既に第11話が放送されてしまいましたが、先に10話の感想をお届けします。
第9話では隊長の人間味が描かれた
怪獣を倒すのか、倒さないのかという議論は、ファンの間でも時々紛糾しているところですね。過去には何人か志の高い怪獣保護の理想家がいました。今回は、そこにも落とし穴があることを忘れてはならないという警鐘を鳴らす話でした。その前に、あまりにインパクトが強かったこの描写について一言述べておきます。
1. 合体! デッカーとガッツホーク
セルジェンド光線を発射するも、怪獣との光線の撃ち合いに押し負けるデッカー。飛んでくるガッツホーク。デッカーはネオメガスに敗れた、と思いきや……。
爆炎の中から飛び出したのは、ガッツホークと合体したウルトラマンデッカーでした。なんだこれは……。
『グリッドマン』ならアシストウェポンとの合体があり、ウルトラシリーズで言えばXioが開発したアーマーを装着できるウルトラマンエックスがいましたが、戦闘用メカとウルトラマンの合体というのは前代未聞です。ウルトラマンは一個の生命体であり、ガッツホークもガッツホークでウルトラマンとの合体を前提とした兵器ではないので、奇想天外もいいところです。
では、どうしてこのような合体が実現したかと考えると、ひとえにハネジローの機転によるものです。4話では、同じ「一か八か」でも電子頭脳であるハネジローは0.01%でも確率の高いほうを選択する、という説明がなされ、ハネジロー単独でのガッツグリフォンへの合体が成功しました。同じように、あらゆる可能性の中から最も勝率が高い、あるいはカナタを救える可能性が高いと判断したのが、ぶっつけ本番での合体だったというだけだと考えられます。ハネジローは前例があるとかないとか、常識といったことなどは気にも留めません。すべて淡々と計算に従うからこそ、人間が思いもつかないような、熱い戦い方が可能なのです。カナタに対する理解も、4話の時点よりは深くなっているように思います。ガッツホークの方から合体を仕掛ければ、カナタはとっさに応えてくれるということが、ハネジローにはわかっていたのです。
また、ハネジローはウルトラマンデッカーに変身した状態のカナタと意志疎通ができます。これまでハネジローについて描かれてきたことが、かなりインパクトある形で伏線回収されたと思います。
2. 共存か、支配か
話は変わりますが、カナタ役の松本大輝さんの出身は北海道です。北海道と言えば、まさに大型生物であるヒグマと人間の生息域の衝突が問題になっています。人間がテリトリーを広げたことでヒグマの住処を脅かし、街に出てきたヒグマが人命を脅かしています。人間はヒグマの捕獲、駆除を試みますが、ヒグマが人間の都合で排除されることが本当に仕方のない犠牲なのか、疑問に思う人もいるのが実情です。
存在するだけで大災害になる怪獣の場合はもっと根深い問題だと思います。人間にとって、怪獣を駆除し、人間を守るだけでも至難の業です。しかし、怪獣も生き物で、人間の都合で命を奪われているに過ぎないという実態があります。とはいえ、人間には人間の都合があり、生きていくために必要な開発や発展によって怪獣を目覚めさせてしまうことが罪だとは簡単に決めつけられません。現実でも太陽光発電の乱開発が災害を起こしたりしていますが、脱炭素の時代に太陽光発電を禁止するわけにはいきません。
その問題に立ち向かうため、しばしば怪獣を保護するということが取り沙汰されてきました。『コスモス』では怪獣の楽園を作り、そこに収容できないものは駆除されていました。『X』では怪獣をスパークドールズという無害な姿に変え、管理していました。しかし、怪獣保護に本当に人間のエゴがないと言い切れるでしょうか。怪獣のことを人間が決め、その通りになる怪獣だけを生かしておくという方法は、一歩間違えば怪獣の支配に繋がります。
こうして怪獣管理主義に走ったのが、カイザキ副隊長の恩師、シゲナガです。この論理の厄介なところは、怪獣の管理を否定すれば、怪獣との戦いを肯定することになってしまうということです。シゲナガはネオメガスを支配し、人類の力として使おうとしました。
本当は人間と怪獣の争いをなくしたかっただけなのに、自分が正しいと思い、聞く耳を持たなくなってしまったことがシゲナガの身を滅ぼしました。意見の違うカイザキを敵とみなし、TPUを追放されたあとはカイザキへの復讐のためにネオメガスを造っていたのです。人と怪獣の共存を考える前に、人と人との対話を忘れてはなりませんでした。
3. 謎解きウルトラマン刑ッ事ー?
ウルトラシリーズには時々「謎解き」の回がありますが、今回は防衛隊ならではの謎解きを丁寧にやってくれたと思います。人間のキャラクターが問題を起こす話の場合、まず登場人物との関連で人物を描くことが多いのですが、今回はまず怪獣から入りました。その怪獣の調査線上に、シゲナガという人物が浮上し、シゲナガとカイザキの過去が描かれて、現在の道を踏み外したシゲナガが登場しました。そして、最後は連行されていくシゲナガに、カイザキが自分の思いをぶつけるシーンで終わります。このシーンの後ろ姿は、どこか刑事ドラマのラストに似ていました。ダジャレの要素があったのかはわかりませんが、謎解きの結末としてはぴったりだと思いました。
その中で、カイザキ副隊長のキャラクターが丁寧に描かれていたのも注目ポイントです。シゲナガに指摘された「一つのことに集中すると周りが見えなくなる」という弱点もまた、カイザキ副隊長のまっすぐさを表すところです。上の者にもはっきりものを言える芯の強さと、部下を引っ張ることでその弱点を補ってもらえることを考えると、カイザキは副隊長に「適性」の高い人物ともいえます。