高咲侑が可愛い。このアニメに関しては、それだけわかれば十分です。
わずか3分のアニメですが、よく動き、トキメキが詰まっていたと思います。
1. 本作の位置づけ
本作は、ラブライブ! シリーズ初のショートアニメです。現在、シリーズでは4本もの新作アニメを抱えていますが、そのすべてが何らかの「最新」要素を持っています。(他は、『幻日のヨハネ』が初のスピンオフアニメ。『虹ヶ咲』OVAは初のOVA。『スーパースター!!』3期は初のTVアニメ第3期。) シリーズアニメとしては11作目*1、『虹ヶ咲』のアニメは3作目で、ニジガクの日常を描く『にじよん』シリーズでは5作目にあたります。実は、このアニメが放送された日、それだけではない、重要な節目なのです。
本日2023年1月6日をもって、『ラブライブ!』のTVアニメは10周年を迎えました。第1話『叶え!私たちの夢――』最速放送は22時からでしたので、『にじよん』放送終了直後にちょうど10年が経ったことになります。
この節目に、シリーズは新たな挑戦を始めました。
2. エラベナイ、エラバナイ
「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」
この台詞を言わせるためだけの第1話でしたね。「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」は侑を、あるいはニジガクを代表するバズワードでありながら、元々は侑の台詞ではありませんでした。アニメ放送前に毎週行われていたキャストの生放送で、パッケージ違いの3形態で売られていた挿入歌シングルの特典を紹介するときに、侑役の矢野妃菜喜さんが発した「箱推しの叫び」です。そもそもシングルを「選ぶ」立場にある視聴者の視点の言葉なので、主人公であり、部員の一人である侑が発するはずの台詞ではなかったのです。
しかし、それをわずか3分という尺の中で侑の台詞に落とし込んだ脚本には感服してしまいます。はじめ、侑は部室に突撃して12人の様子を映していました。「侑ちゃんカメラ」は前述の生放送が発祥ですし、歩夢が「普通に困ってます……」と漏らすのは『アニガサキ』の延長線にあることをそれとなく感じさせます。そのカメラを取って侑を映すのがせつ菜なのも、アニメ本編の侑とせつ菜の関係を思うと良いポジションに感じます。
侑が「不束者ですが」「みんなのことは私が幸せにします!」と、交際か結婚かを思わせるような決意表明をかましたと思うと、それが伏線、あるいはトリガーかのように、12人がワイワイガヤガヤと自分が侑の一番だと主張を始めました。その結果が、冒頭の台詞です。侑の幸せは、みんなが最高であることにあるのです。
余談ですが、『虹ヶ咲』本編は「選ばなくても大丈夫」ということを描いてきました。あの子か、この子か。ひとりか、みんなか。学校生活か、アイドルか。今までの日常か、大きな夢か。時に個人の成長によって、時に助け合いによって、選ばない生き方という理想を私たちに見せてきました。これは、『サンシャイン!!』が、「選ぶ余地がなくても大丈夫」(廃校という運命、流れていく時の中で自分の中に輝きを見つける)、『スーパースター!!』が「選んでも大丈夫」(千砂都の決断、かのんの決断をみんなが支える) という姿を見せてきたのとちょうど対照的に見えます。このようなコンセプトがあるからこそ、「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」は虹ヶ咲を代表するワードになれたのかもしれません。
*1:1期、2期を別計上。アニメPVや幕間アニメは除く