今回のサブタイトルは、いつものAパート開始時ではなく、ED直前に挿入されました。『スーパースター!!』1期8話*1では、過去と現在、学校の皆の想いが結ばれた瞬間に「#08 結ばれる想い」と表示されましたが、今回の場合は、タイトル自体がネタバレとなっているからです。というよりも、この回はまさにこのタイトルそのままなのです。

SIFは時の中から想いを浮かび上がらせる
1. 「あなた」が見たことのある景色
2018年11月10日 (日) 、私はお台場・ダイバーシティ東京の階段前にいました。
当時ラブライブ! 界隈はAqours初の東京ドーム公演で持ちきりでしたが、そのステージにも思いのほか多くの人が集まっていました。それでも1,000人はいなかったかと思います。現れたのは、誰も生では見たことのない9人のスクールアイドルたち。私は、世界で初めて虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のパフォーマンスを見た観客の一人になりました。そのとき披露された曲こそ、『TOKIMEKI Runners』です。
私にとっては、3年半前に見た光景が蘇るライブでしたが、他のニジガクファンにとっても、いろいろなことを思い出す回になったと思います。
前半、ライブ当日にもかかわらず曲が思いつかずに苦しむ侑でしたが、直前生放送を見ている方なら見たことのある「あのポーズ」をします。そして、散々もんどりうった上で「トキメカナイヨー!」と叫びます。この叫び方も、聞いたことがあります。何故か矢野妃菜喜さんの「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!」を意識しているのです。叫んでいる内容は違いますが、矢野さんが侑であることを強調するような演出といえるのではないでしょうか。
その予感は、終盤のライブシーンで確信に変わります。侑が観客の後ろ側でピアノに向かい、演奏を始めるシーンは、カメラアングルなども含めて見覚えがありました。私は現地にいなかったので、ちゃんと覚えてはいませんが、これは3rdライブの完全再現だったのではないでしょうか。Twitterで感想を見ると、3rdライブとの一致度を評価するコメントが多数見られました。3rdライブはアニメ1期準拠ライブで、矢野さんがイントロを弾いた曲は『夢がここからはじまるよ』でしたから、1期→3rdライブ→2期と、メンバーからキャスト、キャストからメンバーへとバトンを渡し合っていたことになります。この関係は、Liella! の2ndライブにもよく似ていますが、シリーズの「逆輸入文化」が、メンバーとキャストの絆を強めています。
Liella! 2nd LoveLive!
前回まで、いわば「キャラクター作風仮説」とも言うべき状態が展開されています。登場メンバーの性格やその話で伝えたいことが、そのまま作風に反映される性質です。それで8話を説明するなら、侑の当番回、すなわち私たちファンの回です。先程矢野さんが侑だと書きましたが、ここにきて、侑が「あなた」であるというもう一つの解釈が示されているとも考えられます。この回は、徹頭徹尾ファンが見たことのある景色で構成されているのです。私やお披露目にいたファンたちにとって、そればかりでなく初期9人のキャストにとっても「虹が始まる場所」とはあの大階段のことで、そのときの曲は文字通り『TOKIMEKI Runners』だったわけですし、『アニガサキ』としては3rdライブに行った人にとってのメットライフドーム (現・ベルーナドーム)、矢野さんがピアノを弾いた瞬間ということになります。さらには、映像の途中に、1stライブより前に行われたニジガクの初公演・校内マッチングフェスティバルと、1stライブのティザーイラストをリメイクした描き下ろしが挿入されています*2。どこから入った「あなた」にとっても、始まりの体験を重ねることができる演出でした。
2. 「私」の証明
侑が作りあぐね、苦しんでいた曲は、1話で宣戦布告してきた嵐珠との対決の曲となります。同好会にとって最高の曲でなければならないことはもちろんのこと、侑にとっても、自分が同好会にいる意味をはっきりと示さなければなりませんでした。
もちろん、それは嵐珠にとっても同じことです。嵐珠も自己の証明になる曲として、『Queendom』を披露しました。ちなみに、これは『スクスタ』にあった曲です。
