見る者をして「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」と言わしめる、最強の同好会です。
一人だけなんて選べなくても大丈夫!
そんな同好会の「天才」2人が、ある勝負をします。
1. 天才の弱点
一人目の天才は、鐘嵐珠。公式サイトでも「やることすべてパーフェクトな結果を出す」と書かれるほどのスーパースクールアイドルです。
もう一人は、宮下愛。勉強も運動もこなし、スタイルも良く友達も多い、まさにオールマイティで「天才」の言葉が似合う存在です。
この2人がするのは、「可愛い」対決。かすみを模範に、自分なりの「可愛い」に挑むのですが、なぜかうまくいきません。審査員のミアと栞子からは辛口の点数をつけられてしまいます。なぜうまくいかないのでしょうか。
何でもできるように見える2人ですが、明確な弱点があります。特に同好会加入前の嵐珠は、人を信じたり、人の力を借りたり、人が人に接するにあたって当たり前にしていたことを苦手としていました。その結果、力を見せれば人はついてくるはずだと思ってしまったり (スクスタ)、たった一人で同好会に喧嘩を売ることになってしまったり (アニメ) と苦労してきました。一方の愛は、ゲームのルールのような決められた型の通りにできることは誰よりも得意とするのですが、誰も歩いたことのない道を作っていくことは、当初苦手としていました。あるいは、自分自身を型にはめて思考してしまう癖があったと言ってもよいかもしれません。
嵐珠が可愛い対決でやったのは、かすみを完全にコピーすることでした。自分の持つ力でかすみの「可愛い」を取り込めば、もっと可愛くなるだろうというパワープレイのような発想です。それは、裏を返せば自分の持っている素の力を本当の意味では信用していないということになるのかもしれません。ミアからは「いつもの嵐珠」と言われており、それ以上のものにはなっていなかったと評されています。伝えたい「可愛い」が借り物なので、素の実力を問い質されれば、審査員に向かって可愛いポーズのまま凄むようなちぐはぐなものになってしまいます。
一方の愛ですが、私たちはそれが何なのかメタ的に知っています。後に『恋するMagic!!』となった、DiverDivaのユニットファンミーティングでの村上奈津実さんのアドリブを思い出します。が、愛は途中で照れて、まるでダジャレを言ったときのように笑い出してしまいます。それは愛の中に「自分には可愛いなんて無理」という固定観念があるからで、その自己認識との摩擦が笑いとなって出てきてしまうのでした。そもそも笑いとは、違和感のある所に生まれるものだと言われています。
かすみが「可愛い」の天才でいられるのは、自分の確固たる道を持っているからに他なりません。かすみといえども自分の可愛さに自信がなくなることもありますが、それでも自分の可愛さを表現できるのは自分しかいないという覚悟が決まっているのです。それに、褒められて素直に喜べるのも才能の一つといえるでしょう。
2. 可愛いを作るもの
さて、そんな2人の「可愛い」ところを一番引き出したのは、侑でした。侑の一言で2人同時にイチコロとは、この女たらしが……と思ってしまうところです (笑)。
可愛さとは、ある種の意外性と言い換えられると思います。クールそうな見た目の女性がとても従順な性格だったり、強面のおじさんが無類の猫好きだったりしたら、可愛いと思いませんか。そう考えると、「天才」である2人には、その能力とは別の面が垣間見えたら可愛い、と推測できます。侑は、もちろん嵐珠のパーフェクトな才能や愛のオールマイティな実力も好意的に認めていますが、それ以前に2人のことが大好きなのです。無条件に誰かのことを可愛いと思えることは尊いことですし、そう思われることは当たり前のことではありません。
ところで、嵐珠の可愛さの片鱗が現れるヒントのようなものは前半にありました。エマだけが「3恒河沙*1」点を付けたときに見せた表情、可愛くありませんでしたか?
自分のことを好きでいてくれる誰かとの関わりの中で、自分が持っていないと思っているものが引き出されたとき、人は可愛くなるということかもしれません。
*1:3×10^52。地球約200個分の全原子の個数に近い