普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

【終幕】「みんなで叶える物語」の進化と深化 ~輝け!Aqoursぬまづフェスティバル・後日談編~

 『輝け! Aqoursぬまづフェスティバル』は、当初の心配をよそに、盛況のうちに閉幕しました。今回は、後日談的に、1ヶ月が経った現時点の感想を書いていきたいと思います。このイベントの『ラブライブ! サンシャイン!!』という作品全体の中での位置づけや、作品全体に与えた影響についても少し考察できたらと思います。また、公演中は公表できなかったサプライズ情報も、ここで公開していきます。

Aqoursぬまづフェスティバル』全戦利品

 

Aqoursぬまづフェスティバル』の各ブースの感想はこちらから

carat8008.hateblo.jp

 

1. Aqoursへのサプライズ

 前回の記事で「隠し要素」があると書いた休憩所。ここで待っていたミナモとナミの姉妹が、「助っ人」たちにある企画を提示します。

 その企画とは、「ライブステージを利用したAqoursへの感謝の気持ちのお返し」。最初に受け取ったペンと渡された紙を使って、ステージ上のAqoursに思いを伝えるというものです。登場人物と秘密を共有する体験も楽しいものですが、何よりもお祭りの中で知った沼津の魅力や、イベントの感想を綴るとき、このイベントのことだけでなく、今までに行った沼津の思い出、『サンシャイン!!』の作品やAqoursのライブの思い出など、いろいろなものが頭に蘇ってきました。思い出がありすぎて何を書いたらいいかわからなくなったとき、ふとこの先の未来のことを書いてみようと思い至りました。つまり、私がこれから沼津についてやってみたいことです。

 ライブの直前、ミニステージで梨子と花丸のトークライブを観ました。「本」がテーマのトークで、花丸は芹沢光治良『人間の運命』を紹介していました。芹沢光治良記念館が『未体験HORIZON』のPVにも登場するなど、『サンシャイン!!』にも関係がある人物です。正直、芹沢文学にはとっつきにくさを感じていました。しかし、花丸のトークは、作品の説明というよりも、花丸がどのような点に感銘を受けたかという切り口の紹介で、一気に興味を引かれるものでした。「ラブライバーラブライブ! と絡められると俄然興味が湧く」というのも確かに事実だとは思いますが……。そこで、新発見した沼津の魅力として、花丸に「沼津の文学を読んでみたい!」というメッセージを書くことにしました。Aqoursメンバーは全員好きでも、ともすれば普段から注目しているダイヤや千歌ばかり見てしまいがちですが、普段と違うイベントに参加してみることで、それ以外のメンバーの魅力度も高まったような気がします。

 

2. バーチャル・ライブ!

 今回のライブは、メインキャストが登壇しない*1ということは、映像によるライブとなります。実際、使われた映像は『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ~after school ACTIVITY~ わいわい! Home Meeting!』のものでした*2。しかし、前回の記事で述べたとおり、このイベントは学院生のキャストたち、そして訪れたたくさんの参加者の力で、Aqoursメンバーの輪郭を浮かび上がらせるものです。つまり、客席でブレードを振る私たち「助っ人」の存在が、ステージ上のAqoursの存在を形作っているということです。もちろん、学院生たちも一生懸命に応援していました。

 曲目は各公演で変化したようですが、この回は『未来の僕らは知ってるよ』と『未体験HORIZON』でした。ちょうどメッセージに花丸のことを書いたところだったので、嬉しくなりました。

 さて、今回のライブは物語の文脈の力を借りた (力技の?) バーチャル・リアリティだといえます。そもそもラブライブ! シリーズのライブそのものにバーチャル・リアリティ的な要素はありますが、今後その形が多様化していくことは間違いないと思います。例えば、8月に発売予定の『BANZAI! digital trippers』には初音ミクが登場しますが、ライブでもホログラムで登場することが期待されています。また、秋には「バーチャルスクールアイドル」なる存在が活躍する新作の始動が予定されています。ラブライブ! 世界の実在性は、様々な形となって、これからも進化し続けるでしょう。

 

