普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

3色の個性が伝統を紡ぐ 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ OPENING LIVE EVENT ~Bloom the Dream~ 昼公演全曲感想

パシフィコ横浜 国立大ホール

 4月15日 (土) にサービスを開始した『Link! Like! ラブライブ!』(リンクラ)。その中で活躍する蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブですが、キャストによるリアルライブももちろん開催されています。4月のリリースイベントに引き続き、2023年6月4日 (日) に2公演が開かれた『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ OPENING LIVE EVENT ~Bloom the Dream~』昼公演に参加してきました。今回もトーク付きのライブイベントでしたが、「濃さ」ではフルライブに劣らないものでした。

 

前回のイベントはこちら

carat8008.hateblo.jp

 

 なお、本記事の公開が大幅に遅れてしまったため、公開日までの間に『リンクラ』8話が公開されましたが、その内容は未視聴であることもあり、知らない状態で執筆しております。

 

 

1. 泥の海

 今回の会場となったパシフィコ横浜・国立大ホールは、ちょうど10年前の2013年6月に開催された『μ's 3rd Anniversary LoveLive!』の会場です。また、Aqoursの5周年を記念した展示会『Pieces of Aqours』もすぐ横の会議センターで開かれました。

 横浜といえば、青い海に面した港町です。この街の鉄道も、スポーツチームも、そのほとんどが青をイメージカラーにしているように、横浜といえば青色というイメージがあると思います。

 しかし、この日の横浜は違いました。2日 (金) の豪雨で土砂が流れ込み、泥の海になってしまっていたのです。この豪雨の影響は大きく、翌3日 (土) の午後まで新幹線の運休・ダイヤ乱れが続くなどして、当日大阪で予定されていたラブライブ! サンシャイン!! 浦の星女学院RADIO!!! JMA出張放送局 ~バブ卒大集合! ラジオとライブでわいわいわい! in NMB~』が開催できなくなるという、ラブライブ! シリーズ的にも大きな影響が出ました。

 しかし、泥の中でこそ大きく咲き誇る花があります。蓮です。

 そんな状況になった横浜の海に面したパシフィコ横浜・国立大ホールの裏手には、凄まじい長蛇の列ができていました。蓮ノ空のライブグッズを買い求めるファンの行列です。

 長い人では3 - 4時間も並んだとされ、蓮ノ空への期待度の高さを物語っている……と言いたいところですが、実際には事前物販が行われていなかったことが原因と考えられます。また、午前中の列の処理速度が遅かったことも指摘されています。そもそも用意されていたグッズの数が足りなかったことも問題ですが、数があっても開演に間に合わなかった人も多数いたと思われます。

 とはいえ、物販は物販、ライブはライブです。入場してみれば、この会場の良さがわかりました。座席の幅が広く、ふかふかでこれまでに行ったライブ会場のでもトップクラスの座り心地でした。ライブには不要ですが、国際会議にも使えるようにテーブルまで設置されています。私の席は1階後方でしたが、客席全体にほどよい傾斜があり、ステージもよく見えました。

 物販が買えると買えざるとにかかわらず、今回のライブにはラブライブレードがありませんでした。代わりにケミカル式の公式サイリウムは用意されていましたが、私は色数の多いニジガク指定ラブライブレードを、色順指定機能で「蓮ノ空仕様」*1に変更して持ち込みました。

 まだライブが始まらないうちから、告知映像に対して観客があちこちから雄叫びを上げていました。リリイベでも感じましたが、この賑やかさも蓮ノ空の特徴ではないでしょうか。

 

2. 君たちの名は?

