普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

夢の星の戦士たち ~ウルトラマンデッカー感想週報⑧『光と闇、ふたたび』~

怪獣の中からカルミラが!

carat8008.hateblo.jp

 『ティガ & ダイナ 光の星の戦士たち』は私が初めて見たウルトラ映画 (劇場ではなくVHSで見た) です。この映画ではダイナと、人々の希望が呼んだティガが共闘します。

 『デッカー』では、早くも第7話でトリガーとデッカーの共闘が実現しました。そのトリガーを呼んだのは、光の中に消えたはずの闇の巨人・カルミラでした。今回は、そのカルミラともまさかの共闘となりました。

並び立つと思っていなかった3人
 (『ウルトラマンデッカー』第8話『光と闇、ふたたび』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=T32eVRuyPIk)

 

 

1. ケンゴとユナ

 前回、火星に行った初代GUTS-SELECTメンバーが登場したのに引き続き、今回は地球に残っていたユナが登場しました。ユナが残っていたのは、シズマ財団を継ぐためでした。

 スーツの似合う大人の女性になったユナ。しかし、ケンゴと2人になると子供のようにはしゃいでハグしていました。恋人でもない男性にこのように飛びつく28歳の女性と書くと、やや年甲斐のなさも感じますが、ユナは幼馴染のアキトとも、超古代からの運命で繋がっていたケンゴとも1年間連絡が取れず、シズマ家のために独りで頑張っていたのです。見方を変えれば仕事に打ち込み過ぎて、精神年齢がやや幼いままになっているのかもしれません。「ユナは変わってない」というケンゴの言葉もありますし、大目にみられるところだと思います。

 

2. 偽りの笑顔の花

 人々に幸せな夢を見せていた超古代植物ギジェラン*1。なんと、ケンゴが大事に育ててきたルルイエと同種の植物でした。この10年の間にケンゴが解明できなかったルルイエのことを、シズマ財団は考古学の見地から調べていて、その結果ケンゴがなぜルルイエで人々を笑顔にしようとしたのかがわかるとユナは言いました。

 花粉に催眠作用があるギジェランは、超古代の世界では薬としても使われてきました。私の想像ですが、高度な文明を築き上げた超古代人のことですから、鬱病などもあったのでしょう。それをたちどころに解決できるギジェランは、「笑顔」と強く結びついた花で、超古代人にとっての「希望」でした。光の化身であるケンゴの深層意識には、その記憶が残っていたのです。

 考えてみれば、危険な花粉を出すが有益な花を、安全に育てる方法を見つけたケンゴは、もはやノーベル賞級だと思います。ケンゴの発見が人々をある種の病気から解放し、笑顔にすることができるかもしれません。

 

3. カルミラが復活した理由

 何より前回と今回で気になるのはカルミラの復活です。カルミラといえば『トリガー』最終回でトリガーに抱きしめられながら消えたはずです。何故復活したのでしょうか?

 前回、メガロゾーアはスフィアに操られているのではなく、スフィアを利用して再生したと説明されています。しかし、スフィアメガロゾーアとなって暴れたとはいえ、最終的に共闘したことを考えると、単に破壊のために出てきたとも思えません。7話の冒頭でケンゴを呼ぶような描写があったことが鍵だと思っています。「新しいユザレ」がケンゴに託したスフィアのカードを手に取った瞬間、ケンゴが見たメガロゾーアのビジョンです。ではなぜ、カルミラはケンゴを呼んだのでしょうか?

 ここでは、そこにギジェランが絡んでいるという仮説を提示します。10年前、カルミラがメガロゾーアとなったとき、ギジェランの種を地上に置いてきてしまいました。メガロゾーアとカルミラの肉体は消え去りましたが、種だけが残っていました。スフィアがその種を刺激し、異常成長させたとき、それをカルミラの残留思念が察知したのではないでしょうか。10年前光の暖かさに触れ、光と和解したカルミラ。本当の笑顔の意味を知ったカルミラ。異常成長したギジェランが繁殖したら、地上は偽りの笑顔で埋め尽くされてしまいます。そのことを、スフィアによって交信が断絶された火星にいるトリガーに伝えたかったのではないでしょうか。そして、自らもスフィアの力を借りて肉体を蘇らせることにしたのではないでしょうか。それは、自らスフィア合成獣となるということで、地上に被害をもたらすことになりますが、もとよりカルミラは闇なので、そのくらいの手段は使っても問題ありません。

 ただし、8話ではギジェラン討伐を妨害するようにスフィアメガロゾーアが出現しています。カルミラはメガロゾーアになった時点で暴走状態でしたし、そこにスフィアの意思も加わっているならば、変身してしまった以上カルミラの意思では操れないものになっていたのかもしれません。トリガーが必ず助けに来てくれると信じていたのでしょうか。

 『トリガー』24話の感想週報で、光とは「運命を背負い、命を賭して立ち向かう」ことだと書きました。それをカルミラは「暖かい」と表現しました。自分の意志を信じ、運命としっかり向き合う姿勢は、何物にも勝る包容力を生み出します。今回、カルミラがウルトラマン2人との共闘を選んだのは、トリガーを愛してしまった自分の運命にい命懸けで向き合った結果なのだと思います。かつては光を受け入れることができなかったカルミラの、『トリガー』では描ききれなかった成長が、「たまには暖かい光ってのも悪くない」という言葉に表現されています。

 

4. ユザレの正体は?