3. 浦の星女学院

 イベントと同時に、Twitter上のハッシュタグ「#Aqoursぬまづフェス」も大盛り上がりしましたね。参加者だけでなく、チトセ役・北田結子さん、モモカ役・中村那美さん(なんと、沼津出身とのこと))をはじめとする学院生を演じたキャストたちもたくさん「自撮り」を投稿していました。そこに広がっていたのは、女子高生たちの一度きりの青春でした。そういう役をやっているというだけでなく、わずか18公演しかない青春を全力で楽しんでいるように見えました。

 キャストたちのアップしている情報から、かなりの数の生徒に名前と学年の情報が設定されていることがわかります。実は、より細かな設定が作られているという話も目にしましたが、私はこの情報の裏を取ってはいないので、詳しいことはもっとこのイベントに通って詳しくなった方にお尋ねください

 浦の星女学院の全校生徒数は、1年生12名・2年生24名・3年生38名の計74名です。私はTwitterによる情報収集で、1年生9名、2年生19名、3年生19名を確認しました。Aqours9人と「よいつむ」の存在は既にわかっているので、1年生と2年生の全員の名前がわかっていることになります*3。3年生もあと16名だけ設定がないというのは妙ですし、このイベントのために、浦の星女学院すべての生徒に設定が与えられた可能性があります。2期11話『浦の星女学院』など、本編に登場する生徒たち (少なくとも黄色か赤のリボンの生徒は確実) も、すべてその中の誰かということになります。

 これほどの具体性をもって浦の星女学院という学校が現れていることは、今後のAqoursの活動を追いかけるにあたって見逃せない要素となるのではないでしょうか。正直、本音を言えば、設定資料集が出てほしい、読んでみたいと強く思います。

 

4. 「地元愛」の時系列、そして約束の地へ

 大盛況で幕を閉じた『Aqoursぬまづフェスティバル』ですが、本来はこの時期に設定されたイベントではありませんでした。本来の開催時期は2021年5月、『地元愛! Take Me Higher Project』に組み込まれているべきものでした。Aqoursのイベントは、結局同年8月のAZALEA 1stライブ (これもコンセプト的には本来開催予定だった1stライブと2ndライブが入れ替わっている) まで復活せず、このイベントは本来の開催時期には告知されることすらなく、1年遅れでの開催となったようです。そう考えれば、このイベントは「地元愛」を掲げるプロジェクトの締めくくりに、これ以上ないほど相応しかったのではないかと思います。

 詳しい経緯は企画Webサイトに掲載されています。

www.scrapmagazine.com

 エンディングとして披露されたテーマ曲『SUKI for you, DREAM for you!』は、楽曲の方が先に、2021年9月の『KU-RU-KU-RU Cruller!』のc/wとして発売されました。まっすぐに好きを伝えるために行動するという内容の歌詞が魅力的なこの曲ですが、変わっていく世界の中で、フェスティバルを通して大切なものの存在を確かめられたことが、曲の生まれたきっかけということになっています。想定以上に世界に大異変が起きたのでそちらの文脈に乗っ取られがちではありますが、元々『サンシャイン!!』は学校が廃校になるなどの変化の中で生きながら、変わらないものを見つめる物語です。学校や街が変わり、別れを経験しても、好きを共有できる人の存在や、いつでも見守ってくれる空と海の存在が、心の中の勇気を思い出させてくれるのです。その結実が、本来このイベントの次にリリースされる予定だった『DREAMY COLOR』に繋がっていることがわかりました。このイベントは本来の時系列にも綺麗に収まります。

 実際の時系列では、このイベントの後に来るのは6thライブ <WINDY STAGE>、待ちに待った東京ドームでのライブです。6thライブで会えた喜びを歌ったアンコールの『SUKI for you, DREAM for you!』も非常に印象に残っていますし、ここでの体験がこのライブでの最高の思い出に繋がることも、今から期待してしまいます。

*1:この日、メインキャストの一部は『バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル2nd』に出演していた

*2:Aqoursの楽曲の一部の3DCGライブ映像は『アケフェス』と『スクスタ』にある。ステージの大きさなどから前者のものだと思われるが、自信はない

*3:2年生は本来の設定より1名多い