 最初の映像が流れて、いよいよライブが幕を開けます。画面に映るメンバーの影の奥から光が差してくるPVが始まると、キャスト6人がステージに立っているのが見えました。1曲目は『リンクラ』テーマソング『Dream Believers』です。まさに、「オープニング」に相応しい1曲です。始まるまでガヤガヤと声を出していた観客たちも、音楽の力でどんどん1つにまとまっていきました。リリイベで「歌い継がれる曲」と称されていたこの曲が、まさに前回と今回のステージを繋ぐものになりました。ちなみに、まだ詳細は明かされていませんが、劇中でも少なくとも前年から歌われていた曲であるようです。

 この曲はPVに合わせてショートバージョンでの披露となり、自己紹介のあとにトークパートに移りました。自己紹介はありましたが、まだ恒例のコール&レスポンスがありません。これもある意味貴重な光景です。「こんにちは~」の言い方一つでも個性は出るので、こういうのも楽しいものです。いざコーレスができたら、それはそれは個性的なものになりそうです。

 今回のトークテーマは、「蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのファンネーム」でした。これは公式サイトで事前に募集されていたものです。

ラブライブ! シリーズには、あまり今までファンネームという概念はなかったと思います。「Aqoursの10人目」やニジガクにおける「あなた」のような観念的なものはあっても、固有名詞があるのは『サンシャイン!!』の各ユニットの、「しゃろとも、トリコビト、Familiar、エンジェルメイト」だけです。

 ここでファンから寄せられたお便りを紹介し、審議の上キャストの過半数が良いと思ったものを残し、最終的に4つに絞るというものでした。会議にも使える良い椅子が嬉しい企画です (笑)。

最後に残ったのは、「Linker」「蓮っ子」「蓮ノ空のことすきすきクラブの皆さん」*2「Bloomer」でした。LinkerとBloomerは順当に全会一致で決まったのに対し、「蓮っ子」は慈役・月音こなさんが反対票を入れたにもかかわらず花帆役・楡井希実さんの強いプッシュで最終候補に残りました。また、「蓮ノ空のことすきすきクラブの皆さん」は、当初意見が割れていたものが、「これを聞くとこっちゃん (= 綴理役・佐々木琴子さん) が笑顔になる」というプッシュがあり、一転全会一致となりました。ファンの感触も、キャスト同士のいろいろな議論もありましたが、やはり最後は強い気持ちがものを言います。最終候補は、『リンクラ』6月度Fes×LIVE内のアンケートで決選投票を行うとのことです。決定はスクールアイドルの世界に委ねられ、学園祭のステージで華々しく決まることになるでしょう。

 さて、最終候補以外にも「蓮」にまつわる面白い候補がありました。例えば「レンコン」。ファンは「蓮」を支える地下茎だという命名理由です。綴理が喜びそうなおでんの具でもあるとのことですが、ファンを野菜だと思うのは、どうしても『ラブライブ!』1期3話の海未を思い出します。さらに驚きだったのは、蓮が泥の中から芽を出して咲くということを踏まえた泥人どろんちゅ、挙げ句の果てに「泥」という候補でした。ファンたちは何を言われてもノリが良く、月音さんの「泥の皆さーん!」という酷い呼びかけにも歓声で応えていました。とはいえ、楡井さんの「皆さんは泥じゃない」という一声で、この件は沙汰止みになりました。

 こうしてやり取りを見ていると、メンバーやユニットによる個性が、パフォーマンス以外のところにもよく見えてきます。6人の中で、特に自分の意見をはっきり言う傾向にあるのは、楡井さんと月音さんでした。月音さんは意外とドライな意見を言うことが多く、「『蓮っ子』は (ファンではなく) 私たち」といった反対意見も忌憚なく発言していました。楡井さんは「蓮っ子」のような可愛い候補を激推ししたり、「泥」系には真っ向から反論したりと、主演の器を感じる物言いでした。彼女たちに対し、同じユニットのメンバーがどうかと言えば、瑠璃乃役の菅叶和さんと梢役の花宮初奈さんを比べると、菅さんのほうが「相方がこうだから」という理由で同調しがちな印象はありました。DOLLCHESTRAのさやか役・野中ここなさんと綴理役・佐々木琴子さんはやはり息が合うことが多く、他のユニットよりも賛成票を投じることが多かった気がします。

 

3. バーチャル幕間

 蓮ノ空の魅力を存分に感じられたトークパートが終わり、いよいよライブに向けて期待が高まります。

 ラブライブ! シリーズの幕間といえば、ツッコミどころ満載のミニアニメや、キャストの歩みを振り返る映像が流れることがよくあります。ただ、これは「バーチャルスクールアイドル」。したがって、幕間もバーチャルです。

