普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

「人である」強さに惹かれた漢 ~ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA 感想週報㉓『マイフレンド』~』

 明けましておめでとうございます。ひゅーまにすとの皆様におかれましても、幸多き年になることをお祈り申し上げます。


 新年早々ですが、ダーゴンが散りました。Twitter上でも惜しむファンが多く、「#存在したいダーゴンさん回」というハッシュタグまで発生しました。今回は、そんなダーゴン、そして闇の巨人について振り返っていきます。

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想いが同じだからこそ、向けなければならない銃口もある
 (『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』第23話『マイフレンド』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=bzfivtV4E3c)
こちらは最後まで憎まれながら散った闇の巨人

carat8008.hateblo.jp

 

1. ダーゴン: 漢の生涯

 剛力闘士ダーゴンは、もともと力にしか興味がありませんでした。力の強かったトリガーを好敵手として度々戦いを挑んでいたようです。そしてエタニティ・コアのことも、おそらくは純粋に強くなるために求めていたのでしょう。

 しかし、ケンゴの奮闘で封印され、3000万年の眠りから覚めた現代の世界でユナに惹かれるうち、現代の人間のもつ、力とは違う強さに気づきます。「強さ」に目がないというところは揺るがず、闇の巨人チームでもその「強さ」を実現するために協力や絆を大切にしようとしました。ところが、後述するようにヒュドラムやカルミラはそれを受け入れず、ダーゴンの願いは叶いませんでした。カルミラはダーゴンを操り、再び街を破壊させます。しかし、ダーゴンは大切なユナを前に、正気を取り戻したのです。

 そんな事情を知ってか知らずか、ケンゴたちはダーゴンに手を差し伸べます。目指すものが違っても、想いは同じだということが、ここで確かめられたのだと思います。ダーゴンはトリガーとの決着をつけることで過去の自分を清算し、新たなスタートを切ろうとしました。

 しかし、ダーゴンは再びカルミラに操られ、ユナを自らの手で殺めかけてしまいます。そんな中、身体の自由が利かなくなってもユナを守りたい想いは変わりませんでした。

 同じ想いを持っているなら、すべてを委ねられるのが「マイフレンド」ということなのでしょう。トリガーがカルミラに妨害されたという事情はありますが、そのダーゴンに引導を渡したのは、想いを同じくするアキトでした。本当はともに歩みたかった、友を手にかけた悲しみさえ、「うざい」と表現するのは流石アキトですし、金子さんの表現力の高さを感じます。

 

2. 結局闇の巨人とはなんだったのか?

 ところで、3人組として登場したはずの闇の三巨人は、ただ「エタニティ・コアを奪う」という目的だけが共通したバラバラの存在でした。何も愛しなかったヒュドラム。愛する者の自分に都合の良い姿しか認めなかったカルミラ。そして愛したものから自分とは違う価値観を汲み取り、受け入れたダーゴン。エタニティ・コアに近づきたい理由も、実現のための方法もひとつも一致せず、我先にと目標に辿り着こうとするので、協力することさえできませんでした。意図的に2人を出し抜いたヒュドラムはさておき、人間に影響されたダーゴンだって最初は闇の仲間と絆を結ぼうとしたのですから、裏切りたくて裏切ったわけではないのです。自分の思い通り以外は認めない人がリーダーな時点で、世界を闇に染める目標は遠のいてしまっていたのだと思います。

 

3. アキトと光の力

 今回、ダーゴンとの決着をつけるのにアキトが使用したのが、リブットキーです。GUTSスパークレンスもGUTSハイパーキーもアキトが開発したものですが、アキトはどれだけ大切なものを守りたいと願っても、ウルトラマンになることはできませんでした。ウルトラマンになる資格は厳しいということを第2話の記事で指摘しましたが、そもそもGUTSスパークレンスはウルトラマンである存在の力を解放するアイテムなので、ウルトラマンでない人が変身することはできないのです。

 しかし、アキトはそのGUTSスパークレンスに「ハイパーガンモード」を実装していました。『トリガー』はタイトルの通り、要所要所で「トリガー」を引くシーンが出てきます。銃は、人としてできることの象徴です。その引き金を引いて出た攻撃が光線ではなく突撃だったのには驚きましたが……。

 『ティガ』では、人は皆、自分の力で光になれると言います。逆に光になれない者の生き方も、ウルトラシリーズはジャグラスジャグラーやグリージョ (美剣サキ) を通して描いてきました。それらを踏まえてアキトの闇堕ちを心配していた人も当初はいましたが、『トリガー』も『ティガ』と同じく、「人である」存在を描く物語です。アキトの純粋な願いに、「命を守護する存在」であるリブットが応えてくれたということでしょう。光になれなかったとしても、強く願い、そのために行動すれば、光は力をくれるのかもしれませんね。

 

4. 邪神 メガロゾーア

 光を繋ぐ伝説の最後を飾るのにふさわしいラスボスの登場です。同じ「邪神」の二つ名をもつガタノゾーアとは似ていない外見に少し驚きましたが、クトゥルフ神話のガタノソアのイメージからは連想できなくもない外見だとも思います。

 メガロゾーアはカルミラがエタニティ・コアの力をすべて吸収して誕生しました。宇宙の運命を左右するほどの力が、その巨体に宿っています。

 カルミラは、完全にこの闇の支配者に呑まれてしまったのでしょうか? 『トリガー』には、物語の根幹ともいえる究極の未処理伏線が残っています。19話の、笑顔だったカルミラが、トリガーと共闘する夢です。皆を笑顔にしたいケンゴは、カルミラを笑顔にすることができずに終わってしまうのでしょうか。火星から大切に持ってきたルルイエ希望も咲いてはいません。これらの伏線をどう扱うかで、『トリガー』が最終的に面白かったかどうかが左右されてしまうと思います。

 余談ですが、ラスボスと主人公としての構図は、「強大な力 (ウルトラマンキング/エタニティ・コア) の全てを吸収したラスボス」vs「力の一部を託されたウルトラマン」ということで、同じ坂本監督作品の『ジード』と同じになっています。