 GUTS-SELECTの旧制服を着たユナは、スーツの似合う大人から一転、あの頃のままほとんど変わらない姿でした*2。そして、一時使えなくなってしまっていたユザレの奇跡を起こし、スフィアメガロゾーアの中で不完全な存在だったカルミラを完全復活させました。カナタとケンゴがいないことに気づいたイチカリュウモンに「よくあることだから」とウルトラの「お約束」を語りつつ、仲間を信じるよう言った直後、自らも秘密の力を使った点で、ユナの先輩としての立ち位置がわかります。

 ところで、ユザレといえば、ケンゴにウルトラデュアルソードを渡したユザレは、何者だったのでしょうか。いくつかの仮説を立ててみました。

・ユザレ (本物) 説

 姿は違ってもユザレはユザレです。現代における依代であるユナと分断されているので姿が変わってしまったという説です。『トリガー』1話でもホログラムとして現れましたし、そもそも元ネタである『ティガ』のユザレもホログラムなので、ケンゴの前にはこのような現れ方をしても不思議はありません。

・カルミラ説

 ケンゴを呼んだのはカルミラというところから、ケンゴのいる火星側でケンゴを手引きしたとはいえ、存在もカルミラの思念が生んだという説です。

 しかし、今は光と和解したとはいえ、トリガーを奪ったことをあれほど憎んでいたユザレの姿に、果たしてカルミラがなるでしょうか。

・スフィア説

 スフィアの「通行手形」を発給できるのはスフィアだけ、という説です。知的生命体と思われるスフィアが自らの敵となるウルトラマンを手引きするとは思えないので、この可能性は極めて低いです。

・デッカー同源説

 カナタの持っているウルトラディメンションカードと互換性のあるカード、またそれを読み込めるアイテムを持っていたことから考えられる説です。カルミラの呼び声があったタイミングで、必要なときに必要なものをくれるスタイルもデッカーと似ています。とはいえ、そもそもデッカーの力がどこから来たものなのかがわかっていないため、ユザレの正体を完全に説明したことにはなりません。

 

5. ケンゴの夢、カナタの夢

 さて、今回はほとんど『ウルトラマントリガー』の感想になってしまったのですが、『デッカー』の感想も書かなければなりません。

 2話続けてのトリガー客演回を通して、毎回のように「スマイルスマイル!」と言い続けてきたケンゴという人物のあり方が、カナタという後輩ウルトラマンの登場によってはっきりと見えるようになったと思います。

 ケンゴは前回にも書いた通り、夢に生きる人です。夢のために戦い、時には夢に殉じるのではないかと思うことさえあります。誰一人見捨てずに笑顔にしたい、心に希望を持ち、本当の笑顔を浮かべてほしいと願い、そのために人類の敵だったはずのカルミラすら救おうとする姿勢に触れたカナタは、自分の夢、自分だけの答えというものが余計にわからなくなってしまいました。

 カナタの「やりたいこと」は対照的です。ケンゴがカルミラを救うために命を懸けているのに応えて、「"今は"これが俺のやりたいことだ!」とカルミラの救出を助けます。自分のやるべきことややりたいことはわからず、日々を「適当に」生きているようで、その一瞬一瞬に命を懸けているのがカナタの生き方だという、まさに前回書いたことが、今回も裏付けられました。それはカナタの自己紹介文とは少し違って、今この瞬間を積み重ねて彼方の未来へ繋がるような生き方なのです。

 ルルイエが超古代語で「希望」であるように笑顔とは人々の「希望」である、と『トリガー』最終回の感想週報に書きましたが、ケンゴにとっては今も追い続ける「夢」です。夢を追い続けるのは簡単なことではありません。事実『トリガー』本編では、ケンゴは夢を完全には叶えることができませんでした。しかしその夢が、やがてはカナタにも自分だけの戦う意味を見つけるという目標を目覚めさせています

 『トリガー』で消化不良だった笑顔についての掘り下げを、もう一歩やってくれた、申し分ない客演回だったと思います。

*1:公式サイトでわかる通り、『ティガ』に登場した「ギジェラ」ではない

*2:10年が経過したとはいえ、現実世界では1年しか経っていないので、無理もない