 モニターに現れたのは、いつもバーチャル配信で私たちを楽しませてくれる、そしてこれから楽しませてくれるであろう、6人のスクールアイドルでした。

 学年ごとに衣装に着替えつつ、残ったメンバーがトークで繋ぐという内容で、1年生 (103期生) は瑠璃乃の提案で動物園ごっこ、2年生 (102期生) はそれを聞いていた綴理の提案で幼稚園ごっこをしていました。こういう変な話が出てきたときに、簡単に流されないながらも戸惑っている梢が可愛かったです。

 ここでは、『Dream Believers』の衣装に着替えていましたが、実際のキャストは異なる衣装で登場しました。

 

4. 3ユニット、それぞれのギャップと輝き

 スリーズブーケの2人が、初披露の新衣装を着て登場しました。リリックビデオにも登場していた『水彩世界』の衣装で、同曲からライブパートが始まりました。この衣装は文字通り花束のような色鮮やかな衣装でした。会場の国立大ホールの内装は、白を基調に曲線を多用した優美な造りです。この衣装と会場のインテリアが不思議にマッチして、スリーズブーケの世界観を彩っていました。

 『水彩世界』の魅力は、歌詞の綺麗さ、歌声の綺麗さ、その他にも振付やモニターの映像、さらに今回は衣装や元からあった装飾など、すべてが綺麗なことです。今回は4月のリリイベに比べ、さらに磨きがかかっていました。

 続く『フォーチュンムービー』は初披露です。リリックビデオの時点で、とても楽しい曲でしたが、全身での表現が加わると、こちらの心まで踊るようです。間奏で台詞の掛け合いがありますが、ここも盛り上がるところです。梢が自分を花帆の運命の人だと悪戯っぽく笑いながら嘯くシーンを見て、本当に梢こそ花帆の運命の人だったらいいと思ったファンは数知れないと思います。まるで現代スクールアイドル界の名作映画です。

 楡井さんと花宮さんは、2人ともどちらかといえばクール寄りの顔立ちだと思います。なので、このような可愛い曲をやるだけで、ギャップ萌えしてしまうのです。

 お次は、DOLLCHESTRAのパートです。まずは4月にも披露された『AWOKE』からでした。DOLLCHESTRAの見所は、圧倒的な実力です。美のオーラが漂う佐々木さんと、動きのキレが随一の野中さんが、難しいダンスパフォーマンスで魅せます。初披露の衣装も、3Dモデルで見た通りのかっこよさでした。

 DOLLCHESTRAの2曲目は、これまたリリックビデオ曲の『ツキマカセ』です。『AWOKE』が「かっこいい」なら、こちらは「可愛い」DOLLCHESTRAです。蓮ノ空は、このようにギャップというか、メンバーの様々な顔を見せることに前向きだと思います。

 そして、みらくらぱーく! の登場です。このライブが開催された時点で、みらくらぱーく! の曲は『ド! ド! ド!』しかなく、『リンクラ』のストーリーにも登場していないので、このユニットのことはほとんど何もわかりません。かろうじてライブ当日にキャストの菅さんと月音さんによるラジオ番組が始まりましたが、本格的な登場はいつになることやら……。しかし、だからこそみらくらぱーく! は曲だけで絶大なインパクトを残していきました。

 『ド! ド! ド!』は “元気” な蓮ノ空ファンの本領が発揮されるブチ上げ曲です。あちこちで飛び跳ねる人や、UOのようなサイリウムを振り回す人が大量発生していました。*3菅さんと月音さんも、この会場を揺るがし、イヤモニをも貫通する声援を大いに楽しんだということです。

 曲が1曲しかないので、みらくらぱーく! がどのようなパフォーマンスをするのか気になるという声がネット上で見られました。カバー曲の披露や、『ド! ド! ド!』を繰り返し披露する (!?) などの大胆な予想まで登場しました。果たして正解は……?

