通が可能なケースなどがあります。一番最後のパターンだと、近年では闇に堕ちたタイガを救おうとするヒロユキが印象に残っています。今回は超古代ではこれとよく似た展開が見られましたが、ケンゴは意思疎通不可能なトリガーに対して、皆を笑顔にするために君の力が必要だと、戦ってでも訴えようとしていました。
ここで、トリガーが喋らない理由が少しわかった気がします。トリガーは強大な力ではありますが、極めて純粋な存在なのではないでしょうか。それが闇の巨人に所属していたためにカルミラに従って闇に染まっていたということです。この場合、ケンゴの想いに応え、現代ではそれが光になっているということになります。つまりトリガーは、文字通り持ち主次第で意味が変わる「引き金」といえるでしょう。
4. 光を繋ぐもの
1話のサブタイトルそのままの章タイトルです。
この言葉の意味は、ケンゴが、超古代のトリガーと一体化したことで、超古代と現代を光で繋いだということなのだと思います。『トリガー』前半を通して、その意味が明らかになったのです。
その1話にあった、ユザレの「あなたは光であり……」に繋がるものは何なのでしょう。
・「人である」
『ティガ』そのままの言葉です。まだ可能性はあります。
・「闇である」
今回を踏まえるとこれはほぼなくなったと思っていいでしょう。ユザレはトリガーではなく、ケンゴのことを言っているのです。聞いた途端に、ケンゴがトリガーダークのビジョンを見てしまったというだけです。
・「希望である」/「花である」
今のところこれが最もふさわしい気がします。超古代でケンゴを「ルルイエ」と称していたのとも繋がります。ユザレは植物のルルイエのことは知りませんが、ホログラムが現代のケンゴに何かを伝えようとしたならばそういう表現になることもあると思います。
・「器である」/「引き金である」
これはトリガーのことですが、「ケンゴがトリガーである」ということの解釈としてはあり得ます。
アキトの叫びを聞き、ユナも初めてケンゴ = トリガーであると知ることになりました。ユナはそれが、自分がユザレであるのと同じことだと理解したことでしょう。ケンゴとトリガーが、ユナとユザレが、希望の光で結ばれることで、次回いよいよ『ウルトラマントリガー』は新しいステージへと進んでいくことになります。
闇サイドにも、(ギャグ回だった) 前回から変化が現れましたね。あの「恋」を通して、ダーゴンはユナたちを理解したように思われます。ガッツファルコンを易々と撃墜するヒュドラムとは対照的に、ダーゴンは退かずにトリガーを守ろうとするユナとアキトを理解し、手を出しませんでした。光とは想いを伝え、人の心を変えていくものなのです。