嵐珠も虹ヶ咲が誇るスクールアイドルであることに間違いはありません。嵐珠はSIF最終日・虹ヶ咲学園祭のオープニングアクトを任されます。学園の生徒たちは、そのステージを最高のものにしようと、オープニングを盛り上げる演出を盛り込みました。最大の目玉が「流しそうめん同好会」の、学園全体を使ったスライダーです。ただの小ネタだと思っていた同好会ですが、これも虹ヶ咲学園の自由さの象徴の一つです。「自由」が嵐珠のやりたいことを受け入れ、そのスタートを飾ろうとしますが、スライダーを走ってきた『ニジガク号』はゴール直前で停止してしまいます。それを尻目に、嵐珠はお膳立てなど不要とばかりに、自分のステージを始めてしまいました。すると、なんとそれが最後の一押しになり、ニジガク号は見事ゴールを果たしました。
一見すると、「雨やめー!」で雨が止むような、いかにもスクールアイドル奇跡譚というような出来事です。しかし、ニジガク号が虹ヶ咲学園の象徴だということを踏まえると、これは嵐珠が虹ヶ咲の一員であることを意味するに他なりません。本人が望むと望まざるとに関わらず、嵐珠は虹ヶ咲に必要とされていて、この自由の祭典を形作る一つのピースなのです。嵐珠の孤高のパフォーマンスとは裏腹の出来事が、同時に発生しています。
3. 始まりがくれた答え
嵐珠のライブを見て、なおも答えが出なかった侑。しかしその心の中には、一つの方針が芽生えていました。一人で悩んでいたところを訪れたミアは、作曲者としては求められたことに応えれば、それでよいのだと言います。しかし、侑はそれで納得しません。
ちょうどその時メインステージで披露されていたのは、A・ZU・NAの『Infinity! Our wings!!』でした。この曲は3人のソロをマッシュアップしたような曲だと以前書きましたが、Aメロがあたかもせつ菜のソロ曲であるかのようであること、そしてそのA・ZU・NAができた5話が、侑の答えに繋がります。
自由過ぎる5話
SIFで同好会はユニットごとに曲を披露していますが、8話本編で映るのはせつ菜のパートだけです。これには、1期1話の『CHASE!』をフラッシュバックさせる効果があります。侑にとっての『はじまりのトキメキ』です。そしてもう1つのキーが、5話のテーマだった「型にはまらず自由であること」です。ミアも言う通り、自分自身の全てを表現できるのが、スクールアイドルです。しかし、ミアは分を弁えていて、言い換えればそれは作曲者という「型」に拘っているということでもあります。侑は、せつ菜たちスクールアイドルのように、型にはまらず、自由に自分を表現できる表現者になりたいと決意します。そして、スクールアイドルとは違う形でステージに立つことで、それを叶えたのです。
4. 『ラブライブ!』シリーズ: 始まりの曲たち
いうまでもなく『TOKIMEKI Runners』は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会にとっての1曲目です。歴代のTVアニメでも、デビューシングル*3が披露されているので、それを振り返ってみます。
『ラブライブ!』では1期8話で『僕らのLIVE 君とのLIFE』が流れました。この回で9人が揃い、運命に導かれた9人の「初めての曲」として、現実の1曲目と同じ曲が使われました。ちなみに同作では2期9話で『Snow halation』も披露されますが、先日5月4日 (水・祝) の『今日は一日ラブライブ! 三昧』で、この時の音源は2010年の2ndシングルそのままである旨が語られていました。今回の『TOKIMEKI Runners』も聞き覚えがあり、これと同じだったのかもしれません。
『ラブライブ! サンシャイン!!』では、2期3話で『君のこころは輝いてるかい?』が使われました。この時は予選と学校説明会のハシゴに自分たちの脚で成功し、自力で不可能を可能にするところが描かれました。9人揃った時ではなく、『ラブライブ!』とは違う、『サンシャイン!!』らしさが溢れ出したとき、ようやく使われました。
『ラブライブ! スーパースター!!』では、まだ『始まりは君の空』は使われていません。ただし、1期11話で『私のSymphony』が使われます。『スーパースター!!』のテーマ性に関わる曲であり、その時その時の文脈に合わせて違ったバージョンでパフォーマンスがなされる曲であり、ある意味ではニジガクの『TOKIMEKI Runners』と共通するところがあるかもしれません。
1期最終話で言及された第2回スクールアイドルフェスティバルが終わりました。残り5話、物語はどこへ向かうのでしょうか。