 誰も知らない、誰も予想しない新曲の初披露でした。

 その名も『ハクチューアラモード』。『ド! ド! ド!』とは打って変わって「ゆめかわ」な曲調で、「チューチュー」や「ハクチューアラモード」のフレーズが何度も何度も繰り返される中毒性のある曲でした。初めびっくりしていた観客たちは、モニターに表示される文字を参考にすぐに順応して合いの手を入れ始めました。私もあのモニターはありがたいと思いました。このようにだんだんコールが仕上がっていくのは新鮮な体験です。

 アーティストによっては、新曲を当たり前のようにライブで披露する人もいるようですが、ラブライブ! シリーズではかなり珍しいケースです。未発売どころか、試聴すら公開されていない未発表楽曲というと、Aqours 6thライブ <WINDY STAGE> における『迷冥探偵ヨハネ』くらいしか例がありません。それも、善子のソロ曲があることはソロアルバムのシリーズの一環で自明だったので、存在すら明かされていなかった新曲がリアルライブで先行披露されるのはラブライブ! シリーズでも史上初のことです。

 とはいえ、劇中の世界、特にラブライブ! の大会では規定で皆未発表の新曲を披露することになっています。実は私たちは、今回初めてそれを追体験できたことになるのです。

 

5. 3次元で見る『Fes×LIVE』

 おもちゃ箱というよりももはや「びっくり箱」だったみらくらぱーく! の鮮烈なライブ体験から、再びバトンはDOLLCHESTRAへと渡ります。ここからは、『希望的プリズム』『スケイプゴート』『Sparkly Spot』と3曲続けてノンストップでの披露となりました。沸いていた会場は、DOLLCHESTRAに吸い込まれるかのように釘付けになりました。

 『希望的プリズム』はDOLLCHESTRAの雰囲気に合ったかっこいい曲ではあるのですが、どことなく坂道系の雰囲気も感じます。私はアイドルには全然詳しくないので、「坂道っぽい」という感覚があっているかはわかりませんが、2010年代後半にTVや街中でこういう曲が繰り返し流れていた気がします。そうなると、佐々木さんの古巣が乃木坂46であることも意識してしまいます。それをどれほど意識して作った曲かはわかりませんが、アイドル歴の長い2人だからこそのパフォーマンスと言えそうです。ちなみに、作曲者も日向坂46の曲を作ったことがあるとのことです。

 続いての『スケイプゴート』は、Fes×LIVEの楽曲です。これこそが、蓮ノ空の独自要素で、毎月『リンクラ』で配信されているライブです。3DCGが動くライブはこれまでにもありましたが、それだけでなく、キャストが3Dモデルを「着て」歌って踊るという前代未聞のものです。ファンの反応もリアルタイムで届くので、ともすれば本当のライブよりも双方向性が高く、ファンとメンバーが直接触れ合える機会になっています。これまでのラブライブ! シリーズの「シンクロ」がアニメ映像や3DCGにキャストの動きを合わせていたのに対し、元はどちらも同じ人のパフォーマンスではありますが、見比べるとどちらの良さもしみじみと感じてしまいます。

 4月・5月のスリーズブーケ・DOLLCHESTRAのFes×LIVE楽曲は、6月14日 (水) に発売されました。ということは、こちらも先行披露だったことになります。

 さらに3曲目の『Sparkly Spot』に続くと、客席からはどよめきが起きました。トーク付きのイベントでこれほど曲数をやると思っていなかったのか、良い意味の「まだやるの!?」という驚きが聞こえてきました。忘れてはいけないのは、ファンミーティングではなくあくまで「ライブ」だということです。

