普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

かすみんが妹になれない本当の理由 ~にじよん あにめーしょん感想週報⑨『妹王決定戦』~

 前回は、ラブライブ! シリーズ伝統の姉妹回でしたね。姉的か、妹的かということが、立場によって変化しうるという示唆に富んだ回でした。

姉妹2×2

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 妹って、かわいいですよね。

 ここでいう「妹」は、実在の妹ではなく、属性としての「妹」です。もっとも、ラブライブ! シリーズの姉たちは、妹を溺愛している人ばかりのような気がします。

 ということは、あのメンバーが黙っているはずがありません。

自分が作ったフィールドなのに……
 (『にじよん あにめーしょん』第9話『妹王決定戦』より/©プロジェクトラブライブ!にじよん あにめーしょん/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=_qbUYKS6_Es)

 

 

1. 部長・かすみん

 かすみは、少なくとも公式設定においては妹ではありません。皆に自分を認めさせたい、自分の力で愛情を手に入れたいと、日夜励んでいるスクールアイドルです。かすみにとっての至上目標は、自信を持つことです。

 そんなかすみが始めたのが「妹王決定戦」。妹はかわいい、ならば同好会で最も妹にふさわしい者が一番かわいいという趣旨です。そしてそれは当然「かすみん」であると、本物の妹相手にも果敢に勝負を挑むのですが……。

 かすみや妹たちを次々になぎ倒していったのは璃奈でしたとてもかわいいですが、同時に悍ましくもあります。今回はそんなかすみが「かわいそうかわいい」(これこそ、かすみが最も望んでいない「かわいい」なのではないでしょうか?) 回ですが、それ以上のかすみらしさを見て取ることもできます。

 かすみは、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長です*1。他のグループの部長を見てみると、絶対的なこだわりとまめな世話焼きの力を持つ「姉」たる部長・矢澤にこや、部員のことをよく見て、時に優しく時に厳しく育てる母のようで、父のようでもある部長・嵐千砂都がいます。では、かすみがどのような部長かというと、カリスマ性を持っていたり、メンバーを教え導いたりという感じではありません。両方とも、かすみはそうあろうとしていますが、そうではありません。

 私は以前、感想週報の記事で、自らが動くことで他のメンバーに影響を与えるかすみのリーダー像を紹介しました。今までも、かすみの行動や言葉をヒントに、グループという方向性を見直すこととなったり、ユニット活動を始めたりと、同好会は変化してきました。部長らしくあろうとかすみが頑張ったことそのものが、同好会に力を与えました。本人が予期せぬ形であっても、かすみが動くと同好会が進歩するのです。自ら始めた「妹王決定戦」でも、璃奈に王座を取られてしまいましたが、皆で議論したり試したりすることで、同好会全員の「かわいい」に対する意識をブラッシュアップすることはできたのではないでしょうか。これはどんなキャラで売るにしても、女性アイドルにとって*2避けては通れないことです。図らずも「部長」としての務めを果たしたかすみなのでした。

かすみがいかにして部長か

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2. かすみと璃奈とあざとい

 自らのかわいさを証明しようと、時に勇敢に、時に粘り強く努力するかすみに対し、同好会には「かわいいの天才」がいます。璃奈です。

 初期こそ、家庭環境ゆえに自分を表現する方法を持たず、人と関わることを避けていましたが、アニメにおける璃奈ちゃんボードを発明した後、あるいは『スクスタ』における素顔を見せられるようになった後の璃奈は無敵です。かすみにとっての命題「自分が可愛い」ということは、璃奈には既にわかっているのです。

 もう一つ、注目すべき点があります。同じく「姉妹」を扱った前回を見ると、妹が姉との関係の中で妹的存在になるということがわかってきます。愛が美里の「妹」だというのも、それに近いものです。しかし、かすみは「皆のアイドル」のまま、「妹キャラ」を演じようとしました。これに対し、璃奈は一人ずつ想定「お姉ちゃん」として狙い撃ちして、理想の妹になろうとしていました。お題の読み込みについても、璃奈が一枚上手だったということです。

 かすみには、確かに皆にときめいている侑は反応していました。その直後に「栞子ちゃん欲しい」「ミアちゃんも欲しい」と言い出す侑は、見境がないというべきか、はたまた歩夢に同調しているだけなのでしょうか……。

 「可愛い」に限らず、自分の持っている力と相手が求めているものを理解していれば、あらゆる戦いに勝てると思います。以前の記事でも、「妹は姉に力を与えるもの」であると同時に「妹は姉の背中を見て育つもの」であると指摘しました。姉の様子を見ながら、強かに育っていくのと、一人一人の「姉」に狙いを定めていく璃奈はよく似ています。その点、かすみの「かわいい」は自分の思っているかわいさを認めてもらうことが目標なので、例えばマスコットとしてかわいがられて、それで勝っても仕方ないということなのでしょう。かすみ特有の難しいところですが、それが「妹」属性との相性の悪さともいえます。

 

アニガサキの姉妹に関する重要回

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 余談ですが、いつぞやの生配信で、彼方役・鬼頭明里さんが、「ニジガクメンバー皆のことを妹だと思っている」という旨のことを言いました。しかし、その場にいた、奇しくも璃奈役の田中ちえ美さんは、「同い年」*3であるがゆえに妹と認められませんでした。璃奈が妹王の座を失ったのが「中の人」だけだったというオチです。

*1:アニメ設定

*2:男性もかもしれない

*3:誕生日で、田中さんが10日年上。同好会内最年長