普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

意味が分からなきゃわいわいできない!? 『わーいわいわい わいわいわい!』徹底考察!

衝撃のシングル『わーいわいわい わいわいわい!』

 明日5月28日 (日)、ラブライブ! サンシャイン!! Aqours浦の星女学院RADIO!!! JMA出張放送局 ~バブ卒大集合! ラジオとライブでわいわいわい~ 』が、「NMZ」(=沼津) を皮切りにスタートします。『Aqours浦の星女学院RADIO!!!』(以下、『浦ラジ』) を担当する曜・善子・ルビィが歌う『わーいわいわい わいわいわい!』の披露が期待できますね。この曲は、ヒャダインこと前山田健一さんの作詞・作曲によるもので、『サンシャイン!!』で初めて全編を畑亜貴さん以外が作詞した楽曲となります*1。それゆえに、相応の想いと意気込みが込められた曲となっているはずです。しかし、蓋を開けてみれば、一見すると何を言っているのかわからないはちゃめちゃな歌詞で、評判を呼びました。そこで今回は、公開録音・ライブイベントを前に、その歌詞を本気で読み解いてみることにしました。

 なお、本記事ではAqours楽曲の歌詞の一部を引用しています。曲名表記のないものは、『わーいわいわい わいわいわい!』の歌詞です。

 

 

1番: 成長

 まずは1番サビに注目してみます。

ねねねねね ねるねる ネアンデルタール

“よよよよよ よちよち みんなバブ卒”

 繰り返し言葉が耳に残り、脳内再生が止まらなくなってしまう部分です。

 「ネアンデルタール」は言わずと知れた旧人類です。その後に来る歌詞の、「サピエンス」は、当然ホモ・サピエンスのことであり、これは「知性あるヒト」を意味する現生人類の学名です。ネアンデルタール人も高い知能を有し、文明を築いていたことが、近年の研究で明らかになっています。原始人もきっと、歌を歌ったり、踊りを踊ったりしていたことでしょう。しかし、より高度な文明を築いた現代人は、文字を読み書きし、科学を発展させ、交通や通信を生み出しました。そして、スクールアイドルを創造したのです。

 歌詞に書かれた「サピエンス」の特徴は「過ぎたるしったる」……様々な罪を生み出すほどに (善子が好きそうな響きです) 発達した知性だといいます。すなわち、ここの歌詞は、知力や精神面の成長を意味していると言えそうです。

 それを踏まえると、イベントタイトルにもなっている「バブ卒」の意味も、よちよち歩きだった赤ちゃんの「成長」だとわかります。1番のテーマはこれではないでしょうか。

 

“できなかったことができたり ひとりじゃ無理だったけど いっしょなら弾けるパワー” (『Hop? Stop? Nonstop!』)

“なんともなんない時から きっと変わってる (成長してる? ねっ)” (『Wake up, Challenger!!』)

 

 1番のAメロの部分には、悩みや失敗といった悔しいことが、コミカルに綴られています。お気に入りのリップクリームが机からころころとまろび出て、どこかの隙間に消えてしまうようなちょっとした日常の悩みは、悩むだけばかばかしく、逆に、この世界の悲しみのような大きなことを、1人で悩んでもどうにもなりません。それよりは、かけがえのない日々を大切に生きた方がよいのです。“春です!” “夏です!” “秋です!” “冬です!” と畳みかけるように季節が歌われますが、ラブライブ! における季節-“僕たちの季節”-は、「いま」しかない時の象徴です。個人的に、『Party! Party! PaPaPaParty!』『4 SEASONS』『水彩世界』のような季節を詠み込んだ歌詞が好きなので、ド直球ではあるものの、これも刺さります。

 余談ですが、「小さな悩み」と「大きな悩み」も呼応しているように見えます。

・どこか遠くへ行ってしまう「君」とリップクリーム。

・不安に震える心と、それでも鳴ってしまうお腹。

・やまない悲しみと、繰り返してしまう言葉。

 

“うまくいかなくて 泣きそうになる時は くちびる噛みつつ願うんだ「明日は晴れ!」“ (『空も心も晴れるから』)

“同じもどかしさ抱え くやしい日々を重ねた” (『なんどだって約束!』)

 

 Bメロでわいわいわいの3人は、ラジオでお知らせをど忘れするという失敗をします。絶対にあり得ない失敗なのがコミカルでよいものです (台本はどうした?)。「ググって」が、ど忘れした3人がお知らせをするために「公式サイトをチェックすルビィ!」するのか、それともリスナーにググれと言っているのかは読み取れませんが、さらにAqoursについて知るための内容が続きます。SNSAqoursの情報をチェックするのはもちろんのこと、「NMZ」、つまり沼津に実際に足を運ぶことも、Aqoursのことをより深く知る手段です。そしてやっぱり「YYY」、つまりラジオを聴いてほしいという願いが込められています。失敗もするけれど、次はきっと成功すると思います。