 夜公演では『スケイプゴート』が同じくFes×LIVEの『Tragic Drops』に代わり、2公演で全曲披露を果たしたそうです。

 ここまでやりきって、スリーズブーケに交代しました。スリーズブーケの2周目は、Fes×LIVE曲の『Holiday∞Holiday』からスタートでした。またしてもスリーズブーケの得意とするガーリーなラブソングです。本編でも描かれる梢の心情が、このような歌唱に説得力を持たせているのかなと思います。歌詞の内容は、好きな人と過ごす毎日が特別な日になるというものです。しかし、癖になる「月火水木金土日」の部分は、実に私たちラブライバーと『蓮ノ空』、あるいはラブライブ! シリーズとの関わり方そのものでもあるのです。そもそも『リンクラ』は、ゲームアプリでもあり、1年365日をスクールアイドルとともに過ごす「カレンダーアプリ」でもある、とされています。With×MEETSという週3回の配信で、定期的にスクールアイドルと触れ合うこともできます。シリーズ全体に目を向ければ、月・木・土曜日のWith×MEETSに加え、火曜日にラジオ番組2本、水曜日に1本、木曜日と金曜日に隔週で1本ずつ、日曜日に1本、さらに月1回のものも合わせると、平均して週8回以上はラブライブ! 関連の配信があることになります。「月火水木金土日」、私たちがラブライブ! のことを考えない日はありません。仕事が忙しい日も、残念なことがあった日も、どんな日でも楽しくなる、どんな日でもその人のことを想ってしまうことを、一般に「好き」といいます。

 夜公演では同じくFes×LIVE曲の『謳歌爛漫』に変わったそうです。Fes×LIVEで見たのと同じ、桜色に染まる会場も見てみたかったです。

 セトリは『Reflection in the mirror』『Mix Shake!!』と続きました。かっこいい曲やブチ上げ曲も歌いこなす引き出しの多さは、なんでも楽しめる花帆と、多芸を強みにしている梢のユニットの表現としてこれ以上ないものだと思います。

 そして曲の最後には、DOLLCHESTRAとみらくらぱーく! の4人も登場して、6人で踊っていました。大いに盛り上がる上に、曲はみんなのものであることを感じられます。『虹ヶ咲』などでも見られることがある演出です。

 みらくらぱーく! のMCを除いてここまでほぼノンストップだったので、ここで簡単に曲と衣装の紹介が入りました。その後は、最後の曲として『永遠のEuphoriaが披露されました。リリイベでも終盤に使われたこの曲は、ライブの「多幸感」を皆で共有するようなコール曲です。ライブ終盤にふさわしいエモと盛り上がりがあるので、今後のステージでも披露してほしいと思います。

 

6. アンコール ~位置について~

 6人が退場しました。しかし、その去り際は明らかにあることを仄めかしていました。それはアンコールの存在です。リリイベには無かったので、蓮ノ空初のアンコールです。

 通常なら手拍子か「アンコール!」の掛け声で出演者を呼ぶ時間ですが、掛け声が揃いません。どうやら、「Aqoursコール」的なものを生み出したかった人たちがいたようですが、語呂の悪い文言を発していたようで上手く聞き取れず、足並みは揃っていませんでした。夜公演では、果たして揃ったのでしょうか。

 暫く経つと、キャストより先にメンバーが登場し、再びバーチャル幕間が始まりました。この幕間では、「スクールアイドルの伝統」について触れられ、蓮ノ空がそれに見合うスクールアイドルになっているか問いかけられました。私にしてみれば、今ここで新しい試みが次々になされていることこそ、「伝統」が生まれる瞬間に立ち会っているという意識しかありません。メンバーは、長い歴史を持つ蓮ノ空のスクールアイドルクラブについて言及していますが、私たちにとっては歴代のラブライブ! シリーズとの比較というニュアンスが入ってきます。どの作品から好きになった人も、あるいはバーチャルという文脈から、あるいはキャストの前歴から、『蓮ノ空』を最初に好きになった人も含めて、この会場がひとつになっていることが、彼女たちが立派なスクールアイドルであることの証左です。

 アメリカ帰りの瑠璃乃の「『位置について』は英語でなんて言うか知ってる?」という問いかけから、アンコールがはじまります。

 もちろん、その答えはOn your markです。リリイベの1曲目に披露され、私を一発で惚れこませた、一番好きな全員曲です。この曲をやらずに終わるのはもったいない、と思っていたら、なんとアンコールで披露してくれました。何といっても、歌い出しを担当する野中さんのかっこよさが弾ける瞬間がいくつもあります。

