ウルトラシリーズの新番組『ウルトラマンブレーザー』からは、毎月の感想を1記事にまとめた「感想月報」をお届けします。
今回は、その前段階として、『ウルトラマンブレーザー 直前スペシャル』を観た感想をまとめたいと思います。実は、多忙につき制作発表会を見ることができず、予告映像と直前スペシャルのみで新たなウルトラマンに触れている状態です。なので、既に出ている情報を把握していない可能性はありますが、ご理解ください。
1. 何だこのウルトラマンは!?
前作『ウルトラマンデッカー』の劇場版『最終章 旅立ちの彼方へ…』の後に、新ウルトラマンに関する予告映像が流れました。その段階では文字情報とシルエットだけでしたが、ハードSFを思わせるスタイリッシュな演出が目を引きました。当然、期待度は最初から高かったです。
そして、情報が初公開されたとき、その姿に衝撃を受けました。
胸に煌々と輝く巨大なカラータイマー。
左半身に螺旋状に伸びる、血管のような赤と青の筋。
左側にだけ伸びた頭の発光クリスタル。
そして、派手にデザインされた左半身とは対照的に、銀と黒だけでまとめられた右半身。
こんなに極端なデザインのウルトラマンを、それもTVシリーズの主人公ウルトラマンで見ることになるとは思いませんでした。むしろ、『シン・ウルトラマン』のウルトラマン (リピアー) を初めて見た時や、ショートムービーのみ公開された『Ultraman n/a』のウルトラマンを見た時のような驚きがありました。このどちらも初代ウルトラマンが元ネタであり、今回はそうではないにもかかわらずそう感じたのは、ある意味で「毎年お決まりのウルトラマン」を壊してくれそうだという期待からだと思います。もちろん、ニュージェネレーションが10年かけて作り上げてきた伝統というか、定番のようなものは、相応に評価されるべきものであり、私は面白いと思っています。ですが、新しいものをつくるということは、10年後、25年後に残る挑戦だと思います。
『ギンガ』が始まった当時、あるいは『ティガ』が始まった当時の人たちは、同じようなことを感じたのでしょうか。
デザインに関して少し補足すると、銀色に黒を細かくあしらうのは、田口清隆監督メインのエックスやゼットにもその萌芽が見られるので、田口監督の好みのような気もします。これは想像ですが、デザイン担当の後藤正行さんが、田口監督の夢を形にした、ということでしょうか。
2. 情報量
直前スペシャルでは、主人公・ヒルマ ゲントが所属するSKaRDの紹介とウルトラマンブレーザーの紹介、同時に歴代シリーズの紹介が行われました。ですが、ウルトラマンブレーザーに関しては本編の映像が使われる一方で、どのような存在なのかに関しては「今のところ謎に包まれている」というようなナレーションがなされただけで、ほとんど何もわかりませんでした。
一応、彼がM421*1という新しい天体の出身であることや、スーツアクターと声の両方を岩田栄慶さんが演じることなどが知られてはいますが、その力の源や、地球に来た目的など多くが本当に謎に包まれています。
考えてみれば、「タロウの息子」だの「ゼロの弟子」だの、あるいは「ティガやダイナに似ている」などというのは、こちらの世界の視聴者だからわかる事前情報なのです。ウルトラマンが現れた世界の住人にとっては、常にその存在は謎のままです。物語の登場人物と平等に、ウルトラマンのことを何も知らないほうが、リアリティを持って追えるのかもしれません。
3. 「隊長」と「父」
ウルトラマンブレーザーに変身するヒルマ ゲント。彼はSKaRDに所属していると書きましたが、所属しているだけではありません。SKaRDの隊長です。隊長が変身するウルトラマンはいないわけではありませんが、主人公となるともちろん史上初です。
ところで、ウルトラシリーズのキャストクレジットは、他の作品と同様に主人公 = ウルトラマンが一番目となるのが普通ですが、初期の『ウルトラマン』『ウルトラセブン』だけは、隊長が一番目でした。この通りなら、ゲントは『セブン』のキリヤマ隊長以来の一番目にキャストクレジットされる隊長になる見込みです。
防衛隊隊長というのは、これまでもウルトラマンに並んで魅力的なキャラクターだった存在です。元号が変わってからだけ見ても、こんな人物たちが。
・隊長ではないが、それに準ずる存在として若い社員たちを見守ったEGISの佐々木カナ社長
・不純な動機でSTORAGEに潜入するも、助けを求める人を放っておけない性格から隊長としての責務を果たしたヘビクラ ショウタ隊長
・GUTS-SELECTの、厳格な父のようなタツミ セイヤ隊長と、優しくて家庭的な父のようなムラホシ タイジ隊長*2
こうして見ると、隊長というものは、ずっと父や母になぞらえられてきたことがわかります。ジャグラス ジャグラーは違うのでは? と思われるかもしれませんが、親というものは生まれつき理想的な親なのではなく、様々な性格の一人の人間が「なってゆく」ものなので、それもひとつの「親」像かもしれません。
ゲントは、父親的存在であるだけでなく、一つの家庭の本当の父としての顔も持ちます。ウルトラシリーズ史上初の、子どもの親が等身大に感情移入して見られる主人公になりうる存在と言えるでしょう。それと同時に、ゼロやギンガが活躍していたころ子どもだった大きなお友達は若手隊員に、今現在幼稚園や小学校に通う子どもたちは、ゲントの息子であるジュンに感情移入し、ゲントを憧れの存在として見上げるような土曜日の朝になると思います。
余談ですが、ゲントの年齢は30歳です。ゲント役の蕨野友也さんは35歳ですが、こうなると同じ30歳でも『デッカー』に登場した10年後のマナカ ケンゴ (キャストは当時22歳) とはまるきり貫禄が違いますね……。
『ウルトラマンブレーザー』は明後日7月8日 (土) にいよいよ物語が始まります。大人になって見る大人のウルトラマンに、毎週理想の大人像を探したいと思います。
感想月報①では、第5話放送日の8月5日より前に、4話までの内容をまとめたいと思います。