 もしかすると、前半で挙げたような悩みにも、すぐに答えを出す必要はないのかもしれません。私たちは「サピエンス」なのですから、Aqoursが全力で春夏秋冬を駆け抜けたように、いつでも全力で挑戦していれば答えがわかるのかもしれません。1番で歌われる成長とは、そうして自分だけの答えを見つけることでもあります。

 

“届かないって決めないで 手を伸ばせ! それから悩め!” (『届かない星だとしても』)

“「あきらめない!」 言うだけでは叶わない 「動け!」 動けば変わるんだと知ったよ” (『WATER BLUE NEW WORLD』)

 

“UはU IはI YはY”

 この「U」は「you」で、すると「Y」はネット上でよく見かける一人称の「わい」ですね。

 これらのことを踏まえて1番の内容を要約すると、以下のようになります。

「悩みや失敗は尽きない。しかし、今しかない瞬間を駆け抜けていけば、人類がよりすぐれた知能を持つように進化したり、赤子が自立したりするように成長して、自分だけの答えを見つけることができるはずだ。そのように日々成長中の、SNSや現地にも負けない私たちのラジオを応援してほしい。」

 

“僕たちだけの新世界が (きっとある) We say “ヨーソロー!!”” (『MIRAI TICKET』)

 

2番: 消えない輝き

 2番も、まずサビに注目します。

“ななななな なむなむ なむさん! せっぱ!”

 「なむさん」は南無三宝の略で、仏と法、僧の3つに帰依することを表します。「せっぱ」は禅問答における回答者の宣言で、本来は「そもさん」とセットで使います。

 2番には、仏教的なモチーフが使われていることがわかります。

 それを踏まえて2番の前半に戻ると、こんな歌詞があります。

“インド人 見つけたゼロ”

 「インド人」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 大勢で踊るインド映画?*2 ゲーム雑誌の誤植?*3 Twitterでは「沼津に実在するインドカレー*4を連想する」という意見も見られました。この仏教的モチーフを踏まえれば、インドが仏教の発祥国「天竺」であることを思い出せます。「ブラーマグプタ」は、そのインドで既に知られていた0を取り込んだ四則演算を書物に著した人物の名前です。

 この「ゼロ」こそ、Aqoursと仏教やインドの世界観を繋ぐ、重要な数です。

 Aqoursの始まりには、ゼロがありました。それは、まだAqoursを応援している人がいないという現実であり、同時に空っぽだと思っていた自分たち自身の鏡映しでもありました。Aqoursは、その0を1にしよう、1を100にして奇跡を起こそうと1年間戦い続けてきました。望んだものを全て得ることはできませんでしたが、物語の最後に、そのすべてに意味があったと気づきました。輝きを求め続けていた自分たちは、既に輝いていたのだと知りました。Aqoursに突きつけられた0を刻んだ紙は、紙飛行機となって空高く飛んでいきました。

 

“僕たちはみんな持ってた 胸に眠る輝き めざめる前のチカラ” (『WONDERFUL STORIES』)

“何もなかったから 何かつかみたい想いが ああ 道を作ってくれたのかな” (『キセキヒカル』)

“ここから生まれた 希望と、痛みと、ぜんぶ愛しくて“ (『i-n-g, I TRY!!』)

 

 般若心経は、「色即是空空即是色」を説きます。簡単に解釈するなら、「形あるものはすべて空虚であり、同時に、虚無にはすべて意味がある」といったところでしょうか。砂浜の文字や雲の形のように、時が経てば形を変え、無くなってしまうものの本質は確かに空虚かもしれません。その一方で、ゼロだと思っていたものは、意味があり、消えない大切なものだったのです。この言葉を知ったとき、私は「『ラブライブ! サンシャイン!! 』だ!」と思いました。

 

“ああ風の向きは変わってくけど ユメ追う情熱は変わらないから” (『DREAMY COLOR』)

 

 なんでも簡単に手に入るように思われる「情報社会」で、「お得なこと」を安易に手に入れようとした結果が「ゼロ」。Bメロでは、歌詞の内容すら無になってしまいます。自らに突きつけられた0に気づく展開も、ギャグテイストで綴られているのです。

 余談ですが、Aqoursが見つけた「0」と「1」を膨大に積み重ねて「サピエンス」が生み出したものが、「情報社会」だったりもします。

 

“ついに僕らは digital trippers” (『BANZAI! digital trippers』)

 

 では、『ラブライブ! サンシャイン!!』は仏教説話なのかというと、それも違うと思います。

“ぜぜぜぜぜ ぜんぜんぜんぜん 全部載せGO”