 また、この曲のフォーメーションは、学年でもユニットでもない組み合わせが入れ替わり立ち替わりするのが楽しいところです。ストーリーの中では現状、スリーズブーケはスリーズブーケで、DOLLCHESTRAはDOLLCHESTRAで、あとは花帆とさやかの会話がほとんどなので、このように様々な組み合わせが増えるといいですね。それは梢と綴理の和解や、みらくらぱーく! の加入を通して実現することになるでしょうか。

 最後の曲は、最初にも披露された『Dream Believers』でした。今度はフルバージョンです。アンコールなので、会場のそこかしこにファンサービスを振りまきながらのパフォーマンスでした。精一杯声援に応えてくれたことへの感謝と喜びに加え、そういうことができる器用さへの尊敬の念で胸がいっぱいになってしまいました。今回もこの曲で締めて、また新たなステージへと「繋がって」いきます。

 全曲の披露が終わって、一人一言ずつ挨拶してからお開きとなりました。

 

7. 総括 ~蓮ノ空について語りたい3つのこと~

・メンバーとキャストの新しい関係性

 蓮ノ空のライブは、歴代ラブライブ! と比べても「元気」だという印象が確かなものになりました。リリイベに集まるのはやはり「ガチ」な人たちですし、キャストもファンもフレッシュなためだと、これまでは考えていました。しかし、メンバーとキャストの関係性に着目すると、蓮ノ空のライブが「アイドルのライブ」色が強いものに感じる理由がもう一つ見つかりました。

 ラブライブ! シリーズでは、演技表現の先にキャストとメンバーの、現実世界と作品世界の一体化があります。それを、キャストがメンバーのスキンを被った状態でメンバーに「成る」というこれまでとは全く異なるアプローチで実現するのが、バーチャルスクールアイドルです。今までは、日常的に提供されるコンテンツではキャストは声優としての役割を務め、シンクロパフォーマンスはライブの場で披露されてきました。それが、普段からバーチャル技術を生かしたシンクロを見せられることで、リアルライブにはキャストを見に来るという感覚がより強くなったように思います。さらに、物語の時系列の中で行われるFes×LIVEとは異なり、今回のライブは時系列からは切り離されていたということも指摘できます。まあ、まだみらくらぱーく! が登場していないのでやむを得ない面はありますが……。この結果、一心同体でありながら、金沢にいるメンバーとパフォーマンスしているキャストが別個であると取れるような演出も見られました。

 他方、ライブのパンフレットでも「世界で一番似ている6人が選ばれている」と言及されるほど、キャストの個性はメンバーの個性に生き写しなのも確かです。だったりもするので、そっくりであればあるほどメンバーとキャストが別々の存在として確立されるという逆説も働いています。

 つまり、少なくともOPENING LIVE EVENTにおいては、メンバーとキャストの関係が真新しいものになることで、バーチャルとリアルの両方からスクールアイドルの「アイドル性」が高まり、よりアイドルのライブらしい雰囲気が高まったのだと思います。

 

・ユニットの色

 「ユニットの蓮ノ空」は、ストーリーの軸にユニットが据えられています。イベントでも、トークとライブを通して、ユニットごとの色の違いを楽しめるものになっていました。

 実は、そんなユニットの個性をもっと感じられるコンテンツが、蓮ノ空の公式YouTubeチャンネルで配信されています。「歌ってみた動画」と称するカバー楽曲たちです。ラブライブ! シリーズにおいて、カバー楽曲は極めて限定的な存在だったので、この動画が投稿されたときは大きな驚きをもって迎えられました。これまでにVOCALOID楽曲と、歴代ラブライブ! シリーズの楽曲が1曲ずつ (それに加え、全員による『僕らのLIVE 君とのLIFE』) 配信されています。さらに、『リンクラ』にもカバー楽曲が収録されています。このうち、ラブライブ! シリーズのカバー楽曲が、それぞれのユニットについてより深く知るヒントになっているのです。

