普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

祝100話・「みんなで叶える物語」 ~ラブライブ! スーパースター!! 第2期感想週報➉『渋谷に響く歌』~

9人の、積み重ねてきた今
(『ラブライブ! スーパースター!!』第2期第10話『渋谷に響く歌』より/
©2022 プロジェクトラブライブ! スーパースター!!/配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=KezIGDN-cyU)

 『ラブライブ!』『ラブライブ! サンシャイン!!』『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は、1期2期各13話です。『ラブライブ! スーパースター!!』は1期が全12話でした。ここまででラブライブ! シリーズのアニメを90話やっていることになるので、2期10話で「通算第100話」となりました。この大台に乗ったこと、おめでとうございます。

 ラブライブ! シリーズは「みんなで叶える物語」。グループの9人、あるいはそれ以上が、ファンも巻き込んで一緒に創り上げていくものです。それを体現し、スクールアイドルのすべてが、21分*1に凝縮された回になりました。『スクフェス2』も発表された記念すべき日の『スーパースター!!』を振り返っていきたいと思います。

 

9人で勝つ!

carat8008.hateblo.jp

 

1. 突然の合宿

 前回のエモーショナルなムードから一転、冒頭にラブライブ! 予選会場をわずかに映したと思えば映像はLiella! の北海道合宿のコミカルなシーンに移り替わります。文字通りの温度差に驚きますが、全員揃って合宿するのは初めてで、特に恋はこれが初めての合宿になります。「9人で勝つ」という覚悟を感じます。

 ここで、2期前半で示された2期生の持つ特技が、1期生の指導の下で少しずつ開花していきます。四季の振り付け、メイの作曲、きな子の作詞。そして、夏美は新たに可可とすみれから大道具 (後述の会見に使用) と衣装を学びます。まさに誰も余すことなく、自分の思いを、それぞれが積み重ねてきた日々を1曲に落とし込んでいく、スクールアイドルらしい制作風景です。

 Liella! は、大会前のリモート会見も北海道から行いました。1期9話の配信のように、オンラインで話すのは未だに苦手なのかなと思いましたが、これも完璧にやっていました。小さなことにも大きな成長が見られます。

 

2.「私」しかいない「本当の歌」?

 さて、この都大会でLiella! と正面衝突するは「新星」ことウィーン・マルガレーテです。以前からかのんに接触し、ラブライブ! を否定するような発言を繰り返していましたが、ついにそれを全国のスクールアイドルとファンに向けて発信してしまいました。ついに引き返せないところまで来てしまったウィーン*2は、かのんにも言った「本当の歌を教えてあげる」という言葉を使い、都大会ではかのんに「歌は力」と言い放ちます。「力」とは何でしょう。その「力」で、誰を屈服させようとしているのでしょう。

 3話のやり取りを振り返ると、「あなたたちが優勝候補ということはこの大会の価値はその程度」という認識をしており、つまりLiella! を下に見ていることになります。実際、Liella! に「優勝候補」のお墨付きを与えた覇者、Sunny Passionを倒してから、全国に向けてラブライブ! は低レベルという発言をしだしたので、強い者を倒して悦に入っている、あるいはそうすることで孤独な自我を保っているかのような印象を受けます。

 ウィーンの今までの発言はすべてかのんに向けられており*3他のLiella! メンバーには見向きもしていません。かのんの歌唱力だけを高く評価しており、それがスクールアイドルという世界に「埋もれて」いることを苦々しく思っているようですが、今のかのんが「Liella! の澁谷かのん」であり、だからこそ一人でも、みんなでも歌えるということは、かのんたち自身が今までずっと歌にして表現してきています。ということは、歌が好きでありながら、他人の歌を全く聴いていないという、かなり致命的な状況に思えるのですが……。もし、かのんが「誰かが見つけてくれるの待って」いただけの存在に見えているのなら、偏見もいいところです。

 「本当の歌」というよりは、むしろ「力に溺れたニセモノ」的な言動やパフォーマンスに見えます。

 

3. みんなで叶える物語

 人の話も歌も聴かないウィーンに対し、Liella! はその言葉を受けて改めて自分たちと向き合い始めました。そのために忙しい練習を縫って9人のオフまで作る徹底ぶりで、その中からLiella! の9人にしかない歌が生まれました。

 かのんは、スクールアイドルを「一生懸命頑張って、皆に応援してもらって、皆と一緒に成長できる」というシンプルな言葉で表現しています。かのんは昨年、皆の想いを胸に、自分の過去と向き合い、一人でステージを成功させました。それと比較すると、今年は9人の現在と向き合って、この9人でしかできない、誰が欠けても成り立たないステージを作り上げようとしていました。その両方を成し遂げたかのんだからこそ、ウィーンの圧倒的なパフォーマンスの直後でも何も恐れていなかったのです。

 そして、支えてくれた学校の仲間たちも、ただの観客ではなくプレイヤーであるという点も重要です。昨年あれだけ応援してくれたのに悔しい思いをさせたこと、そして今年は勝って喜びを分かち合いたい、というところが、かのんにとっての勝ちにこだわる原動力です。ですから、勝つためには、まずは9人、そして見に来てくれるみんなで最高のライブを作り上げることが条件です。奇しくも時をほぼ同じくしてニジガク with Youの『OUR P13CES!!!』も試聴が公開されましたが、この時代にあってクラップは最も強い応援の力であり、スクールアイドルを象徴する表現になりつつあります。それをメインに取り入れたこの『Sing! Shine! Smile!』は、『ラブライブ!』シリーズが今までずっと大切にしてきた「みんなで叶える物語」の、2022年における一つの答えです。

 『虹ヶ咲』では基点に置かれた、「歌う人がいて、聴く人がいる」という関係があります。『虹ヶ咲』は、その妨げになるならラブライブ! に出ないという宣言から、ファンとアイドルの関係を追求し続けてきました。『スーパースター!!』では、それがラブライブ! に勝つ意義として生きています。一方で、先述の仮説通りならウィーンは歌を聴いていないので、ウィーン自身によい聴き手を期待することは難しいでしょう。一方で、Liella! はウィーンにも聴かせようとしています。ウィーンが力に溺れていることに対しては明確な否定の言葉をぶつけつつも、歌の中では「好きに理由なんかいらないよ」という言葉を入れています。Liella! の仲間同士、そしてたくさんの聴き手に向けた言葉でもありながら、それが歌が好きなウィーンにも刺さることを期待しているように、私には思えます。ウィーンの歌が好きな気持ちは否定したくなくて、だから心を閉ざさないでほしいという思いが、ここには込められていると思います。

 この記念すべき回に放送された都大会の結果は、なんと次回にお預けです。ただ、勝っていれば、それが前回書いた「悔いのない勝ち方」そのものであることは確実です。正直、私は1期の終わり方や、やや血の気の多いOPテーマ『WE WILL!!』を見たり聴いたりして、かのんたちが勝利に拘り過ぎ、大事なものを見失う結末になることを恐れていました。しかし、その心配は杞憂に終わりました。Liella! はLiella! を貫いて都大会を戦い抜き、まだ勝ったかはわかりませんが、勝つことだけに拘るライバルにも想いを届けようとしています。

*1:OP、ED、『リエラのうた』を除く

*2:3話当初「ウィーン」と呼ばれることが多かったが、10話では「マルガレーテ」呼びが増えている。西洋人の名前-苗字だと思っていたが、違うのだろうか。あるいは敵対的発言を繰り返したせいで距離を置かれているか

*3:ネット上では「澁谷かのんbot」とも