“欲しがり欲張り”

 こういうものは、仏教では好ましからざるもののはずです。しかし、望むものを手に入れようと全力で足掻く姿は、Aqoursらしさの一つで間違いありません。Aqoursと仏教は、答えは似ているけれどアプローチが違うという関係にあります。もとよりそのアプローチの違いは、浦の星女学院が元々の設定ではミッションスクールであったり、寺の娘である花丸が聖歌隊に所属していたりすることからも示唆されています。

 

“サッパリが自慢なのかい? あきらめ悪くいこうよ 絶対に欲しいモノは 狙うんだ ポーカーフェイス” (『スリリング・ワンウェイ』)

“どんなコトでもするよ 欲しいと感じた時 カラダが動くよ” (『Aqours Pirates Desire』)

 

 その直後の「国民の権利」というのはちょっとよくわかりませんが、「生きとし生きてる」と合わせると、あらゆる人が持っているもの、という意味に捉えられると思います。0を1にしたいという願いと、それを叶える力を誰もが持っていること、それが「生きてる」ということなのだという意味です。

 

“誰の胸にも願いがある 大切なこの場所で感じてみよう“ (『夢で夜空を照らしたい』)

“そう勇気は 誰もが持ってるんだ“ (『シャゼリア☆キッス☆ダダンダーン』)

 

 あるいは、そういう人のことを「Aqoursの10人目」と呼ぶのかもしれません。

 

“ステージは9人でも ここにいるみんなが 10人目だって感じて いまがあるんだよ” (『No. 10』)

 

 残るはこの部分です。

“AはA EはE YはY”

 Aは「ええ」、Eは「いい」と読めます。つまり、「よいものはよい」ということでしょうか。おそらく、このYも「よい (Yoi)」でしょう。突然の全肯定は、何を意味しているのでしょうか。

 ここからは、私の願望込みの想像が入りますが、ここまでしてきたのはAqoursにとって「消えない大切なもの」の話です。そして、全肯定されるものです。もう一つ付け加えるならば、2番サビの前半では「生 (LIVE)」の話をしていたので、後半では対になる「愛 (LOVE)」の話をしている可能性があります。

 Aqoursにとって消えない、大切なもの。愛すべき、良きもの。それは、「沼津」ではないでしょうか。

 「テケテケ」もまた意味不明ですが、「てくてく」なら私たちも知っています。『てくてくAqoursは、Aqoursのキャストが沼津を散歩する、BDの特典映像です。PVを作ろうとしていた頃は、沼津のことも何もない田舎だと思っていましたが、沼津の自然や人々は、Aqoursに力を与えてくれるものに他なりません。

 

“どんな・どんな・とこがすき? 海・山・人・ぜんぶ!” (『サンシャインぴっかぴか音頭』)

 

 2番の歌詞も、要約してみたいと思います。

「簡単には手に入らないものを追い求めるとき、全てがゼロになったように感じることもある。それでも、それを貪欲に手に入れようとする過程には意味があって、それによりゼロだと思っていたものさえも、かけがえのないものになる。私たちがこのようにして不滅の魅力に気づいたものに、地元・沼津の存在がある。そして、誰でも本当は同じように夢を追い求める力を持っている。」

 

“ひとりひとりは違っていても 同じだったよ いまこの時を大切に刻んだのは ぜったい消えないステキな物語” (『Next SPARKLING!!』)

 

結言: 『ラブライブ! サンシャイン!!』のすべて

 ここまでのことから、『わーいわいわい わいわいわい!』には、『ラブライブ! サンシャイン!!』のすべてが綴られていることがわかりました。1番では、悔しさの中で今を駆け抜けて得られた成長を、2番は夢を諦めずに貪欲に追いかけたことで、「ゼロ」の中に宝物を見つけたことを歌っているというのが、この記事の結論です。

 『わーいわいわい わいわいわい!』は、150曲を超える畑さんのAqours楽曲に、たった1曲で対抗しうるポテンシャルを持ちます。何度聴いても笑いがこぼれるような、一見コミカルな曲ですが、いつかこれを聴いて涙が出てきてしまう日が来ないとも限らないのが、恐ろしいところです。

 生憎、NMZ公演では降幡愛さんが体調不良により欠場となってしまいましたが、明日からのイベントが盛り上がることに期待します。私も、8OJ (=八王子) 公演へ参加予定です。

 

*1:『虹ヶ咲』以降は、デビューアルバムないしシングルから、複数の作詞家が参加している

*2:劇場版ラブライブ! シリーズには同様の演出がある

*3:ラブライブ! シリーズでも「彼氏いない歴17年」「音ノ木浦の星女学院」「Takami Kanan」「佐野日向 (鹿島理亞役)」など、印象的な誤植が多い

*4:ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!