 DOLLCHESTRAが『始まりは君の空』を、みらくらぱーく! が『TOKIMEKI Runners』を、スリーズブーケが『君のこころは輝いてるかい?を、それぞれ歌いました。聴いていると、それぞれの原曲のグループがまだ初々しかった頃を思い出して、懐かしい気持ちになりました。

 スリーズブーケの物語は文学的な表現を多用して語られ、何もないと思っていたところに、大切な過去の存在を知って自分たちの道を作って行こうとする様子を描いていました。花帆の感情の起伏や、すぐ行動してしまうところも、Aqoursのリーダー・千歌の未熟だった頃を思い出すものがあります。まだ6曲しかないとはいえ、歌いこなす曲の幅広さも、Aqoursの表現力を彷彿とさせます。ちょっと筋肉自慢なところも似ていますね。 (笑)

 DOLLCHESTRAの綴理とさやか、或いは佐々木さんと野中さんは、まさに実力に裏打ちされた「スーパースター」です。圧倒的なパフォーマンスは、2人の魂のぶつかり合いによって生まれています。ストーリーも、性格も夢も異なる者同士が、絶妙な距離感を測りながらひとつの目標に向けて手を携える感じが、Liella! の描いてきた軌跡を彷彿とさせます。

 みらくらぱーく! は、まだ物語が描かれていないので、詳しいことはわかりません。しかし、とにかく自由なことは伝わってきます。『TOKIMEKI Runners』という曲自体が、9人だったり10人だったり12人だったり、どんな個性も受け容れてくれる器のようです。弱いところがあっても、型破りでもいいと、皆を鼓舞するようなユニットだと思います。

 こうして見ると、3ユニットに3グループをただ割り当てただけではないことがわかります。過去のスクールアイドルたちが歌い継いできたのと共通する想いを蓮ノ空のメンバーたちも伝えようとしていて、そこに「スクールアイドルの伝統」が息づいているのです。前からラブライブ! シリーズが好きだった人にとっても、蓮ノ空で初めて知った人にとっても楽しいライブになったと思います。また、いつかカバー楽曲のライブでの披露も見てみたいものです。

 

・これからの蓮ノ空

 入場前、ふと会場近辺を見回して思ったのは、想像以上にみらくらぱーく! のグッズを持っている人が多かったことでした。ラジオも始まりましたし、イベントでの振る舞いを見ていても、ここまで登場を引っ張っているにもかかわらず、飽きさせないユニットだなと思います。

 それにしてもみらくらぱーく! には、「伝統を受け継ぐ」という蓮ノ空のあり方とはだいぶかけ離れたイメージを抱きます。本当に伝統のユニットなのでしょうか? 慈の「やりたいこと以外やりたくない」という姿勢からしても、伝統を守る以上にやりたいことがあったのではないかと感じます。それに対して、連番相手が「伝統を壊すことが伝統なのではないか」と指摘したことには膝を打ちました。そういう血気盛んな若者を受け入れる居場所が受け継がれていたとしても、それもまた伝統です。

 実際のところは、みらくらぱーく! のストーリー参戦を待つことになります。夜公演では、それに合わせた楽曲の発売予定と、1stライブの開催が発表されました。

 これはオープニング。蓮ノ空はこれからが始まりです。

 

セットリスト一覧

1. Dream Believers

トークパート

幕間

2. 水彩世界

3. フォーチュンムービー

4. AWOKE

5. ツキマカセ

6. ド!ド!ド!

MC

7. ハクチューアラモード

8. 希望的プリズム

9. スケイプゴート

10. Sparkly Spot

11. Holiday∞Holiday

12. Reflection in the mirror

13. Mix Shake!!

MC

14. 永遠のEuphoria

アンコール

15. On your mark

16. Dream Believers

MC

*1:かすみ→栞子→果林→せつ菜→歩夢→璃奈でメンバーカラーが近い。なお、番号順だと梢の緑とさやかの青が逆だが、ユニットごとに整理した

*2:6月18日の生放送によれば、こちらの略称も「蓮っ子」とのこと

*3:このイベントではジャンプやUOそのめのは禁止されていない